日本放送協会 理事会議事録  (平成22年 2月23日開催分)
平成22年 3月12日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成22年 2月23日(火) 午前9時00分〜10時25分

<出   席   者>
 福地会長、今井副会長、永井技師長、金田専務理事、日向専務理事、
 溝口理事、八幡理事、大西理事、今井理事、黒木理事、塚田理事、
 吉国理事

 井原監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 福地会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 審議事項
(1)第1113回経営委員会付議事項の変更について
(2)就業規則等の制定・一部改正について
(3)職員の給与等の支給の基準の一部改正について
(4)共同受信施設等への経費助成業務の一部変更について

2 報告事項
(1)契約・収納活動の状況(平成22年1月末)
(2)財政の現況(平成22年1月末)
(3)考査報告
(4)「第61回日本放送協会放送文化賞」の贈呈

議事経過

1 審議事項
(1)第1113回経営委員会付議事項の変更について
(経営企画局)
 本日開催される第1113回経営委員会付議事項の変更について審議をお願いします。
 2月16日の理事会で審議、決定された事項のうち、議決事項の「日本放送協会放送受信規約の一部変更について」は、内容の最終調整にさらに時間を要するため、次回の経営委員会に提出することとしたいと思います。
 また、その他の事項として「NOD(NHKオンデマンドサービス)の現況について」を追加します。

(会 長)   原案どおり決定します。


(2)就業規則等の制定・一部改正について
(人事総務局)
 NHKの退職年金制度の見直しや、育児・介護休業法の改正等に伴い、就業規則を一部改正するとともに、その関連規程を制定したいので、審議をお願いします。
 1点目は、退職年金制度の見直しに関連する制定、改正です。
 2月12日の年金委員会で、NHKの退職年金制度に確定拠出型年金を導入することが了承されました。それを受けて、法律に基づき確定拠出年金制度について必要な事項を規定する、日本放送協会企業型年金規約を制定します。確定拠出年金制度への加入を選択しない職員に対しては、掛金相当額を前払退職給与として支給することになりましたので、職員就業規則の本則に前払退職給与の支給に関する条文を追加するとともに、職員前払退職給与規程を制定します。あわせて、現行の確定給付型年金の乗率、支給額、拠出率等を変更します。
 2点目は、育児・介護休業法の改正に伴う就業規則の改正です。
 NHKでは、育児短時間勤務制度として、執務時間を短縮する時間を1日あたり最大1時間30分と定めていますが、法改正にあわせて、所定執務時間を6時間まで短縮できるよう、規定を改めます。夫婦ともにNHK職員の場合は、短縮時間を夫婦合わせて最大1時間30分としていますが、この規定も廃止します。また、「子の看護のための休暇」、「家族看護・介護休暇」を「看護休暇」と「介護休暇」に再編します。さらに、育児・介護休職の申し出に対し、申し出を受領した旨を当該職員に通知する規定を新設します。
 その他、平成21年4月の改正で職員採用時の身元保証書の提出を廃止したことに関する制度の見直しや、労働基準法の改正に伴い、法定時間外執務時間数が1か月60時間を超えた場合の賃金の割増等についての規定を改正します。
 改正実施日は、平成22年4月1日ほかとします。
 以上については、理事会の決定後、労働基準監督署に届け出ます。また、日本放送協会企業型年金規約は、関東信越厚生局に提出します。

(会 長)   原案どおり決定します。


(3)職員の給与等の支給の基準の一部改正について
(人事総務局)
 「職員の給与等の支給の基準」を一部改正したいので、審議をお願いします。おもな改正点は次のとおりです。
 1点目は、専任職の上位層について、これまでは該当する職員が存在しないことから、給与等の支給基準を具体的に設定していませんでしたが、専任職の将来像を明らかにするため、これを設定します。
 2点目は、退職年金制度の見直しです。確定拠出年金制度を導入するとともに、同制度への加入を選択しない職員には掛金相当額を前払退職給与として支給します。あわせて、現行退職年金制度の制度利率、支給率を引き下げます。
 また、「参考」では、労働基準法の改正に伴い、法定時間外執務時間数が1か月60時間を超えた分に対して、単位時間割基準賃金の2割額を加算します。
 以上については、平成22年4月1日から実施します。
 本件が了承されれば、3月9日の第1114回経営委員会に議決事項として提出します。
 なお、本基準は、放送法の規定に基づき公表します。

