放送制度等に関するNHK意見 NHK information
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「BSデジタル・データ放送の実現に向けた制度整備に係る放送法施行規則の一部改正案等」に関する意見 
 
 NHKは、「BSデジタル・データ放送の実現に向けた制度整備に係る放送法施行規則の一部改正案等」に関する郵政省の意見聴取に対し、平成11年7月23日、以下の意見を提出しました。
 
 
○今回の事案のうち、以下については反対します。その他の事案については異議ありません。
・放送法施行規則の一部改正
・放送普及基本計画及び放送用周波数使用計画の各一部変更
・BS−4後発機を用いたデジタル放送におけるデータ放送に係る委託放送業務の認定に係る認定方針

○上記事案に反対する理由等について、各事案とそれに係わる報道資料にもとづいて以下に説明します
 
1.放送普及基本計画及び放送用周波数使用計画の各一部変更について
・NHKに対してデータ放送のための新たなスロットの割り当てを行わないのは不適切である。以下の点を踏まえて、NHKに新たなスロットを割り当てるよう事案の修正を要望する。

 NHKは、BSデジタル放送においてテレビジョン放送とデータ放送を組み合わせ、これまでにない、より豊かで魅力的なサービスを視聴者に提供することによって、公共放送としてBSデジタル放送の普及発展に先導的役割を果 たしていく考えである。
 NHKはデータ放送によって「緊急時に役立つサービス」、「生活をより便利で豊かにするサービス」をコンセプトに、緊急災害情報、ニュース、公共福祉サービス、番組関連情報などのサービスを実施したいと考えている。郵政省がパブリックコメントの結果 を経て今年4月に公表した「NHKの行うデータ放送についての方針」においても、こうしたサービスは一般 の方々や関係者がNHKに期待するものであることが明確にされている。
 にもかかわらず今回の事案では、NHKに対してデータ放送のための新たなスロットの追加割り当ては行わない計画となっている。その理由として報道資料では、データ放送に割り当て可能な周波数が予想される参入希望に対して稀少であるという状況の中で、NHKはすでに割り当てられた伝送容量 の中でデータ放送の実施が可能であること等を挙げている。
 しかし、現在NHKに割り当てられているテレビジョン放送用の伝送容量だけでは、伝送容量 の効率的利用を工夫してもなお、上述のような期待にこたえて公共放送にふさわしいサービスを、視聴者が知りたい時にいつでもほぼ瞬時に見られるよう「便利さ」「スピード」を確保しつつ、魅力的な形で実施するのに十分ではない。
 また、報道資料では、NHKに新たなスロットを割り当てない理由として、特に標準テレビジョン放送については、BSアナログ放送のサイマル放送が本来の性格である点を挙げているが、BSデジタル放送の普及の観点から見れば、現在1300万を超えると推定されているBSアナログ放送の視聴者がデジタル放送に円滑に移行していくことが極めて重要であり、そのためには、標準テレビジョン放送においても、単に同内容のテレビジョン放送を行うだけでなく、デジタル技術を活用したより魅力的な付加サービスを伴っていることが必要である。
 さらに報道資料では、NHKに対する高精細度テレビジョン放送および標準テレビジョン放送用の伝送容量 の割り当てにおいては降雨減衰対策が考慮されていること、同時にこの降雨減衰対策として常時2スロットを使用する必要は必ずしもないことが指摘されている。これは、降雨減衰対策に2スロットを使用する必要のない時間に、その伝送容量 の一部を使用してデータ放送を実施することが可能であることを示唆したものと考えられるが、降雨減衰対策に2スロットが必要な時間帯こそデータ放送によるきめ細かな気象情報やライフライン情報、災害情報等がいっそう必要とされ、そのための伝送容量 が必要となる。
 以上に鑑みれば、NHKに対してデータ放送用の新たなスロットの追加割り当てを行わない今回の事案は不適切なものと言わざるを得ない。NHKに対して、公共放送にふさわしいデータ放送を実施するために必要な伝送容量 を追加割り当てするよう、事案の修正を強く要望する。

・エンジニアリングスロットとして少なくとも1スロットが確保されるよう、事案の修正またはデータ放送に係る委託放送業務の認定にあたっての配慮を要望する。

 デジタル放送受信機では、その不具合を修正するためのソフトをダウンロードすることが一般 的である。また、新しいサービスを始めるためには、受信機に対応するソフトをダウンロードする必要がある。BSデジタル放送の安定的な運用を図るため、またその発展のため、こうしたソフトのダウンロード用スロット(エンジニアリングスロット)として少なくとも1スロットが確保されるよう、事案の修正またはデータ放送に係る委託放送業務の認定にあたっての配慮を要望する。
 
2.BS−4後発機を用いたデジタル放送におけるデータ放送に係る委託放送業務の認定に係る認定方針について
・「NHKと関連性のある団体の取り扱い」は過剰な規制で合理的理由がない。

(1)「特殊法人の観点」、「放送法制度上の観点」について

 NHKが特殊法人であるからといって、直接的にも間接的にも支配力や影響力が及ばない団体までも「関連性」の名のもとに規制の網をかぶせ参入を排除するのは、「特殊法人の観点」、「放送法制度上の観点」からしてもなお過剰な規制である。  そもそもNHKや関係会社からの支配力や影響力があってこそはじめて、上記の「観点」から問題が生ずるのではないか。  支配力や影響力がなくても現行放送制度の枠組みを崩すことになるというのであれば、その理由や崩壊の道筋について具体的に説明すべきである。

