放送制度等に関するNHK意見 NHK information
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「NHKのBS放送のスクランブル化」に関する意見
 
 NHKは「NHKのBS放送のスクランブル化」に関する郵政省の意見募集に対し、平成10年12月17日、以下の意見を提出しました。
 
 
1.公共放送の役割と財源についての基本的考え方
(1)公共放送の役割
○公共放送であるNHKは、いつの時代においても、信頼されるニュースや豊かな番組を低い負担で提供し、放送の効用があまねく行き渡るよう努めることが、基本的な役割と考えています。放送事業を新たなビジネス・チャンスととらえ、産業としての放送の発展を目指す傾向が強まる状況のもとにおいては、視聴率や市場原理のみにとらわれずに質が高く多様な放送を行う公共放送としてのNHKの役割は、ますます重要になり、責任も重くなると考えています。
 NHKは、デジタル技術を活用して、公共放送サービスをいっそう向上させることにより、デジタル化のメリットをすべての人々が享受できるようにしていく考えです。

○日本の放送体制は、公共放送と民間放送の併存を基本としています。これは、経営財源を異にする事業者が競い合うことが、多様でバランスのとれた放送のために有効との考えに基づくものといえます。日本における今日の放送の盛況は、こうした公共放送と民間放送の併存体制に対する視聴者の理解と支持に基づくものであり、したがって、この体制はデジタル放送時代においても、放送制度の根幹として維持すべきものと考えています。
 とりわけ、今後のBS放送の健全な発展のためには、この分野でも、NHKが視聴率や市場原理のみにとらわれずに放送を行うことによって他の放送事業者と競い合っていく体制を継続することが、きわめて重要と考えます。

(2)NHKのBS放送の位置づけ

○デジタル放送時代の公共放送としての役割・使命を果たしていくために、NHKは地上放送とともにBS放送を最大限に活用します。
 国民生活の基盤となる中核メディアとしての地上放送に対して、NHKは、BS放送をいっそう多様化・高度化する視聴者の要望に的確に応えるとともに、あわせて地上放送の難視聴解消の役割を担っているメディアと位 置づけています。NHKとしては、こうした地上放送とBS放送の役割を明確にしつつ、両者を一体としてバランスのとれた公共放送サービスの継続的発展を図っていきます。

○BSデジタル放送では、受信料によるサービスと、広告放送や有料放送によるサービスとが登場し、これまで以上に激しい競争が行われるものとみられます。
 そうした中で、NHKは、BSデジタル放送全体の普及の牽引役としての役割を担っていきたいと考えています。そして、他のBSデジタル放送事業者とともに、それぞれの特色を発揮し合い、多彩 なサービスを展開することにより、放送文化を発展させ、視聴者にとって望ましい放送を実現して行きたいと考えています。

(3)公共放送財源のあり方

○受信料は、NHKが公共放送としての業務を行うために必要な経費を、受信機の設置者に公平に負担していただくという考え方に基づくものです。この受信料を財源とするからこそ、NHKは、国民・視聴者の立場に立って、豊かで公正な放送サービスを継続して提供していくことが可能となると考えています。
 デジタル放送時代においても、NHKが公共放送としての役割・使命を果たしていくためには、基本財源として受信料が最もふさわしいと考えています。

○NHKは、日本において必要な存在として一定の認知を得ている公共放送を、デジタル放送時代にさらに発展させていく立場から、受信料制度の意義を積極的に評価すべきと考えています。したがって、NHKの経営財源について、もっぱら経済的な規制緩和の観点から、受信料に替えて映像と音声を強制的に遮断するスクランブル有料放送を導入するという考え方に同意することはできません。このようなNHKの基本的立場については、視聴者をはじめ、他の放送事業者の理解も得られるものと考えています。

 
 
