旧統一教会名称変更 下村元文部科学大臣の関わりは?

旧統一教会が「世界平和統一家庭連合」に名称を変更したのは2015年。
当時、文部科学大臣だった自民党の下村氏は自身の関与を否定する一方で、元文部科学事務次官の前川氏は下村氏の意思が働いていたと主張しています。
名称変更の経緯と、関係者の発言をまとめました。

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名称変更の経緯は

旧統一教会のように、複数の都道府県で宗教活動用の施設を持つ宗教団体が名称を変更するには、文部科学大臣宛てで文化庁に申請を行い、認証を得る必要があります。

文化庁は、出された申請が法律などに適合しているかを審査し、認証するか、しないかを決定します。

文化庁によりますと、旧統一教会からは1997年以降、「世界平和統一家庭連合」への名称の変更について複数回、相談を受けていたということです。

そうした動きを受けて、全国霊感商法対策弁護士連絡会は、統一教会が関係する霊感商法や献金の強要などのトラブルが相次いでいるとして、名称変更を認めないように繰り返し求めていました。

2015年3月に文化庁などに送った申し入れ書では「宗教団体であることさえ判らない名称で、宗教の勧誘であることに気づかないように仕組んでいる」などと訴えていました。

その3か月後、最初の相談からは18年後の2015年6月、旧統一教会は文化庁に名称変更についての正式な申請を初めて出し、文化庁は2か月後の2015年8月に認証を決定しました。

文化庁によりますと、名称変更の手続きは通常、部長の決裁で済むので大臣に報告しませんが、旧統一教会から申請を受けたときは、担当者が当時の下村文部科学大臣に報告したということです。

また、申請が認められる前の2013年から2014年にかけて、旧統一教会と関わりがある世界日報社の月刊誌でインタビューなどに応じていたほか、2016年には下村氏が代表の政党支部が、世界日報社の社長から6万円の献金を受けていました。

川井弁護士「隠して教義を広げることに拍車」

名称変更を認めないように申し入れをしていた全国霊感商法対策弁護士連絡会の川井康雄弁護士は7月29日の記者会見で「統一教会であることや宗教団体ということを隠して教義を広げ、信者にするという方法を取っていたが、それに拍車をかけたのが名称変更だった。私たちは名称変更の5か月くらい前に文化庁に認めないよう申し入れをしたが、結局、認めてしまった」と話しています。

旧統一教会 “創立当時から今の名称考えた”

一連の経緯について「世界平和統一家庭連合」は、これまでの声明の中で「創始者は統一教会の創立当時から、今の名称を使用することを考えておられた。“世間の批判をかわすため”に名称を変えたかのような批判は、事実無根の的外れな憶測、決めつけにすぎません」とコメントしています。

また、「世界平和統一家庭連合」の田中富広会長は、8月10日の記者会見で、2015年に現在の名称に変更した際に、政治的介入があったのではないかなどと指摘されていることについて「文化庁に何度も相談を重ねたが、対応が変わらなかったので、申請を拒絶するなら訴訟もやむをえないと決意し、法律の専門家による意見書を添えて意思表示をした」と述べ、適法に処理され、政治的介入や不正はなかったと主張しました。

下村氏 自身の関与を否定も「責任感じる」

当時、文部科学大臣だった自民党の下村博文氏は、8月3日、記者団に対し「文化庁の担当者から『旧統一教会から18年間にわたって名称変更の要望があり、今回、初めて申請書類が上がってきた』と報告を受けていた。なぜ、それまで申請がなかったのかは、文化庁の当事者に説明してもらいたい」と述べました。

そのうえで「文化庁の担当者からは『申請に対応しないと行政上の不作為になる可能性がある』と説明もあったと思う。私が『申請を受理しろ』などと言ったことはなかった」と述べ、自身の関与を改めて否定しました。

そして「旧統一教会との関わりあいはない。関連団体と言われる『世界日報』の社長から2016年に6万円の献金を受けたことはあるが、認証問題とは全く関係ない。旧統一教会との関係は、関連団体も含めて、政治家は襟を正しながら距離を置くことが必要だ」と述べました。

