吉川元農相辞職 鶏卵会社
元代表が現金渡したと説明

自民党の吉川元農林水産大臣は、みずからの健康状態を理由に、22日、衆議院議員を辞職しました。吉川氏をめぐっては、大手鶏卵生産会社の元代表が、現金を渡したなどと周囲に説明していることが明らかになっています。

自民党の吉川貴盛元農林水産大臣は、21日コメントを発表し、心臓病のため入院治療中で近く手術を受ける予定だとしたうえで、「国会議員としての職責を果たすことが難しい」として、衆議院議員を辞職することを表明しました。

そして、吉川氏は22日午前、秘書を通じて大島衆議院議長あてに議員辞職願を提出しました。

国会法の規定で、国会閉会中は、議長が議員の辞職を許可できることになっていて、大島議長が許可し、吉川氏は、衆議院議員を辞職しました。

吉川氏は、衆議院北海道2区選出の当選6回で70歳。

北海道議会議員などを経て、平成8年の衆議院選挙で初当選し、おととし10月、農林水産大臣として初入閣し、去年9月まで務めました。

吉川氏をめぐっては、広島県福山市にある大手鶏卵生産会社の元代表が、現金500万円を渡したなどと周囲に説明していることが関係者への取材で明らかになっていて、吉川氏は、12月2日に、国会審議と党運営に迷惑をかけたくないとして、党の役職を辞任していました。

吉川氏の辞職に伴い、公職選挙法の規定により、衆議院北海道2区では来年4月に補欠選挙が行われる見通しです。

立民 吉川氏の証人喚問求める

自民党の吉川元農林水産大臣が衆議院議員を辞職したことをめぐり、自民党の森山国会対策委員長と立憲民主党の安住国会対策委員長が会談し、安住氏は、大手鶏卵生産会社の元代表が吉川氏に現金を渡したと周囲に説明していることを踏まえ「議員辞職では済まされず、疑惑隠しだ」と指摘し、予算委員会で吉川氏の証人喚問を行うよう求めました。

これに対し森山氏は、持ち帰って検討する考えを示しました。

安住氏は記者団に対し「体調が回復ししだい、通常国会の予算委員会で聴取をしたい。大臣室で現金500万円を受け取った疑いのある人なので、議員を辞めたからといって責任から逃れられるわけではない。事件の核心に迫る話を国会でするのであれば、証人喚問は当然だ」と述べました。

森山氏は記者団に対し「国会議員の立場にけじめをつけて治療に専念したいという気持ちなのではないか。国会運営に支障が出るかはわからないが、しっかりやらなければならない」と述べました。
立憲民主党が吉川氏の証人喚問を要求していることについては「辞職は間違いなく健康上の理由であり、議員を辞めたことも考えなければならない」と述べました。

一方、森山氏は新型コロナウイルスに対応する医療機関の支援などのため、政府が今年度予算の予備費から4500億円程度を支出することを伝え、今週25日に衆参両院で予算委員会の理事懇談会を開き、政府側から説明を聞くことで合意しました。

自民 二階氏「大変残念だ」

自民党の二階幹事長は記者会見で「まだ直接聞いていないが、体調のこととはいえ、大変残念だ。手術の成功を祈り、一日も早く回復されることを希望したい」と述べました。
一方、大手鶏卵生産会社の元代表が吉川氏に現金を渡したなどと周囲に説明していることについては「本人や関係者でなければわからないことなので、本人からの説明に従いたい」と述べるにとどめました。
また、吉川氏の辞職に伴う衆議院北海道2区の補欠選挙については「地元の意見を十分うかがい、できるだけ意見に沿えるようにしたい」と述べました。

自民 世耕氏「体調落ち着けば説明が重要ではないか」

自民党の世耕参議院幹事長は、記者会見で「政治家の出処進退は自分自身で判断しなければならず、今回は体調が理由ということだ。ただ、政治とカネにまつわる疑念が出ているので、体調が落ち着けば、吉川氏本人が説明することが重要ではないか」と述べました。

加藤官房長官「説明責任を果たすべき」

加藤官房長官は、午前の記者会見で「本人の判断ということであり、政府としてはコメントは差し控えたい」と述べました。
一方、吉川氏をめぐって、大手鶏卵生産会社の元代表が現金を渡したなどと周囲に説明していることが明らかになっていることに関連して「捜査機関の活動内容に関わる事柄で、政府は答える立場にはないが、一般論として、政治家は常日頃から、みずからの行動について説明責任を果たすべきで、そうした対応は常に求められている」と述べました。
そして「農林水産省において、捜査活動に関する協力要請があれば、適切に対応されていくものと承知をしている」と述べました。

立民 福山氏「疑惑が広がるばかり」

立憲民主党の福山幹事長は記者団に対し「体調不良ということなので、一日も早い回復を願いたいが、金銭受領の疑惑について全く説明がないまま辞職するのは、いささか疑問に思わざるをえない。これでは国民は納得しないし、説明を避けるために病気を理由にしていると疑われる可能性が高い。より不信を招き、疑惑が広がるばかりだ」と述べました。

公明 山口氏「本人が説明していく必要」

公明党の山口代表は、記者会見で「体調の回復を祈りたい。さまざまな疑惑が報道されていることについては本人が説明していく必要がある」と述べました。
また、吉川氏の辞職に伴う衆議院北海道2区の補欠選挙については「公明党から候補を出すことは考えにくい。今後の状況をよく見極めながら、与党としてどうするか検討していきたい」と述べました。

維新 片山氏「国民が持つ疑問について説明すべき」

日本維新の会の片山共同代表は、NHKの取材に対し「心臓の具合が悪いと言うのなら、それを信じてあげたいが、説明が少ないように思う。吉川氏本人が国民が持つ疑問について説明すべきで、農林水産委員会に参考人として呼ぶ形がいいのではないか」と述べました。

共産 小池氏「議員辞職で幕引くのは許されない」

共産党の小池書記局長は、記者会見で「500万円という多額の金品を大臣室で受け取り、農林水産行政がゆがめられた疑いがある中で、この問題の解明なしに、議員辞職で幕を引くというのは許されない。しかるべき時期に国会招致をして、真相を語ってもらいたい。真相解明の責任は自民党にも、菅政権にもある」と述べました。

国民 玉木氏「自民党政権も説明責任果たす責務」

国民民主党の玉木代表は、記者団に対し「心臓の手術などで議員としての任に堪えられないということには心からお見舞い申し上げたい。一方で、金銭授受について、大臣時代の疑惑を払拭(ふっしょく)するための説明責任を果たすことが必要だ。同時に自民党政権も説明責任を果たす責務があり、菅政権はきちんと事実関係を調査し、説明する責任がある」と述べました。