日本放送協会 理事会議事録  (平成22年 5月25日開催分)
平成22年 6月 11日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成22年 5月25日(火) 午前9時00分〜10時00分

<出   席   者>
 福地会長、今井副会長、永井技師長、金田専務理事、日向専務理事、
 溝口理事、八幡理事、大西理事、今井理事、黒木理事、塚田理事、
 吉国理事

 井原監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 福地会長が開会を宣言し、議事に入った。
 議事の最後に、会長から理事の任命について発言があった。

付議事項

1 審議事項
(1)就業規則等の一部改正について
(2)中央放送番組審議会委員の委嘱について
(3)視聴者対応報告(平成22年4月)について

2 報告事項
(1)「放送局のちから」活動報告(平成22年4月)
(2)考査報告
(3)契約・収納活動の状況(平成22年4月末)
(4)地方放送番組審議会委員の委嘱について
(5)平成21年度末本部資金監査結果
(6)平成21年度本部監査実施状況

3 理事の任命について

議事経過

1 審議事項
(1)就業規則等の一部改正について
(人事総務局)
 就業規則等の一部改正について、審議をお願いします。おもな改正点は3点あります。
 1点目は、職員が出張・外勤など局所外で勤務する際、勤務時間を把握することが困難な場合は、原則として所定勤務時間を勤務したものとみなす規定を、職員就業規則の本則に追加します。これまで出張等における基準外賃金の支給の根拠として職員給与規程に記載していたみなし勤務の取り扱いを、本則にも明記するもので、これにより勤務の取り扱いを変更するものではありません。
 2点目は、育児・介護休業法の改正に伴い、育児休職、介護休職の受領通知書の種別欄に、それぞれ「育児休職取消届」および「介護休職取消届」の項目を追加します。同法の改正に対応する規程の改正を本年2月に決定しましたが、その後、法改正の詳細な内容が明らかになったため、追加するものです。改正法の施行は本年6月30日ですが、NHKでは対応する規程を本年4月1日から施行しており、本件も同日にさかのぼって適用します。
 3点目は、直接雇用契約を結んでいるスタッフに関連する事項です。各職場で補助的業務に従事しているスタッフの能力・業績評価による基準賃金への加算率の上限を、専門性の高い業務に従事するスタッフと統一するよう、規定を見直します。なお、運用にあたっては、一律に適用するのではなく個々のスタッフの能力・業績を厳正に判断して行うこととします。また、届出を行い運転適格者と認定されたスタッフによるマイカーの業務上使用を、本年7月1日から認めることとし、これに関連する規定を車両使用・管理規程に追加します。
 以上について決定が得られれば、就業規則については、労働基準監督署に届け出ます。

(会 長)  原案どおり決定します。

(2)中央放送番組審議会委員の委嘱について
(日向専務理事)
 中央放送番組審議会委員の委嘱について審議をお願いします。
 若月壽子氏(主婦連合会事務局)に、平成22年6月1日付で新規委嘱したいと思います。また、潮田道夫氏(毎日新聞社論説委員)に、同日付で再委嘱したいと思います。
 なお、広野道子委員(21LADY(株)代表取締役社長)と山根香織委員(主婦連合会会長)は、いずれも任期満了により、5月31日付で退任されます。
 本件が了承されれば、本日開催の第1119回経営委員会に諮りたいと思います。

