“死刑のはんこ押した時だけニュース” 法相が発言謝罪し撤回

葉梨法務大臣は、11月9日夜に開かれたパーティーで、法務大臣は死刑のはんこを押したときだけニュースになる地味な役職だなどと発言したことについて、10日の参議院法務委員会で「職務を軽んじているような印象を与える発言についておわび申し上げる」と謝罪したうえで撤回しました。

葉梨法務大臣は9日夜、みずからが所属する自民党岸田派の国会議員のパーティーに出席し、法務大臣の職務に関連して「朝、死刑のはんこを押して、昼のニュースのトップになるのはそういう時だけという地味な役職だ」などと発言しました。

これについて葉梨法務大臣は、10日の参議院法務委員会の冒頭で、みずからの一連の発言について「職務を軽んじているような印象を与える発言であるとの報道がある。このような印象を与える発言にはおわび申し上げるとともに撤回させていただきます」と謝罪したうえで発言を撤回しました。

そして「この印象を与えた発言は私の本意ではない。今後は私の真意がしっかりと伝わるように、発言には慎重を期してまいりたい」と述べました。

このあとの質疑で、立憲民主党の石川大我氏は「本当に軽い発言だった。今後、死刑の執行を葉梨大臣のもとで行えるのか。死刑執行をサインする資格はないのではないか」と述べ、辞任を求めました。

これに対し、葉梨大臣は「死刑執行の判断は極めて重いことは十分認識しているつもりだ。しっかりと職責を果たしていきたい」と述べ、辞任を否定しました。

一方、葉梨大臣は9日夜の同じパーティーで「外務省と法務省は票とお金に縁がない。法務大臣になってもお金は集まらない。なかなか票も入らない」と述べました。

この発言については、葉梨大臣は撤回しないとしていて、10日の委員会で「ここで申し上げたのは、いわゆる経済官庁にはいろいろな形で企業とお付き合いができ、政治資金パーティーでも、来られる人が多い。ただ、外務省や法務省は、企業とのお付き合いはそれほどあるものではない。政治資金という意味ではなかなか集めづらいところはあるということだ」と述べました。

当初 “死刑のはんこ押した時だけ”発言は撤回しない考え

松野官房長官は、法務大臣は死刑のはんこを押したときだけニュースになる地味な役職だなどと発言した葉梨法務大臣を、10日朝、総理大臣官邸に呼び、軽率な言動をしないよう厳重に注意しました。

これに対し、葉梨大臣は「法務省の職務を軽んじるような印象を与えたとすれば、率直におわびを申し上げる。今後は慎重に注意したい」と伝えました。

このあと葉梨大臣は、記者団の取材に応じ、発言を撤回しないのかと問われ、全体としては法務省の職務の重要性を伝える意図があったとして、撤回しない考えを示し「全体の真意をしっかり説明していきたい」と述べました。

また、みずからの進退については、「言動には慎重を期しながら、しっかりと職責を全うしていきたい」と述べました。

松野官房長官は、午前の記者会見で「私から葉梨大臣に対し、発言には十分に注意するよう厳しく注意を行い、本人からも、きのうの発言について真摯(しんし)に反省し、陳謝する旨の説明があった。改めて閣僚の職責の重さを自覚し、法務大臣として高い緊張感を持って職務にあたってもらいたいと考えている」と述べました。

また、葉梨大臣とのやり取りを岸田総理大臣に報告し「総理からは『改めてその職責の重さを自覚し、大臣として説明責任を徹底的に果たしつつ職務にあたってほしい』と話があった」と明らかにしました。

その後 参議院法務委で発言謝罪し撤回

参議院法務委員会は、午前10時から葉梨大臣が出席して法案の質疑が行われる予定でしたが、これに先立つ理事会などで葉梨大臣の発言への対応をめぐって与野党の協議が続き、質疑は50分余り遅れて始まりました。

そして葉梨大臣は委員会の冒頭、みずからの一連の発言について「職務を軽んじているような印象を与える発言であるとの報道がある。このような印象を与える発言にはおわび申し上げるとともに撤回させていただきます」と謝罪したうえで、発言を撤回しました。

そのうえで「この印象を与えた発言は私の本意ではない。今後は、私の真意がしっかりと伝わるように、発言には慎重を期してまいりたい」と述べました。

衆院議院運営委員会の理事会で官房副長官が陳謝

衆議院議院運営委員会の理事会では、木原官房副長官が「大変不適切な発言があり申し訳ない。松野官房長官が葉梨大臣を厳しく注意した」と陳謝しました。

これに対し立憲民主党は「厳重注意で済まされる話ではない。政治家としての資質が問われる発言で更迭すべきだ」と求め、木原副長官は「しっかり受け止め、説明責任を果たさせたい」と述べました。

