日本放送協会 理事会議事録 (平成22年 7月27日開催分)
平成22年 8月27日(金)公表
<会 議 の 名 称>
理 事 会
<会 議 日 時>
平成22年 7月27日(火) 午前9時00分〜9時20分
<出 席 者>
福地会長、今井副会長、永井技師長、金田専務理事、日向専務理事、
溝口理事、八幡理事、大西理事、今井理事、黒木理事、塚田理事、
吉国理事
井原監査委員
<場 所>
放送センター 役員会議室
<議 事>
福地会長が開会を宣言し、議事に入った。
付議事項
1 審議事項
(1)平成22年度第1四半期業務報告
2 報告事項
(1)考査報告
(2)ITに関する規程の改正について
(3)地方放送番組審議会委員の委嘱と任期途中の退任について
議事経過
1 審議事項
(1)平成22年度第1四半期業務報告
(経営企画局)
放送法第22条の2第3項に定める会長の職務の執行状況を、「平成22(2010)年度第1四半期業務報告」のとおり取りまとめましたので、審議をお願いします。
報告内容のうち、「今期の概況」、「収支の概況」について説明します。
まず、経営2目標の達成に向けた取り組みの状況を中心にまとめた、「今期の概況」です。
「平成21〜23年度 NHK経営計画」は、この4月から2年目に入りました。初年度の21年度は、「接触者率3年後80%」、「受信料支払率3年後75%、5年後78%」とした経営2目標の達成に向けて、四半期業務報告を軸に、自らPDCAを回す仕組みが定着しました。22年度は、経営目標の達成を確実なものとするための重要な年と位置づけ、取り組みを加速することにしています。
接触者率の向上に向けた取り組みについては、22年度の番組改定で、総合テレビの平日朝8時台から9時台の時間帯について、女性視聴者を意識したゾーンとして大幅な刷新を図りました。その結果、この時間帯の平均世帯視聴率は、前年(21年)度同期に比べて上昇しました。ただ、日曜日の午前や平日夜11時台後半の時間帯などで視聴率が低下しています。改善に向けて、年度後半期の番組改定の検討を行うことにしています。
この4月から6月には、沖縄県の米軍普天間基地の移設問題や、家畜の伝染病である口てい疫の問題など大きなニュースが相次ぎました。鳩山首相の辞任関連のニュースでは、首相が辞意を伝えたという一報を、NHKが他の報道機関に先駆けていち早く報じました。また、6月に開幕した「2010FIFAワールドカップ」南アフリカ大会では、生中継を中心に44試合を放送しました。6月14日の「日本」対「カメルーン」戦では、ビデオリサーチ社による世帯視聴率が最高で49.1%に達し、多くの視聴者に現地の興奮を届けることができました。
6月に実施した全国接触者率調査の結果では、全体リーチが74.5%と、前年度同期に比べ低下したものの誤差の範囲内で、統計的に有意な差はありませんでした。一方、放送外リーチは20.9%と、こちらは1年前に比べて有意に上昇しました。また同月の放送評価調査では、NHKの放送に対する「親しみ」が53%と、目標の50%を前回(22年3月)に続いて上回るなど、すべての指標が前年度平均を上回りました。女性の評価が全般に上がったことによるもので、女性視聴者を意識した番組改定の効果が出た形となっています。
受信料支払率の向上に向けた取り組みについては、第1四半期は、特に多くの世帯が移動する時期にあたることから、移動した世帯に対して早期にあらためて契約するための対策や、新社会人・新入学生を対象にした契約取次対策を重点的に実施しました。契約総数は前年度末に比べ約13万件増加しました。しかし、年間の増加目標に対する進ちょく率は36%で前年同期を下回り、やや厳しいスタートとなっています。今後は、地域スタッフの業務を契約対策にパワーシフトすることや、未収対策の強化を盛り込んだ追加施策を実施するなど、状況の変化に対応した営業活動を展開していきます。
また、テレビ放送の完全デジタル化まで残り1年となり、第1四半期も引き続きデジタル中継局の整備や共同受信施設のデジタル化改修工事を進めました。その結果、6月末の世帯カバー率は98.8%となりました。アナログ放送の終了に向けた周知活動についても、7月から、アナログ放送の全番組をレターボックスサイズ(映像が横長で上下に黒い帯のような部分が出る画面)で放送するとともに、番組冒頭でアナログ放送終了を告知するスーパーの開始に向けた準備に取り組みました。今後も、共同受信施設のデジタル化や難視聴対策などを、国や民放、総務省テレビ受信者支援センター(デジサポ)などと連携して進めるとともに、周知活動を本格化させ、円滑な完全デジタル化に向けて取り組みを強化します。
続いて、「収支の概況」です。
第1四半期の収支の状況については、事業収入は1,713億円で、予算に対する進ちょく率が25.2%となった一方、事業支出は1,621億円で、予算に対する進ちょく率が23.7%となっています。この結果、事業収支差金は91億円となり、順調に推移しています。
