日本放送協会 理事会議事録  (平成18年 9月12日開催分)
平成18年 9月29日(金)公表

<会 議 の 名 称>
 理 事 会

<会  議  日  時>
 平成18年 9月12日(火) 午前9時00分〜9時45分

<出   席   者>
 橋本会長、永井副会長、原田理事、畠山理事、小林理事、金田理事、
 中川理事、小野理事、衣奈理事、石村理事、西山理事

 古閑監事、坂野監事

<場         所>
 放送センター 役員会議室

<議        事>
 橋本会長が開会を宣言し、議事に入った。

付議事項

1 審議事項
(1)情報通信審議会第3次中間答申に対する総務省の意見募集への対
   応について

2 報告事項
(1)	考査報告
(2)	部外解説委員の委嘱について
(3)	民事手続きの進め方について

議事経過

1 審議事項

(1)情報通信審議会第3次中間答申に対する総務省の意見募集への対
   応について
(中川 理事)
 情報通信審議会第3次中間答申に対する総務省の意見募集への対応に
ついての審議をお願いします。
 総務省は、8月1日付けで、情報通信審議会から「地上デジタル放送
の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」について第3
次中間答申を受け、8月2日、これに対する意見募集を開始しました。
 この中間答申は、2011年7月の地上テレビ放送の完全デジタル化
を達成するために、「放送網整備」、「受信機普及」の両側面から課題を明
示するとともに、その解決に向けて行政が果たすべき役割について提起
しています。
 NHKは、公共放送として地上デジタル放送の推進にこれまでにも増
して積極的な役割を果たしていく立場から、5項目の意見を提出したい
と考えています。
 1点目は、中継局ロードマップの具体化に対する意見です。
 今回、民間放送事業者の中継局整備計画について、一定の要件のもと
に公的支援が行われる方向が示されたことは、地域における民放の中継
局整備を加速するものと期待されます。厳しい財務状況の中にあってよ
り効率的な中継局の建設を行うために、多くの中継局を民放との「共同
建設」で整備しようとしているNHKとしても、より多くの地域の視聴
者の皆様に地上デジタル放送のサービスを早期にお届けできることにな
ると考えられることから、望ましいと考えます。
 2点目は、補完措置の扱いに対する意見です。
 中継局以外の「補完手段」を積極的に活用していくことは、地上デジ
タル放送のサービスを早期に「あまねく日本全国において受信できる」
よう責任を果たしていくために、公共放送であるNHKとしてきわめて
重要であると考えています。したがって、放送事業者自身や通信事業者、
地元自治体などが適切な「補完手段」をできるだけ柔軟に活用していけ
るよう、行政が率先して基本インフラ環境、必要な法制度、設置者・利
用者の要件、(無線を使う補完手段の場合は)免許基準・条件等の明確化
など、諸環境を整備していくことが必要であると考えます。
半面、多様な補完手段を柔軟に適用できるようにするあまり、補完手
段によって視聴者が享受できるサービス品質に、直接受信の場合と比べ
て著しい差異が生じてしまうような事態を招かないように留意すべきで
あると考えます。
 3点目は、地域の共同受信施設のデジタル化対策に対する意見です。
地域における共同受信施設(いわゆる「共聴施設」)のデジタル化につい
て、住民の負担が著しく過重になるものについては国等による支援措置
が必要であるとしたことについては、「デジタルデバイドの解消」が地上
デジタル放送推進の目的のひとつとなっていることから妥当であり、こ
うした措置により中継局の整備が困難な地域においても早期にデジタル
放送サービスを享受できる環境を整備することに資するものと考えます。
NHKとしては、「アナログ時にNHK共聴が果たしてきた責任と同様
の責任を引き続き果たしていくことを基本として検討を行う」と中間答
申で述べられていることを重く受け止め、公共放送として必要な措置を
講じていく考えです。
 4点目はコピーワンス問題に対する意見です。
 いわゆる「コピーワンス」に関する問題は、一部デジタル録画機で「ム
ーブ」機能の不全が頻発したことに端を発しており、機能改善を図るこ
とによって、その苦情の多くは解消できるものであり、本来、地上デジ
タル放送の推進を旨とする本中間答申のテーマにそぐわない、全く異質
な問題であると考えております。放送事業者としてこれまで受信機メー
カーに対し、機能改善の具体案について提案し議論してきたのも、それ
によって早期に実質的に事態を打開できると考えたからです。
 今回の中間答申において、「ムーブの失敗など視聴者からの不満を解
消するため、受信機側の改善に具体的な対応のあり方を検討」と明記さ
れたことは、早期に視聴者、消費者の混乱や不安を取り除く意味で、き
わめて有意義であると考えています。また、中間答申の中で現在のエン
コーディングルールとは異なる新たなルールを形成することは技術的に
可能であり視聴者ニーズに沿って新たな可能性を模索する姿勢も必要、
と提起されたことは、それが実現すれば現状よりもさらに高い次元で、
「視聴者、消費者の利便性」と「実効的なコンテンツ保護」とを両立で
きる方策を見出すことにつながるとも考えられることから、望ましいも
のであると思います。
 これまで日本においては、NHKおよび地上民放が良質の映像番組(コ
ンテンツ)を継続的に制作、放送してきました。国を挙げて知的財産の
振興、コンテンツ産業のさらなる活性化が求められる中で、放送事業者
は今後もその中核的な担い手として、責務が一層重くなっていると受け
止めています。コンテンツが視聴者に届けられる最初のアウトプットで
ある地上デジタル放送において実効的なコンテンツ保護が施されなけれ
ば、知財の散逸を招き、コンテンツ産業や新たな映像文化の発展にも大
きな悪影響を及ぼす懸念があります。
 放送事業者としては、何よりも、より質の高い見応えのある番組を数
多く放送していくことこそが視聴者の利便性にお応えすることであり、
地上デジタル放送の普及のためにも最善の方策であると考えています。
またそれが結果的に、日本全体の新しい産業や文化の振興にも貢献する
ことにつながるものであると思います。そのためにはデジタル放送にお
いて実効性の高いコンテンツ保護が講じられることが必要不可欠である
と認識しています。
 5点目は、番組調達の多様性に対する意見です。
 NHKは、公共放送としてより多彩な番組をお届けすることが視聴者
の多様なニーズに応え、放送文化の一層の向上につながると考えて、従
来から視聴好適時間帯の番組を含めて多くの番組について、NHKの職
員が企画制作するだけでなく、外部の番組制作会社からもオープンに番
組の企画・提案を募集し、NHK内外の番組制作者が提案段階から競争・
競合する中で、より多様で質の高い番組を制作、放送してきました。こ
うした中からそれぞれの番組制作会社のノウハウを活かした、斬新で見
応えのある番組を視聴者にお届けしてくることができたと考えています。
また新しいデジタルコンテンツの制作者(クリエーター)を発掘、育成
することをめざした番組を継続的に放送したり、イベント等を実施して、
多くの新人クリエーターたちに映像作品の発表の場を提供してきました。
NHKは今後も放送番組の質の向上と斬新な番組・コンテンツによる新
たな放送文化の創造に努めることが公共放送の変わらぬ使命であり、視
聴者の信頼や親近感を高めることにもつながるものと位置づけ、できる
だけ広く番組制作者やクリエーターに創造の場を提供していきたいと考
えています。
(会 長)原案どおり決定します。