(2)3%の基準について

 子会社または関連会社からの出資比率3%を参入拒否の基準としているが、3%では支配力も影響力も及ばない。3%の権利は株主総会招集請求権や整理申立権、それに会計帳簿等の閲覧・謄写 請求権などに過ぎず、支配力や影響力を行使できるものからは程遠い。関連会社の出資先に至ってはなおさらである。

(3)直接出資について

 現行の政令では、NHKの出資対象事業に多重放送を例外として放送事業は含まれていないが、その事実だけでNHKがすでに出資した会社の参入を門前払いする自明の理由にはならない。放送法は、NHKの出資会社に対し政令該当事業だけを営むよう求めているわけではない。
 NHKの直接出資について、すでに適法に出資した団体にまでも3%を超えてゼロを求め、出資の存在そのものを事業参入拒否の絶対的基準とするなどという規制は行き過ぎである。

(4)「関連性」について

 企業や団体間の関係において問われるのは結合や集中の度合いであるそしてその結合や集中を測る尺度は支配力、影響力の概念である。支配力や影響力も及ばない団体をなぜ「関連性」の名において問題にするのか。新たに「関連性」などというあいまいで感覚的な基準を持ち出すのは当を得ていない。
 よしんば「関連性」を基準にするにせよ、放送法施行規則でいう関連会社の定義によれば、関連の尺度はつまるところ出資比率と影響力の有無に拠っている。その場合、出資の比率については「議決権の100分の20以上100分の50以下を実質的に所有している」こととなっている。
 したがって、仮に「関連性」を問うにしても、支配力も影響力も及ばないような3%の出資比率をその証拠とし、この一点だけでも参入排除の根拠とするのは納得できない。この点からしても過剰な規制であると言わざるを得ない。

(5)「支援」について

 「関連性」の基準のひとつに、NHKが「社会通念上相当とされる範囲を超えて支援を行っている者」を挙げているのは首肯しがたい。このような不明確で漠然とした規定では、「相当とされる範囲」の判断は行政のフリーハンドに委ねられることになり、「行政手続の透明性の確保」という要請に逆行する。

(6)憲法上の観点から

 以上のように過剰であいまいな規制を当該の「関連性」のある会社から見た場合、独立した第三者である団体の表現の自由や営業の自由に直接的に制約を加えるものであり、敢えて言えば憲法上の権利にもかかわるものである。  憲法上の権利と放送法による放送体制との調和という高度な価値判断については、国会による議論を経て法律によって解決すべきものであり今回の諮問案のような行政による部内審査基準にはなじまないものと考える。
 
3.申請書類の整備に係る放送法施行規則の一部改正について
行き過ぎで不適当である。

(1)資料等の継続的な供給契約の有無の記載について

 「相当とされる範囲」の判断材料として、申請書類に「協会からの放送番組制作に必要な資料等の継続的な供給契約の有無」の記載を義務付け、契約がある場合にはその内容まで記載させるのは、明らかに行き過ぎである。
 これは、比較審査にあたってNHKとの供給契約のない者を優先し、申請者に対してNHKからのソフト購入は見合わせるべきと言っているに等しい。NHKがその保有ソフトやノウハウの社会還元を図ることは放送法がNHKに期待し、許容しているところである。
 NHKが放送番組制作に必要な資料等を排他的独占的に供給する契約を締結すべきでないことは言うまでもないし、現にそうした契約は行っていない。NHKは、NHKのソフトの供給を希望する者には、同等の条件で許諾することを基本方針としており、これがいかなる意味でも提供先に対する「支援」でないことは明らかである。
 供給契約の記載の義務付けは撤回すべきである。

(2)100分の1未満の出資の記載について

 「協会の子会社又は関連会社からの出資(の予定)については、100分の1未満であってもそれぞれについて記載すること」を義務付けるのは、NHKの関係会社でない場合に較べて均衡を失しており、不適当である。
 100分の1未満の記載がなければ、それらを合算した結果が3%という基準に抵触するかどうか判断できないというのであれば、一般 放送事業者に関係する規制の場合についても、基本的に事情は異ならない。それがたとえ10%とか3分の1という基準であっても、100分の1未満の記載の必要が生ずるのではないか。
 また、仮にNHKの関係会社からの出資比率が基準に抵触しないまでも、少しでも出資があれば、比較審査の際の優劣の判断において劣後させるということであれば、そのことを諮問案に明記して意見を聴取すべきである。
 いずれにしても必要とされる理由を示さずにこのような記載を求めるのは不適当であり、「行政手続の透明性の確保」の要請にも逆行する。

(3)認定方針と放送法施行規則との関係について

 そもそもこの放送法施行規則の一部改正案と認定方針案との関係が逆転している。認定方針はパブリックコメント方式による制定過程を経たとしても郵政省の部内審査基準である。その基準を担保するために、放送法の施行に必要な事項を定めるべき放送法施行規則を改正するのは本末転倒である。
 
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