日本放送協会 理事会議事録  (平成23年 4月26日開催分)
平成23年 5月27日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成23年 4月26日(火) 午前9時00分〜10時15分

<出   席   者>
 松本会長、小野副会長、永井技師長、金田専務理事、大西理事、
 今井理事、塚田理事、吉国理事、冷水理事、新山理事、石田理事、
 木田理事

 井原監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 松本会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 審議事項
(1)平成22年度第4四半期業務報告
(2)日本放送協会定款等の変更について

2 報告事項
(1)考査報告
(2)平成22年度事業業務実施結果
(3)平成22年度契約・収納活動結果
(4)平成22年度収支決算の速報
(5)地方放送番組審議会委員の委嘱について
(6)放送技術審議会委員の再委嘱について
(7)平成22年度本部監査実施状況


議事経過

1 審議事項
(1)平成22年度第4四半期業務報告
(石田理事)
 放送法第22条の2第3項に定める会長の職務の執行状況を「平成22(2010)年度第4四半期業務報告」のとおり取りまとめましたので、審議をお願いします。
 今回の報告は、第4四半期(1〜3月)の報告にとどまらず22年度1年間の業務の総括とするとともに、第4四半期の取り組みについては、東日本大震災へのNHKの対応を取りまとめました。なお、財務諸表については、放送法に基づき6月に「平成22年度業務報告書」とともに総務大臣に提出することにしており、現在、取りまとめの作業中であることから、今回の報告では取り上げていません。
 最初に、22年度事業運営の総括と経営2目標の達成状況について説明します。
 「平成21〜23年度 NHK経営計画」の2年目となる22年度は、「NHKへの接触者率3年後80%」と「受信料の支払率3年後75%、5年後78%」という経営2目標の達成を確実なものとするための重要な1年と位置づけ、取り組みを強化してきました。こうした中、年度末の3月11日に未曽有の大地震が発生し、文字どおりNHKの総力を挙げて対応にあたっています。この東日本大震災は、災害時における公共放送の使命の重さ、新しいメディア環境下での情報の伝え方などについて、あらためて考えさせられるものとなりました。
 経営2目標のうち「接触者率の向上」については、総合テレビ朝の「連続テレビ小説」の放送時刻を午前8時からとするなど、大幅な番組改定を実施したほか、NHKスペシャル「日本と朝鮮半島」のシリーズなど多彩な大型番組を放送しました。大河ドラマ「龍馬伝」やスペシャルドラマ「坂の上の雲」第2部などが、視聴者から高い評価を得ました。また、22年度は、参議院選挙、沖縄県の米軍普天間基地移設問題、宮崎県の口てい疫の問題など、地域を巻き込んだ大きな課題や問題が相次ぎ、本部と地域放送局が緊密に連携して報道を展開しました。その結果、接触者率は、11月の調査で、放送と放送外も含む全体リーチが74.9%となりました。全体リーチは、前年同月と比べ若干低下しましたが、統計上の有意差はありませんでした。放送外リーチは、録画再生、NHKオンライン、動画配信サイトなどでの接触が増えたことから、21.2%となり、前年同月に比べて3ポイント増加しました。
 次に、「受信料支払率の向上」については、22年度の目標を73.4%と設定し、契約・収納活動の強化に努めました。その結果、22年度の支払率は推計で73.6%となり、目標を達成しました。契約総数の増加は、目標の35万件を大きく上回る46万件でした。
 一方、完全デジタル化に向けては、22年末までに、総務省が公表したロードマップで示された2,070局すべての中継放送局の開局を完了しました。しかし、今回の大震災により中継放送局や共同受信設備に被害が出るなどの影響が出ています。なお、政府は、岩手、宮城、福島の3県について、アナログ放送終了の延期を決めました。今後も、震災の影響を十分に踏まえながら対応していきます。
