年度予算案 過去最大
2年連続で100兆円超え

政府は20日の閣議で、一般会計の総額が102兆6580億円となる来年度・令和2年度の予算案を決定しました。社会保障費の大幅な増加を背景に2年連続で100兆円を超え、過去最大となりました。

政府が20日、閣議決定した来年度予算案は、一般会計の総額で102兆6580億円と、当初予算として初めて100兆円を超えた今年度を1兆2000億円余り上回って過去最大となりました。

「歳出」のうち、医療や年金などの社会保障費は高齢化による伸びに加え、低所得世帯を対象とした高等教育の無償化の費用が上積みされたことなどから、今年度より1兆7302億円増えて過去最大の35兆8608億円となりました。

「防衛費」も宇宙空間を監視する「宇宙作戦隊」や「サイバー防護隊」を設ける費用などを盛り込み、過去最大の5兆3133億円となりました。

防災・減災と国土強じん化に向けたインフラ強化などを盛り込んだ新たな経済対策には1兆7788億円が計上されました。

このほか地方に配分される「地方交付税」は15兆8093億円、過去に発行した国債の償還や利払いに充てる「国債費」は23兆3515億円となっています。

「歳入」では、税収が消費税率引き上げによる増収を反映して過去最高の63兆5130億円、国の新たな借金にあたる国債の新規発行額は32兆5562億円と当初予算としては10年連続で減りますが、減少額は1000億円程度にとどまり、歳入の31.7%を国債に頼る厳しい財政状況が続きます。

政府は、この来年度予算案を先に決定した今年度の補正予算案と合わせて年明けの通常国会に提出することにしています。

菅官房長官「経済再生と財政健全化の両立図る」

菅官房長官は閣議のあとの記者会見で、歳出総額の拡大について「臨時・特別の措置や国債費、地方交付税交付金などが減少する一方、社会保障関係費が消費税増収分を活用した社会保障の充実や高齢化に伴う増加などで、1兆7000億円増加したことによるものだ。引き続き、『経済成長なくして財政健全化なし』との安倍政権の基本方針に基づき、歳出改革の取り組みを継続しながら、経済再生と財政健全化の両立を図っていきたい」と述べました。

また防衛費の歳出が8年連続で増加したことについて「安全保障環境に対応できる防衛力の強化と、防衛関係費の適切な管理の両立という観点から、効率化、合理化を図りつつ、中期防衛力整備計画に従って、真に実効的な防衛力を整備していきたい」と述べました。

麻生財務相「歳出の規模は妥当」

麻生副総理兼財務大臣は閣議のあとの記者会見で、「東京オリンピック・パラリンピックの後も見据えて個人消費や投資が切れ目なく持続するよう下支えする。歳出改革の取り組みも継続し、経済再生と財政健全化の両立を目指す予算とした」と述べました。

また、歳出が膨らみ財政規律に緩みが出ているのではないかと問われたのに対し「基礎的財政収支の黒字化を2025年度に実現することを目指すことに変わりはない。財務省に長くいると財政の話が多くなるが、世の中は経済が伸びないといろいろな目的が達成できない。金利が低い中で財政投融資も積極的に活用し、経済が成長していくことを考えた。歳出の規模はそういうことも踏まえて妥当だと考えている」と述べました。

西村経済再生相「景気回復継続へ経済対策を着実に実行」

西村経済再生担当大臣は閣議のあとの記者会見で、決定した来年度予算案について「ポイント還元制度など経済対策を着実に実施する予算が含まれている一方で、歳出改革も継続していて、経済成長と合わせて財政健全化を両立する予算になったと考えている。海外経済のリスクを乗り越えながら景気回復を継続するため経済対策を着実に実行していきたい」と述べました。

一方で、政策に必要な経費を借金に頼らず税収などでどれだけまかなえているかを示す「基礎的財政収支」が今年度より悪化したことについて西村大臣は「残念ではあるが、長い目で見て経済再生なくして財政健全化なしという基本方針のもとで、しっかり経済成長する姿を描きながら、財政も合わせて健全化していくよう、しっかり歳出改革を進めたい」と述べ、2025年度に基礎的財政収支を黒字化するという目標の達成を引き続き目指す考えを示しました。