(会 長)  原案どおり了承し、本日の経営委員会に諮ることとします。


(3)視聴者対応報告(平成22年4月)について
(視聴者サービス局)
 放送法第12条に定める視聴者対応の状況について、平成22年4月分を以下のとおり取りまとめました。ついては、放送法第22条の2第3項の規定に基づき、本日の第1119回経営委員会に報告したいと思います。
 4月にNHKに寄せられた視聴者の声の総数は、この半年で最も多い46万7,941件でした。進学、就職、転勤などに伴う世帯移動の時期にあたり、受信料関係の問い合わせや意見が前月より約4万7,000件増えています。内訳は、苦情を含む「意見・要望」が7万7,960件(17%)、「問い合わせ」が34万7,801件(74%)、「その他・不明」が4万2,180件(9%)でした。苦情や要望などを含めた意見のうち、1次窓口で対応を完了した件数の割合は91%でした。残りの9%は該当部局に転送し、2次対応しました。
 4月に、放送番組に関して寄せられた反響総数は、13万8,633件で、意見は4万7,360件、問い合わせは9万1,273件でした。
 平成22年度の新番組について4月に寄せられた反響を見ると、月〜金または月〜土で毎日放送している番組を除けば、反響の多かった上位10番組のうち5つが教育テレビの番組でした。「中高年のための らくらくパソコン塾」(793件、2位)、「ハーバード白熱教室」(441件、3位)、「スコラ 坂本龍一 音楽の学校」(253件、7位)、「テストの花道」(206件、9位)、「直伝 和の極意」(166件、10位)の5番組です。このうち、「ハーバード白熱教室」には、60代、50代からの反響とともに、20代、30代からも熱心な声が寄せられています。また、「テストの花道」には、10代、20代の女性から多くの反響が寄せられているほか、その親の年齢層である40代女性や、男性では60代の層からたくさんの反響がありました。
 4月には、スペシャルドラマや新番組のドラマにも多くの反響がありました。総合テレビで4月3日と10日に前・後編に分けて放送した古代史ドラマスペシャル「大仏開眼」には、1,122件の反響が寄せられ、そのうちの6割近くが、再放送に対する問い合わせや要望でした。古代という時代に対して、「新鮮」、「よく知らないので興味深い」といった好評意見が多く、「大河ドラマで取り上げてほしい」という声もありました。また、総合テレビ火曜夜10時台に新設した「ドラマ10」の第1シリーズとなる「八日目の蝉」には、4月中に800件の反響が寄せられました。これは、月〜金または月〜土で毎日放送している番組を除くと、新番組の中で最も多い件数です。5月分を含むシリーズ全体(6週間)の反響は1,354件で、21年度に夜10時台で放送した「金曜ドラマ」の年間反響件数の約3分の1にあたります。その7割が再放送の問い合わせや要望でした。女性から寄せられた反響の割合も7割でした。
 その他の番組への反響として、NHKスペシャル プロジェクトJAPAN シリーズ「日本と朝鮮半島」の第1回「韓国併合への道〜伊藤博文とアンジュングン〜」(4月18日放送)に対して、本放送から1週間に寄せられた反響は660件でした。これは、21年4月放送のNHKスペシャル プロジェクトJAPAN シリーズ「JAPANデビュー」の第1回「アジアの“一等国”」に対して1週間に寄せられた反響件数の6割程度でした。
 視聴者から寄せられた意見や要望への対応事例を紹介します。
 教育テレビ「テレビでドイツ語」では、ドイツ語での会話のシーンで、日本語訳の字幕の文字を、話し手ごとに色を変えて表示しています。このオレンジや緑、青などの文字がつぶれて読み取りづらいという指摘が、3月31日の新シリーズ開始以降12件寄せられました。そこで、当初は色文字に白い縁取りをつけていた字幕を、第3回の放送から、白文字に話し手ごとのカラーの縁取りをつけた表示に改修しました。その結果、この件に関する指摘はなくなりました。
