2019年6月24日

元防衛省経理装備局長 長岡憲宗さん

第3の人生は「アキバのそば」から

2019年6月24日

外国人観光客や、若者でごった返す平日昼の東京・秋葉原。
この街にまったくなじんでいない高齢の男性がいました。

「秋葉原は数十年ぶりです。だいぶ変わりましたね」
ニコニコしながらそう語るこの男性。
実は防衛省の元幹部、長岡憲宗さん(69)です。

経理装備局長を最後に、60歳で退官。
その後、第2の人生として、防衛省の専門スタッフ職なるものを務めたり、共済組合が運営するホテルの支配人を務めたりするなど、防衛省関連の仕事を続けてきた長岡さん。

まもなく70歳になることし、防衛省とは全く関係ない、新しい仕事に就くと決心。「日本のことを紹介する」仕事なのだとか。そしてきょうは、初めての実地研修です。

そんな「第3の人生」の初日、ランチは…。
おそば屋さんに決定!

「お昼はもともと麺類が多いんです。これから日本のことを紹介するわけだから、やっぱりおそばかな」

盛りそばに天ぷら、さらにミニうな丼までついたボリュームたっぷりのセット、1380円を注文。

「あ、このおそば、コシがあっておいしい。天ぷらもサクサクです」

長岡さんは、昭和52年、当時の防衛庁にいわゆる「キャリア官僚」として入り、湾岸戦争が勃発した際には徹夜で情報収集にあたるなど「裏方」として仕事をしてきました。

「機密事項が多くて、話せないことも多いんですけどね。経理装備局長の時代には、国会で『報償費』が裏金だと問題になったりして、国会答弁にも立ちました」

そんな長岡さん。
アメリカ軍基地で働く日本人従業員に関わる独立行政法人の理事長に就任してから、ある決意をします。

「英語をもっと使えるようになりたいと思いましてね。60歳を過ぎてから英語の勉強を始めました」

長岡さんの勉強法は独特。アメリカのドラマをひたすら見るのだとか。
「夜は、妻がバラエティー番組を見ているでしょ。だから夜中にずっとアメリカのドラマを見ていました。英語を浴び続けるというイメージですね」

そして、すべての役職から退いたあと、英語力を生かして新たな人生をスタート。外国人観光客の通訳をしながら名所を案内する「通訳案内士」の資格を取りました。

それにしても通訳案内士の資格を取るのは、大変じゃありませんでした?
「大変ですね。英語だけではなくて、歴史や地理の試験もあります。面接試験では、『やぶさめ』について英語で説明させられました」

実地研修は、実際に外国人に案内を行います。
この日のお客さんは、アメリカの大学から研修旅行で来ていた大学生のグループ。

先輩の通訳案内士の手際よい案内に圧倒されながらも、積極的に声をかける長岡さん。
「アメリカにはたくさん友達がいるよ」
「日本では最近たばこが吸える場所が減っているんだよ」

1時間余りにわたって、秋葉原の町を案内した長岡さん。
「さすがに緊張して疲れました。秋葉原のことは耳学問でしか知らないですから」

「一番自信をもって説明できたのは、『カンダミョウジンってなに』という質問でした(笑)」

これからは、茶道体験や相撲部屋ツアーなど、日本文化を伝えていきたいと抱負を語る長岡さん、ことしの年賀状にはこう書きました。
「人生70歳から!」

ごちそうさまでした!