 3か年経営計画の最終年度となる23年度は、経営目標の達成に向けた仕上げの取り組みに加え、震災によって明確になってきたさまざまな課題に、しっかりと対応していくことが求められます。
 続いて、第4四半期の業務報告として、東日本大震災に対するこの1か月の対応について説明します。
 まず、地震発生当初の報道についてです。NHKでは、地震発生直後にテレビ・ラジオの全8波(総合テレビ、教育テレビ、衛星ハイビジョン、衛星第1、衛星第2、ラジオ第1、ラジオ第2、FM放送)で緊急地震速報を伝えました。発生から2分後には、地震と津波に関するニュースを全8波で開始し、午後6時台には、教育テレビとFM放送で、安否情報放送を始めました。総合テレビ・衛星第1・ラジオ第1では、地震発生から8日間、24時間体制で震災報道を続けました。総合テレビで放送した震災関連のニュースや番組は、1か月でおよそ572時間に達しました。
 安否情報については、地震発生から1週間放送し、放送時間はおよそ57時間、紹介した情報はおよそ1万件に上りました。放送だけでなく、データ放送でも情報を伝えました。また、障害のある方々に向けた放送については、地震関連のニュースにできる限り字幕を付けて放送しました。地震発生から1週間で、通常の2倍にあたるおよそ41時間、字幕付きの放送を実施しました。また、教育テレビの「手話ニュース」の放送枠の拡大なども行いました。
 3月19日以降、定時番組を段階的に再開した後も、「NHKニュース7」や「ニュースウオッチ9」などの放送枠を拡大して、震災関連情報を伝えました。また、それまでの取材をせき止める形で「NHKスペシャル」を毎週放送したほか、「クローズアップ現代」も時間を拡大して放送しました。さまざまな番組を通じて、震災報道や被災地に向けた情報発信を今後も続けていきます。
 国際放送でも、地震発生直後からほぼすべての時間帯で震災関連のニュースを放送しました。世界の主要な放送局が、外国人向け国際放送のNHKワールドTVを引用したり、その映像を活用したりして放送し、NHKの報道が海外からも高い評価を得ました。
 インターネットの活用については、被災地などでテレビを見られない方々に災害情報を伝えるため、今回初めて、総合テレビのライブストリーミング(放送と同時のインターネット配信)を実施しました。「ユーストリーム」、「ニコニコ生放送」、「ヤフー」といった動画配信事業者を通じて、総合テレビや教育テレビの放送がインターネットでも視聴できるようにしました。インターネット配信を通じた視聴は、3月末までの推計で、のべ3,630万回に上りました。
 被災地での地域放送について、仙台放送局では、地震の揺れで放送会館の一部が被害を受け、水道・ガスの供給が止まるなど、厳しい状況となりましたが、地域放送の枠を大幅に拡大し、東北ブロックや宮城県域に向けて被害の状況や避難所情報、生活情報などの情報を伝え続けました。福島放送局では、地震や津波の被害状況に加え、東京電力福島第一原発の状況や各地の放射線量などを詳しく伝えたほか、県外に避難している方も多いことから、県域向けのラジオ放送をインターネットのオンデマンドサービスで提供し、県外からも聴けるようにしました。
 今回の大震災の報道に対する視聴者からの反響は、3月末までにおよそ6万2,000件寄せられました。「不安をあおることなく、公正に報道している」、「原発事故に関する解説委員の説明がわかりやすい」といった意見がありました。また、ライブストリーミングを利用した方からは「停電でテレビが見られない中、インターネット経由で情報が提供され役立った」など今回の対応を評価する意見が寄せられました。
 今回の経験を基に、災害時に公共放送が果たすべき役割の重さをあらためて認識し、緊急報道に新しいメディアをどう活用していけばよいのかなどの課題について、しっかりと検証していきます。
 以上の報告内容が決定されれば、本日開催の第1142回経営委員会に報告事項として提出します。