 NHKの公開ホームページ「NHKオンライン」に各放送局の番組表を掲載していますが、ラジオの地域放送番組については、システム上放送局ごとの情報を表示できず、東京で放送している地域放送番組の内容を掲載していたため、自分の住む地域の番組を確認したいという声が寄せられていました。要望を受けて21年9月からシステムの改修に着手し、この4月5日から、各放送局のラジオの地域放送番組を掲載するようにしました。これにより、中継所などの保守点検や工事に伴うラジオの深夜の放送休止情報などについても、放送局ごとの個別情報をていねいにお知らせできるようになりました。
 総合テレビで中継した、4月24日のプロ野球「巨人」対「広島」では、地上デジタル放送の特性を生かして、午後6時45分から7時30分まで、デジタル総合1では地域のニュースと「NHKニュース7」を、デジタル総合2では「プロ野球」を放送するマルチ編成を実施しました。この編成に対して320件の反響が寄せられ、そのうちデジタル総合2の視聴方法の問い合わせが250件、2番組に分けることによって画質が落ちることへの苦情が70件ありました。視聴方法に関する問い合わせへの対応として、この4月24日までは、地域のニュースの開始時間にあわせて午後6時45分からマルチ編成を行っていましたが、5月15日のプロ野球中継では、2分早く午後6時43分からマルチ編成を開始しました。6時43分から45分までの2分間は、デジタル総合1、同2ともプロ野球を中継し、あわせてリモコン操作方法を案内する字幕スーパーを表示しました。これにより、スーパーの案内を見ながらリモコンを操作してデジタル総合2に切り替え、野球中継を途切れることなくご覧いただけます。また、画質が落ちることへの苦情に対しては、ニュースをご覧になりたい方と引き続き野球をご覧になりたい方のいずれのニーズにもお応えできる方法として実施していることを説明し、デジタル放送のメリットを最大限に生かして、事情に応じて適宜マルチ編成を行うことについて理解を求めました。
 DVDを視聴した方からの指摘により、1981年に制作した、みんなのうた「コンピューターおばあちゃん」のアニメーションの一部に使われている風景・人物などの連続映像(全体で15秒程度)の中に、女性のおしりや胸、下着姿の写真がそれぞれ約0.1秒ずつ3カット含まれていることがわかりました。当時このアニメーションを制作した作家は、「おばあちゃんが森羅万象、酸いも甘いも知っていることを表現するための多種多様な映像のコラージュ」だったと話しており、こうしたカットに特別な意味を持たせたものではないと考えられます。しかし、テレビ画面の大型化や、コマ送りが容易に可能といった再生機の機能の高度化など、現在の視聴環境や視聴態様を考慮すれば、ファミリー向けの番組としてよりふさわしい表現をとるべきだと考え、映像の一部を手直ししました。こうした経緯と対応については、指摘をいただいた方に説明するとともに、報道発表を通じて視聴者の皆さまにお知らせしました。今後の放送予定は今のところありませんが、放送する場合には手直しした映像を使用します。また、DVDはすでに販売を終了していますが、販売会社に依頼して、購入された方に手直ししたものをお送りし、古いものを返送してもらうようお願いしました。
 テロップなどの誤記や原稿などの誤読については、視聴者からの指摘に基づき確認した結果、55件の表記のミスや読み間違いなどがありました。いただいた指摘については、番組担当者に連絡し放送の中で訂正するように努めるとともに、再発防止に向けて放送関係の部局に周知し、現場に注意を喚起しました。
 経営全般に対して、4月に寄せられた意見や要望は1,127件でした。
 NHKでは、テレビ受信機を設置していながら放送受信契約を結んでいただけない事業所や世帯に対し、公共放送の役割や受信料制度の意義などについて誠心誠意説明を行い、受信契約の締結を求めていますが、4月15日、再三の要請にもかかわらず応じていただけない1件の事業所に対し、放送受信契約の締結と受信料の支払いを求める民事訴訟を提起しました。その後、相手方から受信契約書の提出と受信料全額の支払いがあったことで、4月23日に訴えを取り下げました。この民事訴訟の提起と取り下げについて、「公平性・公正性の観点からぜひ断行すべき」という意見や、「別の対策を講じるべき」という声など、合わせて45件の反響がありました。NHKとしては、受信料の公平負担の徹底のため、どうしてもやむを得ないと判断した場合は、今後も民事訴訟を行う旨のコメントを発表しています。

