日本放送協会 理事会議事録  (平成25年 9月24日開催分)
平成25年10月18日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成25年 9月24日(火) 午前9時00分〜9時40分

<出   席   者>
 松本会長、小野副会長、塚田専務理事、吉国専務理事、石田専務理事、
 木田理事、久保田技師長、板野理事、上滝理事、福井理事、下川理事、
 森永理事
 井原監査委員、上田監査委員

<場     所>
 放送センター 役員会議室

<議     事>
 松本会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 審議事項
(1)ハイブリッドキャストサービスに係るインターネットを利用したコ
   ンテンツ提供業務の実施について
(2)オリンピックソチ大会に係るインターネットを利用したコンテンツ
   提供業務の実施について

2 報告事項
(1)予算の執行状況(平成25年8月末)
(2)契約・収納活動の状況(平成25年8月末)

議事経過

1 審議事項

(1) ハイブリッドキャストサービスに係るインターネットを利用したコンテンツ提供業務の実施について

(編成局)
 放送・通信連携サービス「ハイブリッドキャスト」に係るコンテンツについて、ハイブリッドキャスト対応受信機またはそれにつながる端末機器で利用できるよう、インターネットを通じて一般に提供する業務の実施を計画しています。この業務は、NHKのインターネット業務について規定した放送法第20条第2項第2号の「既放送番組等」の提供に該当しないため、放送法第20条第2項第8号で定める「放送及びその受信の進歩発達に特に必要な業務」として、総務大臣に認可を申請したいと思いますので、審議をお願いします。
 平成25年3月に、一般社団法人IPTVフォーラムが、放送・通信連携サービス技術を規格化した「ハイブリッドキャスト技術仕様」を策定し、公表しました。テレビジョン放送のデジタル化が完了し、新しいメディア環境への期待が高まる中、放送を軸としてテレビ・スマートフォン・タブレットなどさまざまな端末で放送と通信が高度に連携する、多様なアプリケーションやコンテンツによる新しいサービスは、デジタル化の果実の還元でもあり、次世代の放送としての取り組みとなるものです。
 NHKは、9月2日にデータ放送コンテンツを活用した形のハイブリッドキャストサービス「NHKハイブリッドキャスト」を開始しましたが、今後、対応受信機が広く普及し、多くの視聴者がこの新しいサービスを享受できるようにするためには、NHKが保有するコンテンツやノウハウを十分活用した、放送局ならではの魅力あるサービスコンテンツの開発が必要です。
 今回計画している業務は、ハイブリッドキャスト技術を生かした新しいサービスを実施し、利用者の評価等を踏まえて、サービス設計面、演出面、技術面といった観点から検証を行うことにより、新しい時代の放送の担い手として先導的役割を果たし、放送およびその受信の進歩発達に資するものです。実施する業務の類型とその実施例は、次のとおりです。
○類型1 放送中の番組の時差再生可能な映像を提供する業務
 ソチ五輪などの競技中継において、時差再生映像を提供します。
○類型2 放送中の番組の進行に合わせて複数カメラからの中継映像を同時提供する業務
 スポーツやステージ番組において、視聴者が任意の映像を選択できるように、複数のカメラによる映像を提供します。
○類型3 放送番組およびその編集上必要な資料による動画クリップを当該番組の放送中に提供する業務
 視聴者が放送を視聴しながらハイライトシーンの再生等ができるように、スポーツ中継のハイライト動画を提供します。
○類型4 視聴者の番組参加を目的としたコンテンツを提供する業務
 クイズやアンケートへの回答に要するフォームおよびそれに付随する情報を提供します。
○類型5 文字、図形、データ等による番組に関連したコンテンツを当該番組の進行に合わせて提供する業務
 専門用語等のキーワードの表示や、紀行番組における地図の表示等を行います。
○類型6 放送中の番組を契機としたリコメンド機能等を活用して、既放送番組の動画クリップ等を提供する業務
 アーカイブ番組の動画クリップ等を提供します。
 本業務はインターネットによる映像等の配信を行うものですが、提供するコンテンツについては、NHKの国内番組基準に準じ、適切な管理を行うこととします。実施期間は、25年11月頃をめどに開始し、26年度末までとします。業務の実施結果、検証結果については、今後のサービスの充実・開発に役立てるとともに、年度ごとに適宜とりまとめて、NHKのホームページ等で公表します。なお、制度改正および研究開発や受信機環境の進展等に伴い、必要があるときは、実施内容の変更・追加、延長等のための認可申請を行うこととします。
 以上の内容が了承されれば、本日開催の第1197回経営委員会に諮り、議決が得られれば、総務大臣に認可を申請します。

