自衛隊中東派遣 閣議決定
活動期間は1年260人派遣

政府は、中東地域で日本に関係する船舶の安全確保に必要な情報収集態勢を強化するため、日本独自の取り組みとして、自衛隊の護衛艦と哨戒機の派遣を27日の閣議で決定しました。これを受けて河野防衛大臣は、防衛省で自衛隊の幹部らに対し、部隊の派遣に向けた準備指示を出しました。
政府はNSC=国家安全保障会議の閣僚会合を開いたうえで、27日の閣議で、中東地域の緊張緩和と情勢の安定化に向け外交努力を続けるとともに、日本に関係する船舶の安全を確保するのに必要な情報収集態勢を強化するため、日本独自の取り組みとして、自衛隊の護衛艦と哨戒機を派遣することを決定しました。
派遣は、防衛省設置法に規定された「調査・研究」に基づいていて、護衛艦1隻を新たに派遣するほか、アフリカ東部のジブチを拠点に海賊対策に当たっているP3C哨戒機を活用するとしています。
活動範囲は、オマーン湾、アラビア海北部、バーブルマンデブ海峡東側のアデン湾の、沿岸国の排他的経済水域を含む公海で、イランにより近いホルムズ海峡やペルシャ湾は含まれていません。
活動期間は準備なども含めて27日から1年間とし、延長する際には国会への報告と、改めて閣議決定を行うとしています。
一方、不測の事態が発生するなど、状況が変化した場合、海上警備行動を発令して対応に当たるとしています。
これを受けて河野防衛大臣は、防衛省で自衛隊の幹部らに対し部隊の派遣に向けた準備指示を出しました。
派遣される要員は合わせておよそ260人で、哨戒機については来月中にも活動を始め、護衛艦は来年2月上旬に日本を出発して、2月中の活動開始を目指しています。
河野防衛相「中東安定へしっかりと派遣準備」
河野防衛大臣は、閣議のあとの記者会見で、「部隊の編成準備や教育訓練をはじめ、各種準備に取りかかるといった内容の防衛大臣指示を出した。中東地域における平和と安定、および日本関係船舶の安全確保のため自衛隊の艦艇・航空機の活動開始に向かって、しっかりと準備を進めていく」と述べました。
そのうえで、自衛隊派遣を閣議で決定したことについて、「政府一体として行っていくという意味からも、自衛隊のアセット=艦船と航空機を派遣する重要性に鑑みても、閣議決定を行うことにした」と述べました。
また河野大臣は「派遣する艦艇が1隻なので、いちばん効率的に情報収集をするにはどうしたらよいかを考えなければならない。これからの外交努力と調和させることが必要だ」と述べました。
そのうえで、記者団から「歯止めなき海外派遣につながるのではないか」と指摘されたのに対し、「しっかりと文民統制が行われていれば問題ない」と述べました。
不測の事態を想定した訓練積み2月上旬に出港予定
今回の閣議決定を受けて、政府は、派遣する海上自衛隊の護衛艦に新たに機材を搭載したり、乗組員に対して、不測の事態を想定した訓練を積ませるなど、まずは、必要な準備を行うことにしています。
こうした準備には、およそ4週間かかると見込まれていて、護衛艦は、来年2月上旬に中東地域に向けて出港し、2月中の活動開始を目指して準備を進めることにしています。

護衛艦には、およそ200人が乗り組んで、現地でおよそ4か月活動して、新たに派遣される護衛艦と交代する計画です。
一方、P3C哨戒機については、アフリカ東部のジブチを拠点に海賊対策にあたっている部隊が後半に交代することから、これに合わせて、1月中にも情報収集活動を本格化させたいとしています。
およそ60人が海賊対策の活動を兼務して、現地でおよそ3か月活動したあと、新たに派遣される部隊と交代することになっています。
米国などと連携へ
今回の自衛隊派遣について、政府は、アメリカが結成した有志連合には参加せず、日本独自の取り組みとして行うとしている一方、アメリカや周辺国などと情報を共有し、必要な連携を取るとしています。
このため政府は、情報を共有するための連絡要員を、有志連合の司令部には送らないものの、バーレーンにあるアメリカ海軍の司令部に送ることを検討しています。
石油連盟会長「歓迎したい」

自衛隊の護衛艦と哨戒機の中東地域への派遣を政府が閣議で決定したことについて、石油元売り各社で作る「石油連盟」の月岡隆会長は「ことし6月の日本関係の船舶への攻撃や9月のサウジアラビアの石油関連施設への攻撃など、中東情勢は依然予断を許さない。今回の決定は中東地域における船舶の安全な航行に資するものと考えており、石油連盟として歓迎したい。今後、政府と業界の間で緊密に連携が行われることを期待する」とコメントを出しました。
予算46億円余を計上 日額2000円の手当
今回の派遣について、政府は来年度予算案に燃料費としておよそ33億3000万円、人件費としておよそ2億9000万円など、合わせておよそ46億8000万円を計上しています。
政府は、中東地域に派遣される隊員が任務に専念できるよう手当を加算するとともに、不測の事態が起きた際の保険を手厚くすることにしています。
このうち手当については、日本から離れた中東地域で活動することや感染症などのリスクがあることを踏まえ、アフリカ東部のソマリア沖で行われている海賊対策と同じ、日額2000円が加算されます。
また保険についても、けがなどで死亡した場合、最高およそ4000万円が支払われる「団体傷害保険」や、感染症などで死亡した場合、最高およそ1億円が支払われる「PKO保険」に、それぞれ任意で加入できるようにしています。
国会 自衛隊の中東派遣で閉会中審査へ
中東地域への自衛隊派遣が閣議決定されたのを受け、国会では、来月17日に、関係する委員会で、閉会中審査が行われることになりました。
政府が、中東地域への自衛隊の護衛艦と哨戒機の派遣を閣議で決定したことを受けて、自民党の森山国会対策委員長と立憲民主党の安住国会対策委員長が会談しました。
そして、派遣の目的や活動内容などについて政府の説明を聞くため、来月17日に、茂木外務大臣と河野防衛大臣に出席を求め、衆議院の安全保障委員会で、閉会中審査を行うことを決めました。
また、参議院の外交防衛委員会でも、来月17日に閉会中審査が行われることになりました。