日本放送協会 理事会議事録  (平成21年 9月 8日開催分)
平成21年10月 2日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成21年 9月 8日(火) 午前9時00分〜9時30分

<出   席   者>
 福地会長、今井副会長、金田専務理事、日向理事、溝口理事、
 八幡理事、永井理事、大西理事、関根理事、今井理事、黒木理事

 井原監査委員

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 福地会長が開会を宣言し、議事に入った。
 付議事項終了後、会長から中長期経営課題への今後の取り組みについて
指示があった。

付議事項
1 報告事項
(1)考査報告

2 中長期経営課題への今後の取り組みに関する会長指示

議事経過

1 報告事項
(1)考査報告
(考査室)
 7月下旬から8月下旬にかけてのニュースと番組について考査した内容を報告します。
 最初に、この期間の概況について報告します。
 ニュースについては、衆議院議員総選挙のほか、中国・九州北部豪雨、韓国のキム・デジュン元大統領の死去と北朝鮮の弔問外交、成人年齢を18歳に引き下げるのが適当とした法制審議会の最終報告、日本人初の宇宙長期滞在から帰還した宇宙飛行士・若田光一さんの話題など、24項目に関して考査を行いました。
 このうち、民主党が圧勝した衆議院選挙関連のニュースについて報告します。今回の一連の選挙報道では、公示前から各党の政権公約・マニフェストや選挙の争点などを詳しく伝え、8月18日(火)に公示された後は、注目選挙区の選挙戦の様子など、情報を視聴者にわかりやすく提供していました。開票速報では、出口調査の分析や与野党の獲得議席などについて、わかりやすい画面構成で正確な報道を行い、選挙結果をきちんと伝えていました。また、関連番組についても、「衆院選2009 列島ドキュメント」で、政権交代を生んだ選挙の模様をさまざまな切り口でリポートするなど、今回の選挙戦について的確に解説していました。考査室としては、これらの報道に対し、歴史的転換点となった衆議院選挙とその後の政権移行への動きをしっかりと伝えていたと評価します。
 番組については、この期間に、放送考査は27本、事前考査は45本行いました。特に、8月に放送した“戦争と平和”を考える番組8本について集中考査を実施しました。その中から2本について報告します。
 8月14日(金)放送の「忘れないで、わたしたちの戦争 〜中居正広が聞く戦場の声〜」では、戦争の時代を生きた人々の証言やゲストの話が心に深く刻まれ、若い世代に語り継がねばならない“戦争の悲惨さ”がしっかりと伝わったと思います。聞き手に中居正広さんを起用したことについて、モニターの声ではおおむね好評でした。
 8月2日(日)放送のハイビジョン特集「少女たちの日記帳 ヒロシマ昭和20年4月6日〜8月6日」では、広島県立第一高等女学校に昭和20年4月に入学し8月に被爆するまでの、少女たちのわずか4か月間の学校生活を丁寧に描いていました。ドラマと日記の朗読、インタビューを巧みに織り込んだ構成により、原爆によって奪われたものの大きさがひしひしと伝わってきました。
 ほかにも、名古屋放送局が制作したNHKスペシャル 終戦ドラマ「気骨の判決」(8月16日(日)放送)や、衛星ハイビジョンで放送した青森放送局制作のシリーズ 証言記録 市民たちの戦争「禁じられた避難 〜青森市〜」(8月12日(水)放送)など、地域制作の番組にも優れたものがありました。
 その他のニュースと番組について、いくつか報告します。
 新型インフルエンザの流行関連のニュースでは、8月15日(土)に、沖縄県で国内初の死者が出たことをスーパーで速報し、8月21日(金)の「NHKニュース7」では、全国的な流行期に入ったと厚生労働省が発表したことを、また、8月25日(火)の「NHKニュース おはよう日本」では、不足すると見られるワクチンについて厚生労働省が海外からの輸入を検討していることを伝えていました。一連の報道では、流行の状況を詳しく伝えるとともに、予防方法もきめ細かく具体的に紹介していた点がよかったと思います。
 8月11日(火)の早朝、駿河湾を震源とする震度6弱の地震が発生しました。午前5時7分には、緊急地震速報をデジタル・アナログ放送全12波で伝え、同10分には津波注意報を伝えるとともに、被害の状況や交通への影響などについても的確に伝えていました。この地震では、震源が東海地震の想定震源域内だったため、これとの関連性が懸念されたことから、気象庁が初めて「東海地震観測情報」を発表しました。東海地震との関連性に関しては、当日午前11時台に特設したニュースの中で、東海地震に結びつくものではないことをスーパー速報するなど、気象庁からの中継を交え、迅速かつわかりやすく伝えていました。
 裁判員制度が導入されて初めての裁判員裁判が、8月3日(月)に東京地方裁判所で開廷し、8月6日(木)に判決が言い渡されました。ニュースでは、この間「同時進行 裁判員裁判」として地裁前から中継し、従来の裁判との違いや裁判員選出の過程、審理の状況から判決までを刻々と伝えていました。制度の課題等についても、裁判員や法律家の話を交えながら、記者解説などできちんと伝えていました。
 番組では、広島放送局が制作した8月6日(木)放送のNHKスペシャル「核は大地に刻まれていた 〜“死の灰”消えぬ脅威」で、広島の科学者が、旧ソビエトの核実験場が置かれていたカザフスタン・セミパラチンスク周辺で行った“死の灰”による被ばく実態調査を通して、“死の灰”が、核爆弾の爆裂で放射能を浴びる“直接被爆”に匹敵する影響を人体に与えることを明らかにしていました。視聴者に核の脅威をまざまざと伝えていたと思います。
 8月7日(金)放送の「渡辺謙 アメリカを行く 星条旗の下に生きたヒバクシャたち」では、アメリカに暮らす日系被爆者を、俳優の渡辺謙さんが取材していました。アメリカ在住被爆者の、原爆を投下した国に生きる苦悩や語りにくい思いをよく引き出しており、渡辺さんが被爆者の心情を自らの言葉で伝える姿に共感できました。ただ、被爆者がなぜ帰米したのか、何人かについては紹介されていましたが、もう少し事情が知りたかったと感じました。
 日本の、これから「“核の時代”とどう向き合うか?」(8月15日(土)放送)では、アメリカのオバマ大統領がチェコ・プラハで“核のない世界をめざす”と宣言した一方、北朝鮮が核実験を行っていることなどを受けて、今後日本が核とどう向き合うべきか、市民とゲストが討論を展開していました。核問題への関心が高まる中での議論は、たいへん時宜を得ていたと思います。ただ、議論が“言いっ放し”で終わっていた場面もあったことは残念でした。設問や議論の進め方に慎重な配慮が求められるテーマであり、唯一の被爆国として核廃絶をめざしてきた日本の歴史を踏まえたうえで、もう少し情報を整理して提示してもよかったのではないかと考えます。
 今回、“戦争と平和”を考える番組について考査しましたが、全体を通して、戦争を体験した世代の高齢化が進む中で貴重な証言を記録する取り組みが、しっかりなされていたと評価します。