2 報告事項

(1)考査報告

(考査室)
 18年7月〜9月上旬に放送されたニュース・番組について、概要を
報告します。
 まず、紀子さま男子ご出産についてです。秋篠宮妃の紀子さまは9月
6日、男のお子さまを出産され、皇室にとって41年ぶり、皇位継承順
位3位の男子誕生となりました。NHKでは、午前8時30分から11
時54分まで「ニュース」を特設しました。8時47分には速報スーパ
ーで「男のお子さまご出産」を伝え、10時30分から、宮内庁の皇室
医務主管、手術した病院長の会見の模様を中継するなどしました。また、
「正午ニュース」は時間を40分間に拡大しました。ご出産を速報し、
その後の報道や幅広い各界の喜びの声を中継を交えて伝え、皇室典範の
改正をめぐる論議についても詳しく解説しました。モニターのみなさん
からは、「多角的な報道で、長時間の報道も終始冷静であった、安心して
見ていられた」などのご意見がありました。
 それから9月4日、証券取引法違反の罪に問われたライブドアの堀江
貴文元社長の初公判が開かれたニュースについてです。午前9時55分
から20分間「ニュース」を特設し、東京地方裁判所前から記者の解説
を交えて中継を行いました。「NHKニュース7」で検察側の冒頭陳述と
弁護側の反論を伝えました。また、裁判は大型の経済事件としては初め
て、争点整理という手続きが採用されたため早いペースで進み、来年の
2月ごろには判決が出るのではないかと説明しました。「ニュースウオ
ッチ9」では、東京地検元特捜部長 熊崎勝彦氏が出演し、これまでの
成り行き、注目すべきポイントについてわかりやすく説明しました。
モニターのみなさんからは「争点整理の説明が非常にわかりやすかっ
た」という感想が寄せられました。
 次に、終戦の日 靖国参拝に関するニュースについてです。8月
15日、小泉首相の靖国神社参拝を、午前5時42分にスーパー速報
しました。その後、7時台の「NHKニュース おはよう日本」は地域
放送を休止し、8時15分まで枠を広げ、首相が本殿に昇って参拝する
姿をヘリコプターからの映像を交えて、中継しました。その後、9時
44分から10時3分まで「ニュース」を特設して首相会見を中継し、
「NHKニュース7」では、中国の外相や韓国外交通商省の抗議表明も
伝えました。モニターのみなさんからは「中国、韓国の反応も素早く伝
えていて、状況把握に役立った」、「いろいろな立場の人々の意見を公平
に紹介していて良かった」などのご意見がありました。
 7月31日、埼玉県ふじみ野市の市営プールで、小学2年生の女の子
が給水口から吸い込まれて亡くなった事件については、夕方5時の「ニ
ュース」で、プールの水を抜くなどして、救出作業が進められている模
様を伝えました。その日の「ニュースウオッチ9」で、女の子の死亡が
確認されたことを伝え、翌日の8月1日の「NHKニュース おはよう
日本」では、前夜の会見で、ふじみ野市長が謝罪する様子を伝えました。
全体的に丁寧に取材していますが、現場からの中継などがあれば、さら
に厚みが出たのではないかと思います。
 8月16日に北方領土の貝殻島付近で根室の漁船が、ロシア国境警備
庁の船に銃撃されて、乗組員1人が死亡、漁船は国後島に連行された事
件については、午前9時41分に「北海道根室の漁船 ロシアにだ捕 銃
撃で1人死亡 海上保安庁」と速報スーパーをしました。その後「正午
ニュース」、「NHKニュース7」などで銃撃についての日本側、ロシア
側双方の見解の違いや、現場の領土問題を背景に漁業資源をめぐる対立
が続く水域であることを詳しく伝え、モニターのみなさんからは「事件
の背景や経緯を詳しく説明していたのでわかりやすかった」などの声が
寄せられています。
 続いて、いくつかの番組について報告します。
 まず、NHKスペシャル「調査報告 劣化ウラン弾〜米軍関係者の告
発」(広島放送局制作 8月6日放送)についてです。劣化ウラン弾は、
湾岸戦争で初めて使われました。戦車を貫通するほどのすさまじい破壊
力を持ち、コソボ紛争やイラク戦争にも使われ、粉じんを浴びた住民や