(会 長)   原案どおり了承し、3月9日の経営委員会に諮ります。


(4)共同受信施設等への経費助成業務の一部変更について
(技術局)
 放送法第9条第2項第8号に規定する「放送及びその受信の進歩発達に特に必要な業務」として、平成20年11月12日に総務大臣認可を受けた、「地上デジタルテレビ放送の難視聴地域における共同受信施設への経費助成業務」と「日本放送協会の共同受信施設等が不要となる場合の代替手段への移行円滑化助成業務」の2つの業務について、よりいっそうのデジタル移行を促すため、その内容の一部を変更したいので、審議をお願いします。
 変更の背景にある現状の課題から説明します。
 地元の方々が設置・運営してきた自主共聴施設について、NHKは平成20年11月に総務大臣認可を受けて、デジタル化を促進する支援業務をスタートさせました。各地の自主共聴組合を直接訪問しての説明活動や、施設改修に向けての技術支援、改修費の一部助成を実施した結果、この1月末までに、約1万2,800施設の自主共聴施設のうち49%にあたる6,300施設の対応が完了しました。残りの6,500施設のうち、2,900施設についてはケーブルテレビ等への移行が予定されているため、あと3,600施設についてデジタル化を進めていく必要があります。しかし、加入世帯が10世帯未満と少ない自主共聴施設においては、国の支援やNHKの経費助成を受けてもなお視聴者負担が大きいことから、なかなかデジタル化が進まないという課題が明らかになってきました。
 もうひとつの課題として、「新たな難視地区」のデジタル化の促進があります。新たな難視地区とは、地上アナログテレビ放送を受信している地域であって地上デジタルテレビ放送が難視聴となる地区(都市等で高層建造物など人為的な原因により受信障害が起きて難視聴となる区域や、電波が混信して難視聴となる地域を除く)のことを言いますが、NHKとしては、視聴者の皆さまにあまねく地上デジタルテレビ放送を受信していただけるよう、これらの地区の難視聴解消について適切に対応していく必要があります。この1月末に総務省から公表された「地デジ難視地区対策計画」では、NHKの新たな難視地区として約11.5万世帯が特定されており、現在、各地域の民放や自治体と協力しながら、その対策手法の検討を進めています。比較的世帯数が多い新たな難視地区については、新たなデジタル中継局を置局するなど送信側で対策を実施していきたいと考えていますが、世帯が散在している地区などでは、送信側で効果的な対策ができないため、共同受信施設の新設や、ケーブルテレビ等への加入、高性能のアンテナの設置など、受信側での対策をお願いしていきたいと考えています。しかし、受信側で対策を実施する場合、当該地区の視聴者の方々に負担をお願いすることになりますが、例えば、ケーブルテレビ等への加入や、高性能アンテナの設置などの対策については、現在はNHKから助成ができないため、自治体や地元の方々から受信側で対策することに理解が得られず、新たな難視地区のデジタル化がなかなか進まない状況です。
 こうした課題に対応して、加入世帯が少ない自主共聴施設のデジタル改修や、新たな難視地区の受信側対策をよりいっそう促進するため、現在の2つの支援業務の内容を一部変更したいと考えるものです。
 変更する内容は次のとおりです。
 「地上デジタルテレビ放送の難視聴地域における共同受信施設への経費助成業務」については、自主共聴組合への助成上限額を、これまでは施設あたり10万円に加入世帯数を乗じた額としてきましたが、この額もしくは100万円のいずれか高い額とします。これにより加入世帯が10世帯未満の自主共聴施設のデジタル化が促されると期待されます。さらに、新たな難視地区において高性能等アンテナを設置することにより地上デジタルテレビ放送を個別に受信する世帯についても、助成の対象に追加します。
 「日本放送協会の共同受信施設等が不要となる場合の代替手段への移行円滑化助成業務」については、新たな難視地区においてケーブルテレビ等に移行する個別受信世帯も助成の対象に追加します。
 なお、今回の変更にかかる経費の増分は、平成22・23年度の2か年で約26億円と見込んでいますが、この経費は「平成21〜23年度 NHK経営計画」の中で見込んでいたデジタル化対応の追加経費660億円の中で対応しますので、今回の変更による新たな予算措置の必要はありません。
 以上の内容が了承されれば、本日開催の第1113回経営委員会に議決事項として提出します。経営委員会の議決が得られれば、放送法第9条第10項の規定により、総務大臣に認可を申請します。