(会 長)   反響が多かった新番組の「ハーバード白熱教室」は、海外
       から購入したものでしたね。私も番組を見て、哲学をあれほ
       ど楽しく教える授業内容に感心しました。
        報告内容については原案どおり決定し、本日の経営委員会
       に報告します。


2 報告事項
(1)「放送局のちから」活動報告(平成22年4月)
(視聴者サービス局)
 視聴者の皆さまのNHKに対する満足度の向上に向けて、全国の各放送局が展開する活動について、平成17年度から「視聴者満足(CS)向上活動報告」として取りまとめ、理事会に報告してきました。さらに21年度は、「平成21〜23年度 NHK経営計画」に基づき、全国の放送局が“いつでも、どこでも、もっと身近に”を具現化する目標として「放送局のちから」を掲げて、それぞれ地域で独自の視聴者サービス活動を展開してきました。そこで、22年度からは、「視聴者満足(CS)向上活動報告」を「『放送局のちから』活動報告」に改め、視聴者満足に加えて、接触者率向上と受信料支払率向上の経営目標の達成に向けた視点を盛り込んで報告します。
 最初に、NHKのインターネットサービス「NHKネットクラブ」の取り組みについて報告します。
 21年10月、それまでの受信契約者向けインターネットサービス「NHK+ID」と、番組視聴者向けインターネットサービス「NHKオンラインメンバーズ」を統合して、「NHKネットクラブ」を発足させました。22年度に入ってすでに10万人を超える会員増があり、現在の会員数は64万人となっています。
 取り組み事例として、まず、「おかあさんといっしょ」のNHKネットクラブ会員に限定した出演者募集について紹介します。幼児やその親たちから圧倒的な人気のある「おかあさんといっしょ」で、子どもたちが出演するスタジオ収録について、「受信料を支払っていない家庭でも出演できるのはおかしいのではないか」という声が長年にわたり寄せられていました。そこで、不公平感の是正と、受信料をお支払いいただいている方への優待サービスの充実のため、NHKネットクラブを通じて、そのプレミアム会員(放送受信契約を結び受信料をお支払いいただいている会員)に限定した出演募集を実施することにしました。第1回の募集となる今年6月収録分には、1万7,142件の応募があり、そのうち1万0,506件が新規に会員登録した方でした。それに伴い受信契約も増加しており、会員限定募集がNHKネットクラブの会員増加と支払率向上に成果を上げています。さらに、NHKネットクラブを通じた募集のメリットとして、応募の際も、受け付け後の抽せん作業等でも、作業の手間が簡素化されました。お客様からも好評の声が届いています。
 また、NHKネットクラブに集まるデータを分析すると、体感型の企画への参加を希望する会員が多いことから、体感型イベントのひとつとして、連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」の出演者と会員とのふれあいミーティングを、5月2日に開催しました。今回は、「新規プレミアム会員優待イベント」と位置づけ、新規に登録いただいたプレミアム会員75組150人の方々と、これまでに登録されていたプレミアム会員50組100人の方々を招待しました。応募時のアンケートで、セットや小道具などの美術に関する質問が多かったことから、会場で番組の小道具の足踏みミシンを紹介し、参加者に体験してもらいました。
 NHKネットクラブの改善も進めています。会員にイベント情報を通知する「イベント情報お知らせメール」について、「いちいち詳細画面を開かないと詳しい情報がわからないので、開催地と開催日をメール本文に記載してほしい」という要望があり、システムを改修してそれに応えました。また、サイト内の「イベント・インフォメーション」について、イベント担当者の中から「実施日順に並べる機能があった方がよい」という意見があり、インフォメーション画面に「実施日順」のタブを追加しました。さらにイベント一覧画面に実施日と会場の表示を追加し、詳細画面を開かなくても確認できるようにしました。
 「放送局のちから」活動について、4月は、全国の放送局から158件の報告が集まっています。その取り組み内容を、「地域・社会貢献」、「視聴者層拡大」、「地上デジタル普及促進」、「3−Screens展開」、「受信料支払率の向上」、「その他」の6種類に分類すると、158件のうち「地域・社会貢献」が53件で最多となっています。
