日本放送協会 理事会議事録  (平成23年 7月 5日開催分)
平成23年 7月22日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成23年 7月 5日(火) 午前9時00分〜10時15分

<出   席   者>
 松本会長、小野副会長、永井技師長、金田専務理事、大西理事、
 今井理事、塚田理事、吉国理事、冷水理事、新山理事、石田理事、
  木田理事

 井原監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 松本会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 報告事項
(1)考査報告
(2)6月「全国接触者率」「全国個人視聴率」「放送評価」調査の結果に
   ついて
(3)国際放送番組審議会委員の委嘱について

議事経過

1 報告事項
(1)考査報告
(考査室)
 6月2日から6月29日までの期間に、ニュースと番組について考査した内容を報告します。
 この期間、ニュース20項目、番組92本の考査を実施しました。期間中の主な項目としては、菅首相の退陣意向表明関連、福島原発事故関連のニュースや番組がありました。
 考査の結果、一連のニュース・番組は、放送法、国内番組基準の観点から「妥当」と判断しました。
 まず、ニュースのうち、政治の動きに関連した3項目の考査結果について説明します。
 自民党など3党が内閣不信任決議案を提出し、民主党内に同調の動きも出ましたが、菅首相は、震災復旧などに一定のメドが立った段階で、退陣する意向を表明し、否決されました。このニュースについては、6月2日正午の「ニュース」の中で、首相の退陣意向表明が行われた民主党の代議士会を中継していました。また、午後1時から、衆議院本会議での不信任決議案の討論と採決を中継していました。ニュースでは、こうした政治の動きに対する福島県飯舘村など被災地の声を紹介していました。
 次に、菅首相の退陣時期を巡る動きのニュースです。菅首相は仮設住宅に一定のめどがつく、8月まで続投したいという意欲を示しましたが、自民党や民主党の一部は早期退陣を求めています。ニュースでは、こうした混迷する政局を連日伝えていました。その中で、民主・自民両党の大連立を巡っては、震災の危機を乗り越える手段が党利党略になってきていると指摘していました。
 延長国会で野党側が対決姿勢を強める中、菅首相は政権基盤強化のための閣僚人事を行い、再生エネルギー買い取り法案の成立などが退陣条件になるとの考えを示しました。このニュースについては、記者報告で、自民党の浜田参議院議員の総務大臣政務官への起用について、自民党や民主党内からも批判が出ていることを伝えていました。また、国民新党の亀井代表が菅首相に内閣の大幅改造を進言し、参院でのねじれの解消に向けて、自民党議員の取り込みを図ろうとしていたことも、紹介していました。
 次に、東日本大震災と原発事故関連のニュースについて報告します。
 東日本大震災から3か月がたちました。現在も9万人を超える人たちが避難所で生活し、被災地の復興への課題は山積しています。6月10日の「NHKニュース7」では、NHKが約500人の被災者に行ったアンケートの結果を紹介し、震災前に暮らしていた市町村の復興が「進んでいない」または「あまり進んでいない」と回答した人が77%だったことを伝えていました。