2 中長期経営課題への今後の取り組みに関する会長指示
(会 長)
 執行部の役員の職務として、その時々に発生する案件の処理や、各部局から上がってくる提案の審議、報告事項の検討は当然ですが、同時に、中長期的な経営の課題について、問題点を整理し討議していくことが必要です。検討すべき課題はたくさんあります。そうした中長期の課題は、どの役員が担当するというものではなく、それぞれが問題意識をもって提案し、理事会・役員会の場だけでなく、随時に勉強会を開催するなどして議論を深めていくべきだと思います。
 「平成21〜23年度 NHK経営計画」の初年度である今年度も半年が過ぎました。残り2年半のうち最後の1年は、次の経営計画を策定する年度となりますが、その1年だけで策定するのは、とても無理なことだと思います。その前の1年半のうちに課題を整理して、下準備が必要なものは準備しておかなければなりません。次の経営計画を執行する時には私の任期が過ぎていますが、経営というものは永続していくものであり、駅伝ランナーのつもりで引き継いでいかなければならない。それが経営者に課せられた大事な仕事だと思っています。私は、経営の仕事は目覚まし時計を作ることだと考えています。“今は何をすべき時です”と組織に告げることも大事ですが、“何時になったら誰が起きて何を行う”ということをあらかじめ設定しておく、そういう目覚まし時計を作っておくのが、経営のもっと大事な仕事です。
 課題はいろいろとあります。最も大きく、難しい課題のひとつが、この放送センターの建て替えです。現在の放送センターは、各棟が順次増築される形で建てられてきました。いちばん古い棟で築44年が過ぎ、本館の建物も36年たっています。それを建て替える時には、一つ一つ建て替えていくのではなく、トータルな設計を検討しなくてはいけない。間違いなく膨大な経費がかかります。現状の決算では一定の繰越金がありますが、いずれそれをどう使うべきか、検討を迫られることになります。その時、放送センター建て替えの膨大な出費に向けて準備が必要だということは、考えておかなければなりません。この10月には、2016年のオリンピック開催地が決まります。もし、東京への招致が決定すれば、放送センターをどうするのかという話が出てくるでしょう。どこから取り組んでいいかわからないほど大きな課題ですが、きわめて重要です。そこで、放送総局長である日向理事と技術部門担当の永井理事に、課題の整理をお願いしたい。2人が中心となって必要となる検討項目を提出してくれれば、その検討は全員でやります。執行部だけでなく経営委員会も含めて、知恵を出し合っていきたいと思います。
 それから、受信料収入の還元という課題があります。経営計画で、平成24年度に受信料収入の10%を視聴者のみなさまに還元することを約束しました。しかし、どういう形で還元するかは決めていません。私は、今すぐ決める必要はないと考えています。なぜなら、完全デジタル化によって、視聴者のNHKへの接し方が変わってくるからです。衛星放送は2波に再編することを検討していますし、若者の“テレビ離れ”ということが言われていますが、“映像離れ”はせず、パソコンやモバイルでNHKのコンテンツを見る形に変わるのだと思います。要するに、NHKが3−Screensを展開する中で、視聴者の動向を見極めたうえで、最後の段階になってから最も適切な受信料の体系や金額を決めればいいと思います。ただ、それに向けて事前に準備しておくべきことがありますので、それは営業担当の大西理事が中心となって検討課題を提出してほしいと思います。
 関連団体についても課題があります。関連団体の課題は、関連団体のことだけを考えても解決できません。NHKの放送が大きくかかわってきます。だから、関連団体担当の溝口理事と日向理事の2人が中心となってください。日向理事からは、放送に掛かる経費をトータルコストで見て最適化していくという提案を受けました。関連団体は、NHKから業務委託を受けて番組を制作する際、その適正な単価を設定する必要から、すでにトータルコストで計算しています。一方で、NHK本体では、放送する番組に値段をつけるわけではないので、これまで直接費を中心に予算管理しており、間接費を含むトータルコストの管理が徹底されていませんでした。しかし、NHK本体でも全局的なトータルコストの導入に向けて、これから検討をスタートさせます。まさに中長期的な課題として取り組むべきことです。
 今、いくつか思いつくままに挙げてきましたが、たくさんある課題の中の一部に過ぎません。実は、昨日気がついた検討課題もあります。昨日、大西理事から、衛星放送の契約活動に関連して、コールセンターの受付体制を強化する必要があるが、それによって営業経費が増加するという説明を受けました。しかし、私は、コールセンターの経費は営業経費なのかという疑問を持ちました。NHKの経営は、“視聴者視点”を掲げています。“視聴者視点”ということは、お客様の声を経営に直結させなければなりません。お客様からいちばん身近に生の声をいただくのがコールセンターです。その経費は、営業の枠内で勘定すべきものでしょうか。経理上どう扱うのが適切なのか議論してほしいと思います。
 こうした中長期の経営課題について、役員の皆で勉強していきましょう。例えば、理事会・役員会の終了後に時間が取れれば、そうした勉強の場にあてたいと思います。繰り返しますが、目覚まし時計を作るのが経営の仕事です。“目が覚めたら仕事すればいい”というのではなく、“何時に目を覚まして何をする”というものを作る仕事をしていきましょう。

