参院選 敗れた人たち
敗戦の弁

自民党が大勝した今回の参議院選挙。
自民党が無党派層への支持を広げた一方で、野党間の足並みの乱れも際立った。
そうした中、知名度も実績もありながら苦戦を強いられたベテランや支援態勢が構築できず、早々に国会を去ることになった議員も。
戦いを終えた人たちは何を語ったのか。

「すべて私の責任」
新潟選挙区 森ゆうこ(立民・現)

定員が1人のいわゆる「1人区」で激戦が予想された新潟選挙区。立憲民主党の現職で党の参議院幹事長を務める森ゆうこ(66)が議席を失った。


新潟県旧横越町の町議会議員を経て、平成13年の参議院選挙で旧自由党から立候補して初当選。小沢一郎・衆議院議員に近いことで知られる。その後、旧民主党などを経て、2020年9月、旧国民民主党から立憲民主党に合流。長年、国会で舌鋒鋭く政府を追及してきた。

前回6年前の選挙では、事実上の野党統一候補として無所属で当選。
しかし、今回は社民党に加え、共産党が実質的に森を支援したのに対し、国民民主党は「共産党を含む連携には加わらない」として、事実上の自主投票になった。野党内で対応が分かれ、万全の態勢を築くことはできず、自民党の新人に議席を奪われた。

みなさまから献身的で真心からのご支援をいただいたが、残念ながらこの壮絶な権力との戦いということで議席を守り切ることができなかった。健全な議会制民主主義のために間違っていることは間違っているとはっきりと言わないといけない。その思いで国会で戦ってきたが戻ることができないのは本当に残念。すべて私の責任

今後の政治活動については。
選挙が終わったばかりで頭の中が真っ白な状態です

「思いを成就できず」
大分選挙区 足立信也(国民・現)

大分選挙区で4回目の当選を目指した国民民主党の現職、足立信也(65)。
平成16年の参議院選挙で初当選し、これまでに厚生労働政務官などを務め、現在は党の参議院幹事長を務める。3期18年の実績と知名度を生かして、野党支持層を中心に支持拡大を目指した。

6年前の選挙では共産党と社民党の支援を受けて、当選を果たしたが今回は共産党が候補者を擁立したため、陣営内からも、早くから厳しい戦いを予想する声があがっていた。初当選のころから知る党の前原代表代行も応援に駆けつけた。

定員1に対し、過去最多6人による選挙戦となった今回、これまでの実績を強調したものの、支持は広がらず、前回1090票差で競り勝った自民党の新人に今度は4万5000票差で敗北した。

敗因はいっぱいあるが、これ以上やれないくらいがんばったつもりだ。みなさんの思いを成就できなかったことは私の責任であり、あらためてお詫びと御礼を申し上げる

かつての「非自民の牙城」崩れる
岩手選挙区 木戸口英司(立民・現)

立憲民主党の現職、木戸口英司(58)。
定員1の岩手選挙区は平成5年に自民党を離党した地元出身の重鎮・小沢一郎衆議院議員の影響力のもと、自民党以外の候補が9回続けて勝利してきた、いわゆる「非自民の牙城」だ。

木戸口は初当選した前回、6年前と同様、共産党と社民党の県組織が支援し、事実上の野党共闘で、2回目の当選を目指した。小沢が去年の衆議院選挙の岩手3区で初めて自民党に敗れ、求心力の低下が指摘される中、今回の参議院選挙は、立憲民主党にとっても議席を死守することが至上命題だった。

木戸口は小沢の全面支援を受けたほか、木戸口が9年間秘書をつとめた達増知事が「タブーなし」と全面支援を表明。休日には県内各地を一緒にまわるなどして、知事との連携をPRした。
かたや自民党は勝利すれば30年ぶりの議席獲得となる。新人の女性候補は立候補表明の遅れを挽回しようと必死の戦いを展開し、岸田総理大臣はじめ党本部の大物議員が何度も岩手県入りし、自民党支持者への浸透を図った。

結果、木戸口は無党派層への支持が広がらず、2回目の議席獲得はならなかった。
10日、本人は新型コロナの簡易検査キットで陽性反応が出たとして事務所に姿を見せず、陣営の幹部がコメントを読み上げた。
自公政権の推し進める政策が岩手を苦しめている現状に具体的な政策を訴えてまいりましたが理解を得ることができなかった

去年秋に初当選したばかり
静岡選挙区 山崎真之輔(無・現)

定数2の静岡選挙区。無所属の現職で国民民主党が推薦する山崎真之輔(40)。

浜松市出身の40歳。平成19年に浜松市議会議員に初当選し、平成25年には静岡県議会議員に初当選。その後、静岡県の川勝知事を支援する会派で政調会長などを務めた。去年秋の補欠選挙で、自民党と共産党の候補者を抑えて、初当選したばかりだ。

しかしその後、写真週刊誌で、自身の女性問題が報じられた。
さらに川勝知事との関係にも変化があった。先の選挙で応援演説に立った川勝知事は、対立候補が御殿場市長を務めていたことに関連し「あちらはコシヒカリしかない」などと発言したことが問題となり、県議会で辞職勧告が可決されるに至った。この経過から、今回の参議院選挙について、川勝知事は「ノーサイド。選挙には参加しない」として、山崎の応援をしないと表明した。大きな後ろ盾を失った山崎の支持は急落した

会派に所属する国民民主党の推薦は得られたが、立憲民主党からは距離をおかれた。また、独自候補の擁立を見送った日本維新の会は4月にいったん山崎への推薦を発表したが、国民民主党内の調整不足で撤回された。

そんなゴタゴタ続きの中で、若い世代を意識し仮想空間を使った演説会など、新しいスタイルの選挙運動にも取り組んだ。しかし、特に女性からの批判は根強く、無党派の支持も集められず、自民党の新人と無所属の現職に、大きく離され敗北が決まった。

選挙期間中もみなさまのおかげで全力を尽くして最後まで戦うことができた。ただ、結果が伴わなかったことは大変残念で、すべて私の力不足だ

小池都知事との連携アピールも
東京選挙区 荒木千陽(ファ・新)

6議席に候補者34人が立った首都決戦。
初めての国政進出を狙ったファーストの会の新人、荒木千陽(40)の議席獲得はならなかった。

かつて秘書をつとめた小池東京都知事や、推薦をうけた国民民主党の玉木代表がたびたび応援に入り、3人そろって街頭演説を行うなどした。都議会議員として進めてきたコロナ対策や子育て支援策を国でも実行すると訴えたが、無党派層からの支持が広がらず、推薦を受けた国民民主党の支持層も固めきれなかった。ファーストの会としても国政進出はならなかった。

小池都知事は、一夜明けて、荒木の落選について「私のことを認識してくださる方はたくさんいたが、私と荒木氏の関係が伝わったようで伝わっていなかった。知名度が上がりきらずに終わった印象だ」と述べた。

3期目目指すも
比例 宇都隆史(自民・現)

自民党の現職で、党政務調査会長代理の宇都隆史(47)は、3期目を目指したが、今回、議席を失った。宇都は防衛大学校を卒業後、航空自衛隊に入り、青森県や福岡県などの基地で勤務した後、平成22年の参議院選挙の比例代表で初当選。その後、外務副大臣などを務めた。

長年の議席を失う
比例 大門実紀史(共産・現)

共産党現職で参議院国会対策副委員長の、大門実紀史氏(66)。
京都府出身で平成10年の参議院選挙の比例代表に立候補して落選したが、その後、2001年に繰り上げで初当選。経済政策通として知られ、5回目の当選をめざしたものの長年守った議席を失った。