2019年9月9日
総務省「カレー曜日普及委員会」の皆さん
“カレーの下の平等”
2019年9月9日
霞が関の総務省。
毎週金曜日のランチにカレー店をめぐる会、「カレー曜日普及委員会」なるものがあるとの噂を聞きつけ、同行させていただきました。
午後0時5分。
この日集まったのは、中央省庁の30代の官僚の皆さん6人。
役所の建物と直結する霞ケ関駅から地下鉄に乗り込み、隣の銀座駅に到着しました。
向かったのは、銀座のビルにこじんまりとたたずむカレー店。
10人ちょっとで満席になってしまいますが、40年以上にわたって営業を続ける、知る人ぞ知る名店です。
インドから取り寄せたスパイスをふんだんに使いつつも、日本人の口に合うように作られた本格カレー。
ルーは、チキンやキーマなど5種類。2種類を選ぶ「あいがけ」も、お値段そのままで可能です。
トッピングの目玉焼きを付けると、締めて1000円。
「香りがいい」
「辛さ控えめで食べやすい」
食欲をそそる香りが充満する店内。
皆さん、満面の笑みでスプーンを口元に運んでいきます。
この「カレー曜日普及委員会」、今から12年前に発足し、20代から40代まで、年齢も所属も違う24人が在籍しています。
昼休みの1時間の間に戻ってこられるカレー店をめぐる「例会」は、まもなく300回を数え、銀座や六本木など、約140店を“制覇”したんですって。
官僚の皆さんだけに、会の名前は「同好会」ではなく「委員会」。
本格的な「設置要綱」まであるんです。
「第1条 カレーをこよなく愛する者が、カレーを食することを通じ、カレーに対する愛情及びカレーにかかる見識を深めることに資するため、カレー曜日普及委員会を設置する」
うーん、行政文書!とても高尚な委員会に見えてきました。
ん?「基本方針」に「カレーの下の平等」って書いてあります。
委員長の吉井俊弥さん(38)に聞いてみました。
「当委員会には、年次が低い者が末席に座ったり、先輩にお酒を注いだりという文化がありません」
なるほど。確かに皆さんとてもフレンドリーで楽しそうです。
委員会の発足当初からのメンバーの吉井さん。
当時は朝から深夜まで仕事に明け暮れる毎日で、昼休みは10分で昼食をかき込んで、残りの50分を寝て過ごすのが通例だったそうです。
「そのとき、同じ職場の先輩が、『人間的な生活をするために、週に1回は無理してでも外に食べに行こう。疲れてても外に行こう』と呼びかけたのがきっかけで、委員会が発足しました」
それから12年。時代は平成から令和へ。
総務省の職場環境もだいぶ変わったといいます。
「今から考えると、委員会は『働き方改革』の先駆けだったかもしれません」と吉井さん。
午後0時47分。
銀座の老舗カレー店をあとにした委員の皆さん。
無事、1時前には霞ケ関駅に到着し、それぞれの職場に戻っていきました。
少々慌ただしい感じはありますが、笑顔の絶えないカレー店めぐりランチ。
「カレー曜日普及委員会」は、官僚ならではの遊び心が詰まったカレー好きの集いでした。
最後は、委員会恒例のあいさつで。
「おつカレー様でした!」