(会 長)  原案どおり決定し、本日の経営委員会に報告します。

(2)日本放送協会定款等の変更について
(石田理事)
 平成22年11月26日に成立した「放送法等の一部を改正する法律」により、NHKに関係する放送法の規定が改正されたことに伴い、「日本放送協会定款」、「日本放送協会放送受信規約」、および「放送法第9条第2項第2号の業務の基準」の一部を変更することとしたいので、審議をお願いします。いずれも放送法の規定により、変更には総務大臣の認可が必要なため、一括して提出するものです。
 まず、「日本放送協会定款」(以下、「定款」)の変更について説明します。放送法改正を反映した定款の変更点は、4点あります。
 1点目は、「定義・用語の変更」です。改正された放送法では、さまざまな語句の定義や用法が変わりました。例えば、従来「放送」は無線による送信を意味していましたが、改正放送法では、意味が拡大され有線・無線を問わないものとなり、そのうち、これまでNHKや民放が行ってきたような無線による放送を「基幹放送」と呼ぶことになりました。これを受けて、定款の第3条の「国内放送」という語句を、「国内基幹放送」と変更するなど、定款の用語を放送法に合わせて変更します。これらは、法改正でNHKの業務が変わるということではなく、逆に、法律上の用語の定義が拡大・変更されてもNHKの業務は現行のまま継続させるという趣旨を反映した措置です。
 2点目は、「放送受信契約についての“みなし規定”の追加」です。ケーブルテレビ事業者等がNHKの放送を受信してその内容に変更を加えず同時に有線で送信することを、これまで「再送信」と呼んできましたが、改正放送法では、有線によるものも「放送」となるため、これを「再放送」と呼ぶことになります。現行でも「再送信」を受信する場合は、受信契約の義務があるものと解釈されてきましたが、改正放送法では、この「再放送」もNHKの放送とみなして、受信者の受信契約義務が明確に規定されました。これを受けて、定款上でも同様に規定するものです。
 3点目は、「放送番組審議会への諮問・報告に関する新たな義務規定の追加」です。改正放送法では、個々の番組の種別(教養・教育・報道・娯楽等の区分)と、種別ごとの放送時間を放送番組審議会に報告し、公表する義務が課されることになりました。また、番組種別の基準を定める場合は放送番組審議会に諮問する義務も加わりました。これらに関する規定を定款にも追加します。
 4点目は、「法律の条文番号変更の反映」です。放送法の条文番号が、改正により大幅に変わりました。定款では、全体にわたって「放送法第○条の規定に基づき」と記載した条項がありますので、該当する条文の番号を、法に合わせて変更します。
 以上の4点の変更内容と併せて、漢字・かなの表記など若干の字句修正を加えています。
 次に、「日本放送協会放送受信規約」の変更については、定款と同様、放送法の条文番号の変更を反映させます。前文および第10条で「放送法第32条」と記載している箇所を、改正放送法に合わせて「第64条」とします。また、第13条の2において、現在では行われていない業務に関する規定が一部残っていますので、これを削除します。併せて、施行期日に関する付則を変更します。
 「放送法第9条第2項第2号の業務の基準」の変更についても、放送法の条文番号の変更を反映させます。この基準の名称そのものを「放送法第20条第2項第2号の業務の基準」とするとともに、前文でも「第9条」と記載している箇所を「第20条」とします。また、法改正により「有線テレビジョン放送法」は廃止になりましたので、該当部分を削除し、併せて、施行期日に関する部分等を変更します。
 変更実施の期日は、改正放送法の施行の日とします。今のところ、6月末日になると見込んでいます。ただし、改正放送法の施行は段階的に設定されており、「放送番組審議会への諮問・報告に関する新たな義務規定の追加」は、すでに3月31日に施行されています。そのため、これに対応して発生する業務については、定款変更の施行前でも実施できる旨の規定を、定款の附則に盛り込んでいます。具体的には、5月16日の中央放送番組審議会に放送番組の種別の基準を諮問する予定にしていますので、それを遺漏なく取り進めるための措置です。
 以上の内容が決定されれば、本日開催の第1142回経営委員会に議決事項として提出し、経営委員会の議決を経たうえで、総務大臣に変更の認可を申請します。

