2018年9月11日

認定NPO法人シーズ 代表理事 関口宏聡さん

草の根ロビー活動は1杯のコーヒーから

2018年9月11日

国会のすぐ近くにある、とあるカフェ。脇のランチに見向きもせず、パソコンと向き合っている人がいます。

「ここも私の仕事場です」と話すのは、NPO「シーズ」の代表、関口宏聡さんです。

いま、NPO法人は全国に5万以上あり、財政規模は推計で1兆円とも言われています。(2015年度 内閣府調査)しかし、多くのNPOはまだまだ、資金も人材も足りません。こうした中、活躍しているのが、関口さんたちの団体。2011年には、改正NPO法の成立に尽力しました。これによって、NPOの画期的な認証制度や税制の優遇制度が実現したのです。NPOを支えるNPOなんですね。

どうやって実現させたのですか。
「日本ではまだまだ活発とは言いがたいのですが、ロビー活動です」

ロビイング、つまり国会議員を回って政策に賛同してもらい、実現していく活動をしているんですね。
その主な舞台が、国会議員の事務所が入っている議員会館。

関口さん、特に国会の開会期間は毎日のようにここに通い、議員や秘書に面会しています。与野党関係なく、説明して、お願いして、また説明して、お願いして、を繰り返すんだとか。

というわけで、港区にある事務所に帰る時間ももったいないと、面会の合間には永田町界隈にある喫茶店で仕事をしているわけで。

この日のランチは、コーヒーとサンドイッチ…なんですが、ふだんは忙しすぎて、「コーヒーだけ」で済ませてしまうことが多いんだとか。

「まあ、サンドイッチぐらいは食べることもあるんですけど…『昼飯をまともに食べない系』ですかね」
いやいや、それじゃあ体に良くないですよと、記者の方からお誘いして、一緒にサンドイッチを食べることにしたわけで。

「Wifiもあるし、電源もあるので、コーヒー1杯でもついつい長居をしてしまうんですよ」

そういえば、先の国会での成果はどんなものでしたか。
「一番は、中小企業向けの『ものづくり補助金』の対象に、NPO法人を加えてもらえたことですね。新たなサービスを生む大きな力になると思います」

逆に難しかったのは。
「最近、かなり知られるようになったフードバンクという活動がありますよね。安全に食べられるのに販売できない食品を、企業などから寄贈してもらい、必要としているところに無償で提供するという。これを、より推進するために『食品ロス削減推進法案』を実現しようというNPOがあって、そのロビー活動を支援していました」

「与野党の議員18人と、議員の代理の秘書26人が集まる院内集会まで開くことができたんですが、残念ながら国会が閉会し、時間切れに。でも、法案の骨格はできあがっていますし、諦めてませんよ」

関口さん、ロビー活動の経験の少ないNPOに、コツを教える勉強会もしています。その勉強会でアドバイスしている26の「格言」があるとか。ちょっと見せてもらいました。

「お願いと御礼御礼御礼」
「10回通えば、なんとかなる」
「待つのも仕事」
「まずは秘書さんと仲良く」
これ、僕ら記者…いや、営業マンみたいじゃないですか。

「そう、まさに営業の仕事と同じですよ!」

営業だけど、この格言の通り「絶対に私利私欲に使わないと。
「使っていたら、うちの団体はこんなに苦労していません(笑)ぜひ寄付を」

「財務省、官僚を見習え」というのもありますけど。最近は官僚の不祥事がしばしば問題になっていますが、これは?
「彼らは本当によく勉強していますし、それだけでなくいろんな人とマメに会うんです。彼らこそロビー活動のお手本だと、いつも言っていますね」

「国や政府にただ不満を言うということではなく、その時間があるなら、私たちの暮らしや社会をより良くできる方法があるぞと。ロビー活動で具体的に動いた方がいい。その方が、私は性に合っていますね」
なるほど。今後はNPOへの寄付がさらにスムーズにできるようにするため、税制改正への要望に力を入れるそうです。

関口さん、サンドイッチを食べ終えたあとも店に残り、パソコンに向かっていました。地道な草の根の活動が、大きな成果を生んでいたんですね。

ごちそうさまでした!