(上滝理事)  ハイブリッドキャストについては、若者のテレビ離れへの対応という面でも、大事なサービスとなると思います。新しいサービスを実施し、その後、利用者の評価等を踏まえて検証を行うということですが、評価の把握のために、どのような調査を行う予定ですか。
(編成局)  実施を計画している6つの類型の業務それぞれについて、どういった調査・検証を行うのか検討を行っているところですが、例えば実際の利用者を抽出して、使用実態を確認するモニター調査等を行いたいと思っています。また、NHKがハイブリッドキャストサービスを開始してから、コールセンター等に大変多くの声が寄せられていますので、それらもしっかりと整理したうえで、今後の検証に役立てていきたいと考えています。
(上滝理事)  総務省の「放送サービスの高度化に関する検討会」では、ハイブリッドキャストについて、オールジャパン体制で推進することが望ましいとされていますが、民放やメーカー等との連携については、現在どのような状況ですか。
(編成局)  まず、民放とは、実務者が集まる連絡会を開催して、今後の対応方針などについて、いろいろと議論を行っています。また、メーカーとも緊密に連携を取っており、ハイブリッドキャストのコンテンツが十全に動き、能力を発揮することができるよう、情報の交換を進めています。
(会 長)  原案どおり了承し、本日の経営委員会に諮ります。

(2) オリンピックソチ大会に係るインターネットを利用したコンテンツ提供業務の実施について

(編成局)
 平成26年2月7日からロシアで開催される冬季オリンピックソチ大会において、NHKおよび民放による生中継の事前の放送計画に含まれない一部の競技種目について、その生中継映像を、インターネットを通じて、時差再生が可能な形で一般に提供する業務の実施を計画しています。あわせて、競技等に関する大会公式データについても、インターネットを通じて一般に提供する計画です。この業務は、NHKのインターネット業務について規定した放送法第20条第2項第2号の「既放送番組等」の提供に該当しないため、放送法第20条第2項第8号で定める「放送及びその受信の進歩発達に特に必要な業務」として、総務大臣に認可を申請したいと思いますので、審議をお願いします。
 この業務を行うことで、NHKのオリンピック放送を補完して視聴者の高い関心・要望に応えるとともに、その操作性や利用動向等を把握・検証することにより、今後のハイブリッドキャストサービスの開発等、放送・通信連携サービスの高度化に資することとします。
 提供するコンテンツについては、競技種目の生中継映像の配信では、日本国内でのNHKおよび民放による放送計画が決まった後、生中継の事前の放送計画に含まれない競技種目の中から、1日に最大で5種目程度を選択します。また、大会公式データの配信では、ソチオリンピック組織委員会からリアルタイムに提供される、競技の結果や途中経過、選手情報等の公式データを提供します。
 提供形態としては、現地の国際放送センターからNHKに伝送される生中継の国際映像を、そのままNHKのホームページ上でストリーミング方式で提供します。提供に当たってはCDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)を利用し、600〜950kbps程度の画質により提供します。これらの映像は、利用者が指定する過去の時点に巻き戻して時差再生できるようにします。なお、利用者の利便および利用データの把握・検証の観点から、競技の翌日1日程度(現地時間)、利用可能とします。大会公式データについては、ホームページの競技紹介ページ、選手紹介ページなどで最新のものを表示します。
 提供規模は、生中継映像の提供については、オリンピック期間中に最大で200時間程度を想定し、提供エリアは日本国内に限定します。競技の公式データは、データ放送では紹介しないものも含めて、すべての競技種目について提供します。実施結果については、業務終了後にとりまとめてNHKのホームページ等で公表します。
 この業務はインターネットによる映像等の配信を行うものですが、提供するコンテンツについては、NHKの国内番組基準に準じ、適切な管理を行うこととします。
 以上の内容が了承されれば、本日開催の第1197回経営委員会に諮り、議決が得られれば、総務大臣に認可を申請します。

