自民は大勝 立民は議席減
改憲発議に必要な勢力議席超
主な当選者一覧と解説も

今回の参議院選挙で、自民党は単独で63議席を獲得し、改選議席125の過半数を確保して、大勝しました。与党は、引き続き、参議院でも安定した基盤を確保することになりました。
立憲民主党は改選前を下回り、17議席にとどまりました。

一方、憲法改正に前向きな自民・公明両党と日本維新の会、国民民主党の4党の獲得議席はこれまでに93となり、非改選の議席をあわせて、改正の発議に必要な参議院全体の3分の2の議席を占めることになりました。

各党の獲得議席は、選挙区と比例代表をあわせて、▼自民党が63議席、▼立憲民主党が17議席、▼公明党が13議席、▼日本維新の会が12議席、▼国民民主党が5議席、▼共産党が4議席、▼れいわ新選組が3議席、▼社民党が1議席、▼NHK党が1議席、▼参政党が1議席、▼無所属が5議席となりました。

自民党は単独で63議席を獲得し、改選議席125の過半数を確保して大勝しました。

公明党は、改選前を1議席下回りましたが、与党は、引き続き、参議院でも安定した基盤を確保することになりました。

野党第一党の立憲民主党は、改選前の23議席を下回り17議席にとどまりました。

日本維新の会は、比例代表で8議席を獲得し、立憲民主党を上回り、選挙区の4議席とあわせて12議席となり、改選前の2倍に伸ばしました。

一方、憲法改正に前向きな自民・公明両党と日本維新の会、国民民主党の4党の獲得議席はこれまでに93となり、非改選の議席をあわせて、改正の発議に必要な参議院全体の3分の2の議席を占めることになりました。

また、35人の女性が議席を獲得し、過去最多となりました。

確定投票率 52.05% 前回上回る

総務省のまとめによりますと、今回の参議院選挙の選挙区の投票率は、52.05%と、前回・3年前の選挙より3.25ポイント高くなりました。           

当選者の顔ぶれ

東京選挙区 生稲晃子氏(自民・新)

東京選挙区で自民党の新人の生稲晃子さんが初めての当選を果たしました。
生稲さんは54歳。1980年代のアイドルグループ「おニャン子クラブ」の元メンバーです。その後、俳優やリポーターなどとして活動し、乳がんを患った経験からがん対策の推進に向けた国のアドバイザリーボードのメンバーを務めました。
自民党の新人の生稲さんは、俳優として活動するなか乳がんを患った経験から、治療と仕事が両立できるよう職場と医療機関などが連携して支援にあたる仕組みを推進するよう訴えていました。
生稲さんは、1980年代のアイドルグループ「おニャン子クラブ」の元メンバーで、高い知名度を生かして選挙戦を進め、自民党の国会議員や地方議員などの支援を受けて自民党支持層を固めました。

比例 赤松健氏(自民・新)

比例代表で、自民党の新人、赤松健氏(54)。
平成5年から漫画家として活動し、現在は日本漫画家協会の常務理事を務めています。赤松氏は漫画やアニメなど、表現の自由を守ることや、エンターテイメント産業を成長産業に育てることなどを訴えて、幅広く支持を集め、初めての当選を確実にしました。
赤松氏は「おととい、安倍元総理大臣の銃撃があり、言論を暴力で封殺するという許されないことが起こってしまった。最大限の言葉で非難する」と述べました。そのうえで「日本の漫画、アニメ、ゲームは世界で非常に支持されている。こういったものを使って平和的な外交を進めていきたい。漫画の力を使って『楽しくてみんなが参加できる政治』を目指していきたい」と述べました。

比例 今井絵理子氏(自民・現)

比例代表で、自民党の現職、今井絵理子氏(38)。
女性アイドルグループ、SPEEDのメンバーとして活躍したあと、平成28年の参議院選挙の比例代表で初当選し、内閣府政務官などを務めました。今井氏は障害者福祉や教育政策の充実などを訴えて全国的に支持を広げ、2回目の当選を確実にしました。
今井氏は「スピードだけにスピード感のない当選結果となった。これからは政治家、今井絵理子として、スタートする。しっかりと向き合いながら、これからの6年頑張っていきたい」と述べました。

奈良選挙区 佐藤啓氏 (自民・現)

奈良選挙区で2回目の当選を果たした自民党の佐藤啓氏は、奈良市内の事務所で記者会見し「応援に入っていただいた安倍元総理大臣がテロの凶弾に倒れる事態があったが、テロにひるむことなく臆することなく乗り越えていこうと活動した。今回の勝利の結果をあす、上京して安倍元総理大臣に伝えたい」と述べました。

比例 「ガーシー」東谷義和氏(N党・新)

