日本放送協会 理事会議事録  (平成23年11月 1日開催分)
平成23年11月18日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成23年11月 1日(火) 午前9時00分〜9時20分

<出   席   者>
 松本会長、小野副会長、永井技師長、金田専務理事、大西理事、
 今井理事、塚田理事、吉国理事、冷水理事、新山理事、石田理事、
 木田理事
 井原監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 松本会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 審議事項
(1)第1154回経営委員会付議事項について

2 報告事項
(1)考査報告
(2)平成23年度放送局監査実施状況
(3)放送番組審議会議事録(資料)


議事経過

1 審議事項
(1)第1154回経営委員会付議事項について
(経営企画局)
 11月8日に開催される第1154回経営委員会に付議する事項について、審議をお願いします。
 付議事項については、議決事項・報告事項はありません。その他の事項として「平成24年度予算編成のスケジュール等」、および「会計検査院の検査結果」です。

(会 長)  原案どおり決定します。

2 報告事項
(1)考査報告
(考査室)
 9月29日から10月26日までの間に、ニュースと番組について考査した内容を報告します。
 この期間、原発事故関連や民主党の小沢一郎元代表をめぐる裁判の初公判関連などのニュースと、東日本大震災関連の番組や23年度後期の新番組などを中心に、ニュース21項目、番組61本の考査を実施しました。
 考査の結果、一連のニュース・番組は、放送法、国内番組基準に照らし、「妥当」であったと判断します。
 まず、ニュースの考査結果について報告します。
 緊急時避難準備区域の解除に関するニュースです。政府は、原発の状況が改善したため、福島県内の5つの市町村に設定していた緊急時避難準備区域を解除しました。9月30日の「NHKニュース おはよう日本」では、南相馬市の住民が、国、県、東京電力に任せてはいられないと、自ら道路などの除染を始めたものの、地域が広大なうえ、汚染物質の仮置き場も決まっていないことから、住民が自宅に戻るためには、除染やがれきの除去など、多くの課題があるとことを伝えていました。同日の午後6時19分には、「緊急時避難準備区域 解除を決定」とスーパーで速報し、その後の「NHKニュース7」では、「本当に安全なのか。国で保証してもらいたい」など避難住民の声を紹介する一方、一部の自治体は来年3月までに避難している住民を戻すという目標を示しているが、除染がどこまで進むか不透明であることを指摘していました。住民や市町村だけでは以前の生活環境を取り戻すことは難しく、国などの一層の支援が必要なことがよく伝わってきました。
 次に、原発が立地する自治体への国の交付金に関するニュースです。原発が立地している全国44の自治体に対して、NHKが独自に調査したところ、このうち4つの自治体が、脱原発の姿勢を示すなどの理由で、国からの交付金を辞退する方針であることが明らかになりました。10月19日の「NHKニュース7」では、地域振興の名目として、制度が始まった昭和49年度からこれまでに支払われた交付金の総額は9,152億円にのぼり、交付金の辞退は極めてまれなことだと伝えていました。
 民主党の小沢元代表が、土地の取引をめぐり政治資金規正法違反で強制起訴された裁判の初公判に関するニュースについてです。10月6日に開かれた初公判について、午前9時55分から「ニュース」を35分間に拡大して、東京地方裁判所前から中継していました。同日の午前10時8分には、「小沢元代表が初公判で無罪主張」とスーパーで速報し、その後のニュースでは、識者や与野党の反応を多角的に伝え、裁判の争点や土地を購入した4億円の原資が何かなどの焦点となる事柄もきちんと整理していました。
 アメリカのIT企業アップル創業者の死去に関するニュースです。独創的なアイデアの製品を次々に生み出したアップルの前CEOで、カリスマ経営者として知られるスティーブ・ジョブズ氏が10月5日に亡くなりました。6日午前8時47分に、「アップル社前CEO スティーブ・ジョブズ氏 死去」とスーパーで速報し、その後のニュースでは、ジョブズ氏の功績や、彼の死を悼む世界各地の声を紹介するなど、ジョブズ氏のアイデアが、暮らしや仕事のスタイルを変え、その生き方も人々に共鳴を与えたことを、さまざまなインタビューを交えて伝えていました。
 続いて、番組の考査結果です。
 10月2日に放送した仙台放送局制作のNHKスペシャル「巨大津波 その時ひとはどう動いたか」についてです。巨大津波に襲われた宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区で聞き取り調査を行い、地震発生から津波到達までの1時間10分の間に、人々がどう動いたかを丁寧に分析・検証していました。災害時の人々の行動について詳細に聞き取り調査を行い、被災マップ・行動マップとして分かりやすく映像化しながら、人々の行動を分析していました。このような調査・分析により、「正常性バイアス」、「愛他行動」、「同調バイアス」といった心理作用が生死を分けたことを具体的に示すことができ、説得力ある番組になっていました。これまであまり考慮されてこなかった心理面からの防災対策の重要性を示唆し、震災の教訓を伝えた意義深い番組でした。
 10月3日から始まった大阪放送局制作の連続テレビ小説「カーネーション」についてです。今回は、第1週6回分を考査しました。このドラマは、日本のファッションデザイナーの草分けで“コシノ3姉妹”の母でもある小篠綾子さんの大正・昭和・平成にわたる一代記です。主人公糸子の少女時代を明るく描いており、今後が楽しみな第1週でした。第1週を見たモニターの評価は、大変良い(40%)と良い(44%)をあわせて、84%となり、高い満足度を示しています。特に女性のモニターの評価が前作の「おひさま」、前々作の「てっぱん」と比べて高くなっています。
 「誤解」や「宣伝」という観点から、気になった番組が2つありました。
 1つは、10月5日放送のためしてガッテン「糖尿病が完治する!?すい臓を復活させる薬」です。糖尿病の治療において、早い時期にインスリンを注射すれば、すい臓が機能を回復して、症状が改善するという情報を紹介していました。 現在、日本で糖尿病の疑いが強い人が890万人を超えているといわれています。また、糖尿病の治療は、一生続くといわれているなかで、“完治”という言葉は、糖尿病患者にとって特別な言葉だと思います。番組では、早期のインスリン注射で効果のある場合や専門医による治療など、ポイントをきちんと押さえていましたが、タイトルや放送中の画面表示などの“完治する!?”については、たとえ“?”マークを使用したとしても、患者やその家族に過大な期待や誤解を与えかねない表現だったと思います。また、「生活習慣大実験」は、被験者が7人いたのに対して、2人の結果しか紹介していませんでした。「ためしてガッテン」は実験を大切にしてきた番組です。他の5人の結果についても伝えるべきだと思います。
 もう1つは、10月7日に総合テレビで放送した開発番組「サラメシ」です。さまざまな職場で働く人たちのランチを通して、現代の仕事事情や家族との絆を紹介しようという番組です。今回はスペシャル版として前回よりも放送時間を拡大し、タレントが社員食堂を訪ねるという新しいコーナーが軸になっていました。番組の冒頭では「大手電機メーカー」の社員食堂と紹介していましたが、次に登場したときには会社名をコメントしたり、これから発売される商品を紹介したりしたことは、企業の宣伝につながりかねないことであり避けるべきでした。社員食堂を取材する際には、企業の宣伝にならないよう十分気をつけてほしいと思います。