(会 長)  放送番組の種別や種別ごとの放送時間等に関する義務規定は、民放でも同様に実施されるのですね。
 原案どおり了承し、本日の経営委員会に諮ります。

2 報告事項
(1)考査報告
(考査室)
 3月29日から4月20日までの期間に、ニュースと番組について考査した内容を報告します。
 この期間中、東京電力福島第一原発事故関連、および東日本大震災からの復興関連のニュース・番組や、平成23年度新番組などを中心に、ニュースは17項目、番組は52本(事前考査34本、放送考査18本)を考査しました。考査の結果、これらの一連のニュースや番組は、放送法や国内番組基準等に照らし、妥当であったと判断します。
 まず、ニュースの考査結果について報告します。
 最初に、福島第一原発事故関連のニュースについてです。4月12日、原子力安全・保安院が、国際的な基準に基づく今回の事故の評価を最悪の“レベル7”に引き上げました。この件について、当日朝の「NHKニュース おはよう日本」では、NHKが独自に取材した情報により他社に先駆けて伝えていました。独自情報による報道という点では、4月8日の「NHKニュース おはよう日本」でも、独自に入手した資料により、地震当日の夜までに同原発1号機の原子炉の水位や圧力が下がり、核燃料が露出寸前になっていた事実がわかったことを伝えていました。これについては、報道局科学文化部の記者が解説し、これまで津波により発生したとされていた今回の事故が、大地震の揺れによって原子炉のどこかに亀裂が生じて起こった可能性を示すもので、国が定めた原発の耐震指針の見直しが必要になることを指摘していました。原発事故に関連しては、このほか、4月15日に、東京電力が、避難対象となった住民への本格的な損害賠償の前に仮払金の支払いを決定したこと、また、同17日に、6〜9か月を目標に原発を安定させるなどとした工程表が発表されたことなどについても、詳細に伝えていました。
 原発事故関連での食の安全をめぐっては、原発事故の影響が広がる一方で、一部の農産物については出荷制限が解除されるなどの動きが出ています。こうした動きについて、ニュースでは、関係者の反応を交えながら随時伝えています。しかし、それでもなお、不安を抱いている視聴者は多く、モニターから寄せられた意見の中にも、「現時点でどの品目の出荷制限が解除され、どれがまだ解除されていないのか、わからなくなることがある」というものが多数ありました。品目と産地について、その時点での「制限」と「解除」についての情報を定期的に整理して伝える工夫が必要ではないかと考えます。
 震災関連では、4月7日以降、震度6強・6弱の大きな余震が相次ぎ、復興に向けて動き始めた被災地を再び揺さぶっています。「NHKニュース7」では、なぜ大きな余震が頻発するのか、それはいつまで続くのかなどについて、わかりやすく解説していました。さらに、これらの余震によって、東北電力女川原発や青森県六ケ所村の核燃料再処理工場など東北地方各地の原子力施設で外部電源が相次いで失われ、非常用の発電機が稼働していることも伝えて、安全確保の要である電源確保のぜい弱性があらためて浮き彫りになったことを指摘していました。
 震災発生から1か月を経て、復興への動きが本格化し始めました。4月14日に開催された政府の復興構想会議の初会合に関するニュースでは、会議のメンバーがそれぞれどのような考えを持っているのか、インタビューにより紹介するとともに、復興に向けては財源の確保や住民の協力が課題となることを指摘していました。復興に向けた国の動きや施策については、これまで必ずしも十分に伝えられていなかったように感じられますので、今後は、復興策の具体的な内容について随時伝えてもらいたいと考えます。