 また、東京電力福島第一原発では、事故収束の鍵となる、高濃度の汚染水を処理する浄化設備のトラブルが相次ぎ、綱渡りの状態が続いています。6月16日の「NHKニュース7」で、浄化設備の試運転が午前0時過ぎから行われ、翌日からの本格運転を目指していると伝えていましたが、17日午前0時の「ニュース」では、前夜7時20分頃、セシウム除去装置で汚染水が漏れて装置が自動停止し、試運転が中断したと伝えていました。17日の「NHKニュース7」では、解説委員が「処理システムはさまざまな国の技術を組み合わせたもので今後もトラブルを前提に臨む必要がある。トラブルを最小限にとどめ、稼働率を上げることが、原子炉の冷温停止に向けた工程表を守るうえで、ポイントになってくる」と解説していました。引き続き時機をとらえ、工程表を踏まえた解説をしてほしいと思います。
 東京電力福島第一原発の作業員のうち、新たに6人について、被ばく量が緊急時の限度を超えていた疑いがあることが分かり、東電の対応の甘さが改めて問われています。6月14日の「NHKニュース おはよう日本」で、事故翌日の3月12日に、作業員にマスク着用を指示したが、その指示は徹底されず、被ばくした人が、ヨウ素剤を服用したかどうか 確認できていないことを伝え、当時の状況認識の甘さや調査に時間がかかっていることなどを指摘していました。作業員の被ばくについては視聴者の関心も高く、被ばく管理が発生直後からどのように行われ、現在どうなっているのか、問題点も含め、今後も伝えてほしいと思います。
 続いて、番組の考査結果です。
 6月12日放送のNHKスペシャル「あなたの寿命は延ばせる〜発見!長寿遺伝子」では、“長寿遺伝子” といわれる サーチュイン遺伝子を取り上げ、普段は眠っているサーチュイン遺伝子を活性化させる実験や、アメリカでの最新の研究と併せて、サーチュイン遺伝子の働きを高めるために、アメリカでサプリメントが発売され、飲用されていることも紹介していました。サーチュイン遺伝子の働きと、長寿につながるメカニズムなどを一つ一つ丁寧に説明していましたが、番組後半のサプリメントを紹介した部分については、サプリメントを飲めば長寿になれるという印象を与えてしまったのではないかという点が気になりました。視聴者にとって興味深いテーマであるだけに、扱い方にもう少し配慮がほしかったと思います。
 6月8日の「あさイチ」では、「我が家の耐震診断」と「放射線から子どもを守るには?」というテーマを取り上げていました。番組では、住宅の耐震情報だけでなく、今回の震災で、空港や体育館など、大型の施設の天井が落下した原因を探り、天井材を留めるクリップが振動に弱いことを実証するなど、身近な施設の課題をよく伝えていました。また、首都圏の自治体がはじめた放射線量の測定の様子を紹介しながら、子どもの外遊びを心配する親の疑問に答えていましたが、安全値の説明が不十分で、どう考えたらよいのかわからないまま、次のコーナーに移ってしまいました。モニターからは「放射線については、どうしたらよいかわからず不安をあおるだけの印象だった」、「耐震構造や放射線という大きな問題は、別々に放送してほしかった」という声がありました。説明が難しいテーマですので、時間をかけて丁寧に、わかりやすい番組作りを望みたいと思います。
 最後に、5月31日から始まったドラマ10「下流の宴(うたげ)」についてです。このドラマでは、自分の理想の家庭を守ろうとする主婦と、金や地位にこだわらず、穏やかな生活を求める若者との価値観の違いを、コミカルなタッチで描いています。このドラマに対するモニターの評価は非常に高く、満足度は79%です。特に40代女性からの反響が多く、「主人公の姿に自分自身を重ねてしまう」、「親の立場、子供の立場、両方から見て考えさせられる」など、今後を期待する声が多く寄せられています。