また理事会は、午後の衆議院本会議で予定していた法案の採決のうち法務省が所管する民法の改正案については見送ることを決めました。

衆議院議院運営委員会で与党側の筆頭理事を務める自民党の盛山正仁氏は国会内で記者団に対し「発言が不適切だったことは事実だが、辞任に値するのかというと、与党としては今のところ考えていない。今後は、発言によりいっそう気をつけてもらうということに尽きるのではないか」と述べました。

一方、林外務大臣は参議院外交防衛委員会で、葉梨大臣が「外務省と法務省は票とお金に縁がない」と発言したことへの見解を問われたのに対し「法務大臣について私からどうこう言う立場ではないが、私も含め、政務3役は日本の国益のために外交をしっかりやっていこうという志と熱情を持って仕事にあたっている」と述べました。

葉梨氏発言 各党から反応相次ぐ

【自民】
遠藤総務会長は、所属する谷垣グループの会合で「閣僚の不用意な発言が政局に大変混乱を与えている。せっかくみんなで岸田政権を支えようと言ってるときに、肝心の岸田派の閣僚からそういう発言があるのは大変不愉快だ」と苦言を呈しました。また「死刑は法務大臣として最大の真摯な態度で決定するものなのに、軽々しく発言するというのは、何をやっているんだという思いがする。しっかりした覚悟で職責を果たしてもらいたい」と述べました。

葉梨法務大臣が所属する自民党岸田派で、事務総長代行を務める小野寺 元防衛大臣は、派閥の会合のあと、記者団に対し「役職には地味も華やかもなく、死刑は人の命の問題であり、とても重い仕事だ。決して言ってはいけない発言であり、しっかり気をつけて、対応してもらいたい。岸田派から出ている閣僚のことで多くのみなさまに心配と迷惑をおかけしていることをおわびしたい」と述べました。

安倍派の会長代理を務める塩谷 元文部科学大臣は、派閥の会合のあと、記者団に対し「法務大臣として問題がある発言だ。パーティーの場でサービスのつもりで言ったと思うが、大臣なので慎んでもらわなければならない」と述べました。一方、記者団が大臣の職を続けるべきか質問したのに対し「今すぐどうということではないと思う」と述べました。

【立民】
長妻政務調査会長は、記者会見で「見過ごすことのできない発言だ。死刑執行は法務大臣に課せられた大変重い判断で、刑罰とはいえ人の命を奪うものだ。決して間違いがあってはならないのに、非常に軽い発言で、法務大臣として任にふさわしくなく、離れてもらうことが必要だ。釈明も見たが、許されるものではなく、普通の内閣であれば即更迭だ」と述べ、葉梨大臣の辞任を求めました。

安住国会対策委員長は、党の代議士会で「法務大臣による死刑執行は極めて重いもので、この先も法務大臣を続けるのは法治国家として無理なのではないか。地味や派手だとかニュースに取り上げてもらいたいと言う軽薄な人間をトップに立たせておくわけにはいかない。岸田総理大臣は、あすからの外遊日程の前にどうするのかを決断すべきだ」と述べ、更迭を求めました。そのうえで「岸田総理大臣の人事の身から出たさびであり、任命責任を問いたださなければならない」と述べました。

【維新】
馬場代表は、党の代議士会で「法務大臣は人の命を奪う重要なポジションで、それほど大きい職務を担っているにもかかわらず、ちゃかすような発言は言語道断だ。官房長官による厳重注意で済ませていいのか、世論に委ねていきたい」と述べました。

【公明】
竹内 前政務調査会長は、党の中央幹事会のあと、記者団に対し「法務大臣として発言は慎重に行うべきで、気の緩みがあってはならない。政治家の進退は本人が決めることで、また任命権者である岸田総理大臣の判断だ。いずれにしても国民に誤解を招くような発言は行うべきではない」と述べました。

【国民】
玉木代表は、党の代議士会で「所管する法務行政をみずからおとしめる発言は、大臣として極めて不適切だ。出処進退はみずから判断する話だが、山際経済再生担当大臣が辞めたばかりであり、非常に緊張感を欠いていると言わざるをえない。不適切な発言は厳に慎んで、緊張感を持って行政運営にあたってもらうことを強く求めていく」と述べました。