衆院代表質問 “防衛増税”めぐり論戦  首相は“適切に判断”

国会は、25日から衆議院本会議で、岸田総理大臣の施政方針演説に対する各党の代表質問が始まりました。
立憲民主党の泉代表が防衛費の増額をめぐり「増税を強行するなら衆議院の解散・総選挙で国民の信を問うべきだ」とただしたのに対し、岸田総理大臣は「時の内閣総理大臣の専権事項として適切に判断をしていく」と述べました。

25日の衆議院本会議では、自民党と立憲民主党が質問に立ちました。

立憲民主党の泉代表は、防衛費増額をめぐり「まさに額ありき、増税ありき、そして、国会での議論なしの乱暴な決定だ。防衛増税を強行するなら衆議院の解散・総選挙で国民の信を問うべきだ」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「防衛力の抜本的強化や維持を図るためには、これを安定的に支えるためのしっかりとした財源が不可欠だ。何についてどのように国民の信を問うかは、時の内閣総理大臣の専権事項として適切に判断をしていく」と述べました。

一方、岸田総理大臣は、自民党内から国債の償還期間を延長して防衛費増額の財源を確保すべきだという意見が出ていることについて「見直した場合、債務償還費の繰り入れが減少する分、赤字国債は減るが、借換債が増えることから国債発行額としては変わらない。市場の信認への影響に留意する必要がある」と述べました。

また、泉代表は、少子化対策をめぐり「岸田総理大臣が今になって最重要課題と位置づけた子ども・子育て支援政策は、防衛増税を目立たないようにするためのまやかしだ。子ども予算倍増は立憲民主党が何年も前から提案しており、遅すぎるくらいで、『異次元』ではなく『最低限』の少子化対策だ。財源はどこから確保するつもりなのか」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「社会全体の意識を高め、年齢や性別を問わず、皆が参加する次元の異なる少子化対策を実現したい。各種の社会保険との関係や国と地方の役割、高等教育の支援の在り方など、さまざまな工夫をしながら、社会全体でどのように安定的に支えていくかを考えたい」と述べました。

一方、岸田総理大臣は、少子化対策の財源をめぐり「消費税について、当面触れることは考えていない」と述べました。
自民党の茂木幹事長は、ウクライナ情勢について「5月のG7広島サミットでは、大きなテーマの1つになる。岸田総理大臣みずからがウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領との首脳会談や現地状況の視察などを行っておくことが望ましいのではないか」と質問しました。

これに対し岸田総理大臣は「ゼレンスキー大統領とは、これまでも緊密に意思疎通を行ってきている。ウクライナ訪問については、現時点で何ら決まってはいないが、諸般の事情や状況も踏まえ検討していく」と述べました。

また、茂木幹事長は「日本の少子化対策で進めるべき政策の第1は、経済的支援の抜本的拡充だ。その要となる児童手当については、すべての子どもの育ちを支えるという観点から、所得制限を撤廃するべきだ」と迫りました。

これに対し、岸田総理大臣は「急速に進展する少子化により、社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と呼ぶべき状況に置かれている。まずは、担当大臣のもと、充実する内容を具体化し、私のもとでさらに検討を深め、6月の骨太方針までに将来的な子ども・子育て予算倍増に向けた大枠を提示する」と述べました。

さらに、茂木幹事長は新型コロナの感染症法上の位置づけの見直しとマスクの着用をめぐり、「海外では、今、屋外でも屋内でもマスクを着用している姿はほとんど見かけない。政府も『5類』への見直しの本格的検討に入ったと承知しているが、マスク着用はどうしていくのか」と質問しました。

これに対し岸田総理大臣は「原則、この春に新型コロナを『5類』とする方向で議論を進めている。マスクの着用についても、『5類』への見直しと合わせて考え方を整理し、説明していきたい」と述べました。

立憲民主党の大築紅葉氏は、24日に細田衆議院議長が旧統一教会との関係を与野党の代表者に説明したことについて「きのうの細田議長の説明は全く不十分で、非公開だった。今、岸田総理大臣に求められているリーダーシップは、細田議長に公開の場で説明責任を果たさせ、自民党と旧統一教会との関係を明らかにし、清算することだ」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「説明責任の果たし方については、三権の長たる議長として、自身の判断で適切に対応すべきものだ」と述べました。

代表質問は、26日は衆参両院で行われます。

自民 茂木幹事長「児童手当の所得制限の撤廃は必要」

自民党の茂木幹事長は、記者団に対し「防衛力の抜本的強化や子育て支援策の抜本的充実など3点を中心に質問したが、岸田総理大臣からは強い決意表明と丁寧な説明があったと思う。子育てについては、児童手当の所得制限の撤廃に言及したが、すべての子どもの育ちを支援する観点から必要だと考えており、党でも議論をさらに深めていきたい」と述べました。

立民 泉代表「首相答弁は異次元の説明不足とはぐらかし」

立憲民主党の泉代表は、記者団に対し「岸田総理大臣の答弁はひどく、異次元の説明不足とはぐらかしだ。増税ということばを避けた『逃げの増税』だと感じ、防衛費は着々と倍増を決めて具体策まで持ってきた一方、子育て政策は後回しだと色濃く映った」と批判しました。

そのうえで「物価高で国民生活が大変な中で増税をして巨額な防衛費に使うのは大きな政策転換で、岸田総理大臣は先の衆議院選挙や参議院選挙でも言っておらず、衆議院の解散・総選挙で信を問うのは当然だ」と述べました。

立民 安住国会対策委員長「防衛増税ならば衆院解散して信を問うべき」

25日国会での代表質問が始まるのを前に、立憲民主党の安住国会対策委員長は記者団に対し、防衛費の増額に伴う政府の増税方針について論戦を通じて追及するとしたうえで、増税を行うのであれば岸田総理大臣は衆議院を解散して国民に信を問うべきだという認識を示しました。

立憲民主党の安住国会対策委員長は記者団に対し「『岸田増税内閣』に本格的な論戦を挑む。物価高などで国民の生活が厳しくなっている中で、なぜ今、防衛増税なのか。世論とずれていることを論戦を通じてわかってもらいたい」と指摘しました。

そのうえで「5年間で43兆円の防衛費は『額ありき』で『復興特別所得税』の防衛増税への転用はやってはいけない禁じ手で絶対に許されない。やるのであれば、国民に信を問い、是か非かを問わなければならない」と述べ、増税を行うのであれば岸田総理大臣は衆議院を解散して国民に信を問うべきだという認識を示しました。

また、旧統一教会との関係が指摘されている細田衆議院議長について「細田議長自身が、安倍元総理大臣と旧統一教会は大昔から深い関係だったと言っている。どのような深い関係だったかを国民の前で話す責任がある」と述べました。

松野官房長官「政府の姿勢や取り組み 丁寧に説明」

松野官房長官は25日午前の記者会見で「防衛力の抜本的強化や新しい資本主義の実現、子ども・子育て政策、新時代リアリズム外交の展開など、政府の姿勢や取り組みを丁寧に説明し、国会審議に誠実に対応していきたい」と述べました。