(金田専務理事)  「NHKスペシャル」で紹介したサプリメントについては、情報を十分検証したうえで放送したものですが、飲むだけで長寿になれるような印象を与えたことも事実だと思います。その点は課題として、引き続き議論していきたいと思います。
(会 長)  それについて、モニターの声ではどのような評価が多かったのですか。
(考査室)  モニターの声としては、「番組を見て驚いた」や、「腹八分目が長寿につながるということがよく理解できた」など、おおむね評価する声が多かったのですが、一部には、サプリメントの扱い方について指摘する声もありました。
(新山理事)  「あさイチ」については、視聴者からの声が届くとその声に応えていくというキャッチボールを常に心がけています。放射線の問題も、これまで継続的に取り上げてきていますので、これに対しても視聴者からの声が届けば、適切に応えていきたいと思います。

(2)

6月「全国接触者率」「全国個人視聴率」「放送評価」調査の結果について

(放送文化研究所)
 2011(平成23)年6月に実施した、全国接触者率調査、全国個人視聴率調査、および放送評価調査の結果について報告します。
 今回の調査結果のポイントをまとめました。接触者率は、80%を経営目標としているのに対して、今回は76.6%でした。前年、2010(平成22)年同期は74.5%、前回、前年11月の調査では、74.9%でした。今回、録画再生などの放送外リーチが26.7%と、前年同期(20.9%)に比べて増加しました。個人視聴率調査では、連続テレビ小説「おひさま」から「あさイチ」と続く朝8時台の番組が引き続き好調であることに対して、夜間の視聴の広がりが前年よりも乏しくなっています。放送評価調査では、NHKへの「親しみ」が54%で、過去最高の評価を得ました。「信頼」など他の項目も、前年同様の高い評価を維持しています。
 では、個別の調査結果について詳細を報告します。最初に全国接触者率調査の結果です。
 この調査は、「平成21〜23年度 NHK経営計画」で経営目標の1つとしているNHKへの接触者率について、3−Screensの観点から調べるものです。録画再生やインターネット、DVDやビデオなど、放送以外の媒体による接触も含めたメディアへの接触状況を測ります。番組関係の出版物やイベントへの参加は対象に含みません。今回は、6月6日月曜日から12日日曜日までの1週間、全国の7歳以上3,600人を対象に、1日単位で5分以上の視聴・利用があったかどうかを記入する方法で実施しました。有効数は2,646人、有効率は73.5%でした。
 今回、NHK全体リーチ(放送、放送以外を問わず、NHKに接触した人の割合)は76.6%でした。前年6月や11月の調査と比べて有意差はありません。今回、放送外リーチが26.7%と、前年同期より5.8ポイント増えています。前年11月の調査でも前々年同期より増えましたので、放送外リーチは、このところ着実に増えていると言えます。放送外リーチが増えたのは、録画再生(15.7%)の増加に加え、NHKの公式サイトやNHKからの提供ウェブサイト、動画配信サイトなどインターネット(9.2%)の利用増加によるものです。
 NHK全体リーチを年層別に見ると、50代〜70歳以上のリーチが引き続き高く、40代以下へのアプローチが必要な状況が続いています。放送外リーチでは、50代が高く、その他の世代間では差があまりありません。ただ、13歳以上から30代の層では、他の世代に比べてインターネットの利用が多く、特に13〜19歳では、NHK携帯サイトや、動画共有サイトなどの利用の割合が高いことが特徴です。
 NHK全体リーチのうち、放送と放送外それぞれの接触を見ると、「放送のみ」のリーチが49.9%で、前年同期(53.6%)より減った一方、「放送と放送外両方」のリーチは23.7%で前年同期(19.4%)より増えるとともに、「放送外のみ」のリーチも2.9%で前年同期(1.5%)よりも増えています。年層別では、13〜19歳の世代で「放送外のみ」の接触が8%と高い数値であることが特徴的です。
 接触者率調査の最後に、2008(平成20)年12月に開始したNHKオンデマンドサービス(NOD)の認知と利用について報告します。今回、NODを認知している割合は24.0%、利用している割合は1.3%となっており、認知度は前年同期を上回っていますが、利用者に大きな変化はありません。
 次に、全国個人視聴率調査の結果について報告します。
 調査は6月6日月曜日から12日日曜日までの1週間、全国の7歳以上3,600人を対象に、配付回収法による24時間時刻目盛り日記式(個人単位)で実施しました。有効数は2,554人、有効率は70.9%でした。
 総合テレビでよく見られている番組は、大河ドラマ「江〜姫たちの戦国〜」(15.9%)、連続テレビ小説「おひさま」(15.5%※)、「NHKニュース7」(13.0%※)などです(※は各曜日の中で最も視聴率が高い曜日の数値)。