(副会長)  「高性能等アンテナ」とは、具体的に言うとどういうアンテナですか。
(技術局)  高性能アンテナとは、アンテナの素子が20以上と非常に多いものを言います。また、「等」というのは、現在アナログ放送を受信しているアンテナについて、その位置ではデジタル放送が受信できないため、受信できる地点まで移設する場合を含みます。
(会 長)  原案どおり了承し、本日の経営委員会に諮ります。

2 報告事項
(1)契約・収納活動の状況(平成22年1月末)
(営業局)
 平成22年1月末の契約・収納活動の状況について報告します。
 まず、放送受信契約総数の増加について、第5期(12月・1月)は、昨年末に全国一斉および各局独自の集中対策を実施し、契約・支払再開活動へのパワーシフトの徹底に取り組みました。その結果、期間の契約総数増加は1.6万件、年度累計では23.8万件となっています。しかし、例年、年度末の第6期(2月・3月)は世帯の移動による減少が発生しますので、今後は活動のいっそうの盛り上げを図って、増加の確保に努めたいと思います。なお、障害者免除や公的扶助受給世帯の増加による有料契約から全額免除への変更については、第5期は3.3万件となりました。
 衛星契約取次数の増加については、年末商戦やバンクーバーオリンピックによる受信機の普及拡大に連動して、委託契約収納員を中心に、地上契約から衛星契約への契約変更対策の強化に取り組むとともに、ケーブルテレビ事業者や電器店などとの連携強化を図りました。その結果、第5期の増加数は11.8万件、年度累計は前年度同期を上回る57.3万件となりました。年度目標(60万件)に対する進ちょく率は95.5%となり、順調な状況です。
 次に、第5期の当年度収納額は1,072億円で、前年度同期より15.5億円増加しました。対前年度増収額でも前年度同期を上回っています。年度累計では5,273億円で、前年度同期より30.3億円の増収となりました。また、前年度受信料の回収額実績は、年度累計で59.0億円となり、前年度同期より16.9億円増加しました。前々年度以前受信料の回収額実績は同じく19.8億円となり、この結果、各年度分を合計した収納額は、前年度同期より50.7億円の増収となりました。
 第5期末の支払い拒否・保留数は、36.3万件で、最も多かった時期から91.7万件減少しています。また、未収数については、第5期に支払再開などにより17万件減らしたものの、一方で新たな発生が13万件あったため、現在数は、第4期末より4万件減少して233万件となりました。厳しい経済状況の中で、新たな未収の発生が増えていますが、第6期は未収件数の削減にいっそう努めていきたいと思います。
 最後に、口座・クレジットカード支払の増加については、第5期は5.6万件増加し、年度累計では50.5万件となりました。

