費増税で「軽減税率」
導入へ 懸念の声も

今回の消費増税に当たっては、「軽減税率」の制度が導入されることが決まっています。この制度では、消費税率を10%に引き上げて以降も、「酒類および外食を除く飲食料品」と、「定期購読契約が結ばれた週2回以上発行される新聞」に限って、税率を8%に据え置くことになっています。

生活必需品の税率を抑えることで、所得が低い家庭の負担を軽くすることが目的とされています。

ただ、商品によって消費税率が変わることから、小売の現場では、レジで会計する際の作業が煩雑になるといった懸念の声も上がっています。

また、軽減税率の対象かどうかの確認の難しさを指摘する声もあります。
例えばファストフード店でハンバーガーを買った場合、持ち帰りにすると「飲食料品」にあたるため、消費税率は8%になります。
一方、店内で食べると「外食」にあたるため、税率は10%になり、同じ商品でも異なる税率が適用されることになります。

コンビニやスーパーでも、店内にいすやテーブルを置いているところが増えていますが、財務省は、店側が飲食を禁止し、実際に飲食が行われていない場合には、販売するすべての食べ物や飲み物に8%の軽減税率を適用するという指針を示しています。

その一方で、飲食を禁止せずイートインコーナーとして、いすやテーブルを置いている場合は、店側が買い物客に持ち帰りかどうか確認することが必要になり、対応が煩雑だといった声も上がっています。

軽減税率をめぐっては、その導入によって、当初の予定より消費税収が減り、およそ6000億円分の穴埋めをどうするかなど、課題も残されています。

外食・コンビニは

消費増税に伴って導入される「軽減税率」をめぐって、外食チェーンやコンビニなどでは価格表示のしかたやレジでの確認の方法などを決める必要があり、対応を迫られています。

軽減税率の導入で、持ち帰りの場合は税率が8%に据え置かれる一方、店内で飲食する場合には10%となります。

価格表示のしかたについては、持ち帰りの場合と店内で飲食する場合、両方の税込み価格を表示するほか、持ち帰り用の本体価格を店内用より高く設定する代わりに、どちらの場合も同じ税込み価格にそろえて表示することなども認められていて、各社が対応を決める必要があります。

これについて、大手牛丼チェーンでは「吉野家ホールディングス」が年内に方針を決めたいとしているほか、「すき家」や「松屋」、ハンバーガーチェーンの「マクドナルド」や「モスバーガー」も現在、対応を検討中だとしています。

また、持ち帰りも手がけているファミリーレストラン「デニーズ」では、社内で検討を進めていますが、価格表示の案が一時は9パターンにもなり、まだ決め切れていないということです。

一方、コンビニ各社では、いわゆるイートインのスペースを増やし、店内での飲食にも力を入れていて、レジでの確認方法などをどうするかが課題となっています。

これについて、「セブン&アイ・ホールディングス」の井阪隆一社長は、今月11日、記者団に対し「利用客にとってわかりやすいことが、何より大切だ。コンビニ業界で対応を標準化する必要がある」と述べ、コンビニ各社で足並みをそろえて対応したいという考えを示しています。

スーパーも困惑

消費税率の引き上げによって、日用品などの10%と食料品などの8%の税率が混在することになるスーパーでは、頭を悩ませながらも、準備を急いでいます。

足立区のスーパーでは、店内の8割以上の商品が軽減税率の適用によって消費税率が8%に据え置かれる食料品ですが、残りは消費税率が10%の日用品です。

税率の引き上げを念頭に、去年12月、店内にある8台のレジすべてを2つの税率を扱えるものに変え、システムの改修費を含め店側には800万円の負担がかかったということです。

また、店では税率が異なる商品の価格をどのようにわかりやすく表示するか検討を進めています。

さらに、頭を悩ませているのが弁当や揚げ物など容器に入れて販売する「総菜」などです。

「総菜」の容器は食料品ではない一方で、客には食料品として販売することもあり、より複雑な仕組みになるのではないかと困惑していると言います。

ベニースーパーの赤津友弥本部長は「2種類の税率が存在することによって、消費者は混乱するだろうし、店側にも負担が発生するので厳しいですが、来年10月にスムーズに移行できるよう準備を進めていきたいと思います」と話していました。

中小企業に対応遅れも

軽減税率をめぐっては、中小企業の対応の遅れが指摘されています。

日本商工会議所はことし6月から8月にかけて、全国の3200余りの中小企業を対象に消費税率の10%への引き上げについて聞き取り調査を行いました。

それによりますと、「軽減税率」への準備を始めていないとする企業は、合わせて81.2%に上りました。

回答の内訳を見ますと、
▽「準備が必要かどうかわからない」が27.7%、
▽「準備を始めようと思うが、何から取り組めばいいかわからない」が28.7%、
▽「相談はしているが準備には取りかかっていない」が24.8%でした。

一方、すでに準備を始めた企業からは、システムの改修などで多くの費用や時間がかかるといった回答が寄せられたということです。

日本商工会議所は「軽減税率の導入に向けた中小企業の準備は遅れている。政府とともに周知などを徹底したい」と話しています。