 朝の「連続テレビ小説」の視聴率について推移を見ると、総合テレビ・BSプレミアムそれぞれの放送の単純合計で、前年同期の21.6%から今回は24.0%に上昇し、総合テレビ本放送のみでも、前年同期の12.4%から今回は14.9%に上昇しています。朝の5分ごとの視聴率(平日平均)を見ると、連続テレビ小説「おひさま」から「あさイチ」と続く朝8時台の番組の視聴が前年よりも大幅に増えています。
 土日午前の新番組の視聴状況については、土曜日の「週刊ニュース深読み」の視聴率が5.5%と、前年の同時間帯の番組(3.9%)よりも上がっています。また、土曜午前の接触者率については、27.9%と前年(24.6%)よりも上がっています。
 夜間のニュース・報道番組では、「NHKニュース7」が12.0%(前年同時間帯12.2%※1)、「クローズアップ現代」が8.3%(前年同時間帯7.4%※2)、「ニュースウオッチ9」が6.5%(前年同時間帯6.6%)、「Bizスポ」が0.8%(前年同時間帯0.8%※3)と、前年同時間帯と比べて、おおむね変わりありません。(※1は月・水〜日平均、※2は月・水・木平均、※3は月〜木平均)
 夜の8時台・10時台の番組の視聴率は、60代・70歳以上の視聴が高くなっています。夜8時台では、「ためしてガッテン」の全年層の視聴率が10.3%で、前年(7.4%)よりも上がっています。夜10時台では、火曜日のドラマ10「下流の宴」が3.6%で、前年の同時間帯の番組(2.1%)よりも上がっていますが、月曜日の「ディープピープル」が1.7%と、前年(3.3%)よりも下がっています。
 全国接触者率調査とは別に、この全国個人視聴率調査からも接触者率を出しています。本調査による総合テレビ夜間(午後6:00〜深夜0:00)の接触者率は49.1%で、W杯サッカーがあった前年(52.1%)と比べて下がっています。また、総合テレビの週間接触者率の推移は57.9%で、長期的に漸減傾向にあります。
 総合テレビの週間接触者率について、男女年層別に見ると、男女ともに40代を境に接触者率に差が見られ、40代以下の接触者率の向上が課題です。
 個人視聴率調査の最後に、教育テレビ、衛星放送、ラジオの概要について報告します。
 教育テレビは、週間接触者率が27.1%で、前年同期(26.2%)とあまり変わりませんでした。朝夕のアニメ・子ども番組は、よく見られています。衛星放送の受信者は50.8%で、初めて半数を超えました。BS1では、プロ野球などスポーツ中継が、BSプレミアムでは「おひさま」、「トンイ」などがよく見られています。ラジオでは、朝6時台・7時台の番組がよく聞かれています。NHK第1の週間接触者率は18.1%で、前年と変わりませんでした。
 続いて、放送評価調査の結果について報告します。
 放送評価調査は、NHKの放送に対する視聴者の評価を把握するためのもので、2007(平成19)年から年4回実施しています。今回は、6月10日金曜日から12日日曜日までの3日間、電話法(RDD追跡法)により、全国の20歳以上の男女2,058人を対象に実施し、1,300人(63.2%)から回答を得ました。
 調査では、全体評価として「信頼」、「満足」、「親しみ」、「独自性」、「社会貢献」の5項目、側面別評価として「正確・公平」、「生命・財産を守る」、「娯楽性」、「知識・教養」、「実用性」、「地域への貢献」、「文化の継承・発展」、「福祉」、「教育」、「国際理解」の10項目を掲げ、それぞれについて1点から5点で回答してもらいます。結果は、4点以上の肯定的評価があった回答の率で表わします。
 今回、全体評価では、「信頼」が65%、「社会貢献」が68%と高くなっています。側面別評価では、「生命・財産を守る」が73%、「知識・教養」が69%と高くなっています。
 年層別全体評価を見ると、50代〜70歳以上の評価が高い傾向にあります。また、40代では「社会貢献」が64%と、前年の54%より高い評価となっています。
 年層別側面別評価は、年層別全体評価と同様に、50代〜70歳以上の評価が高い傾向にあります。
 地方別全体評価については、いずれの地域においても同じような評価となっていますが、北海道・東北の「親しみ」が44%と前年平均(54%)と比べて、下がっています。
 地方別側面別評価については、いずれの地域においても同じような評価となっていますが、中国・四国・九州の「国際理解」(今回46%、前年平均54%)、「教育」(今回45%、前年平均55%)、「福祉」(今回49%、前年平均59%)、「実用性」(今回53%、前年平均62%)、と下がっています。断定的に言うことはできませんが、東日本大震災の被災地から遠い地域のため、放送が震災報道中心になったことでサービスに多様性を欠いたように感じられたということもあるかもしれません。
 全体評価の「信頼」、「満足」、「親しみ」の評価の推移を見ると、いずれも2009年度より上昇傾向にあり、「満足」、「親しみ」は過去最高値となっています。
 最後に、大震災後のNHKの放送全体への評価については、「あまり、変わらない」が全体の63%となっていますが、このような調査においては、よく見られる傾向です。また、「評価が下がった」が4%だった一方で、「評価が上がった」が28%を占めています。