兵士に今、がんや白血病が多発しています。この番組は、劣化ウラン弾
の開発に携わった科学者や元軍人の証言や映像を交え、その恐怖と実態
に迫りました。モニターのみなさんから「貴重な映像の発掘、取材力に
感心した。科学や医学に関する専門的な内容だったけれどもCGを使っ
てわかりやすく構成されていた」などのご意見があり、好評でした。
 次に、NHKスペシャル「日中戦争〜なぜ戦争は拡大したのか〜」
(8月13日放送)についてです。この番組は蒋介石の日記などの新資
料や元兵士の証言をもとに、丁寧に取材を重ね、日中戦争が拡大して行
った経緯を描き出しました。モニターのみなさんからは「貴重な資料の
収集力に感服」、「戦争が拡大していった過程がよくわかった」、「NHK
はこの種の番組で語りべの役割を果たしてもらいたい」などの感想が寄
せられました。
 翌日のNHKスペシャル「日中は歴史にどう向き合えばいいのか」 
(8月14日放送)は戦後の日中の外交における戦争責任や歴史認識の
課題を検証し、これからの日中関係のあり方について有識者が討論しま
した。課題が冷静に分析され、わかりやすく示唆に富んだ内容でモニタ
ーからもたいへん好評でした。
 日本の、これから「もう一度話そうアジアの中の日本」(8月15日放
送)は、13日の日中戦争、14日の戦後の日中外交を扱った「NHK
スペシャル」を受けて展開しました。首相の靖国参拝などアジア諸国と
の間に多くの課題を抱える日本に、今後アジアとどう向き合うのか、去
年に続き市民を交え討論しました。モニターのみなさんからは、「さまざ
まな人の考えを聞くことができる興味深い番組だった」という感想があ
った反面、問題が非常に複雑で、市民、専門家それぞれの持っている情
報量などの違いもあり、「今後どういうふうに議論を深めていくかを検
討してほしい」というご意見もありました。
 次に、「ブログ社会の落とし穴」(8月4日 ETV 前11:00〜
11:30)についてです。この番組は、主に中学生を対象にネット社
会の便利さと陥りやすい落とし穴を伝えた夏の特集番組です。今回は、
今若い人に人気のブログを取り上げました。ブログを作る上で、個人情
報を保護すること、著作権を侵害しないこと、他人を傷つけてはいけな
いことをドラマ仕立てで伝えました。モニターのみなさんからは、「ドラ
マになっていてわかりやすかった」、「進行の中谷日出解説委員のコメン
トも要点がわかりやすくまとめられていた」などのご意見がありました。
 ハイビジョン特集「あの夏〜60年目の恋文」(8月8日 BShi 
後10:30〜12:00)は、戦時下の昭和19年の夏に、奈良県の
ある国民学校で、4年生を担当した女性教育実習の“先生”に淡い恋心
を抱いた生徒が60年近く過ぎて「NHKアーカイブス」を見て先生の
消息を知り、その生徒が先生に手紙を出したことから文通が始まり、再
会を果たすという、ドラマとドキュメンタリーを融合させた番組です。
モニターのみなさんからは「ドキュメンタリーではあるが、恋愛小説の
ような話で、深い感動と満足感を覚えた」、「再現映像も適切で当時の状
況が非常に理解できた」とたいへん好評でした。
 この番組は、9月16日に総合テレビで70分に再構成して放送され
ます。
 最後に、BSドキュメタリー 証言でつづる現代史「大韓航空機爆破
事件〜キム・ヒョンヒ拘束の舞台裏」(7月29日 BS1 後10:
10〜11:00)についてです。今から18年前の1987年11月
に大韓航空機がミャンマー沖で爆破されて、乗客乗員全員が死亡した、
大韓航空機爆破事件の犯人の1人キム・ヒョンヒが2日後にバーレーン
で拘束されるまでの様子を描いた番組です。容疑者の拘束に成功した様
子が、当時の日本大使館員砂川昌順氏の証言や再現シーンにより、ドラ
マのような緊迫感を持って描かれています。モニターのみなさんからは、
「まるでサスペンス映画のような緊迫感が伝わった。事件解釈に多大な
役割を果たした砂川さんの行動力と使命感に感服した」などの感想が寄
せられ、たいへん好評でした。