(吉国理事)  受信料全額免除の新規発生の動向に変化は見られますか。また、契約総数の増加と未収の削減については、当初の見込みに対して厳しい状況にあるようですが、支払率への影響はどう見ていますか。
(営業局)  全額免除については、1期間(2か月間)あたり3万件を超える件数が発生しており、今期も状況は変わっていません。このあと年度末までにどの程度発生するのか、注視したいと思います。また、契約総数の増加や未収の削減は厳しい状況ですが、努力を続けており、仮に当初見込みに届かないとしても、平成21年度予算で設定した支払率72.2%は、決算段階で確保できると考えています。

(2)財政の現況(平成22年1月末)
(経理局)
 平成22年1月末の財政の現況について報告します。
 まず、予算の執行状況です。
 事業収入の実績額は5,573億円で、予算に対する進ちょく率は83.2%、事業支出は5,318億円で、進ちょく率は79.0%となっています。事業収支差金は、今年度予算でマイナス29億円としていますが、1月末現在で、プラス254億円となっています。
 事業収入では、受信料の進ちょくが遅れていますが、次第に上向いてきました。訪問集金の廃止による収納の遅れが解消してきたことに加え、文書による請求や電話による勧奨など10項目の追加施策等によって契約・収納活動を強化した効果が出ています。受信料収入をどこまで確保できるかが、今年度予算における事業収入6,699億円の達成に影響してきますので、引き続き取り組みを注視していきたいと思います。副次収入は、DVD、CD等の売り上げの減少により番組活用収入が伸び悩んでいます。財務収入等は、前々年度以前受信料の回収額の増加や関連団体から予算を上回る受取配当金があったため、現時点で予算額を上回っています。また、非現用不動産の売却益により、特別収入も現時点で予算額を上回っています。
 事業支出では、国内放送費、国際放送費ともに、堅調に推移しています。契約収納費は、追加施策に取り組んでいるため、進ちょく率が若干高めになっています。管理関係費は、デジタル化に伴う共同受信施設等への経費助成について、施設の管理組合等からの助成申請に遅れがみられることなどにより、進ちょく率が低くなっています。今後は決算に向けて、デジタル化の経費がどのくらいの支出規模になるのか、注視する必要があります。
 次に、損益計算書による前年同月との比較です。
 経常事業収入は、42億円増加しています。これは、放送受信契約の契約総数・衛星契約の増加により受信料収入が増加したことなどによります。一方、経常事業支出は、74億円増加しています。これは、国内放送費が衆議院選挙関連やスペシャルドラマ「坂の上の雲」の制作などの支出により増加したこと、また、管理関係費がデジタル化対応経費の増加により、人件費が年金資産運用環境の変化等に伴う退職給付費用の増加により、それぞれ増加したことなどによるものです。その結果、経常事業収支差金は、前年同月と比べて31億円減少し、280億円となっています。
 また、関連団体からの受取配当金が前年度より少なかったことなどにより財務収入等が減少したことから、経常事業外収支差金は前年同月より19億円減少しています。その結果、経常事業収支差金と経常事業外収支差金を合わせた経常収支差金は、51億円減少して229億円となっています。
 経常収支差金と特別収支を合わせた事業収支差金は、特別収入が非現用不動産の売却収入等により増加し、特別支出も減少したため、254億円となり、前年同月より18億円の減少となっています。
 続いて、貸借対照表による前年度決算との比較です。
 資産の部では、事業収支差金の発生などにより現金預金・有価証券、および長期保有有価証券が増加しています。一方で、固定資産の減価償却額が取得額を上回ったため、有形・無形固定資産が減少しています。これらの結果、資産合計は8,532億円で、前年度決算から297億円増加しています。
 負債の部では、受信料前受金が契約総数・衛星契約の増加などにより90億円増加しています。また、退職給付引当金も繰入額が取崩額を上回ったことにより増加しています。その他の流動負債は、設備整備費関係の未払金が決算時点で大きくなる傾向があるため減少しています。これらの結果、負債合計は2,772億円となり、前年度決算から42億円増加しています。
 自己資本比率は、前年度決算時から0.6ポイント上昇して67.5%と、健全な財政状況を保っています。
 最後に、受信料の状況です。増加件数は、契約総数が23.8万件、衛星契約が57.3万件と、ともに前年度を上回って推移しています。しかし、経済情勢の悪化や、事業所割引の影響、全額免除件数の増加などから、受信料収納額は前年同月比で30億円の増加にとどまっています。

