2040年「内政上の機」
総務省研究会が報告書

高齢者人口がピークを迎える2040年ごろの課題を議論する総務省の研究会は、行政機能を維持できない小規模な自治体が出てくるとして自治体どうしが共同で介護サービスなどを実施できるよう法整備を行う必要があるとする報告書をまとめました。

総務省の有識者研究会は去年10月から、高齢者人口がピークを迎える2040年ごろの自治体の課題や対応策の議論を行い、3日、報告書を野田総務大臣に提出しました。

報告書では、高齢者人口がピークを迎える2040年ごろについて、地方を中心に、およそ25%の自治体で人口が今の半分程度まで減る「わが国の内政上の危機」と指摘しています。

そのうえで、人口減少が進み行政機能を維持できない小規模な自治体が出てくるとして隣り合う自治体どうしが共同で、介護サービスや公共施設の整備などを実施できるよう法整備を行う必要があるとしています。

また地域の実情に応じて、都道府県と市町村の2つの仕組みを柔軟に運用すべきだとして、道路や橋などのインフラの維持補修といった専門知識が必要な職員を、自治体間の垣根を越えて活用する仕組み作りも求めています。

総務省はこの報告書を受けて、5日発足する総理大臣の諮問機関である地方制度調査会で、制度の具体化に向けた議論を行うことにしています。

報告書が描く2040年

今回の報告書がターゲットにした2040年。今からおよそ20年先に当たります。報告書が描く2040年の日本の姿とはどのようなものなのか、見ていきます。

日本の人口は、すでに10年前の2008年の1億2808万人をピークに減少段階に入っていて、2040年には、1億1092万人になると予想されています。

特に地方では、大幅に減ってしまう自治体が相次ぎ、全国のおよそ4分の1の自治体で人口が半分程度にまで減ってしまうとしています。

急激に高齢化も進みます。2040年は1971年から1974年生まれの、いわゆる団塊ジュニア世代の多くが65歳以上となります。国民の3人に1人が高齢者となり高齢者人口がピークを迎えるのが2040年ごろなのです。

出生率は上がらずに、産まれる子どもの数の減少傾向が続くため、労働力不足も深刻化します。近年の出生数は、年間100万人を切っていて、団塊ジュニア世代の半分以下です。

報告書の中で2040年は、若い労働力の絶対量が不足するとして、自治体は、今の半分の職員でも機能が維持できるよう、人工知能=AIなどの技術を活用すべきだと指摘しています。

高度経済成長期に整備されたインフラの老朽化対策も大きな課題です。建設から50年以上経過した道路や橋りょうなどは、2032年には過半数を超えます。

維持・管理には、非常に多くの費用がかかるうえ、こうした作業にあたる自治体の専門職員が不足することも懸念されています。

総務相「政府全体で対応する必要」

報告書を受け取った野田総務大臣は「内政上の危機や、今後の自治体行政のあるべき方向性を明らかにしてもらった。総務省だけでなく、政府全体で、自治体とともに対応する必要があり、地方制度調査会を立ち上げて、議論を行っていただくようお願いしていきたい」と述べました。