(会 長)  オリンピックロンドン大会の時と比べて、変更しているところはありますか。
(編成局)  ライブストリーミングに時差再生機能を付加するというのが大きな変更点です。
(会 長)  原案どおり了承し、本日の経営委員会に諮ります。

報告事項

(1)予算の執行状況(平成25年8月末)
(経理局)
 平成25年8月末の予算の執行状況について報告します。
 最初に、一般勘定の事業収支の全体概況を説明します。8月末の標準進捗率は、41.7%(5か月/12か月)です。事業収入は2,747億円で、進捗率は42.4%です。受信料、財務収入等が標準進捗率を上回り、全体としては堅調な状況となっています。事業支出は2,600億円で、進捗率は40.1%です。受信対策費、退職手当・厚生費等が標準進捗率を上回ったものの、全体としては堅調に推移しています。この結果、事業収支差金は147億円の黒字となっています。
 事業収入、事業支出それぞれのポイントについて説明します。
 まず、事業収入についてです。受信料は、効率的な業務体制の構築に取り組んで契約収納業務を実施したことなどにより、契約総数や衛星契約数が増加し、標準進捗率をやや上回りました。交付金収入は、7月の参議院議員通常選挙の政見・経歴放送実施に伴う選挙放送関係交付金の収入により、標準進捗率を上回っています。財務収入は、6月に関連団体からの配当を受けたため、進捗率が高くなっています。また、雑収入は、前々年度以前受信料の回収額が増加し、標準進捗率を上回っています。
 続いて、事業支出についてです。
 国内放送費は、FIFAコンフェデレーションズカップの中継(6月)や、参議院選挙放送の実施(7月)による支出があったものの、全体としては標準進捗率を下回り、堅調な支出状況となっています。契約収納費は、地域スタッフ体制の見直しなど効率的な業務体制の構築を進めて経費の抑制に努めたことから、標準進捗率をやや下回っています。受信対策費は、東京スカイツリーへの送信所移転対策件数の増等により、進捗率が高くなっています。また、退職手当・厚生費は、期待運用収益率や割引率を見直したことなどにより、退職給付費が増加し、標準進捗率をやや上回っています。
 一般勘定の事業収支を前年同月と比較すると、事業収入は24年10月からの受信料値下げによる減収が通年で影響し、89億円減の2,747億円となりました。事業支出は、給与や契約収納費が減となった一方で、国内放送費や受信対策費等の増により、15億円増の2,600億円となりました。事業収支差金は104億円の減となっています。
 受信料については、値下げの影響で、前年同月に比べ109億円の減収となっています。受信契約の状況については、効率的な業務体制の構築に向けた取り組みを進めており、契約総数・衛星契約数ともに標準進捗率を上回って増加しています。
 最後に、番組アーカイブ業務勘定の状況です。
 事業収入は、前年同月比1.7億円増の6.9億円となっています。8月は見逃し見放題、特選見放題、単品のいずれの契約も前月比で増加し、単月の視聴料収入は、過去最高を更新しました。事業収支差金は、視聴料収入の増等により前年同月と比べて3.1億円改善しています。
 この内容は、本日開催の第1197回経営委員会に報告します。