(会 長)  貸借対照表を見ると、1年以内に返済する借入・放送債券と長期借入金・放送債券を合わせて260億円の残額がありますが、借入金は完済したはずですので、これは放送債券の額ですね。この償還終了はいつになりますか。
(経理局)  平成23年度です。

(3)考査報告
(考査室)
 平成22年1月から2月中旬にかけてのニュースと番組について考査した内容を報告します。この期間に、ニュースは22項目、番組は事前考査として33本、放送考査として24本を考査しました。その結果、これらの一連の報道や番組は、放送法や国内放送番組基準などにのっとって「妥当」でした。
 最初に、この期間の概況を報告します。
 ニュースについては、民主党の小沢幹事長の政治資金をめぐる事件、トヨタの相次ぐリコール問題、横綱・朝青龍関の暴行疑惑と引退などで揺れた相撲界の、3つの大きな動きがありました。
 小沢幹事長の政治資金をめぐる事件の動きでは、小沢氏が記者会見した内容を詳しく伝えたほか、野党の対応や検察の捜査の進め方など多方面から報道していました。検察が小沢氏を不起訴としたことについては、その理由についてわかりやすく記者解説するとともに、政界の動きも整理して伝えていました。この一連のニュースでは、捜査や政治の動きを多角的に報道し、小沢氏側の主張もきちんと伝えていたと思います。
 トヨタの相次ぐリコールの問題では、欧米を中心に実施した大規模なリコールが、ブランドへの信頼に影響する懸念を伝える中で、1つの部品の不具合が多くの車種に波及した背景について、専門家へのインタビューや記者解説によってわかりやすく説明していました。また、新型プリウスのブレーキの不具合によるリコールでは、トヨタが4車種のリコールを国土交通省に届け出る方針を固めたことを独自情報で伝えたほか、トヨタの対応の遅れが批判を集めることにつながった経緯について、記者解説やリポートで詳しく紹介していました。
 揺れた相撲界については、2つの動きがありました。1つは、日本相撲協会の理事選挙で、貴乃花親方が所属する一門を離脱し、相撲界の慣例を覆す形で立候補して当選したニュースです。このニュースでは、相撲界に課題が山積している中で、貴乃花親方が理事を目指した背景などについて、もう少し触れてほしかったと感じましたが、日本相撲協会の理事選挙をめぐる慣例や、投票結果については、わかりやすく伝えていたと考えます。もう1つは、横綱・朝青龍関が酒に酔って知人に暴行したとされる問題により引退したニュースです。このニュースでは、引退に至る経緯やさまざまな反応を伝えるとともに、日本相撲協会の強い姿勢の背景にある危機感についても、記者解説できちんと指摘していました。また、朝青龍関に車中で単独インタビューしていたことは、取材対象者との距離感に配慮が必要と感じられる部分もありましたが、日ごろの取材の中で培った信頼関係が実ったものとして評価できると考えます。
 番組については、NHKスペシャル「無縁社会〜“無縁死”3万2千人の衝撃〜」(1月31日(日)放送)や、1月20日(水)から始まった新番組「カンテツな女」、衛星第2で今後の定時化に向けて編成された開発番組の「ザ☆スター」(1月30日(土)放送)や「BSエンターテインメント 西田・武田の笑モード」(2月6日(土)放送)を中心に考査しました。
 そのうち、NHKスペシャル「無縁社会〜“無縁死”3万2千人の衝撃〜」では、NHKが自治体を対象に独自に実施した調査を基に、徹底した取材により、変化する家族や個人と社会の関係に迫っていました。番組の最後で、“無縁”の男性が隣に住む少女と家族同様に交流しながら第2の人生を送る姿を紹介した場面では、ほっとした気持ちになりましたが、“無縁社会”を解決していくことの難しさがよく伝わる内容でした。視聴者にも非常に強いメッセージを送っていたと考えます。これに関連して、「ニュースウオッチ9」では、1月6日(水)から12回にわたって、シリーズ 特集「“無縁社会”ニッポン」を放送していました。このシリーズについては、全体を通して見ごたえがある内容だったこととあわせて、“無縁社会”の問題について視聴者とともに考えようとするNHKの姿勢をよく伝えていたことを評価します。
 衛星放送の開発番組について、「BSエンターテインメント 西田・武田の笑モード」は、長時間の番組の中に笑いやパフォーマンスが盛りだくさんで、西田敏行さんと武田鉄矢さんのダブルホストの魅力もよく伝わり、楽しめました。ただ、ニュースショー仕立てのコーナーでは、取り扱う事柄や笑いについて、十分な配慮が必要だと思います。「ザ☆スター」は、谷村新司さんの音楽家としての魅力や人柄が視聴者によく伝わる内容でした。今回、スタジオショーの“招待客”という設定で、20人ほどの出演者がいましたが、今後は“招待客”をうまく生かした演出をさらに工夫し、より見ごたえのある長時間番組として内容に磨きをかけてほしいと思います。