 その他のニュース2項目の考査結果について報告します。4月10日に投開票が行われた統一地方選挙の前半戦の開票速報については、総合テレビで午後7時55分から翌日午前2時15分まで、途中に震災関連のニュースをはさみながら全国放送で伝えたほか、BS1、ラジオ第1でも放送するとともに、インターネットでも伝えていました。今回の開票速報では、各地の選挙での当選確実や全国の大勢に関する情報を、極めて正確かつ迅速に伝えていました。大相撲の八百長問題については、4月1日に日本相撲協会が、八百長に関与したと判断された力士や親方23人に対し、引退勧告や2年間の出場停止の処分を下しましたが、このニュースは、震災関連報道の中で、いかにもうずもれてしまった感がありました。八百長問題がどこまで解明されたのか、再発防止に向けてどのような課題があるのかなどについて、もう少し掘り下げて伝えてもらいたかったと考えます。
 続いて、23年度の各放送波の新番組の考査結果について報告します。
 総合テレビでは、4月4日、連続テレビ小説「おひさま」がスタートしました。昭和36年に「連続テレビ小説」の第1作を放送してからちょうど50年、84作目で、戦争をはさんで昭和の時代を生き抜いた女性のさわやかな一代記という内容です。その第1週を考査しました。主人公・陽子の幼いころを演じた子役の明るく生き生きとした演技が良く、好スタートを切ったと言えると思います。モニターの満足度も、近年の「連続テレビ小説」では、22年度前半期の「ゲゲゲの女房」に次いで高くなっています。震災後の日本社会に明るい希望をもたらすドラマになるよう期待したいと思います。
 教育テレビでは、「さかのぼり日本史」を考査しました。現代から出発し歴史を過去へとさかのぼりながら、ある時代の源流をその前の時代に求めるという手法の番組です。1年かけて聖徳太子の時代までさかのぼる予定になっており、発想が非常におもしろく、期待される番組だと思います。初回、3月29日放送の「戦後 経済大国の“漂流” 第1回 冷戦終結 日本の試練」では、歴史学者の五百旗頭真さんの解説により、現代日本の“漂流”の原点を、東西冷戦終結後の対応の遅れに求めていました。ただ、第1回では解説者の話が短く、時代状況を説明するVTRのほうが長かったため、せっかくの独自の見解が十分に伝わらなかった点がもどかしく感じられました。モニターの声の中にも同様の感想がありました。
 最後に、4月1日から、BS1とBSプレミアムの2つの放送波に再編した衛星放送の番組についてです。震災の発生を受けて、新番組の内容を十分に周知できない中でのスタートとなりましたが、全体として、フレッシュで見応えのある番組が放送されていると考えます。BS1の「地球テレビ エル・ムンド」は、毎週月曜日〜金曜日の放送で、スタジオと世界各地をインターネット中継で結び、世界の最新の文化情報を紹介する番組です。モニターからは、「テンポの良い構成で世界との一体感が得られる」という好評意見が寄せられています。同じくBS1の「SPORTS DominGo!」は、毎週日曜日に放送のスポーツ情報番組です。考査を行った4月17日の放送では、あまりなじみのないカヌー競技を取り上げ、元プロテニス選手の杉山愛さんがアスリートの立場から、カヌー選手の心理をよく引き出していました。アマチュアスポーツを含めNHKがこれまで中継放送してきた映像を有効に活用していて、個性的なスポーツ情報番組としての可能性が感じられました。これらの2番組は、定時放送に向けた試作番組の放送時にも考査を行いましたが、その時と比べて内容・演出等が格段にブラッシュアップされているという印象を受けました。BSプレミアムで毎週火曜日放送の「旅のチカラ」は、4月12日放送の「美の中を歩く 〜原千晶・アメリカ・アリゾナ州・ナバホ居留地〜」を考査しましたが、スケール感のある紀行番組で見応えがありました。ただ、「旅によって人は変わる」というコンセプトの下、各界の著名人が旅をする内容ですので、旅人がなぜその土地を旅するのかという動機づけを、番組の中でより明確にしてほしいと思います。

