放送制度等に関するNHK意見 NHK information
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「NHKの行うデータ放送の範囲」に関する意見
 
 NHKは、「NHKの行うデータ放送の範囲」に関する郵政省の意見募集に対し、平成10年11月20日、以下の意見を提出しました。
 
 
1.データ放送についてのNHKの基本的な考え方
(1)放送のデジタル化とNHKの先導的役割

○NHKは、これまで、衛星放送等の新しい放送メディアの開発に当たって、公共放送として国民的な立場に立って先導的役割を果 たし、放送の普及・発達に貢献してきました。

○放送のデジタル化に当たっても、NHKは、高画質化や高機能化などによって視聴者の利便の向上が図られ、デジタル化のメリットを広く国民の誰もが享受できるよう、率先して役割を果 たすべきであると考えています。

(2)デジタル放送とデータ放送

○デジタル放送の特徴は、映像、音声、データを一体的に取り扱うことが可能となることです。
 データ放送は、デジタル放送の特色を生かしたサービスであり、放送サービスを高機能化するとともに、デジタルハイビジョンと組み合わせることにより、デジタル放送による新しいテレビサービスを拓く可能性を持っています。すなわち、データ放送はデジタル放送を魅力あるものにし、その普及を図る上で不可欠な要素です

○郵政省の「地上デジタル放送懇談会」最終報告書(平成10年10月)でも、地上デジタル放送の導入に当たっては、映像を中心として音声及びデータも提供できる「地上デジタルテレビジョン放送」という新しい免許形態を導入することが提言されており、映像、音声、データという3つの要素がデジタル放送においては一体不可分のものであるとの考え方が示されています。これは、衛星放送においても同様であると考えられます。

○放送は、現在のアナログ放送をデジタル放送に移行していくことが世界的な流れであり、日本でもデジタル化の方針が決まっています。
 NHKは、2000年にBSデジタル放送を開始する際、デジタル放送のメリットを広く視聴者の皆さんが享受できるよう、テレビジョン放送とデータ放送を一体として実施し、国民のすべてにとってより便利で豊かな新しい放送サービスを開拓して、デジタル放送の普及に貢献したいと考えており、そのための制度整備等を要望しています。地上デジタル放送についても、同様に考えています。

(3)NHKのデータ放送サービスのあり方

○NHKは、データ放送を公共放送のサービスとして実施する考えであり、実施財源としては、受信料によることを考えています(詳しくは、4で後述)。

○受信料により運営されるNHKは、次のような仕組みの下で、視聴者の皆さんの理解を得ながら放送を実施しており、データ放送についても同様であると考えます。
 ◇NHKの業務は、放送法に個別に規定
 ◇毎年度の予算・事業計画は、国会の承認が必要
 ◇毎年度の放送番組編集の基本計画の策定に際しては、番組審議会に諮問

○データ放送として具体的にどういうサービスを実施していくかについては、基本的には、テレビ放送やラジオ放送と同様、「豊かで、かつ、良い放送番組」を放送するという公共放送NHKの基本使命に沿って、NHKが責任を持って実施していきたいと考えています。このことは、BSデータ放送であれ、地上データ放送であれ、同様です。

○テレビ放送やラジオ放送では、「放送番組編集の自由の原則」の下で、NHKと民放がそれぞれの特色を発揮しつつ放送の普及に向け競い合ってきました。新しいデータ放送の分野でも同様であり、デジタル多メディア時代においても、NHKは、広く国民全般 に基盤を置く公共放送としての社会的な使命を果たしていきたいと考えています。

 
 
2.実施したいと考えているサービス
 データ放送は、現在の文字放送に比べ大容量 の情報の伝送が可能であることや情報伝送の拡張性に富んでいるなどの特徴があります。
 データ放送は多様な可能性と新しい魅力を持っており、NHKとしても、「暮らしを守るサービス」、「生活をより便利でより豊かにするサービス」を基本コンセプトに、新しいテレビのサービス開発に積極的に取り組んでいきたいと考えています。
 NHKが、BSデジタル放送開始段階で実施したいと考えているサービスは、国民の誰にとっても必要な情報をいつでも見られるサービスを中心に、次のようなものです。