 各放送局の取り組みをいくつか紹介します。
 北海道北見地区は、バブル崩壊以降地域経済が低迷し、観光産業が打撃を受けて、ホテルの倒産や撤退が相次ぎました。その影響により北見放送局では、受信料の契約・収納活動で苦戦が続いていました。同局では、21年度に、「頑張るプロジェクト」を立ち上げて、放送やイベントを通じて受信料支払率の向上を図るアイデアを考え、取り組みを展開してきました。そのひとつとして、視聴者が出演して地域への思いを語る30秒スポット「みんなの声」を制作し、昼前の地域情報番組で放送しています。21年度は846人の方に出演してもらい、地域の人々やその所属する団体等とのつながりを強めました。また、地元のホテルの屋上に天気カメラを設置し、それを活用して地域の情報を放送することなどによって、ホテルとの関係を強化しました。21年度は、これらの取り組みが北見放送局の契約・収納活動の業績向上につながり、22年度も活動を継続しています。
 兵庫県は、淡路島から中国山地を越えて日本海にまで至る複雑な地形を抱えており、人口が集中する神戸や阪神間にある高層ビルがもたらす受信障害を含め、県内にはデジタル化を妨げる数多くの障害があります。完全デジタル化に向けてこうした課題があることを放送で周知し、その克服につなげていこうと、神戸放送局では「完全地デジ化プロジェクト」を今年3月に立ち上げました。プロジェクトでは、夕方の地域ニュース情報番組内の広報コーナーで定期的にお知らせすることで、県内の視聴者にデジタル化への備えを進めてもらうよう取り組んでいます。具体的には、コーナーを担当するアナウンサーをモデルにした「完デジマン」というキャラクターを作り、各地の現場からデジタル化への課題を提示しながら完デジマンが課題を解決していくという内容を通じて、地域のデジタル化対応を促しています。コーナーで伝えた情報は、放送終了後に神戸放送局のホームページにも掲載しています。
 本部のラジオセンターでは、ラジオ番組のホームページでのサービスを充実させて、アクセス数の増加を図っています。「ラジオ深夜便」では、21年4月から番組ホームページのリニューアルを本格的に進め、放送を生で聴くことのできない方々のためのストリーミングサービスを開始するなど、充実に取り組んできました。その結果、番組ホームページへのアクセス数が急増し、22年3月のアクセス数は前年同月の10倍に達しました。番組に寄せられる声などから、番組担当者もリスナー層の広がりを実感しています。
 続いて、ふれあいミーティングと、視聴者からの意見や要望などに基づく業務の改善について報告します。ふれあいミーティングについて、平成22年度は、経営目標の達成に資する企画を各放送局が提案し、採択された企画は、本部が支援することにしました。4月のふれあいミーティングは全国で122回開催し、3,614人の方が参加しました。業務の改善活動については、21年度に引き続き“改善1,000件”の年度目標を掲げて推進します。4月は85件の事例報告がありました。
 ふれあいミーティングの取り組み事例を紹介します。
 津放送局では、2年前、津市内の団地で発生した高齢者の孤独死をきっかけに、孤独死を防止する取り組みを市民と一緒に継続しています。4月27日には、NHKスペシャル「無縁社会〜“無縁死”3万2千人の衝撃〜」(1月31日放送)の上映と制作担当者による講演、参加者によるグループ討議を通じて孤独死の問題を考える会を開催し、あわせてふれあいミーティングを行いました。講演・番組上映会には120人の方が参加し、ふれあいミーティングでは「次回は、無縁死の具体的な解決策を提示する番組を制作してほしい」などの声が出されました。
 また、釧路放送局ではワールドカップ・サッカーをテーマに、大分放送局では地元のサッカーJ2チーム・大分トリニータをテーマに、サッカーを通して地域について考えるふれあいミーティングをそれぞれ開催しました。
 最後に、業務の改善事例です。大津放送局では、水位の変化に応じて漁の場所や方法を変えている漁業従事者の要望を受けて、天気予報に琵琶湖の水位情報を加えました。また、全国のニュースについて、「朝のニュースのニューヨーク市場『円・株』情報に、東京市場の前日終値も表示してほしい」という視聴者からの要望を受けて、報道局と放送技術局が連携し、22年度から「NHKニュース おはよう日本」と午前0〜6時台の「BSニュース」の「円・株」画面に、東京市場の前日終値の情報を加えました。


