第8回「デジタル時代のNHK懇談会」議事録

笹森委員  今のお話では、だいたいみんな同じ気持だと思います。山内さんのお話に賛成しますが、社会がものすごく変わるという状況の中で、世帯か個人かという部分で言うと、NTTの電話から施設電話が無くなっていくのです。家庭に付けている電話がほとんどなくなる。そのことによって何が起きるかというと、電話番号を案内するための登録をしないという人がたくさん増えます。携帯電話はいちいち登録しませんから。そうなると、世帯単位から個人単位に代わっていくのです。しかし、テレビの場合には世帯が残ります。そういう意味では座長のおっしゃられた選択制という方向を加味しながら、個人をどう見るかということを見ておいていいと思います。
 言われたように、公共でいいということを、みんなが同じように思っているはずですから、そうなると、受信料を取ることにあまり腰を退かないでください。受信料を取っていいのです。および腰にならずに、きちっと前に出していく。そのための体系とか種別をどうするのか。何回もこの話は出ていますけれども、一つだけ肝心なのが抜けていると思うのは、「いくらならいいのですか」ということです。
 この資料の6ページを見ますと、昭和30年代、テレビが入って、受信料が200円から300円台が続きます。今、いくらかといったら、カラーの衛星、訪問集金では2340円で、この300円時代と1000円時代、2000円時代を見ていくと、初任給の比較をすると何パーセントですかというところをみると、今のほうが圧倒的に安いのです。300円時代は初任給1万円です。いまは20万円ですから、比率から言っても圧倒的に安い。そのときに、ありがたみと、利便性と選択制の中で払ってもいいよ、高いとも思わないよ、ということを打ち出せるかどうかだと思います。

新開委員 受信料体系は15年間、見直しが無いですね。この15年間に社会がどれだけ変わったかというのは、NHKはどれだけ感じられているのでしょうか。というのは、私は「紅白」でかなり出てきているのではないかと思うのです。80%の人たちが見ていた時代から昨年は40%。それだけテレビを見る人々の気持が変わって、昔はみんなで「紅白」を見ようというのが年末のあり方でしたが、今はそれぞれが見たい番組を見るし、視聴者の心の移り変わりがわかります。
 もっと社会の潮流を読まないと、昔のように納めてくれるからというだけで15年来ていますが、すべての企業も努力に努力を重ねないと成り立っていかない時代です。国民年金や保険料を払わない人もいる。受信料を払っている人にいいNHKであるかというと、いつまでも払わない人は放っておかれたままで、かなり不公平な部分でがっかりされているのです。
 今回、新生プランが出たり、会長さんもテレビに出られたり、最近の歳末助け合いでも、こういうふうにお金を使うのですと説明がありました。「とてもやさしい会長さんですね」と、我が家に買い物に何百人と来るお客さんからも話が出ていました。そういう中で、「紅白の歌でも応募してください」とみなさんにお願いしました。最終的に一人一人の思いが伝わるようにNHKは努力していると思っていたところで、みのもんたさんが司会をするというので、非常にどんでん返しにあったというところです。見ている人たちに、自分たちのNHKだと惹きつけておきながら、最後はそうなるのだったら、私たちは応募しなかったのに、と言われました。
 世の中の人たちの気持を把握できていない部分があります。私は一般の生活の中に居ますし、朝から晩までテレビを見る人とばかり会話をします。私も起きたらNHKのニュースから始まります。すばらしい番組があると、NHKはすばらしいと言う人も山ほど居るのに、なぜこういうことをポッとなされるのか、がっかりする部分が出てくるのです。
 「今度行ったらしっかり言ってください」と、新聞の切り抜きもいっぱい持ってきました。多くの人から、NHKは「新生プラン」で進んできたのに年末にこんなことになって嫌だなと、言われましたので、本当の意見を言わせていただきました。受信料を真剣に考えていかないといけないと思います。

山内 (純) 委員 一つだけ質問があります。5ページの学生割引、単身赴任と書いてあるところの同一生計、別住居のところの3つ目で、「他企業でも実施」と書いてありますが、企業の名前を挙げて、これはどういう意味ですか。私は聞き逃していたかもしれません。

小林理事  他企業の実施ですが、これは割引制をいろいろな形で他企業はやっていますという単純な話です。JRその他ですね。一つはファミリー割引を最近は盛んにやっていますが、そういうものがいろいろありますので、イメージしながらやっていこうということです。

