首相「意的な人事の懸念
ない」検察庁法改正案めぐり

検察官の定年延長を可能にする検察庁法の改正案をめぐり、立憲民主党の枝野代表など野党側が衆議院予算委員会の集中審議で、ツイッター上の抗議が記録的な数に達しているなどと追及したのに対し、安倍総理大臣は「内閣によって恣意(しい)的な人事が行われるという懸念はあたらない」と述べました。

検察官の定年延長を可能にする検察庁法の改正案は、国家公務員の定年を段階的に65歳に引き上げるための法案とともに、先週から衆議院内閣委員会で審議が行われています。

これについて、立憲民主党の枝野代表は、改正案に対するツイッター上の抗議が記録的な数に達したと指摘したうえで、「感染症危機を乗り越えることよりも、自分に都合のいい法律を作ることを優先して、危機の状況を政治的に悪用しようとしているのではないか。『火事場泥棒』のようだ」とただしました。

また、国民民主党の後藤祐一氏や、共産党の宮本徹氏も同様の指摘を行いました。

これに対し、安倍総理大臣は「今般の国家公務員法等の改正法案の趣旨、目的は高齢期の職員の豊富な知識、経験等を最大限に活用する点などにあり、検察庁法の改正部分の趣旨、目的もこれと同じだ」と述べました。

そのうえで、「今回の法改正では検察官の定年延長にあたって、その要件となる事由を事前に明確化することとしており、内閣の恣意的な人事が今後行われるといった懸念は全くあたらない」と述べました。

菅官房長官「恣意的な人事 全くありえない」

菅官房長官は11日午後の記者会見で「一般の国家公務員の定年引き上げに合わせて、検察官についても、定年を65歳まで段階的に引き上げるものであり、その内容に問題があるとは考えていない」と述べました。

また菅官房長官は記者団が「改正案をめぐる批判の背景には、政権による恣意的な人事が行われることへの懸念がある」と指摘したのに対し「全くありえないことだ。今回の法改正では、検察官の定年延長にあたって、その要件となる事由を事前に明確化することとしていると承知しており、内閣の恣意的な人事が今後行われるといったことにはあたらない」と述べました。

自民 岸田氏「政府はしっかり説明を」

自民党の岸田政務調査会長は記者会見で「国家公務員全体の定年の引き上げの中で、どう考えるかという問題であり、東京高等検察庁の黒川検事長の定年延長と直接関わる法案ではないという整理を党の議論ではしている。ただ、国民の中で関心が高まっていることや、厳しい声があることは謙虚に受け止めなければならない。政府にはしっかりと説明責任を果たしてもらいたい」と述べました。

立民 安住氏「修正案に応じないなら採決応じない」

立憲民主党の安住国会対策委員長は記者団に対し「検察官の部分を外す修正案を提出する予定だが、もし与党側が応じないなら、われわれは採決に応じない。新型コロナウイルスで、国民に自粛を呼びかけている最中に、総理大臣が自分に都合のいい人事をするために法律を変えれば、政治の信頼が損なわれる」と述べました。

国民 原口氏「不法かつ不急だ」

国民民主党の原口国会対策委員長は記者会見で、「検察の人事に政権が介入すると、そんたくや国策逮捕が起きることになり、許されるわけがない。このような法案をいま審議する必要は全くなく、不法かつ不急のものだ。与党側が私たちが提出する修正案に応じなければ、あらゆることを考えたい」と述べました。

維新 松井氏「定年延長の話であり、賛成」

日本維新の会の松井代表は記者団に対し「今回の議論は公務員の定年延長の話であり、賛成だ。ピンポイントでこの人をどうこうするという話ではない」と述べました。

また、日本維新の会の副代表を務める大阪府の吉村知事は「定年延長には反対ではないし、強大な権力を持つ検察の人事権は、選挙で選ばれた人が持つべきだ。著名人が抗議の声などを上げるのはいいことで、賛成反対含め、積極的に発信するのは民主国家としてあるべき姿だ」と述べました。

共産 小池氏「三権分立を破壊することになる」

共産党の小池書記局長は記者会見で、「安倍総理大臣は、『恣意的な人事が行われる懸念はあたらない』と根拠を示さずに繰り返すだけで、ツイッター上の抗議にまともに応えようとしない。総理大臣を逮捕できる権限を持つ検察の人事を総理大臣の一存で決められるとなれば、三権分立を破壊することになる」と述べました。