(2)考査報告
(考査室)
 平成22年4月下旬から5月中旬にかけてのニュースと番組について考査した内容を報告します。この期間に、ニュースは19項目、番組は事前考査として47本、放送考査として21本を考査しました。その結果、これらの一連の報道や番組は、放送法や国内番組基準等にのっとって「妥当」でした。
 最初に、この期間のニュースの概況です。ニュースについては、米軍普天間基地の移設問題と小沢民主党幹事長の政治資金事件の2つの大きな動きを中心に考査しました。
 米軍普天間基地の移設問題は今も日々動きがありますが、今回の対象期間に報道した項目について報告します。4月25日(日)、沖縄県で普天間基地の県外移設などを訴える過去最大規模の県民大会が開かれました。このニュースでは、移設の具体案が示されていない中で沖縄県民の不満や県外移設への要求がいちだんと高まっていることがよく伝わりました。また、5月4日(火)、鳩山首相が就任後初めて沖縄県を訪れ、同県の仲井真知事などに沖縄県内と鹿児島県徳之島への移設案を説明しました。さらに、7日(金)には、首相が徳之島の3つの町の町長と会談し、移設案への理解と協力を求めましたが、地元自治体側は拒否の姿勢を示しました。これらのニュースを通じて、政府が5月末の決着を事実上断念することになった過程が詳しくわかりました。その後、日米の実務者協議や平野官房長官と徳之島の関係者との会談などがありましたが、こうした一連のニュース全体を通して、地元自治体やアメリカ側、与党内のいずれの合意も得られずに、5月末の基本方針の取りまとめに向けた調整が難航している様子が、逐一詳しく伝えられていたと考えます。
 小沢民主党幹事長の政治資金事件の関連では、4月27日(火)、検察が不起訴とした小沢氏について、東京第5検察審査会が、起訴すべきとする議決を行いました。このニュースでは、検察審査会の議決の理由や今後の司法手続きの流れがよくわかりました。また、政界の反応も分厚く伝えていました。この議決を受けて5月15日(土)に、東京地検特捜部が改めて小沢氏から任意の事情聴取を行いましたが、小沢氏は重ねて事件への関与を否定しました。このニュースでは、再聴取に至る検察と小沢氏側双方の動きや、国会での説明をめぐる与野党の駆け引きが、詳しく伝えられていたと考えます。
 番組の概況としては、今回、衛星放送の新番組を中心に考査しました。考査にあたっては、以前、放送の定時化をめざす開発番組の考査の際に指摘した内容が、新番組にどう反映されているかも確認しました。
 衛星ハイビジョン木曜日夜9時30分の新番組「プラネットベービーズ」については、4月22日(木)放送の「ボリビア 標高4300メートル 天空の子育て」の回を考査しました。開発番組では、トルコの18歳の母親を取り上げており、その時の考査で、子育ての様子に加えて住んでいる町や村の人々の暮らしぶりといった基礎情報も伝えてほしいと指摘しました。今回は、先住民族の伝統的な子育ての様子がよくわかりましたが、やはり家族の暮らしぶりや結婚・教育などの社会環境についての情報を、もう少し知らせてほしいと思いました。
 衛星ハイビジョン日曜日夜9時の新番組「地球ドキュメント ミッション」については、5月2日(日)放送の「悲しみを笑顔に変える」の回を考査しました。世界のさまざまな課題に取り組んでいる人々を“ミッションチャレンジャー”として取り上げその挑戦を追うとともに、経験豊富な“ミッションマスター”から助言を受けて、ミッション達成の方法を考える番組です。開発番組では、ミッションチャレンジャーを“挑戦者”と呼んでいましたが、その時の考査では、ミッションマスターのアドバイスと挑戦者をうまく結んで、課題克服のノウハウを伝えてほしいと提言しました。今回は、新しいやり方で世界の人権保護に取り組むNGO代表をミッションチャレンジャーとして取り上げていましたが、その精力的な活動ぶりがよく伝わりましたし、ミッションマスターとして出演した弁護士の助言が、開発番組よりも説得力があり、その役割がよくわかりました。
 続いて、その他の個別のニュースについて報告します。
 5月5日(水)から10日(月)にかけて、ギリシャの財政危機に端を発する世界的な信用不安の拡大について伝えていました。この一連のニュースでは、世界の金融市場が混乱している状況をきめ細かく報道するとともに、沈静化に向けた関係各国の取り組みもていねいに伝えていました。
 5月6日(木)、福井県敦賀市にある高速増殖炉もんじゅが、平成7年のナトリウム漏れ事故などのため運転を停止してから14年5か月ぶりに、運転を再開しました。このニュースでは、もんじゅの運転再開の背景や、安全性、費用対効果、核物質の管理など今後の高速増殖炉開発に向けての多くの課題を、記者解説を交えて伝えていました。
 4月20日(火)に宮崎県で発生が確認された家畜の伝染病の口てい疫については、今回の報告対象期間中に感染被害が拡大し、県や政府による対応の動きが激しくなりました。5月18日(火)、同県の東国原知事が、感染の拡大で県の畜産が壊滅する可能性を否定できないとして県全域に非常事態宣言を出し、県民に、外出を控えることやイベント・集会の延期などの協力を要請しました。一連のニュースからは、感染の急激な拡大や、宮崎県の畜産の危機的状況がよく伝わりました。
 ほかに、この期間のニュースでは、B型肝炎訴訟や、北朝鮮のキム・ジョンイル総書記の中国訪問、公式確認から54年目の水俣病、イギリスの政権交代、上海万国博覧会の開幕などの項目について考査しました。
 個別番組についていくつか報告します。
 NHKスペシャル「上海 百年の物語 激動を生き抜く」(4月25日(日)放送)では、中国・上海の激動の100年間について、戦争、内乱、革命、改革開放を生き抜いた3人の人物(旧租界の裕福な家に生まれた老人、元紅衛兵、実業家)の、それぞれの家族の歴史と映像記録で描いていました。3つの家族の歴史が上海の歴史と重なって、貴重な映像とともにその激動のさまをよく伝えていました。上海人の粘り強さが今の上海を築いたこともよくわかりました。
 NHKスペシャル プロジェクトJAPAN シリーズ「日本と朝鮮半島」の第2回「三・一独立運動と“親日派”」(5月16日(日)放送)では、独立運動の実態や日本の統治政策が転換を迫られていく背景がよくわかり、独立運動を支えたチェ・ナムソンとイ・グァンスの2人がなぜ対日協力者に変わっていったのかも理解できました。スタジオの解説委員の「“親日派”問題を考えることは日本人自らの歴史に向き合うことだ」という解説は、説得力がありました。
 教育テレビの新番組、直伝 和の極意「古地図で巡る龍馬の旅」の第5回「長崎・商社起業を追う」(4月29日(木)放送)は、シリーズ全9回のちょうど中間にあたります。番組では、古地図を基に坂本龍馬のゆかりの地を巡る中で、龍馬が亀山社中を立ち上げたいきさつや、その思惑がよくわかりました。社中を仲介として、薩摩と長州の連携が築かれていく様子は興味深いものがありました。