比例代表で、NHK党の新人、東谷義和氏(50)。
「ガーシー」を名乗った動画投稿サイト「ユーチューブ」での発信が話題を集めました。選挙期間中は、SNSを使ったり、録音した音声を街頭で流したりして投票を呼びかけ、初めての当選を確実にしました。
東谷義和氏は「応援してくれた視聴者、フォロワー、国民のみなさまが 本当に押し上げてくれた。当選して終わりではなく、これからがスタートだ。国会で寝ている議員を全員たたき起こす。こんな議員はいないというくらいやってやるつもりなので見ていてほしい」と述べました。

比例 水道橋博士(れいわ・新)

比例代表で、れいわ新選組の新人、水道橋博士氏(59)。
お笑いコンビ「浅草キッド」の1人で、コメンテーターやコラムニストなど幅広い分野で活躍するタレントとしての知名度を生かした選挙戦を展開し、初めての当選を確実にしました。

比例 猪瀬直樹氏(維新・新)

比例代表で、日本維新の会の新人、猪瀬直樹氏(75)。
作家として活動しながら、平成14年には、当時の小泉総理大臣の要請を受けて日本道路公団などの民営化のあり方を検討する委員会の委員に就任し、特殊法人の廃止や民営化に携わりました。そして、平成19年に当時の東京都の石原慎太郎知事の要請を受けて副知事に就任し、平成24年には、石原氏の後継として東京都知事選挙に立候補し、過去最多の430万票余りを獲得して初当選しました。しかし大手医療法人から多額の現金を受け取った問題で、平成25年に辞任しました。

比例 松野明美氏(維新・新)

比例代表で、日本維新の会の新人、松野明美氏(54)。
昭和63年に開催されたソウルオリンピックでは、陸上・女子1万メートルに出場したほかマラソンでも活躍しました。引退後はタレントなどとしてテレビ番組に出演しながら、熊本市議会議員を2期、熊本県議会議員を2期務めました。

比例 中条きよし氏(維新・新)

比例代表で、日本維新の会の新人、中条きよし氏(76)。昭和43年に歌手としてデビューし、昭和49年に出した「うそ」が大ヒットとなり、その年の日本レコード大賞の大衆賞を受賞したほか、NHKの紅白歌合戦にも出場しました。また俳優としても活躍し、民放のテレビ時代劇「必殺仕事人」などの「必殺」シリーズに出演しました。中条氏は、高い知名度を生かして選挙戦を展開し、全国に支持を広げて初めての当選を確実にしました。

比例 青島健太氏(維新・新)

比例代表で、日本維新の会の新人、青島健太氏(64)。元プロ野球選手で、引退後はスポーツライターやテレビ番組のキャスターなどとして活動しています。また3年前の埼玉県知事選挙では、自民・公明両党の推薦を受けて無所属で立候補しましたが落選しました。

長野選挙区 杉尾秀哉氏(立民・現)

長野選挙区では、立憲民主党の現職、杉尾秀哉氏(64)が2回目の当選です。
民放のキャスターなどを経て、6年前の選挙に野党統一候補として立候補し当選しました。自民党1強政治の打破と時限的な消費税の税率の引き下げなど家計を守る政策の実現を訴えて選挙戦を展開し議席を守りました。

比例 辻元清美氏(立民・新)

比例代表で、立憲民主党の新人、辻元清美氏(62)。
平成8年の衆議院選挙では社民党から比例代表に立候補して初当選し、衆議院議員を7期務めましたが、去年の衆議院選挙で落選しました。
辻本氏は「ずっしりと重い責任を背中に背負って、もう1度、国会の正門をくぐることになりこれからが本番だ。こういう時代だからこそ、強い野党をつくり、日本がおかしな方向にいかないように、しっかり歯止めをかけることができるようにしっかり頑張っていく」と述べました。

比例 神谷宗幣氏(参政党・新)

比例代表で、参政党の新人、神谷宗幣氏(44)。
大阪府吹田市議会議員を2期務めたあと、平成24年の衆議院選挙では大阪13区に自民党から立候補しましたが落選しました。その後動画配信などを行う会社を経営し、おととしからは参政党の事務局長を務めています。神谷氏は、大阪を中心に支持を広げ、初めての当選を確実にしました。

東京選挙区 山本太郎氏(れいわ・元)

東京選挙区では、れいわ新選組の元議員、山本太郎氏(47)が2回目の当選を果たしました。
2013年の参議院選挙で東京選挙区から無所属で立候補して初めて当選しました。その後、れいわ新選組を旗揚げ。去年の衆議院選挙では比例代表で立候補して議席を獲得しましたが、今回、議員辞職して選挙戦に臨みました。