(会 長)  24年10月からの受信料の値下げの影響が続く中で、事業収入・事業支出ともに堅調な推移を見せています。これは、受信料収入の増加と経費の抑制に役職員一丸となって取り組んでいる努力の成果が、数字に表れているものと見てよいですか。
(経理局)  そのように捉えています。

(2)契約・収納活動の状況(平成25年8月末)
(営業局)
 平成25年8月末の契約・収納活動の状況について報告します。
まず、8月の収納額は483.8億円で、24年10月からの受信料の値下げの影響により、前年度同月を28.3億円下回りました。年間累計では、2,527.7億円となり、前年度同時期より103.6億円の減収となっています。
 8月の前年度分回収額実績は4.9億円で、前年度同月を1.5億円上回りましたが、年間累計は44.0億円と前年度同時期を0.2億円下回っています。8月の前々年度以前分回収額実績は3.0億円で、前年度同月を0.2億円上回り、年間累計も17.2億円と前年度同時期を2.1億円上回っています。
 受信契約総数の増加状況について、8月は、取次が21.4万件と前年度同月を1.8万件上回った一方、減少も18.1万件と前年度同月を0.6万件上回ったため、増加数は前年度同月を1.2万件上回る3.3万件となりました。年間累計増加数は25.0万件となり、前年度同時期を1.9万件上回っています。
 衛星契約増加については、8月は取次が12.6万件と前年度同月を0.4万件下回り、さらに、減少が6.9万件と前年度同月を0.6万件上回ったため、増加数は前年度同月を1.0万件下回る5.7万件となりました。年間累計増加数は38.0万件となり、前年度同時期を0.8万件上回っています。
 以上の内容は、本日開催の第1197回経営委員会に報告します。

(会 長)  前年度分回収額が4か月ぶりに前年度を上回りましたが、この要因についてはどのように考えていますか。
(営業局)  まず、法人委託の拡大により、体制が整ってきたことが挙げられます。また、民事訴訟や強制執行などの対応をきちんと行っていることも、若干の影響を与えていると思われます。さまざまな取り組みの積み重ねにより、支払再開数が前年度同月より1,500件あまり増加し、前年度分回収額が上回ったと捉えています。
(上滝理事)  地域スタッフから法人委託への移行が進み、業績が堅調に推移している一方で、法人の営業活動に関するクレームが増えているようです。この対応についてはどのように考えていますか。
(営業局)

 営業活動の現場では、まずは、お客様対応をきちんと行うこと、基本に忠実な営業活動を行うことを指導していますが、法人委託の拡大に伴って、現時点では確かにクレームが増えています。コールセンターに寄せられるお客様の声を分析して、法人委託の場合にはその管理者を通じて指導し、指導の結果についても、すべて取りまとめて把握するようにしています。
 クレームが多い原因として考えられる点としては、業績アップに専心するあまり、丁寧なお客様対応が二の次となっているのではないかということ、また、NHKや受信料に関する知識の不足により、お客様に十分な説明が行えていないのではないかということがあります。対応策として、10月から12月までの3か月間を、法人委託を中心に、クレームゼロを目指す強化月間として取り組みたいと思っています。その後、結果を再び検証し、さらなる対応の強化を図っていきたいと考えています。

(会 長)  改革を行うときには、プラス面がある一方で、どうしてもマイナス面も出てきます。そこをいかに補っていくかが重要となります。法人委託については、受信料制度の意義や契約収納活動の在り方についてしっかりと理解してもらうとともに、継続的な指導を行っていくことが大切です。先ほどのクレームゼロに向けた運動は、大変良い取り組みだと思います。法人へのマネジメントやリスク管理についても、しっかりと取り組んでいってください。
(営業局)  営業改革の大きな柱である法人委託をきちんと軌道に乗せることは、業績確保の面からも大変重要であると認識しています。法人については、管理者へのマネジメントやリスク管理についての研修あるいは現場での対応を厚くすることで、対応の強化を図っていきたいと思います。


以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成25年10月15日
                     会 長  松 本 正 之

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