(1)サービス内容 (具体的なサービス例)

▽地震発生。あなたの家族は大丈夫?--指定した地域の地震情報が見られます。
▽お出かけ前。今日の天気は?--------あなたの住んでいる地域の天気予報がいつでも見られます。
▽あの料理の材料は?---------------番組に関連する興味のある情報をいつでも引き出せます。
▽ボランティアしてみたいけど?--------各地のボランティア活動の情報がいつでも引き出せます。

[緊急災害情報]
 自分の住んでいる地域の個別情報や親戚・友人など関係のある地域の情報を、いつでも引き出せます。
 地震情報、津波情報、台風情報、安否情報 等

[ニュース]
 ジャンル別の目次の中から、興味のあるニュースをいつでも選択し、コンパクトな形で読むことができます。
 政治、経済、社会、スポーツ・ニュース等

[選挙開票速報]
 関心のある選挙区の情報がいつでも引き出せます。
 各小選挙区の開票速報 等

[生活便利情報]
 自分の住んでいる地域の個別情報や興味のある情報がいつでも引き出せます。
 気象情報、交通情報、スポーツ情報 等

[公共福祉サービス]
 「健康ホットライン」、「すこやかシルバー介護」等の番組を活用した情報を、必要なときに引き出せます。
 聴覚障害者字幕サービス、医療関連情報、介護関連情報、ボランティア情報 等

[EPG/電子番組ガイド]
 見たいジャンルの番組を検索したり、番組開始時刻が変更になっても録画が正確にできるようになります。
 テレビ全局分の8日間の番組表、自動録画機能 等

[視聴者問い合わせ情報]
 これまで電話で問い合わせていた情報を、知りたいときにいつでもテレビから引き出すことができます。
 番組変更・再放送予定、公開番組・催し物案内、受信料案内 等

[番組問い合わせ情報]
 問い合わせの多い番組には、より詳しい情報を提供します。  

「生活ほっとモーニング」
 「ためしてガッテン」等

[番組関連情報]
 番組に関連する興味ある情報を引き出し、番組をより楽しめます。
 連続ドラマのあらすじ 等

(2)情報形態、表示形態等

 情報の内容や視聴者の皆さんの要望等に応じて、文字や絵等を、全画面表示や部分表示等の表示方式で放送します。

 
 
3.実施見通し
(1)BSデータ放送

 2000年(BSデジタル放送の開始時)からの開始を希望します。
 以降、視聴者ニーズや受信機の高機能化等にあわせ、使用可能な伝送容量の中で、段階的にサービス内容を充実させていきます。

(2)地上データ放送

 地上デジタル放送開始時からの開始を希望します。
 サービスの基本コンセプトや考え方はBSデータ放送と基本的に同じですが、具体的なサービス内容については、地上デジタル放送の全体像の明確化に合わせて検討していきたいと考えています。

 
 
4.財源
  受信料の範囲内で措置することとしており、データ放送だけの特別な受信料を設定することは、現段階では考えていません。
 従って、データ放送に投入できる経費については、自ずと一定の限度があるものと考えており、番組制作に当たっては、テレビジョン・ラジオ番組の制作のために収集した情報を活用するなど、極力、効率的な実施に努めていく考えです。

 
 
5.その他
(1)放送番組審議会での意見について

 NHKは、今回の意見作成に当たり、中央及び全国8つの地方放送番組審議会において、公共放送NHKに期待されるデータ放送について、委員のご意見を伺いました。 放送番組審議会で出された意見の概要は、別 紙のとおりです。

(2)NHKの関連会社の行うデータ放送について

○NHKは、公共放送事業の効率的・効果的な遂行やNHKの持つノウハウの社会還元に資すること等を目的として、放送法の定めるところにより、郵政大臣の認可を受けて株式会社等に出資を行っています。

○NHKが出資している関連会社が委託放送事業者になってデータ放送事業を行うことを希望しており、認定されれば、他のNHK関連団体の協力を得ながら、デジタル放送の開始にあわせてデータ放送を開始し、以降、視聴者ニーズや受信機の高機能化等にあわせ、使用可能な伝送容量 の中で、段階的にサービス内容を充実させていきたいとしています。