2.2000年以降のBSデジタル放送のサービス展開の展望
○NHKは、技術革新の成果を活かした、高度で魅力あるデジタル放送サービスの提供を目指しています。これにより、人々の生活をより豊かにする新しい放送文化の創造に貢献していきたいと考えています。
 そのためには、ハイビジョン放送を中心とするテレビジョン放送とデータ放送による新しいサービスを、いわば車の両輪として実施することが必要と考えています。

○NHKのBSデジタル放送サービスは、開始当初は、アナログ放送の受信者に迷惑をかけず、デジタル放送への円滑な移行を図るため、現在のアナログによるBS放送と同内容の放送を基本としますが、ワイド画面 ・高精細・高画質のデジタルハイビジョン放送を充実するほか、データ放送による新しいサービスについても検討します。

○さらにNHKは、技術開発の進展、デジタル受信機の高度化・低廉化、インターネットなど通 信系メディアをはじめとする各種メディアの家庭への普及状況、視聴者の要望などに応じて、サービス内容を段階的により高度で高機能なものに発展させていく考えです。そのことが、デジタル放送をより豊かなものにすることにつながると考えています。

 
 
3.2000年時点でのBS放送のスクランブル化の是非
(1)NHKの考え方

○2000年時点で、BSデジタル放送について、映像・音声などを強制的に遮断するスクランブル化を実施する考えはありません。

(2)その理由

○NHKは、地上放送・BS放送を一体のものとして公共放送サービスを全国あまねく提供することによって公共放送の役割・使命を果 たしていく考えであり、BS放送のみを切り離してスクランブル化することは、公共放送サービスの低下を招くものと考えます。

○また、受信料による放送、広告放送、スクランブルによる有料放送という財源が異なる放送事業者が、それぞれの特色を発揮して競い合う体制こそが、BS放送サービスの質的な多様性をもたらし、その普及・発展につながるとNHKは考えています。NHKのBSデジタル放送のスクランブル化は、多様なサービスを確保する体制を崩し、BS放送全体の普及・発展を阻害することになるので、適当ではないと考えています。

○さらに、NHKは、BSデジタル放送開始以降も、受信者のアナログ放送からデジタル放送への移行が十分に進展するまではBSアナログ放送を継続する必要があると考えています。その場合、デジタル放送とアナログ放送とは基本的に同内容の放送を実施することになると考えていますが、デジタル放送とアナログ放送の視聴者の負担の仕方が異なることは、無用の混乱をもたらし、現実的ではないと考えています。

(3)スクランブル化実施を検討するための条件

○将来、BSデジタル放送の普及が進み、BS放送がすべてデジタル化された段階ではNHKは、他の放送事業者の動向も踏まえつつ、公共放送としてどのようなサービス形態がふさわしいかについて、多様な放送サービスが確保されることを前提に、スクランブル化の問題を含め、改めて検討します。

○ただ、NHKのBS放送の有料スクランブル化を実施する場合は、単にNHKの料金システムの問題にとどまらず、NHKの公共放送サービスのあり方、NHK・民放の併存体制を基本とするわが国の放送制度の根幹に大きく関わる問題となることから、放送法改正問題を含め、国会を中心とする国民的議論が必要になるものと考えています。

 
 
4.スクランブル化した場合の、NHKの財源への影響
○BS放送をスクランブル化した場合のNHKの財源への影響を評価するためには、デジタル放送とアナログ放送の併存状況や、BS放送全体における有料放送や広告放送の実施状況など、さまざまな要素を考慮する必要がありますが、現段階ではあまりにも不確定な要素が多く、そのような評価を行うことはきわめて困難です。
 
 
5.受信料制度の基盤強化へ向けた検討
○NHKは、これからのデジタル放送時代に、公共放送として進む方向を示した『デジタル時代へのNHKビジョン』(平成10年1月)において、公共放送財源として最もふさわしい受信料制度を、あらゆる努力を払って守っていく決意を明らかにしました。この決意は、現在も変わっていません。
 NHKは、BSデジタル放送受信者の確認の困難性が増すと予想される状況において公平な受信料負担の徹底のために、デジタル技術を活用する新しい方策について、引き続き検討を行います。

 
 
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