(大西理事)  放送外リーチが上がっているということですが、IPTVでの番組配信は下がっています。一方、NHKホームページへの接触は横ばいとなっていますが、これについてどういう分析をしていますか。
(放送文化研究所)  専門家からすると、これは統計的に有意な差と認められるものではないとのことです。その変化に一喜一憂するようなものではありません。
(副会長)  衛星放送の受信者が50.8%とのことですが、3つあった放送波を2波化したことによる影響はなかったということですか。
(放送文化研究所)  50.8%という数字は、「衛星放送を見ている」という回答者の割合ではなく、衛星放送が受信可能な回答者の割合です。ただ、今回、衛星放送の接触者率について見ると、3波から2波になっても、変わらずに見られているという状況です。BS1、BSプレミアムの目玉となる番組についても、よく見られており、堅調な滑り出しを見せています。
(大西理事)  今は地上波と衛星放送を合わせたテレビ4波それぞれの性格を明確にして、全体で接触者率を向上させようとしていますので、総合テレビの接触者率だけを切り出して見ていくということは変えていかなければならないのではないでしょうか。
(放送文化研究所)  総合テレビは他の放送波に比べて、視聴されるボリュームが圧倒的に大きいため、視聴者の動向を調査していくうえで、今でも最重要であると考え、従来同様の調査を行っています。
(会 長)  この結果について、番組を作る側としてはどのように見ますか。
(新山理事)  40代の全体リーチは今回71%となっていますが、過去の全体リーチは分かりますか。
(放送文化研究所)  前年の6月が67%、同じく11月が70%となっています。
(新山理事)  いきなり若年層の支持を獲得することは、放送現場としても難しい問題です。やはり高齢層の支持を確実に維持することも大切だと思います。また、40代、50代の方に、もう少し見ていただけるようにしたいと考えます。年層別リーチについては過去のデータも併せて提出してほしいと思います。
(冷水理事)  放送外リーチの中で見ると、比率としては低いのですが、インターネット系の伸び率が上がっています。インターネット全体で、2007年11月では3.4%だったリーチが、今回9.2%まで伸びていることに注目すべきだと思います。また、放送は視聴しないけれども、インターネットのみで接触するという10〜30代のリーチがかなり無視できないほど伸びてきていますので、これらをしっかり取り込んでいかなければならないと思います。
(今井理事)  総合テレビの週間接触者率(男女年層別)の推移を見ると、20〜40代の女性が、10年後に30〜50代になったときに接触者率が下がっており、男性も20代・40代が10年後に30代・50代になると女性と同じように接触者率が下がっています。しかし、男性の30代が10年後に40代になると接触者率が上がっていますが、これについて、どのように分析していますか。
(放送文化研究所)  男性の30代から40代への変化は、どのような要因があるのかはっきりとは分かりません。ただ、大河ドラマ「江」が、40代に支持の広がりを見せている傾向があります。
(副会長)  金曜日夜間の地域放送番組はどのような状況になっていますか。
(放送文化研究所)  金曜日夜間の地域放送時間帯の接触者率は6.2%となっています。
(永井技師長)  やはり、調査の結果、接触者率が有意に伸びているところについて、その要因を分析することが必要なのではないでしょうか。
(放送文化研究所)  そのとおりだと思います。例えば今回、20代・30代でインターネットを通じたリーチが高くなったことは、これらの層の支持を獲得するのに有効な手段がはっきり分かったと言えますので、よかったのではないかと思います。
(塚田理事)  携帯端末についても、スマートフォンなどではいろいろなサービスが展開されていますから、これらについても、今後の若い世代を取り込むための有効なツールになるのではないかと感じています。そのあたりはどう分析していますか。
(放送文化研究所)  今回の調査では、そこまでは分析できませんので、もう少しそれに特化した調査を、現場のニーズに応じて、行っていきたいと思います。
(会 長)  これらの調査は、番組を開発・編成していくうえで、放送現場のニーズに応えて活用できるものになっているのでしょうか。