赤羽国交相「国民の安全安心 確保を」

台風など相次ぐ自然災害を受けて、来年度予算案に防災・減災に向けた対策が多く盛り込まれたことについて、赤羽国土交通大臣は、「被災地の復旧・復興に加えて、国土強じん化の取り組みを加速化させて、国民の安全安心の確保を図っていく。地方自治体とも連携して確実かつ集中的に対策を実施していく」と述べました。
そのうえで、建設業界で深刻化する人手不足の影響で公共事業が十分に実施できないおそれがあると指摘されていることについて「円滑に事業を執行するため遠隔地から労働者を確保する場合に交通費や宿泊費などを補助したり、発注する工事の規模を適切にしたりするなどすべての地方整備局に対策を講じるよう通達を出している。災害が多くなる中でも公共事業を順調に執行できるようしっかり対策は講じていく」と述べました。

自民 岸田氏「東京オリ・パラ後も経済成長を」

自民党の岸田政務調査会長は記者会見で「東京オリンピック・パラリンピック後も経済成長を遂げられるよう、来年度予算案の早期成立と速やかな執行を図りたい。経済再生と財政健全化を両立させるべく不断の努力を続けることが大事だ」と述べました。

公明 山口氏「社会保障を充実 財政再建を着実に」

公明党の山口代表は、記者団に対し「社会保障全体を充実させ、防災・減災対策も大きな規模で確保された。財政赤字を一朝一夕になくすことはなかなか困難だが歳出削減の努力をするなど、今後も財政再建に着実に取り組んでいくことが重要だ」と述べました。また、「すでに『桜を見る会』は、来年は中止すると決断しているが、その質や必要性を吟味しながらチェックしていく姿勢は今後も保つべきだ。歳出を効率化し、むだなものは削っていく姿勢が重要だ」と述べました。

立民 逢坂氏「消費増税の一方で予算の大盤ぶるまい」

立憲民主党の逢坂政務調査会長は「安倍政権による歳出拡大路線には全く歯止めがかかっておらず、消費税の増税で国民に痛みを求めた一方、予算の大盤ぶるまいをしていて憂慮すべき事態だ。とりわけ防衛費は、非効率かつ必要性が低い予算が数多く計上されている。消費税の増税による税収増をあてにして、のほうずに予算をばらまくことは許されず、個々の歳出にむだがないか、厳しい視点で精査を行っていく」という談話を出しました。

国民 泉氏「徹底的に精査しむだづかいをあぶり出す」

国民民主党の泉政務調査会長は「マイナンバーカードを持っている人に、買い物に使えるポイントを付与する新たな制度は、公平性や個人情報の保護などに懸念があるにもかかわらず、2500億円をも計上し問題だ。防衛費も8年連続で増加した。予算案を徹底的に精査してむだづかいをあぶり出し、『家計第一』の支援策の実施を提案する」という談話を出しました。

共産 小池氏「大企業優遇と大軍拡の予算案」

共産党の小池書記局長は「消費税の増税で深刻な打撃を受けている国民の暮らしには目もくれず、大企業優遇と大軍拡を推し進める最悪の予算案だ。政府は、総額26兆円と称する『経済対策』を打ち出し、その一部を予算案に盛り込んだが、『ばらまき』を行うのではなく、消費税率の5%への減税こそ実施すべきだ」という談話を出しました。

社民 吉川氏「社会を底上げする予算に転換を」

社民党の吉川幹事長は「『戦争できる国』を目指す安倍政権らしく、防衛関係費の膨張に歯止めがかからない。税収が過去最高と言うものの、内実は消費税の増税による増収分が大半だ。『軍事化する予算』を許さず、アベノミクスの生み出す格差を食い止める『社会を底上げする予算』への転換を求めていく」という談話を出しました。