山内 (純) 委員  わかりました。今回、見直しということで、具体的にこうやって学生とか単身赴任の方、一番、不満を持っていた人たちに対して、こうした具体的な見直しの策が出たというのは、非常に国民からの支持が得られると思います。こういったことも含めて、NHKがわかりやすくアピールしていることは支持を得られると思います。同時に放送法を変えるか、変えないかという議論もありますが、実際、こういう状況で、やはり払わないといけないということを、この機会にわかりやすくアピールしてあげるのも支持を得られるツールになると思います。

辻井座長  受信料の問題は、前回と同じで、個人化という方向が一つあるという話が出ておりますが、学生割引と単身赴任割引の導入で進められてはどうでしょうかということだと思います。

吉岡委員  藤井さんが2番目におっしゃった、単に怠慢でということで払わないのではなくて、新しい貧困層が出てきていて、この層の人たちは払いたくても払えない状況が生まれている、という問題は、案外、無視できないと思います。僕も取材などであちこち行きますが、本当にこんな低収入でよく生活できるなという人たちが随分増えていて、驚かされることがあります。その人たちは払いたくなくて払わない、というのではないのです。収入がなくて、実際的に払えない人が結構いる。だから、払わなくていいですよ、と言うべきだと言っているのではないですが、たとえば、それはどこから線引きするのかむずかしいにしても、単身者とか学生割引を考えると同じような意味で、そういう階層に対しても配慮をきちっとしていますということを示すことは重要だと思います。これは、テレビ文化が戦後日本のある種のまとまりや公共性を作ってきた、この社会がバラバラにならないように機能する文化的装置だったということを考えれば、ますます意味のあることだと思います。何らかの割引制度を考えることが、NHKの姿勢を表現することにもなりうるのではないでしょうか。その階層にいる人たちにとっては、とても大事なことだと思います。

橋本会長  今は、生活保護世帯に対する免除を実施しています。

藤井委員  生活保護の話はわかるのですが、そうではなくて、生活保護も最近は受給基準が大変厳しくなっていて、生活保護を受けていないがそれに近い層は増えているのです。経済的困窮者の一つの目安としては、たとえば住民税非課税者という考え方があります。これは、社会福祉関係の費用負担額の水準とも連動しているのです。これらも含めて研究、検討すべきであり、生活困窮者からの徴収を何となく目こぼしするという考え方だけではいけないように思います。 

小林理事  これまでNHKは、相当、いろいろな縦横マトリックス的に免除を、あるいは対象外にさせていただいているのです。生活保護だけでなくて学校関係や施設などいろいろなところでやっています。
 災害時にもやっているのですが、まさに今おっしゃられたように、確かに「ニュープア」と言っては失礼ですが、本当に違うジャンルの方々が、現に増えてきているのは事実だと思います。
 それに対してどうしていくのか、我々もまさに公共放送の事業体でありますので、十分踏まえて考えていくべきだと思います。
一方で、事業運営のために受信料を確保しないといけないということで申し上げますと、ちょっとした体系の変更をするだけで、数十億、百億という単位で影響を受けるものですから、どうしたらいいのか、全体の財源確保の観点から総合的に考えていかないとだめだと思います。
 先ほどのモバイル系携帯の、サーバー型もそうですが、そういう中で整理すべき必要があると思います。

江川委員  そういう取れるところから取るという山内さんのお話はすごく支持するのですが、共同通信でもパソコンで見るのはただですが、携帯で見るのは有料です。月200円位払っていますから。朝日新聞でも、読売新聞でも見出ししか見られません。やはりテレビといっても携帯電話とテレビとは違う媒体だと考えることも可能だと思います。そういうことで、携帯を持って使う人からは、いただきましょう。その代わり、千何百円という受信料ではなくて、携帯の料金として、たとえば月150円とか200円、300円など、幾らになるのかわかりませんが、いただく。
 だけど、いまは非常に生活に困窮している人からはなるべく少なく取るとか。もう少し現状に合った体系を作り直そうということも必要な気がします。

辻井座長  生活に困窮している方はいろいろあるのでしょうが。そういう人は免除して、その分は、税金でということができると非常にいいと思いますが、それはまたそれで難しい。簡単にはいかない。この間、新聞で80%の方が自分は中の下以上でだいたい生活に満足しているという世論調査があって、わりと満足している人が多いと思ったのですが。それ以下の方という感じでしょうか、二極化している。

吉岡委員  そうですね。

藤井委員  それは間違いないですね、二極化しています。

辻井座長  時間も過ぎましたので、この辺にしたいと思います。貴重な意見をいただきましたので、次の経営計画に何らかの形で反映していただければと思います。次回は1月13日になります。経営計画の内容について説明を受けまして、意見交換をしたいと思います。
 どうもありがとうございました。

−閉会−
        
(6/6) 戻る