(放送文化研究所)  全国個人視聴率調査は、40年間継続しています。それに2007年から全国接触者率調査と放送評価調査という2つの調査が加わりました。いずれも放送現場の意向を加味しながら行っています。さらに、放送現場からの要請に応じ、現状のデータをすぐに番組の改善に反映できる調査、中長期的な傾向を調べて編成戦略に反映できる調査、全国個人視聴率調査のように定型で定点観測していくような調査など、さまざまな調査がありますので、それらを仕分けしながら、放送現場で活用してもらいたいと思います。
(会 長)  40年間も続けている調査は、そのまま継続すべきだと思いますが、例えば、放送現場が本当に必要なデータを放送文化研究所に要求して実施するような、現場のニーズに合致する調査が必要ではないかと思います。
(木田理事)  放送総局では、外部の世帯視聴率等の調査データを毎日入手して、番組のブラッシュアップや編成の見直しの参考としています。これらは、今回報告された放送文化研究所の調査とは性質が異なるものです。こうしたさまざまな調査を併用し、結果を総合的に判断して、放送に反映させている状況です。
(石田理事)  地域放送局でも、地域編成の改定の際に編成局等と連携し、新番組についてのグループインタビューやアンケート調査などを実施して、番組の品質向上につなげることがあります。
(会 長)  そうした調査と放送文化研究所の調査を併せて行えば、もっと効果的なデータが得られるのではないかと思います。
(金田専務理事)  編成局の調査と放送文化研究所の調査のすみ分けについては、今後検討すべき課題があると思いますが、例えば、個別番組の視聴状況の調査などは、その目的に沿った調査方法がありますので、放送文化研究所の調査とは違った手法になると思います。
(会 長)  いずれにしても各種の調査の連携が必要ではありませんか。現在、編成している番組がどのように見られているかというデータも必要な一方で、子どもの頃に教育テレビの番組を見ていた人が、大人になったらNHKを見なくなったというような、長年の動向も見ていかなければなりません。
(放送文化研究所)  子ども向け番組を見る世代と、中高年の視聴者層の間にいる世代の接触者率が厳しい状況なのですが、その分析と対策は大きな課題だと認識しています。
(副会長)  やはりまだ、NHKに接触する層の特徴が完全には解明されていないのではないかと思います。また、インターネットなどを接触者率向上のツールとしていくという戦略をとるならば、その方向性をしっかりと考えていかなければならないと思います。「仕事ハッケン伝」や、「ディープピープル」、「タイムスクープハンター」などの新しいスタイルの番組は放送しているものの、必ずしも視聴者層の広がりが見受けられません。そこを広げていくものは何なのかを探していかなければならないと思います。
(会 長)  視聴者のニーズを番組に生かすため、どのようなデータを取るかということが大切です。編成局などで独自に調査することも必要ですが、放送現場が必要とするデータを放送文化研究所に伝えて、連携して調査を行うことも重要です。それによって放送文化研究所も現在の調査のあり方でよいのかということが分かるのではないでしょうか。今回の調査についても、いろいろな議論がありましたが、接触者率の目標達成に向けてどのようなデータが必要なのか、総合的に検討してください。
(木田理事)  検討していきます。

(3)国際放送番組審議会委員の委嘱について
(今井理事)
 国際放送番組審議会委員の委嘱について報告します。
 内海善雄氏(前国際電気通信連合(ITU)事務総局長)に、平成23年7月1日付で新規委嘱しました。
 本件については、第1146回経営委員会(平成23年6月28日)当日に内海氏の承諾が得られたため、理事会運営規程第8条の規定に基づき、直ちに会長の了承を経た後、経営委員会の同意を得ました。同条第2項の規定により本理事会に報告するものです。



以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成23年 7月19日
                     会 長  松 本 正 之

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