受信契約の状況については、「今期の概況」で説明したように、契約総数は約13万件増加し、衛星契約は約21万件増加しました。契約総数の増加は、前年度同期の実績を下回りましたが、衛星契約の増加は前年度同期の実績を上回りました。収納額は1,636億円で、前年度同期と比較して増収となっています。
事業支出については、業務の効率的な運営に努めたこともあって、予算に対する進ちょく率が標準の25%を下回っています。ただし、今後、支出の増加が予想される項目もあり、収支の推移を注意深く見ていくことにしています。
以上の報告内容が決定されれば、本日の第1123回経営委員会に報告事項として提出します。
(会 長) 原案どおり決定し、本日の経営委員会に報告します。
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2 報告事項
(1)考査報告
(考査室)
平成22年6月23日から7月21日にかけての期間に、ニュースと番組について考査した内容を報告します。期間中に、ニュースは19項目、番組は事前考査として32本、放送考査として21本の計53本を考査しました。その結果、これらの一連の報道や番組は、放送法や国内番組基準等にのっとって「妥当」でした。
まず、ニュースの考査結果について、7月11日に投開票が行われた第21回参議院議員通常選挙の開票速報を中心に報告します。
今回の参院選の開票速報では、総合テレビ、衛星第1、ラジオ第1、FM放送、国際放送、データ放送、インターネットにより、それぞれの放送波・サービスの特徴を生かして、最新の情報を伝えていました。事前の情勢取材や世論調査、出口調査を参考にしながら、開票所での取材を基本に、正確かつ順調に当確を打ち出していたと評価します。
獲得議席の予測や情勢の伝え方については、開票速報の冒頭で、民主党が44〜51議席を獲得するという予測を伝えていました。結果は44議席でしたので、予測は正確でした。なお、在京民放各社の開票速報では、民主党の獲得議席について、NHKのように幅を持たせた伝え方ではなく特定の議席数を予測していましたが、いずれも結果よりやや高めでした。また、菅首相が選挙の結果にかかわらず続投する意向を示したことを、NHKは午後8時23分に各社に先駆けていち早く伝えていました。
当確情報については、投票が締め切られた午後8時直後に最初の当選確実を伝えていました。NHKと在京民放各社で一番早く当確を打った候補者の数を比べると、NHKが一番早く当確を打った候補者は44人で、各社の中で最も多くなっています。また、NHKが当確と伝えた候補者は全員当選し、当確の打ち間違いはありませんでした。他の放送機関の中には、当確の打ち間違いがあった局もありました。NHKは、正確かつ迅速な速報で、公共放送の責任を果たしたと言えます。
また、今回の開票速報では、画面の左右に全国の当選・当確者情報等を表示するなど、初めて16:9の横長の画面をフルに使って情報を伝えていました。モニターからは、「デザイン性に優れていた」、「顔写真がはっきりしてわかりやすい」といった好評意見が寄せられています。
なお、在京民放の中には、ツイッターやメールを活用して、関係者や視聴者の生の声を紹介していた社もありました。
ほかに、この期間のニュースでは、各地に大きな被害をもたらした梅雨末期の豪雨について、刻々と変わる被害状況を、中継や住民の生々しい証言などを交えて詳しく伝えていました。改正臓器移植法の施行については、子どもの脳死段階での臓器移植が、それを待ち望んでいた人々に希望を与える一方で、いくつかの課題があることを多角的に伝えていました。また、中国人の個人向け観光ビザの発給要件が緩和されたことで観光客の増加が期待されていることについて、さまざまな動きを幅広く紹介していました。
続いて、いくつかの番組の考査結果について報告します。
NHKスペシャル「大相撲は変われるのか」(7月5日放送)では、相撲界が反社会的勢力との関係をどう断ち切り、今後の体質改善をいかにすべきかについて、日本相撲協会の武蔵川理事長と村山弘義理事長代行を交えて生放送で議論していました。番組を通じて、なぜ大相撲が反社会的勢力に狙われるのか、その理由と現状がよく理解できました。ただ、武蔵川理事長が中継でしか参加できない理由の説明がなかった点に、疑問が残りました。また、暴力団対策や相撲界の閉鎖性改善などについてゲスト同士の討論の展開がなく、内容が深まらなかったようにも感じられました。