(3)契約・収納活動の状況(平成22年4月末)
(営業局)
 平成22年4月末の契約・収納活動の状況について報告します。
 まず、放送受信契約総数の増加状況です。4月は、新社会人・新入学生を対象にした新規契約や、年度替わりに移動した世帯との早期の契約に重点的に取り組みました。月間の契約総数増加は、7.5万件(年度目標に対する進ちょく率21.5%)でした。増加件数は、前年度同月より3.3万件少なくなっていますが、これは、前年度は事業所割引の適用に伴う契約内容の見直しなどにより、事業所契約が4.5万件増加したのに対し、今年度は割引の効果が落ち着いたことで1.0万件の増加にとどまったためです。一方で、世帯契約の増加は6.5万件で、前年度同月を0.2万件上回っています。また、障害者免除や公的扶助受給世帯の増加による有料契約から全額免除への変更は、月間で1.3万件となっています。この件数は前年度からほとんど変わらず、今後が懸念されます。
 衛星契約増加については、新規の契約確保や移動世帯の衛星放送受信確認に徹底して取り組むとともに、ケーブルテレビ事業者や電器店などとの連携を強化しました。月間の増加は、7.8万件(年度目標に対する進ちょく率12.0%)でした。増加件数は、前年度同月より1.0万件少なくなっていますが、契約総数増加と同様、前年度は事業所割引の適用に伴う契約内容の見直しなどにより事業所衛星契約が3.6万件増加したのに対し、今年度は0.9万件の増加にとどまったことが影響しています。一方、世帯衛星契約の増加は、前年度同月を1.7万件上回る6.9万件で、事業所衛星契約増加の落ち込みをカバーしています。
 4月の当年度収納額は482億円で、対前年度増減額は8.6億円の増収となり、前年度同月を上回っています。
 前年度受信料の回収額実績は17.0億円となり、前年度同月と比較すると2.9億円下回りました。また、前々年度以前受信料の回収額実績は、3.2億円となり、前年度同月を上回りました。
 この内容は、本日の第1119回経営委員会にも報告します。


