朝鮮リ外相と河野外相
立ち話で意見交換

河野外務大臣は3日夜、訪問先のシンガポールで、北朝鮮のリ・ヨンホ外相と短時間意見交換しました。拉致・核・ミサイルの問題を包括的に解決し、日朝ピョンヤン宣言に基づいて国交正常化を目指す日本側の立場を伝えたものとみられます。

ASEAN=東南アジア諸国連合の一連の外相会議などに出席するため、シンガポールを訪れている河野外務大臣は3日夜、各国の外相が参加する夕食会の前後に、北朝鮮のリ・ヨンホ外相と立ち話の形で短時間意見交換しました。

河野大臣は、このあと記者団に対し、「リ外相には、日本側の考え方や基本的な立場を申し上げ、さまざまなやり取りをした」と述べましたが、詳しいやり取りや、リ外相の発言は明らかにしませんでした。

意見交換で河野大臣は、拉致・核・ミサイルの問題を包括的に解決し、日朝ピョンヤン宣言に基づいて国交正常化を目指すとともに、拉致問題の解決に向けた直接対話に前向きな日本側の姿勢も伝えたものと見られます。

6月の米朝首脳会談以降、日本と北朝鮮の閣僚レベルによる接触は初めてです。

政府は、安倍総理大臣が意欲を示す日朝首脳会談の実現も視野に、北朝鮮との直接対話の機会を、引き続き、慎重に探っていくことにしています。

最近の日朝の接触は

日本政府はこれまで、国際会議などの場を通じて、北朝鮮側と接触してきました。

最近では去年8月、河野外務大臣が、フィリピンで開かれたASEAN=東南アジア諸国連合の一連の外相会議に出席した際、リ・ヨンホ外相と短時間、立ち話をしました。
河野大臣は、日朝ピョンヤン宣言に基づいて、拉致・核・ミサイル問題の包括的な解決を求めました。

またことし2月には、ピョンチャンオリンピックの開会式に先立つレセプションで、安倍総理大臣がキム・ヨンナム最高人民会議常任委員長と短時間言葉を交わしました。
キム・ジョンウン(金正恩)体制下の北朝鮮幹部と、安倍総理大臣がことばを交わしたのはこれが初めてで、安倍総理大臣は拉致問題や核・ミサイル開発に関する日本側の考えを伝え、前向きな対応を求めました。

さらに、米朝首脳会談直後の6月、モンゴルで開かれた国際会議に出席した外務省幹部が、北朝鮮の政府機関関係者と短時間意見を交わし、すべての拉致被害者の帰国を求めるとした日本の立場を伝えました。

米朝首脳会談を受けて、安倍総理大臣は、拉致問題の解決に向けた、北朝鮮との直接対話に意欲を示す一方、対話は問題の解決に資するものでなければならないという立場を強調していて、政府は、北朝鮮との対話の機会を慎重に探っていました。

リ外相はなにも答えず 南北外相会談もない見通し

ARF=ASEAN地域フォーラムを前に3日夜、河野外務大臣は夕食会で北朝鮮のリ・ヨンホ外相と接触したことを明らかにしましたが、リ外相は、夕食会を終えてホテルに戻った際、記者団から「河野外務大臣とどのような話をしたのか」という問いかけにはなにも答えませんでした。

また、韓国外務省の関係者によりますと、リ外相は、夕食会の席で韓国のカン・ギョンファ(康京和)外相と言葉は交わしましたが、正式な会談に関しては、「応じる立場にない」などと述べたということで、今回のARFで南北の外相会談は開かれない見通しが強まっています。

リ外相は3日、中国やベトナムの外相などとは会談していて、経済制裁の緩和に向けた雰囲気を醸成することも視野に、非核化に取り組む姿勢を強調したものとみられます。