 次に、その他の個別のニュースについて報告します。
 2月8日(月)、正午のニュースで、キリンとサントリーが経営統合を断念したことを一報しました。このニュースについては、その日の「NHKニュース7」や「ニュースウオッチ9」、翌朝の「NHKニュース おはよう日本」などを通して、交渉決裂の理由をわかりやすく説明し、業界を取り巻く現状についても記者解説で伝えていました。
 平成13年に兵庫県明石市で、花火会場と駅を結ぶ歩道橋に群衆が殺到したことが原因で多くの死傷者が出た事故に関して、1月27日(水)、検察が不起訴とした明石警察署の元副署長が、検察審査会の2度目の議決により起訴されることになりました。法改正により検察審査会の権限が強化されてから、審査会が2度議決したことで検察の判断が覆されて起訴が決まったのは、全国で初めてです。このニュースについては、当日の午後5時55分にスーパー速報し、直後の午後6時のニュースで伝えるなど、独自情報により他社に先駆けて報道していました。
 1月21日(木)の正午のニュースで、中国の2009年10〜12月のGDPが前年比で10.7%の伸び率になり、日本を抜いて世界第2の経済大国になると見られることを伝えました。さらに当日の「NHKニュース7」や「ニュースウオッチ9」で、中国国家統計局長の会見や日本の財界人のコメント、上海からのリポートなどにより、中国の急成長を日本の経済界がどうとらえ、対応しようとしているかについて、具体的に伝えていました。
 ほかにニュースとしては、バンクーバーオリンピックや足利事件の再審、鳥取県と埼玉県で別々に発生した連続不審死事件などの項目を考査しました。
 続いて、個別番組について報告します。
 NHKスペシャル シリーズ「ミラクルボディー」の第1回「滑降 時速160km 極限の恐怖に挑む」(2月7日(日)放送)では、アルペンスキーで“滑降の王者”と称されるノルウェーのアクセル・スビンダル選手の強さについて、最新技術を駆使して分析していました。その速さの秘密を、ライバル選手と比較しながらわかりやすく分析しており、大事故の恐怖を克服したことで彼の脳の働きが強化されたという脳科学者の指摘は、興味深いものでした。滑降が極限状態に置かれた人間の闘いであることが、よく伝わりました。
 2月11日(木)、祝日の朝に放送した「生活ほっとモーニング ホリデー・スペシャル」は、平成22年度にスタートする朝の情報番組「あさイチ」の開発に向けたパイロット版としての放送でした。民間の天気予報サービスや住宅ローンの借り換え方法など身近な情報に加え、東京・八王子からの「産直イチおし」中継や、本場シェフ直伝の簡単スパゲッティの紹介など、ためになり楽しめる情報が盛りだくさんでした。新年度からも内容をさらに充実させ、視聴者の信頼や支持を拡大していくよう期待しています。ただ、中継では、特産品の情報が宣伝と受け取られないように、今後も十分に配慮してほしいと思います。
 教育テレビで1月19日(火)に放送した、福祉ネットワーク なるほど!なっとく介護「ジャズシンガー・綾戸智恵 母との歩み」では、脳こうそくで倒れた母親のために、コンサートを休止して24時間介護に専念する綾戸さんの壮絶な日々を紹介していました。綾戸さんの体験を通して語る言葉には説得力があり、介護を通じて多くのことを得ていることや、介護する側とされる側が互いに支えあうことの大切さが実感できました。モニターの評価では、「たいへんよい」と「よい」が合わせて86%あり、「あまりよくない」、「よくない」は0%でした。また、母親を映した映像に人権への配慮が感じられた点も、高く評価されていました。
 衛星第1「BS世界のドキュメンタリー」のシリーズ「就任から1年 オバマのアメリカ」のうち、1月27日(水)に放送した「ピンクスリップの恐怖」では、税収が激減し財政が悪化しているアメリカ・カリフォルニア州で、公立学校の3万人以上の教師に“ピンクスリップ”と呼ばれる解雇通知が送りつけられた状況を伝えていました。荒廃しつつあるカリフォルニア州の教育現場の実態がよくわかる内容でした。ただ、カリフォルニアだけでなくアメリカ全体の教育政策の情報も、もう少し紹介してもらえればよかったと思います。そうした点から、シリーズ名に若干の違和感がありました。