山本氏は、NHKの開票速報番組で「日本は消費税を上げ続け、国が衰退する結果を生み出した。この25年の不況にコロナまでやってきて、そして戦争による物価高。これを徹底的に底上げしていくという政策が何よりも必要だ。大胆な経済政策をやらなければだめだ」と述べました。

比例 天畠大輔氏(れいわ・新)

比例代表で、れいわ新選組の新人、天畠大輔氏(40)。
14歳のとき、医療ミスにより手足の麻痺や発話障害などの重い障害が残りました。現在は、障害者支援団体の代表や立命館大学衣笠総合研究機構の専門研究員を務めています。天畠氏は特定枠1位で、れいわ新選組が1議席を確保することが確実になったため初めての当選を確実にしました。

比例 田村智子氏(共産・現)

比例代表で、共産党の現職、田村智子氏(57)。
国会議員の秘書などを経て、平成22年の参議院選挙の比例代表で初当選し、現在は、党の政策委員長を務めています。
田村氏は「軍事費2倍の大軍拡を止めて、改憲という方向に向かわせないように、しっかり仕事をやり遂げていきたい」と述べました。

比例 福島瑞穂氏(社民・現)

公職選挙法上の政党要件の維持に向け、党の存亡をかけた戦いとなった社民党。比例代表で、現職の福島瑞穂党首(66)が議席を守りました。
弁護士で、平成10年の参議院選挙の比例代表で初当選し、平成21年からは当時の民主党、社民党、国民新党の連立政権で消費者・少子化担当大臣を務めました。
福島氏は、午前3時前に記者団に対し「比例代表の得票率2%を確保できているかまだ分からないので、最終的に政党要件をクリアできるか見守りたいが1議席の確保はうれしい。皆さんの期待を受け止め、もっと躍進していけるように頑張りたい」と述べました。

沖縄選挙区 伊波洋一氏(無・現)

沖縄選挙区では、無所属の現職 伊波洋一氏(70)が2回目の当選を果たしました。
アメリカ軍普天間基地のある宜野湾市の市長を務めたあと6年前の選挙で初当選しました。秋の県知事選挙をにらんで与野党双方が重視した今回、伊波さんは玉城知事や立憲民主党、共産党などの支援も受けて選挙戦を展開し議席を守りました。

最年長は山崎正昭氏(80)最年少は山添拓氏(37)

今回の当選者のうち最年長は福井選挙区の自民党の現職、山崎正昭氏で80歳です。6回目の当選で、これまでに官房副長官や党の参議院幹事長、それに参議院議長など要職を歴任しています。
一方、最年少は東京選挙区の共産党の現職で2回目の当選を決めた山添拓氏で37歳です。

【解説】事件の影響は? 勝敗の理由は?

Q)
与党の勝利となった今回の選挙結果を受けて、岸田総理大臣は、今後どう動くとみるか?
A)
より「岸田カラー」を前面に出した政権運営ができるようになったといえる。
去年の衆議院選挙に続いての勝利となったので、岸田総理の政府・与党内での求心力が強まることになる。
衆議院の解散がなければ、このあと3年間は、本格的な国政選挙の予定がない「黄金の3年」とも言われる期間を手にしたことになる。
一方で、選挙直前に、自民党最大派閥の領袖の安倍元総理大臣が殺害されるという、誰も想像しなかった事件が起きた。
自民党内のパワーバランスが大きく変わることも予想され、実際に岸田総理がどれだけのフリーハンドを持てるようになるのかは、現時点で見通すことは難しい。

Q)
安倍元総理大臣の事件は、選挙結果にも影響を与えたか?
A)
確実なことは分からないが、有権者の投票行動に影響した可能性はある。
NHKが行った期日前投票の出口調査では、比例代表で自民党に投票したと回答した人が事件の翌日の土曜日に4ポイント余り伸びている。

最近は、期日前投票の最終日に自民党が伸びる傾向はあるが、事件のあと、自民党への投票がより増加したということはあるかもしれないし、投票率が最終的に前回を上回る見通しとなったことも、事件の影響があるかもしれない。
演説中に起きた卑劣な事件に「民主主義への冒とくだ」という批判が相次ぎ、選挙の重要性を改めて認識し、投票所に足を運んだ有権者が増えた可能性も。

Q)
与党側の勝因、野党側の敗因、どう分析?
A)
勝負を決めたのは、全国に32ある1人区。
自民党は、前回の選挙で22勝、前々回は21勝だったのに対し、今回は28勝と大きく数を伸ばし、野党を圧倒した。

今回は、野党側が候補者を一本化し、与党と対決する構図となった選挙区が11にとどまったということが、要因の1つ。
与野党一騎打ちの構図を作れず、野党勢力の結集を図る機運を高められなかった。
さらに、野党間の足並みの乱れ以外にも要因がありそうだ。
(新潟選挙区 当選 自民党・新人 小林一大氏)
例えば、新潟選挙区は、前回と前々回は、野党側が競り勝ったのに対し、今回は、自民党が7ポイント近くの差をつけて勝利した。