○具体的なサービス内容については現在検討中とのことですが、NHK番組の制作を通 じて培ったノウハウを活かした多様で専門的な情報の提供や、NHKの番組に関連した専門情報の提供を行いたいとしています。

○なお、実施主体はいわゆるNHKの子会社ではないものとし、資本構成のあり方については、一般 放送事業者に要求される出資の条件を十分考慮していきたいと考えています。
 
(別紙)
 NHKは、中央放送番組審議会および全国8つの地方放送番組審議会(注)で、BSデジタル放送で実施したいと考えているデータ放送のサービスイメージなどについて説明し、委員のご意見を伺いました。各放送番組審議会では、データ放送に取り組むNHKの基本姿勢、NHKに期待するデータ放送、さらに受信機の操作性や機能などについて意見が出されました。

 データ放送に取り組むNHKの基本姿勢については、データ放送は、視聴者が多様な情報をいつでも利用できるというメリットがあり、NHKは公共放送の先導的役割として、幅広く積極的にデータ放送を実施して欲しいという意見が代表的なものです。一方データ放送による新しいサービスの実施によって、視聴者に新たな負担がかからないように、受信料の範囲内でデータ放送をやって欲しいという意見もありました。

 NHKに期待する具体的なデータ放送サービスについては、緊急災害情報、高齢者向け情報、社会福祉情報、ニュース、気象情報、地域情報、番組を補完する情報、さらに双方向性を利用したデータ放送の活用の可能性、将来的には技術革新の成果 を生かして動画も提供して欲しいなど、委員からは幅広く多様な意見が出されました。

 また、受信機の操作性・機能については、テレビは子供からお年寄りまであらゆる年代の人々が利用するものであり、簡単な操作でデータ放送を利用できるようにして欲しいという意見が多く出されました。

(注)放送番組審議会は、放送番組の適正を図るため、放送法で設置が義務づけられている審議機関です。NHKの場合、国内放送については「中央放送番組審議会」と「地方放送番組審議会」を設置しています(「地方放送番組審議会」は関東甲信越、近畿、中部、中国、九州、東北、北海道、四国の8地域に設置しています)。
 審議会の委員には、視聴者の関心や社会の動向が的確に反映されるよう、幅広い分野から豊かな学識経験をお持ちの方を委嘱しています。

 
 
各放送番組審議会で出された主な意見は以下のとおりです。
〇データ放送に取り組むNHKの基本姿勢について
・放送のデジタル化については、地上、衛星を含めて積極的に進めてもらいたい。データ放送の範囲については、情報はいくらたくさんあっても良いが、その中から選択するのは、結局視聴者自身ということになると思う。(中央)

・NHKがデジタル化に取り組むのは大変有意義であり、積極的に取り組んでいって欲しい。(九州)

・情報をより多角的に見ることができるようになるので、早く放送してもらいたい。  (中部)

・デジタル化による情報過多を危惧するが、NHKが行うデータ放送ならば、安心して見ることができる。(東北)

・テレビ番組の低俗化は大いに懸念するが、NHKの放送にはそういう問題はないと思うので、データ放送の分野でも、限定的に考えることなく、内容を充実させていって欲しい。文字や図形だけでなく、多彩 なサービスを期待する。(中国)

・NHKのデータ放送のコンセプトは、「暮らしを守る」「より便利でより豊か」ということだが、受信機のデータ蓄積容量 が増えていけば、「新しい暮らしを創造する」価値のある使い方ができるようになるのではないか。(関東甲信越)

・データ放送では、放送局から送られてきたデータを受信機に蓄積し、双方向的に利用できるようになると便利だと思う。NHKは公共放送の先導的役割として、データの利用が幅広くできるように努力して欲しい。(四国)

・情報をビジネスとする既存の民間企業の経営を圧迫することのない範囲で、データ放送を行って欲しい。(中央、北海道)

・データ放送を積極的にやって欲しい。ただし、視聴者への負担がかからないよう、データ放送にかけるコストは一定の範囲内であるべきだと思う。(中央、四国)