(日向理事)

 放送センターの建て替えについては、今は東京・渋谷の放送センターにあらゆる機能が集中していますが、そのまま同様の設備・機能で建て替えるのが本当によいのか、地域放送局のあり方とも絡むこともあり、すでに一部は検討を始めている部分もあります。

(永井理事)

 それについては、皆で議論を進めやすいよう、たたき台としての案をいくつか提示したいと思います。

(溝口理事)

 関連団体については、まず、NHKが制作するコンテンツ量がどれだけかという点から考えていくべきだと思います。それが役割分担のスタートです。特に衛星放送は関連団体のパワーによって支えられていますので、衛星放送を2波にしたときの編成や外部制作番組の調達を増やすボリュームなどが早めに決まらないと、関連団体経営の見通しが立ちません。

(日向理事)

 1件、提案があります。現在、NHKのほとんどすべての業務について、職員だけではなく外部の人たちと一緒になって仕事をしています。その中には、請負契約を結んでいる人もいるし、派遣の人も、いわゆる短期雇用の形で契約している人もいて、その処遇はさまざまです。いずれは、社会の要請に応じて、外部の人たちの働き方のありようや、それに対する処遇のしかたを整備しなおす必要が出てくるのではないかと考えられます。今のうちから少しずつ検討を始め、よりよい制度を探していく必要があると思います。

(会 長)

 それについては、労務・人事担当の関根理事に課題の整理をお願いします。皆で勉強したいと思います。
 こうしたさまざまな課題について検討していくための、全体の作業計画やスケジューリングは、金田専務理事にお願いします。その下で、総合企画室〔経営計画〕が担当してください。今後4〜5年の取り組みに向けて課題を整理し議論しながら、経営の仕事をより高めていきましょう。



以上で付議事項を終了した。
上記のとおり確認した。
      平成21年 9月29日
                     会 長  福 地 茂 雄

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