(会 長)  考査の対象とする番組は、どういう基準で選んでいるのですか。また、考査する際には、どのような体制で行っていますか。
(考査室)  考査対象番組の選定については、第一に、放送法や国内番組基準において求められている、“公正”、“正確”という点について、特に注意すべきと考えられるテーマや内容を扱っている番組を選んで考査しています。また、新番組や開発番組など、視聴者の関心が特に高く、部内的にも内容の検証を通じた品質向上が期待される番組も、優先的に選んで考査しています。考査の体制については、考査室内に、ニュースの考査を担当する報道班と、番組考査を担当する番組班を置いています。報道班では、24時間、ニュースをウオッチングしています。番組班では、制作現場とも意思疎通を図りながら考査しています。2・3回にわたってそれぞれの班内あるいは考査室内で討議したうえで、最終的な考査報告をまとめています。

(2)平成22年度事業業務実施結果
(視聴者事業局)
 平成22年度の事業業務実施結果について報告します。
 公開番組やイベントを全国で実施する際には、その成果・効果として、イベントを通じて公共放送への理解がどれだけ進んだかについて、「NHKへの接触機会(イベント実施件数・参加者数)」、「視聴者との結びつき強化(アンケートによる視聴者意向)」、「営業業績への貢献」の3つの視点から、数量的に把握しています。
 まず、「NHKへの接触機会」についてです。22年度にNHKが全国で実施したイベントとしては、教育・教養・こどもイベント(「NHK全国学校音楽コンクール」、「NHK放送体験クラブ」ほか)、公開番組・音楽芸能等(「NHKのど自慢」などの全国放送公開番組、「N響演奏会」地方公演ほか)、福祉イベント(「NHK歳末・海外たすけあい」ほか)、スポーツイベント(「NHK杯国際フィギュアスケート競技大会」ほか)、美術展・展覧会(「ドガ展」、「地球最古の恐竜展」ほか)、会館公開・展示(「渋谷DEどーも」ほか)、福祉・食料・環境キャンペーン等(「ふるさとの食にっぽんの食」、「SAVE THE FUTURE」ほか)があります。その総実施件数は2,572件、総参加者数は約1,457万人で、それぞれ前年(21年)度より微減していますが、ほとんど変化はありませんでした。このうち本部以外の地域で実施した件数は2,210件、その参加者数は約1,091万人となっています。全国の総実施件数を365日で割ると、平均で毎日およそ7件のイベントを、全国のどこかで開催してきた計算になります。
 第2点の「視聴者との結びつき」については、イベント来場者・参加者の意向や意識の変化、参加傾向等を測るため、22年度は、全国各地域の270件のイベントでアンケート調査を実施し、9万8,228人の参加者から回答を得ました。アンケートの項目は、「イベントの満足度」、「NHKの事業活動への理解度」、「受信料に対する考え方」、および「NHKのイベントへの参加回数」です。
 その結果、「満足」および「やや満足」という回答の率で示す「イベントの満足度」は、83.1%(前年度83.0%)で、目標とする満足度8割を達成しました。満足度は、毎年徐々に向上しています。特に、障害者とアーティストとがコラボレーションした作品を展示する福祉イベント「NHKハート展」では、開催地によっては約95%の非常に高い満足度を得られました。その他、子ども・ファミリー層向けの公開番組・イベントや、質の高い音楽イベントで、高い満足度が得られています。
 「NHKに対する理解度」については、イベントへの参加を通じて「NHKへの理解が深まった」とする回答が年々増えてきましたが、今回は71.9%と、前年度の68.3%をさらに上回り、7割を超えました。特に、NHKの番組作りに接することができる公開番組やイベント、番組の出演者・制作担当者が参加者に直接語りかける講演会が、NHKに対する理解促進に大きく寄与しています。
 「受信料に対する考え方」については、「受信料を支払う意義があると思った」という回答が65.5%となりました。これも前年度の64.1%を上回り、年々向上しています。特に、音楽芸能系の公開番組では、70.2%と7割を超えました。一流のゲストが出演する地域実施の公開番組は、受信料支払いに向けた意識を高めることに寄与していると言えます。一方で、若者を対象とするイベントでは、「支払う意義がある」という回答が45.9%しかありませんでした。これらのイベントでも、満足度は高い水準にあり、若者向けイベントの満足度と受信料支払いへの意識にかい離が見られます。若い世代では、受信料支払いの意義について「わからない」とした回答が多く、こうした層を対象に、受信料支払いへの理解を高めていただく取り組みが必要と考えます。
 「NHKのイベントへの参加回数」については、NHKのイベントに初めて参加したという方の割合が57.0%でした。特に地域では、初めて参加した方が約63%となっており、イベントを通じたNHKへの接触の拡大に寄与しています。また、若い世代向けに開発したイベントや、地域で実施した若い世代向けのイベントでは、74.9%が初めての参加者で、若い世代のNHKへの接触を拡大しています。
 なお、アンケートを通じて参加者から寄せられた具体的な意見・要望を基に、イベントの開催時間やお客様への対応のしかたなどの改善も進めました。
 第3点の「営業業績への貢献」については、営業部門と連携しながら、イベントをきっかけとした受信料支払率の向上に取り組み、目標を上回る放送受信契約の取次につなげました。受信料をお支払いいただいている方に限定した観覧募集は、22年度は203本実施しました。
 最後に、平成23年度事業業務については、22年度と同様、「地域貢献」、「支持層拡大」、「文化振興・社会貢献」、「地上・BSデジタル周知広報」、「営業貢献」の5点を重点事項として取り組んでいきます。加えて、東日本大震災の被災地で、人々を力づけ復興に資するようなイベントを開催することも、実施の時期を見極めながら検討したいと考えています。