(新山理事)  「サラメシ」については、考査室と放送総局との会議において、制作現場に対して指摘をしていましたが、その後、現場制作者とは、解決に向けて、どのようなコミュニケーションをとってきましたか。
(考査室)  考査結果については、毎週、制作現場へ周知していますが、その内容について、制作責任者であるチーフ・プロデューサーに、どのようないきさつで、番組の演出や放送を行ったのか、聞き取り調査を行い、その調査内容をもとに、考査室において意見交換を行います。考査室で出された意見等については、速やかにチーフ・プロデューサーに伝えています。
(新山理事)  考査室は考査結果により出された問題点について、制作現場とコミュニケーションを図りながら解決していくことが大切であると思います。
(会 長)  考査室の意見は、企業の宣伝と受け取られることがないよう、十分心がけて演出を行うことが大切ということですね。
(考査室)  「サラメシ」という番組は、さまざまな職場で働く人々のランチを通して、携わっている仕事や、職場の仲間とのかかわり、家族との絆などを紹介する非常にユニークな番組です。今回は、大手電機メーカーの社員食堂を訪ね、社員の方と相席しながら、いろいろな話を伺っていたのですが、会話のなかで、会社名がコメントされたり、この秋に発売する製品が数回、画面で紹介されたりと、企業の宣伝と受け取られかねないような場面がありました。考査室としては、そのような演出手法を取らなくても、番組の意図するところが、視聴者に伝わる方法があるのではないかと思い、今回、十分気をつけるよう指摘しました。
(新山理事)  今の説明を聞くと、非常に理解ができるのですが、制作現場も、演出にあたっては、いろいろと思い入れもあると思いますので、是非、より良くなるよう十分に話し合ってもらいたいと思います。
(考査室)  制作現場は、考査室から連絡があると、何かマイナス面の指摘をされるのではないかと思ってしまう傾向があるのではないかと感じています。今後とも、コミュニケーションを大事にしながら、考査を行っていきたいと思います。
(副会長)  視聴者に誤解を与えることがないよう、考査室と制作現場が、十分コミュニケーションを図りながら、改善すべきものは改善していくことが大切だと思います。
(会 長)  コミュニケーションをとることは非常に大切だと思います。考査室としての機能を十分発揮して、適正な評価を制作現場に伝える一方、制作現場の思いも聞き取りながら、議論を積み重ねて、より良い方向に進めていってほしいと思います。

(2)平成23年度放送局監査実施状況
(内部監査室)
 平成23年5月から8月上旬にかけて各地の放送局で実施した内部監査の結果について報告します。これは、内部監査規程に基づき各部署の内部監査結果を取りまとめて、理事会に報告するものです。
 まず、この期間に内部監査を実施した放送局数について報告します。今年度に実施を計画している26放送局のうち、各地域ブロックの拠点局については、名古屋、広島、札幌、松山の4放送局、各ブロック域内の放送局については、新潟、前橋、千葉、宇都宮、福井、岐阜、岡山、北九州、函館、徳島の10放送局、計14放送局で監査(うち新潟放送局と前橋放送局は不定期監査)を実施しました。残りの12放送局についても、その後10月までにすべて実地監査を実施しましたが、その実施状況は、別途報告します。
 監査結果の概要を報告します。監査を行った項目は、放送、技術、営業、管理の各業務プロセスについてです。業務プロセス監査では、4つの放送局で、「指示事項」や「重要度の高い発見事項」としたものがありましたが、それ以外の放送局については、各業務プロセスにおけるリスクの管理状況は、「適正」または「ほぼ適正」と判断しました。なお、発見事項および指示事項については、当該放送局に改善を提案し、今後のフォローアップで改善の確認を行う予定です。


(3)放送番組審議会議事録(資料)
 編成局および国際放送局から、中央放送番組審議会、国際放送番組審議会、全国の地方放送番組審議会(関東甲信越、近畿、中部、中国、九州、東北、北海道、四国)の平成23年9月開催分の議事録についての報告(注)。

注:

放送番組審議会の内容は、NHKホームページの「NHK経営情報」のなかに掲載しています。

以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成23年11月15日
                     会 長  松 本 正 之

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