(4)地方放送番組審議会委員の委嘱について
(日向専務理事)
 地方放送番組審議会委員の委嘱について報告します。
 東北地方で是永幹夫氏((株)わらび座取締役・劇団「わらび座」代表)に、平成22年6月1日付で新規委嘱します。
 なお、東北地方の松村譲裕委員((株)ユーランドホテル八橋代表取締役社長)と北海道地方の毛利稔委員(北海道振興(株)代表取締役社長)は、いずれも任期満了により5月31日付で退任されます。
 本件は、本日の第1119回経営委員会にも報告します。


(5)平成21年度末本部資金監査結果
(内部監査室)
 平成21年度末における本部資金監査の結果について報告します。
 4月に、21年度末における本部の現金、銀行等の預貯金および有価証券について、会計監査人である監査法人と共同で監査を行った結果、その在高が相違ないことを確認しました。また、関連団体等21団体への出資金についても同様に監査し、その在高が相違ないことを確認しました。なお、金融機関からの借入金がないことも確認しています。


(6)平成21年度本部監査実施状況
(内部監査室)
 平成21年11月下旬から22年3月にかけて、本部各部局および海外総支局で実施した内部監査の実施状況について報告します。これは、21年4月に施行した内部監査規程に基づき、各部局の内部監査結果を取りまとめて、理事会に報告するものです。
 まず、本部各部局の監査実施状況です。
 この期間に内部監査を実施したのは、放送総局内10部局とそれ以外の10部局の計20部局です。ほかに22年4・5月に7部局(放送総局内2、それ以外5)について実施しており、自己点検を実施する経営委員会事務局、監査委員会事務局、内部監査室を除いたすべての本部部局の内部監査を終了しています。4・5月に実施した7部局分の結果については、別途報告することにしています。
 監査の項目としては、業務プロセスや業務運営状況についての業務監査と、適正経理についての監査を実施しました。
 結果の概要を報告します。業務プロセス監査では、いくつかの部局で「重要度の高い発見事項」を指摘し、改善を提案しましたが、それ以外については、業務プロセスにおけるリスクの管理状況は、「適正」と判断しました。適正経理では、一部の部局で「指示事項」がありましたが、それ以外は「適正」に処理されていました。20年度に改善の必要を指摘した「指示事項」は、いずれも改善されていました。なお、実地監査の3か月後をめどにフォローアップを実施しており、今回報告対象の20部局のうち、2月上旬までに実地監査を実施した14部局においては、業務プロセス上の「発見事項」および適正経理に向けた「指示事項」について、改善が図られていることを確認しました。
 続いて、海外総支局の監査実施状況です。
 11月から3月の期間に、海外総局2か所、海外支局2か所の計4か所で内部監査を実施しました。ほかに、4・5月に海外総局1か所、海外支局1か所の計2か所で実施しており、合わせて6か所の内部監査を終えています。海外総支局については、「平成21〜23年度 中期内部監査計画」に基づき、3年間ですべての総支局を監査することにしており、今後22・23年度で残り23か所の内部監査を実施する予定にしています。なお、4・5月実施の2か所については、別途報告します。
 監査項目については、本部各部局、各放送局と同様、業務プロセスや業務運営状況についての業務監査と適正経理についての監査を実施しました。その結果、ニュース番組の取材・制作、総支局スタッフ管理、外部パワー、情報セキュリティー、総支局運営の各業務プロセス、および経理処理状況は、いずれも「適正」でした。


3 理事の任命について
(会 長)
 6月11日に任期満了となる今井理事を、6月12日付で理事に再任したいと思います。理事の任命は、放送法の規定により経営委員会の同意が必要ですので、本日の第1119回経営委員会で同意を求めます。



以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成22年 6月 8日
                     会 長  福 地 茂 雄

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