(金田専務理事)  「ザ☆スター」では、メイン出演者と交友関係のある方や熱心なファンが“招待客”としてスタジオ出演していましたが、その人選にあたっては、メイン出演者との関係をわかりやすく紹介できる方を選ぶなどの配慮が必要だと思いました。

(4)「第61回日本放送協会放送文化賞」の贈呈
(人事総務局)
 「第61回(平成21年度)日本放送協会放送文化賞」の贈呈について報告します。
 この賞は、昭和24年度に放送開始25周年事業として創設したもので、放送事業の発展、放送文化の向上に功績のあった方々に贈呈しており、これまでの受賞者は今回の受賞者を合わせ、393人となります。
 受賞者の選考は、NHKの今井副会長を委員長に、市川森一(作家・脚本家)、海老澤敏(尚美学園大学大学院特任教授)、大石芳野(フォトジャーナリスト)、末松安晴(国立情報学研究所顧問)、高階秀爾(大原美術館館長)、宮尾登美子(作家)、山折哲雄(宗教学者)の各氏と、副会長のほか6人の役員の計14人を委員とする日本放送協会放送文化賞受賞者選考委員会で行い、これを受けて福地会長が受賞者を決定しました。
 受賞者は次の6人の方々です。

 五木 寛之   (作家)
 今井 秀樹   (中央大学理工学部教授)
 北島 三郎   (歌手)
 澤地 久枝   (作家)
 辰巳 芳子   (料理家)
 鳥飼 玖美子   (立教大学大学院教授)

 贈呈式は、3月19日の「第85回放送記念日記念式典」の中で実施し、受賞者には、佐藤忠良氏製作のブロンズ像「ふたば」と副賞50万円を贈呈します。

(金田専務理事)  昨年の贈呈式では、受賞者の方々に非常に力のこもったスピーチをいただき、その内容をNHKのインターネットサービスのサイトに掲載したところ、たいへん好評でした。今回も同様の企画を実施するのですか。
(人事総務局)  今回の受賞者の方々にも、スピーチの内容をNHKのサイトに掲載することについて、あらかじめご了解をいただいており、昨年と同様にNHKネットクラブのサイトに載せることにしています。


以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成22年 3月 9日
                     会 長  福 地 茂 雄

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