(冷水理事)  NHKのイベントに初めて参加した方の割合が57%というのは意外に高い数値だと思いました。ただ、この割合は、地域で実施したイベントの方が、本部での実施分よりもかなり高いようですが、これはどういう理由によるものですか。また、この数値は過去の年度と比較して上昇しているのでしょうか。
(視聴者事業局)  本部でのイベントは、NHKホールとNHKふれあいホールという、決まった会場で実施することが多いこともあり、リピーターの方が比較的に多い傾向があります。一方、地域で実施するイベントは、さまざまな土地に出かけ、そのたびに異なる会場で実施することから、ずっとNHKを支持していてもイベントには初めて参加するという方が多くなります。初めて参加した方の割合を前年度と比較すると、22年度は57%で、21年度は60%ありましたので、必ずしもずっと上昇し続けているわけではありません。例年、ほぼ同程度の割合で、初めての参加者とリピーターの方とのバランスが取れていると考えています。
(大西理事)  東日本大震災からの復興に向けたイベントについては、被災地の現状を考えると、まだまだ心情的にも生活環境の面でも、イベントを楽しむという状況ではないと思われます。いつ開催できるかはわかりませんが、現地の放送局としっかり連絡を取り合いながら実施時期を見極め、被災された方々を勇気づけられるような、NHKらしいイベントを企画してください。
(視聴者事業局)  企画については、さまざまな種類のイベントが考えられますが、実施時期や内容は、被災された方々の心情をしっかりと理解することに努めたうえで、慎重に取り組んでいきたいと考えています。
(新山理事)  これらのイベント全体にかかった経費はどのくらいの規模になりますか。
(視聴者事業局)  視聴者事業局の予算と、展覧会等での入場料収入や外部団体からの協賛金などを合わせると、概算で75億円程度の規模になります。
(新山理事)  公開番組など放送と連動したイベントの経費処理については、NHKの経理項目上、番組制作経費と公開するために要する経費の仕分けがわかりづらい部分があります。それぞれの経費をきちんと明確に整理したほうがよいと思います。
(塚田理事)  それについては、これまでにさまざまな経緯を経て現行のような仕分けになっていますが、部内においても外部に対してもよりわかりやすく整理することが課題だと考えています。視聴者総局と放送総局、そして経理局を中心に議論していきたいと思います。
(石田理事)  放送番組とイベントとが密接に連動している中で、実際に整理が難しい点もありますが、外部に向けてよりわかりやすく説明する必要もあります。どういう整理のしかたがよいのか、経理担当としても関係部局と連携して検討していきたいと思います。
(会 長)  それでは、指摘のあった点について関係部局で検討するようにお願いします。

(3)平成22年度契約・収納活動結果
(営業局)
 平成22年度の契約・収納活動の結果について報告します。
 まず、放送受信契約総数の増加状況です。22年度は、委託契約収納員の新しい体制の定着や、契約・収納業務の法人委託の拡大など、契約取次や支払い再開へのいっそうのパワーシフトに取り組んだ結果、年度累計の契約総数増加は前年度を23.0万件上回る45.8万件(年間計画に対する進捗率130.8%)となり、22年度事業計画の35万件を達成しました。この契約総数増加件数は、平成元年以降では最高の業績です。一方、障害者免除や公的扶助受給世帯の増加による有料契約から全額免除への変更は、年度累計で17.9万件となり、前年度(18.1万件)と同水準でした。
 衛星契約増加については、完全デジタル化に向けた準備による衛星受信設備普及の高い伸びに連動して、地上契約から衛星契約への契約変更対策や、移動世帯の衛星放送受信の確認に年度を通じて取り組んだ結果、前年度を18.2万件上回る87.5万件(年間計画に対する進捗率134.6%)となり、事業計画の65万件を達成しました。
 22年度の当年度収納額は、前年度と比較して147.6億円増収の6,531億円となり、翌年度の回収予定額と合わせた受信料収入は、6,598億円となる見通しです。いずれも過去最高の金額です。前年度受信料の回収額実績は、年度累計で65.7億円となり、前年度を3.7億円、当初計画額を6.8億円上回りました。また、前々年度以前受信料の回収額実績は年度累計で43.2億円となり、前年度を19.1億円上回りました。
 22年度末の支払い拒否・保留数は、19.9万件となり、最も多かった時期から108.1万件削減しました。また、未収数については、22年度に26.3万件削減し、事業計画の20万件削減を達成しました。その結果、22年度末の現在数は204.3万件となりました。
 最後に、口座・クレジットカード支払いの増加数は、前年度を17.3万件上回る72.4万件となり、事業計画の40万件を達成しました。
 以上の内容は、本日開催の第1142回経営委員会に報告します。

