香港 「覆面禁止」に反発
市民がマスクつけデモ行進
香港では抗議活動の際にマスクなどで顔を隠すことを禁止する規則が5日から施行されましたが、これに反対する多くの市民が中心部でマスクをつけたままデモ行進を行い抗議の意思を示しました。
香港政府は議会の承認を経ずにさまざまな規則を設けることができる「緊急状況規則条例」を発動し、5日から抗議活動の際にマスクなどで顔を隠すことを禁止する規則を施行しました。
これを受けて、5日は新たな規則に反対する市民らによるデモ行進が香港中心部で行われ、参加した市民らは「香港人は抵抗せよ」などと声を上げながら行進しました。
多くの人たちがマスクをつけたまま参加していて「マスクをつけるのは市民の権利であり、なぜ政府が規制しなければならないのか」とか、「政府が一方的なやり方で規則を決めたことは納得できない。これでは香港の法治がなくなる」といった声が聞かれました。
香港では4日夜、警察官が実弾を発砲して14歳の少年が脚に大けがをするなど、今週に入って警察官の発砲が相次いでいて、デモの参加者からは「警察は解散しろ」などという声も上がっていました。
香港では6日もデモ行進がSNSなどで呼びかけられていて、政府や警察に対する反発が強まっています。
香港行政長官「暴力止めるためあらゆる手段使う」
香港政府トップの林鄭月娥行政長官は、4日夜、抗議活動に参加した一部の若者たちによって各地の地下鉄駅や商店が破壊されたり、火をつけられたりしたことなどを受けて、5日午後、およそ5分間のビデオメッセージを公開しました。
この中で、林鄭長官は「昨夜はこれまでにない激しい破壊行為で道路や政府の建物などが大きな被害を受け、公共の安全が脅かされる事態となった。非常に暗い一夜だった」と厳しく非難しました。
そのうえで「このような状況こそが、顔を隠すことを禁止する措置を取った原因だ。政府は市民の生活や自由、安全を守り、暴力を止めるためにあらゆる手段を使う」と述べて、市民に対して、政府の決断に理解を求めました。
また、4日夜、警察官が実弾を発砲し、14歳の少年が大けがをしたことに触れ「デモ隊が警察官を襲撃し火炎びんを投げたため、発砲はやむをえなかった」と説明しました。
マスク禁止で外務省が注意喚起
日本の外務省は、香港に滞在しているか、渡航を予定している日本人を対象にした「スポット情報」を更新し、抗議活動に参加する際にマスクなどで顔を隠すことを禁止する規則は、日本人も含めた外国人にも適用されるとして、十分注意するよう呼びかけています。
そのうえで、この規則に反対する抗議活動が、今後、香港各地に拡大する可能性があるとして、抗議活動が行われている地域や混乱が予想される場所には決して近づかないよう求めています。
マレーシア首相「長官辞任が最善」
マレーシアのマハティール首相は4日、首都クアラルンプール近郊で開かれた国際会議に出席し、香港情勢について「林鄭月娥行政長官は、辞任することが最善だ」と述べみずから身を引くことで、今の緊張した状態をやわらげる必要があるという考えを示しました。
マハティール首相は、林鄭長官について「良心では、市民の主張は正しいと感じているが中国政府に従わざるを得ず、ジレンマに陥っている」と指摘しました。
また、今後の見通しについて、混乱が長引いた場合、中国が天安門事件のように過酷な手段で幕引きを図る可能性があると指摘し危機感をにじませました。
イギリス外相「状況を悪化させるな」
香港政府が議会の承認を経ずに、さまざまな規則を設けることができる条例の発動を決めたことについて、イギリスのラーブ外相は4日、声明を発表し「香港の状況を解決する唯一の方法は政治的な対話だ。当局が、市民の安全を確保することは必要だが、状況を悪化させる事態は避け、緊張を和らげなくてはならない」と述べました。