(会 長)  「ブログ社会の落とし穴」では、個人情報を保護するこ
      とや他人を傷つけてはいけないなどということを、わかり
      やすく番組にしていたと思います。NHKとしては、社会
      ルールを守ることの大切さを訴える番組などを積極的に放
      送していくべきだと思います。また、そうした視点からも
      考査してほしいと思います。
(原田理事) 最近の飲酒運転が後をたたない問題なども、社会ルール
      を守る意識の欠如によるものだと思います。8月1日にク
      ローズアップ現代「崩壊?日本人のモラル」で、モラルの
      低下について警鐘を鳴らす番組を放送しました。今後もこ
      うした番組を放送していきたいと思います。

(2)部外解説委員の委嘱について
(石村 理事)
 部外解説委員の委嘱について報告します。
 平成18年10月1日付で、五十嵐 公利氏を部外解説委員に委嘱し
ます。任期は1年です。
 五十嵐氏は、政治部記者をはじめ、アメリカ総局長、解説委員長など
を歴任した後、平成15年9月に退職し、解説委員室で契約職員として
業務にあたっていました。今後、国内政治だけでなく、アジア、アメリ
カ、ヨーロッパなど海外での豊富な取材経験に基づいて、政治・外交の
両面を掘り下げて解説していただくため部外解説委員として委嘱するこ
とにしました。

(3)民事手続きの進め方について
(営業局)
 民事手続きの進め方について報告します。
 受信料を公平に負担していただくために、くり返しお宅にうかがった
り、文書をお送りするなどして受信料制度について、誠意をもって説明
しご理解を求め、お支払いをお願いしています。それでもお支払いいた
だけない場合に放送法を遵守する立場から民事手続きによる支払い督促
の申し立てを今後進めて行きたいと考えています。具体的な手続きにつ
いては経営委員会にも報告しながら進めたいと思います。

上記のとおり確認した。
      平成18年 9月26日
                     会 長  橋 本 元 一   

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