(会 長)  この報告は、東日本大震災等の影響による減収も含んだ結果ですか。
(営業局)  まだ災害による受信料免除の総額が確定していませんが、その3月分として見込まれる免除額に、若干の営業活動の低下による影響も加えた減収を見込んで、取りまとめた結果です。

(4)平成22年度収支決算の速報
(経理局)
 平成22年度決算について、事業収支の速報を報告します(注)。
 本件は、本日開催の第1142回経営委員会に報告事項として提出します。

 注: 平成22年度決算については、確定値を財務諸表として取りまとめ、6月に理事会の審議・決定、経営委員会の議決を経て、総務大臣に提出することにしていますので、本報告の議事内容は割愛します。

(5)地方放送番組審議会委員の委嘱について
(木田理事)
 地方放送番組審議会委員の委嘱について報告します。
 中国地方で木原康樹氏(広島大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科学・教授)に、九州地方で内柴正人氏(九州看護福祉大学客員教授)に、北海道地方で佐々木政文氏(北海道新聞社論説委員)に、および四国地方で加藤令史氏(愛媛新聞社編集局長)に、いずれも平成23年5月1日付で新規委嘱します。また、東北地方で佐藤瀏氏(岩手大学名誉教授)に、同日付で再委嘱します。
 なお、中国地方の岡田光正委員(放送大学教授)、九州地方の小山敬子委員(ピュア・サポートグループ代表)、および北海道地方の山田英和委員(株式会社とかちアドベンチャークラブ代表取締役社長)は、いずれも任期満了により4月30日付で退任されます。


(6)放送技術審議会委員の再委嘱について
(永井技師長)
 放送技術審議会委員の再委嘱について報告します。

 野原佐和子氏(株式会社イプシ・マーケティング研究所代表取締役社長)に、平成23年5月1日付で再委嘱します。

(7)平成22年度本部監査実施状況
(内部監査室)
 平成22年度に本部各部局および海外総支局で実施した、内部監査の実施状況について報告します。
 まず、本部各部局の監査実施状況です。
 平成22年11月から23年2月末までの期間に、本部で内部監査を実施したのは、放送総局内6部局とそれ以外の9部局の計15部局です。
 監査の項目としては、業務プロセスや業務運営状況についての業務監査と、適正経理についての監査を実施しました。その結果、業務プロセス監査では、いくつかの部局で「重要度の高い発見事項」を指摘し、改善を提案しましたが、それ以外については、業務プロセスにおけるリスクの管理状況は適正と判断しました。適正経理については、これら15部局に対する「指示事項」はなく、適正に処理されていました。
 続いて、海外総支局の監査実施状況です。
 22年10月から23年2月末までの期間に、海外総局1か所、海外支局7か所の計8か所で内部監査を実施しました。
 監査項目については、本部各部局、各放送局と同様、業務プロセスや業務運営状況についての業務監査と適正経理についての監査を実施しました。その結果、ニュース・番組の取材・制作、総支局スタッフ管理、外部パワー、情報セキュリティー、総支局運営の各業務プロセス、および経理処理状況は、いずれも適正でした。

(会 長)  「重要度が高い発見事項」を指摘した部局の対応は、どうなっていますか。
(内部監査室)  それらの部局では、提案した改善が進んでいます。

以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成23年 5月24日
                     会 長  松 本 正 之

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