出口調査の結果を見ると、ふだん自民党を支持していると答えた人が全体の47%と、全体の半数近くにのぼり、次に多かった無党派層の19%の2倍以上となっていることがわかる。
自民党の小林さんは、この自民党の支持層の80%余りから支持を得た。

さらに、無党派層では、3年前の選挙と比べ、野党側との差を詰めた。
党の支持層が結束し、支持を無党派層にも広げたことが自民党の勝因と言える。

Q)
憲法改正に前向きな勢力が大幅に増える結果となったが、憲法改正が大きく動きだすことになりそうか?
A)
憲法論議がさらに活発になることは予想されるが、すぐに改正の発議につながっていくかどうかはわかからない。
改正に前向きな4党の中でも、憲法改正の具体的な中身をめぐっては、主張に隔たりが見られる。

例えば、憲法9条に自衛隊を明記することについては、
◇自民党と日本維新の会が「自衛隊の違憲論争に終止符を打つことが必要だ」などとして、実現を目指している。
これに対し◇公明党は、山口代表が「ほとんどの国民は、自衛隊は合憲で定着しているという認識だ」と述べるなど、慎重に検討する方針を示している。さらに、国民民主党の玉木代表も「自衛隊を明記することで何が変わるのかわからない」と指摘している。
実際に憲法改正を発議するには、憲法のどの部分をどのように変えるのかという点で、3分の2以上が一致する必要がある。
今回の選挙結果を受けて、具体的な一致点を探る議論が本格化すると見られるが、自民党内からは「それほど簡単ではない」という声も聞かれる。

Q)
一方、今回の選挙で大きな争点となった「物価高騰対策」については、岸田政権は、具体的にどう取り組んでいくことになりそうか?

A)
岸田総理大臣は、選挙期間中、野党側が主張していた消費税の減税を否定し、エネルギーと食料品に特化した政府の対策の効果が出ているという認識を示していたので、これまでの方針に沿った対策を続けるものと見られる。
一方で、今後も当面、物価高が続くと指摘されるなかで、課題の1つとなるのが賃上げだ。
岸田総理大臣が掲げる「新しい資本主義」でも、賃上げは大きな柱の1つになっています。歴代の政権が長年取り組みながら、実質的な成果が上がっていない課題なので、政権としての本気度が問われることになる。

Q)
円安への対応は?
A)
円安の原因の1つと指摘される、現在の大規模な金融緩和については、岸田総理大臣は維持する考えを示していますが、欧米が金融引き締めという逆の動きを強めるなか、日本として、いわゆる出口戦略をどのように描いていくのかも焦点になる。

Q)
今後の注目すべき政治日程は?
A)

まずは、自民党役員人事と内閣改造だ。秋に臨時国会が検討されていて、それに先だって、岸田総理大臣は、人事の検討に入るものと見られる。

政策面では、安全保障をめぐる議論。
政府は、ことしの年末までに、安全保障関連の3つの文書を改定する方針だ。
参議院選挙でも争点になった防衛費の増額のほか、いわゆる「敵基地攻撃能力」のあり方などについて、今後、議論が本格化する見通しだ。

外交では、G20サミット=主要20か国首脳会議やASEAN関連の首脳会議など大型の国際会議が予定されている。
引き続き、ウクライナ情勢への日本の対応も焦点となる。

Q)
経済、外交安全保障と課題がめじろ押しだが、安倍元総理大臣が亡くなったことで、岸田総理大臣の今後の政権運営を占う上で何がポイントになるか?
A)
政府与党の政策決定過程がどうなっていくかが焦点。
自民党内で、比較的リベラルとされる岸田派を率いる岸田さんと、保守派のリーダーと目される安倍さんは、経済政策や安全保障政策などをめぐって、時折、路線の違いも見られた。

安倍さんが岸田政権をけん制するような発言を行い、岸田さんが配慮を見せるという場面が何度か見られた。
一方で岸田さんとしては、安倍さんの求心力に頼ることで、党内の融和を図っていたという面もあると思う。
自民党の閣僚経験者の1人は「安倍さんほど、党内の多くをまとめる力を持った議員は見当たらない」と指摘している。
今後、岸田さんの打ち出す政策に対し、党内から異論が出た場合、どう調整を図っていくかは、安定した政権運営を続ける上で重要なポイントになる。
そうした意味では、9月上旬までに行われるのではないかと見られている党役員人事と内閣改造で、岸田さんの今後の方針の一端が見えてくるのかもしれない。