緊急事態宣言 重点措置
30日で全面解除決定 政府

新型コロナウイルス対策で、政府は、19都道府県の緊急事態宣言と8県のまん延防止等重点措置について、9月30日の期限をもって、すべて解除することを決めました。宣言と重点措置が、どの地域にも出されていない状況は、およそ半年ぶりになります。

政府は28日夕方、総理大臣官邸で新型コロナウイルス対策本部を開き、菅総理大臣のほか、西村経済再生担当大臣や田村厚生労働大臣らが出席しました。

そして、東京や大阪など19の都道府県に出している緊急事態宣言と、8つの県に適用しているまん延防止等重点措置について、9月30日の期限をもって、すべて解除することを決めました。

これにより、東京ではおよそ2か月半ぶり、沖縄ではおよそ4か月ぶりに宣言が解除されることになり、宣言と重点措置が、どの地域にも出されていない状況は、ことし4月4日以来およそ半年ぶりになります。

菅総理大臣は、午後7時をめどに記者会見を行い、宣言を解除する理由や解除後の対応などについて説明することにしています。

菅首相「一定の感染生じても医療提供できつつある」

菅総理大臣は政府の対策本部で「ワクチン接種と中和抗体薬の投与が進んでおり、今後は一定の感染が生じても安定的に医療を提供できるようになりつつある」と述べました。

そのうえで、ウイルスの存在を前提として、感染対策と日常生活を両立していくため、医療体制のもう一段の整備と、着実なワクチン接種の継続、それに、日常生活の回復の3つの方針で取り組みを進める考えを示しました。

具体的には、再び感染が拡大しても、すぐに使える病床や医療人材を確保できるよう、体制の整備を進めるとともに、来月から11月のできるだけ早い時期に希望するすべての国民が2回目のワクチン接種を終えるよう取り組む考えを示しました。

また、来月1日以降、当面は、アクリル板の設置や換気などの対策を取り、認証を受けた飲食店では、都道府県の判断で酒類を提供し、営業時間は午後9時までとすることも可能とし、段階的な緩和を行ったうえで、ワクチンの接種証明や検査結果も活用したさらなる措置を検討する考えを示しました。

そして、菅総理大臣は「新型コロナとの闘いは新たな段階を迎える。今後、次の感染の波にも備えながら、感染対策と日常生活を両立していくことができるよう政府一体となって、取り組みを続けていかなければならない」と述べ協力を呼びかけました。

菅首相「次期総理も最優先で新型コロナ対策を」衆参議運委で

19都道府県の緊急事態宣言と8県のまん延防止等重点措置が、30日の期限をもってすべて解除されるのを前に、菅総理大臣は、衆参両院の議院運営委員会に出席し、ワクチン接種などに政府を挙げて取り組んできたとしたうえで、次の総理大臣にも最優先で新型コロナ対策に取り組んでほしいという考えを示しました。

▽自民党の山下雄平氏は「コロナ対応と、それに伴う経済対策において、この1年、何が最も困難で、それをどう乗り越えてきたのか」と質問しました。

これに対し菅総理大臣は「いちばん判断として苦しかったのは、緊急事態宣言を発出する時で、飲食の皆さんに大変なご迷惑をおかけした。次の総理大臣も、コロナ対策を最優先に国民にかつての生活を取り戻すことができるよう体制を整えていただければと思う」と述べました。

▽立憲民主党の黒岩宇洋氏は「菅総理大臣は『できうるかぎりのコロナ対策をすべて打った』と言い切れるのか」とただしました。

これに対し菅総理大臣は「1年間、新型コロナ対策に明け暮れていた。ワクチンが間違いなく効果があるということで、的を絞って取り組んできた。高齢者の接種を優先的に進めたことで、世界でも致死率は低い水準になっている。結果は国民が判断するだろうが、政府を挙げて取り組んできている」と述べました。

▽公明党の高橋光男氏は「国産ワクチンや治療薬を早く実用化させ、途上国に提供することを、ぜひ次の総理大臣にも引き継いでほしい」と求めました。

これに対し菅総理大臣は「『ワクチンサミット』を主催しワクチンの途上国などへの供与、開発や生産強化などによる国際貢献への決意を表明した。次の政権についても、わが国が新型コロナとの闘いにおける国際協調をけん引していくべきだと思うので申し伝えたい」と述べました。

▽共産党の塩川鉄也氏は「臨時国会の召集要求を2か月以上も放置した。そこに、菅総理大臣自身がコロナ対策を軽視してきたことがあらわれている」とただしました。

これに対し菅総理大臣は「憲法53条後段には、召集時期は何ら触れられていない。召集については、国会のことであり、これまでも与党と相談しながら対応を検討した。来月4日に臨時国会を召集する旨を閣議決定したところで、憲法に規定された義務を踏まえたものだ」と述べました。

▽日本維新の会の遠藤国会対策委員長は「未知のウイルスとの闘いで、日本の規制が足かせになってきたのではないか。今までの経験値の中で、どう考えているのか」と質問しました。

これに対し菅総理大臣は「医療に関するさまざまな制約について、安全性を担保しながらも不断の検討が必要だ。省庁間の縦割りや国と自治体の関係を平時の時に考える必要がある。次の内閣に状況を説明し、しっかりと国民の期待に応えられるような対応が必要だ」と述べました。

▽国民民主党の浜口誠氏は「重症化を防いでいくためには、飲み薬タイプの治療薬をいかに早く提供していくかが重要な視点だ。どのタイミングで提供できるようになるのか」とただしました。

これに対し菅総理大臣は「飲み薬タイプの薬が開発されれば、さらに幅広い方々に対して、手軽に重症化を防止できるようになる。国内で開発できるように、研究開発や医療機関の治験などを予算措置により積極的に支援している」と述べました。

尾身会長 対策継続やワクチン接種など「解除に5つの条件」

「基本的対処方針分科会」の尾身茂会長は会合のあと報道陣の取材に応じ、5つのポイントを条件に緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を解除するとした政府の方針を了承したと述べました。

その5つのポイントとして、尾身会長は市民に対して
▽混雑した場所を避け、換気を行い、大声を控えるなどこれまでの対策を続けることと
▽ワクチンの接種への協力を求めることを挙げました。

また、国や自治体に対して
▽行動制限の解除は段階的に慎重に行い、重点措置は使わないものの知事は必要であれば対策を続けること
▽ワクチンが行き渡る前の過渡期の今、検査や換気のための二酸化炭素濃度のモニターといった科学技術を活用した対策や、医療供給体制のさらなる強化を進めること
▽感染拡大の予兆があれば、深刻な医療ひっ迫にならないよう機動的に対応することを求めたということです。

そのうえで尾身会長は「議論の中では、まん延防止等重点措置に移行させるべきではないかという意見もあったが、最終的には再拡大をさせないための対策を確実に行うことを確認して解除を了承した。みんな一気に元の生活に戻ろうとすると感染の再拡大、リバウンドが起きる蓋然性が高いので、少しずつ解除してくださいということを国や自治体、専門家がワンボイスで発信することが重要だ。これから冬の時期にかけて飲み会など機会が増えて感染が拡大することも十分にありうる。各都道府県では法律に基づく対策の要請など必要な対策を行ってもらい、国にはそれに対して十分に財政的な支援を行うようお願いした」と述べました。