2020年1月17日
熊本県 阿蘇市長 佐藤義興さん
成人式で“歌って踊る”市長のあか牛ハンバーグ
2020年1月17日
「令和」最初の成人式の季節。
今回のサラめしは地方出張です。
色鮮やかな振り袖姿に真新しいスーツ姿の新成人。
成人式といえば、地元名士のあいさつが定番ですが、記憶のはるかかなた、ですかね…。
しかし、熊本県阿蘇市の成人式には、忘れたくても忘れられない?名物市長が登場します。
佐藤義興市長(70)です。
壇上であいさつを終えたかと思うと、突然、歌い始めます。
合図もなく、BGMもなく、脈絡なく始まる歌のパフォーマンス。
待ちかねた若者たちから笑いが起き、大きな手拍子が会場全体に鳴り響きます。
このパフォーマンス、ことしで15年連続。どんなきっかけで始めたのでしょうか?
本番を控えた成人式当日のお昼ごはんにお邪魔して、聞いてみました。
この日のランチは、地元名物の「あか牛」をたっぷり使ったハンバーグ定食、1500円。
阿蘇地域を中心に放牧されている「あか牛」は、適度の脂肪分を含みながらも赤身の多い肉質で、人気を集めています。ごはんとサラダにコーンスープもついて、食べ応えがありそう。
「これは、うまいよ。赤身が多くてヘルシーだしね。頑張らないといけない時に食べるんだよ」
佐藤市長、大満足のご様子。
食事の途中に恐縮です。
なぜ成人式で熱唱しているんですか?
「市長として初めて成人式に臨む時に、大人の目線で当たり前のスピーチをして、果たしてそれでいいのかと、もやもやしてね」
国会議員秘書から、町村合併で誕生した阿蘇市の初代市長になった佐藤市長。若者と同じ目線でメッセージを届けたい…悩んだ末に思いついたのが歌うことでした。それも若者たちが聴いている歌を。
14年前、初めて披露したのは、ゆずの「栄光の架橋」。
「当時の新成人たちは、いきなり歌い始めたもんだから、ただ、あぜんとしていたなあ」と振り返る佐藤市長。当初は、市役所に「品性がない」といった批判が殺到したことも。
それでも毎年パフォーマンスを続けてきた佐藤市長には、特に印象に残るエピソードがありました。
「ある年、成人式の会場の周りをバイクで走り回る若者たちがやって来たんだ。紋付きはかまに派手な髪型。成人式で暴れる若者のニュースが頭をよぎったよ」
しかし、いざ佐藤市長がパフォーマンスを始めると、そんな若者たちも手拍子とともに笑顔に。
「なんだ、彼らも、かわいいところがあるじゃないか」
佐藤市長の真価が問われたのは、4年前の熊本地震。
阿蘇地方も、大学のアパートの倒壊や橋の崩落など、大きな被害を受けました。
発災当初、ほぼ不眠不休で陣頭指揮にあたった佐藤市長。
現場を細かく回って被災者のニーズをつかみ、国にも支援を訴えて復興を目指しました。
熊本地震から4年目を迎えることしの成人式。
佐藤市長がステージに立つと、さっそくざわつき始める新成人たち。
顔色ひとつ変えず、佐藤市長が歌い出したのは、2週間前の大みそかにNHK紅白歌合戦に初出場した菅田将暉さんの「まちがいさがし」。
正直、何を歌っているのか、聞き取れないような気も…。
「間違いか、正解か、なんてどうでもよかった~」
独特のリズム感で、とにかく本気で歌い上げた佐藤市長。これには新成人たちも大盛り上がり。
「やはり人生、どこでずっこけるかも分からない。でも、これが自分の道、マイウェイをくじけずまっすぐに進んで行ってほしい」
パフォーマンス後の市長の言葉に、大きな拍手が。
どうやら、ランチの「あか牛」パワーの効果があったようです。
「常識にとらわれないで、自分の個性を出すことを見せつけられたので、僕も頑張らないと」
「マイウェイを突き進んで、夢を実現したい」
新成人の感想です。
市長のメッセージ、伝わったみたいですよ。
歌って踊る市長の全力パフォーマンス。若者たちへの並々ならぬ熱い思いがありました。
ごちそうさまでした!