さらに8月4日には、名称変更により、霊感商法や献金の強要などの被害が広がったのではないかと指摘されていることについて「教会が名称変更によって新たな信者や国民に迷惑をかけるようなことをするとは想像できなかったが、結果論として問題が出てきているとしたら、今となっては責任を感じる」と述べました。

また、名称変更を認証した際の文化庁の文書などが、一部黒塗りで野党の議員に開示されたことについて「私が黒塗りにさせたような報道があるが、そんなことはありえない。非常に迷惑で、ぜひ黒塗りをなくして出してほしいと文化庁に話をした」と反論しました。

そのうえで、下村氏は「私自身、教会と関係はなかったが、関係団体の『世界日報』などの取材を受けたことはあった。今後は、関係団体を含め一切の関係は断つと明言したい」と主張しました。

末松前文科相「当時の下村大臣 政治的判断せず」

末松前文部科学大臣は、8月5日の記者会見で「宗教法人法上、申請を受理するにあたって、形式上の要件以外を理由として拒むことは、行政上の不作為として違法性を問われるおそれがあると認識している」と述べました。

そのうえで、1997年・平成9年に教会側から名称変更の相談があったものの、2015年・平成27年になって申請を受理したことについて「平成9年の相談は、結果として申請書の提出がなく平成27年まで申請してこなかった。平成27年に申請書が出された理由は承知していない」としています。

そして、当時の下村大臣に対し、申請を受理する前と認証の決定前に担当者から報告が行われたことを明らかにしたうえで「社会的に注目度の高い法人だったので報告したもので、文部科学大臣が、政治的な判断を行ったものではない。当時の文化部長から確認しているが、下村氏から何ら指示などはなかった」と述べました。

名称変更を認証した際の文化庁の文書などが、一部黒塗りで野党の議員に開示されたことについては「変更理由に関する情報は、当該法人、および所轄庁以外が知りえないものなので、公にすることで当該法人などの権利、競争上の地位、その他、正当な利益を害するおそれがあるものに該当するものとして、不開示としている」と説明しました。

さらに8月8日の記者会見では、末松前文部科学大臣は「形式上の要件に適合する場合は受理する必要がある。担当者に確認したところ、当時、旧統一教会側から『申請を受理しないのはおかしいのではないか』という違法性の指摘があった。教会側の弁護士が言っているという話だった」と述べました。

前川元文科次官「下村氏の意思が働いていた」

立憲民主党や共産党、れいわ新選組などは、8月5日、前川喜平・元文部科学事務次官からヒアリングを行いました。

この中で前川氏は、1997年に旧統一教会側から名称変更の相談が寄せられた際、担当の文化庁宗務課長として、部下の職員から報告を受けていたと説明しました。

その上で「宗務課の中で議論した結果、実態が変わっていないのに名前だけ変えることはできないとして、認証できないと伝え、『申請は出さないでください』という対応をした。相手も納得していたと記憶している」と述べました。

そして前川氏は、18年後の2015年に文部科学審議官を務めていた際、当時の宗務課長から教会側が申請した名称変更を認めることにしたと説明を受け、認証すべきでないという考えを伝えたと明らかにしました。

この時の経緯について前川氏は「『認証できないから申請を受理しない』という方針を一転し、受理して認証したので、前例を踏襲する役所の仕事からすると、何らか外部からの力が働いたとしか考えられない」と指摘しました。

また前川氏は、下村氏が担当者から報告を受けたものの、判断には関与していないと説明していることについて「下村大臣まで話が上がっていたのは、判断や指示を仰いだことと同義だ。『イエス』か『ノー』か、どちらか言ったはずで、結果を見れば『イエス』と言っているはずだ。下村氏の意思が働いていたことは100%間違いないと思っている」と述べました。

立民 泉代表「名称変更時 下村氏のやり取り解明を」

旧統一教会の名称変更を認証した際の文化庁の文書などが、一部黒塗りで野党の議員に開示されたことについて、立憲民主党の泉代表は8月5日の記者会見で「下村元文部科学大臣もおかしいというふうに言っていて、文部科学省が改めて問われている。下村元大臣が、名称の変更時にどうやり取りしたのかも、当然解明されなければならない」と述べました。

そのうえで「自民党には旧統一教会と関係を持ってきた議員が多数おり、文化庁や文部科学省にアプローチした議員がいるのかどうか、調査すべきだ」と述べました。