・公共放送という枠組みはあるだろうが、広告をつけた情報提供には、踏み込めないのか。例えば、新刊情報やイベント案内、プレイガイド情報などは、宣伝になってしまうかもしれないが、視聴者にとって重要な情報である。(近畿)

・動画や専門的な情報などNHKの持っている豊富なソフトや情報に対するニーズは非常に高いので、技術革新の成果 を生かして、きちんと料金を設定して内容を充実していって欲しい。自分にとって必要なソフトや情報は、多少のお金を出してもいいと思う。(中国)

〇NHKに期待するデータ放送について
・データ放送でもNHKは、災害や安全に関する情報の提供をしっかりやって欲しい。(中部、中国)

・緊急災害情報は、できる限り狭い地域の情報を提供して欲しい。また、緊急災害への対処方法も合わせて提供して欲しい。(関東甲信越)

・阪神淡路大震災の時には、外国人が情報を入手するのが難しく苦労したという。データ放送で緊急災害情報を提供する場合、英語版や中国語版も実施して欲しい。  (近畿)

・データ放送の中で、聴覚障害者、高齢者等を対象とした社会福祉サービスを充実させて欲しい。(東北)

・高齢化社会が進む中、データ放送で夜間診療の病院を教えてくれる等、医療や社会福祉情報に関する地域情報を提供してもらえれば便利と思う。(九州)

・政治、経済、教育など、1週間分のニュースをまとめて見られたり、ニュースの中の難しい用語、例えば“公的資金”を解説してもらえれば便利。(九州)

・国際ニュースを国別に提供して欲しい。今この国では何が話題になっていて、何が問題なのか、という情報を提供して欲しい。(関東甲信越) ・在日外国人向けに、外国語による「日本のニュース」を提供して欲しい。(九州)

・気象情報ひとつとってみても、天気や気温など様々な情報がいつでも見られるようになると本当に便利だと思う。早く使ってみたい。(四国)

・地域放送の番組で取材した情報のうち、放送されなかった情報でも地域にとって役に立つ情報がある。それらの情報をデータ放送で活用したらどうか。(北海道)

・番組をもう一度見るときなど、番組に関連した詳しい情報があると便利。(四国)

・番組関連情報では、NHKスペシャルなど、番組内容を後日確認できるようなサービスがあるといい。(中国)

・教育テレビの番組はすばらしいが、番組を補完する意味で、データ放送を生かした使い方を検討して欲しい。(北海道)

・教育テレビの「ふるさとの伝承」などの番組を補完する情報、例えば祭りの過程など をきめ細かく伝えてもらえるといい。(中部)

・1週間のNHKの番組で使われた価値あるデータをまとめて見られる、例えば「今週のデータ」といったサービスがあると便利。(中国)

・データ放送は語学の勉強に有効と思う。例えば映画などで、日本語と英語の字幕の両方が出ると便利。(九州)

・老人介護など、福祉関連のケアの面で、双方向性を利用したデータ放送の活用の可能性があるのではないか。(北海道)

・インターネットのホームページの掲示板のように、データ放送でも、視聴者が参加できるサービスがあるといい。(近畿) ・データ放送では、映像も見られるレベルまで開発を進めて欲しい。(東北)

・動画の情報を提供するのは大変コストがかかると思うが、将来、番組で放送されなかった情報や過去のソフトを自分で探して見ることができるような「NHK図書館」が 完成することを期待する。(関東甲信越)

〇受信機の操作性、機能について
・簡単に操作できる機能にして欲しい。(中央、東北)

・一般の人でも使いこなせるようにすべきである。(中部)

・メニューの作り方や検索機能を工夫し、使いやすいものにして欲しい。(中央)

・パソコンでインターネットなども利用しているが、データ放送がどれだけ使いやすくするかがポイントではないか。(北海道)

・テレビはお年寄りや子供も見るものなので、画面や受信機の操作性については十分に配慮して欲しい。(四国)

・必要な情報を自由にプリントアウトできるような機能があるといい。(関東甲信越、中国)

 
 
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