大相撲名古屋場所の中継を中止したことに伴い、名古屋場所期間中、取組終了後の午後6時台にダイジェストで放送した「大相撲 幕内の全取組」に対して、モニターから172件の声が集まりました。1つの番組に対するものとしては、かなり多い件数です。モニターの声では、「限られた時間内で必要な情報をよくまとめていた」、「観客の表情など場所の雰囲気も紹介され過不足ない構成だと思う」といった好評意見が多かった一方で、中には「塩まきや仕切りがなく緊張感を欠き味気ない」という声もありました。今回モニターから寄せられた報告には、番組内容の評価だけでなく、相撲中継を中止するとしたNHKの判断に対する見解を、自由記述欄に記述したものもありました。「相撲中継の中止は国民感情からすれば当然だと思う。ダイジェスト版の放送も視聴者を大事にする好判断だ」、「賢明な判断だ。中継再開については“大相撲が本当に変われるのか”という観点から深慮してほしい」など、NHKの判断を支持する声が多く見られた一方で、「ダイジェスト版も放送しない方が英断ではないか」という声や、逆に「高齢者施設の関係者からは中継の取りやめを残念に思うという声を少なからず聞いた。賭博にかかわった力士は出場しないのだから、中継してもよかったのではないか」という声もありました。
NHKスペシャル「深層崩壊が日本を襲う」(6月27日放送)では、山が地下深くから崩れた台湾の土砂災害を検証し、日本でも同様の危険があると警告していました。新たな災害の脅威を示して災害対策の抜本的な見直しを訴えた、有意義な番組でした。危険が想定される地域の映像にボカシを入れ、どこなのかが特定できないようにしていたのは、いたずらに不安をあおることや地価の下落を招くことなどを避ける配慮だったと思います。ただ、モニターの声の中には、「危険がある地域をきちんと伝え、対策を促すべきではないか」という意見もありました。
ハイビジョン特集「五月の語り部たち」(6月26日放送)は、韓国の民主化運動の原点とも言われる光州事件から30年にあたり、軍政に立ち向かった市民や学生など当事者を取材して、彼らが何を考え、どう行動したのかを追った番組でした。巧みな構成で、刻一刻と変化する状況が迫真力をもって描かれ、現代史ドキュメンタリーとして非常に優れた番組だったと思います。ただ、気になった点として、主人公の1人がタクシードライバーだったことから、運転中のドライバーに助手席からインタビューするシーンが多く見られました。最近は、取材の安全に関して、視聴者からも厳しく見られることが増えています。こうした取材では、安全確保に十分な注意をはらう必要があると考えます。 |
(2)ITに関する規程の改正について
(情報システム局)
NHKのIT統制の取り組みを、より機能的・効果的に実施するため、関連の規程等を再構築することとしましたので、報告します。
今回の再構築は、2つの「実施要領」を廃止し、「規程」、「基準」、「ガイドライン」の3階層の体系に整理するものです。
具体的には、最上位の規程として「IT統制委員会規程」、その下に「情報システムの開発プロジェクトに関する運営規程」と「情報システムおよび情報ネットワークのセキュリティに関する規程」を置き、これらに基づく業務の基準として、「情報システム管理基準」を新設するとともに、「情報セキュリティ対策基準」の内容を拡充して定めます。
さらに、その下部規定であるガイドラインとして、「情報システム開発ガイドライン」、「情報システム運用ガイドライン」、各情報システムの「セキュリティガイドライン」、および「放送設備セキュリティガイドライン」を定めます。これらのガイドラインのうち、新設したものは「情報システム運用ガイドライン」、および一部情報システムと放送設備に関する「セキュリティガイドライン」です。
廃止するのは、「情報システムの開発プロジェクトに関する実施要領」と「情報システムおよび情報ネットワークのセキュリティに関する実施要領」です。
これに伴い、「情報システムの開発プロジェクトに関する運営規程」と「情報システムおよび情報ネットワークのセキュリティに関する規程」の条文中にある「実施要領」という文言は、すべて「基準」に修正します。
以上の改正は、本年7月30日付で施行します。 |
(3)地方放送番組審議会委員の委嘱と任期途中の退任について
(日向専務理事)
地方放送番組審議会委員の委嘱と任期途中の退任について報告します。
近畿地方で坂田順子氏(農業)に、中部地方で井上庄吾氏(愛知県農業協同組合中央会常務理事)、金森昭夫氏(中日新聞社取締役管理局長)、秋元祥治氏(NPO法人G−net代表理事)に、東北地方で佐竹勤氏(東北電力株式会社常務取締役)に、および北海道地方で笹原晶博氏(北海道銀行代表取締役副頭取)に、いずれも平成22年9月1日付で新規委嘱します。また、中部地方で奥野信宏氏(中京大学理事・総合政策学部教授)に、同日付で再委嘱します。
中部地方の石川好和委員(前愛知県農業協同組合中央会専務理事)と、東北地方の宇部文雄委員(東北電力株式会社副社長)については、いずれも本人の申し出により任期途中の7月31日付で退任されます。
なお、近畿地方の成川守彦委員(和歌山県病院協会会長)、中部地方の岡本知彦委員((株)ナベヤ代表取締役社長)と中村淳治委員(中日新聞社相談役)は、いずれも任期満了により8月31日付で退任されます。 |
以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
平成22年 8月24日
会 長 福 地 茂 雄
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