相発言「求める形での
提供ない意味では」防衛相

自衛官の募集事務をめぐって、安倍総理大臣が「6割以上の自治体に協力を拒否されている」と発言したことについて、岩屋防衛大臣は、衆議院予算委員会で「自治体の6割からは、防衛省が求める形で情報が提供されていないという意味だと思う」と説明しました。

自衛官の募集事務をめぐって、安倍総理大臣が14日、「6割以上の自治体に協力を拒否されている」と述べたことについて、野党側は、15日の衆議院予算委員会で「ほとんどの自治体で住民基本台帳の閲覧が可能だ」として、実態とは異なると指摘しました。

これに対し、岩屋防衛大臣は「法令に基づいて、願わくば紙や電子データで名前・住所などをもらえれば、募集事務もはかどる。安倍総理大臣は、6割はそういう形ではないことを言ったのだと思う」と説明しました。

一方、自民党は15日、党所属の国会議員に、選挙区の自治体が自衛官の募集にどのように対応しているか確認するよう求める文書を配りました。

これについて野党側は「国会議員に地元の自治体をチェックをさせるのは圧力だ」と批判したのに対し、岩屋大臣は「防衛省が関知するところではなく、コメントは差し控えたい」と述べました。

募集業務と自治体

防衛省は自衛官の募集にあたって地方自治体に対し、毎年5月ごろ、18歳から20歳前後の住民の氏名や生年月日、性別、住所の4項目を記した個人情報を、紙か電子データによる資料で提出するよう協力を依頼し、得られた情報を募集案内の郵送などに使ってきました。

自衛隊法では、都道府県知事や市町村長は自衛官の募集に関する事務の一部を行うと定めていて、ほとんどの自治体は、ポスターを貼るなどの募集事務を行っています。

この法律の施行令では「防衛大臣は必要な場合、地方自治体に対して報告や資料の提出を求めることができる」と定めていて、防衛省は「資料の提出は義務ではないが、当然、自治体に行ってもらえることだと考えている」としています。

防衛省によりますと、平成29年度末の時点で全国の市区町村のうち36%にあたる632の自治体は協力依頼に基づいて資料を作成し、防衛省に提供しているということです。

一方、全体の53%の自治体は資料の提供は行わない代わりに、住民基本台帳を防衛省に閲覧させる対応を取っています。

このうち全体の34%にあたる587自治体は対象者を抽出している一方、全体の20%にあたる344の自治体は抽出を行っていません。

さらに全体の10%にあたる178の自治体では防衛省の求めに応じなかったり、離島などの小規模な自治体のため、実態として防衛省が情報提供を必要としていないということです。

菅官房長官「圧力にはならない」

菅官房長官は午後の記者会見で、「自民党政務調査会から党所属国会議員に対して文書が発出されたのは承知しているが、党に関することでありコメントは控えたい」と述べました。

また記者団が野党側からは「圧力だ」という指摘も出ているが、政府から指示などをしたのかと質問したのに対し、菅官房長官は「政府からはない。圧力にはならないと思う。『協力要請をぜひしてほしい』ということだ」と述べました。

自民 加藤氏「聞くことが圧力か」

自民党の加藤総務会長は、記者会見で「自分の地元がどうなっているか把握しておくのは、われわれの仕事の1つだ。聞くことが圧力になるなら何の仕事もできなくなる。ただ、自治体の協力は義務とはなっていないので、それを踏まえた対応が求められる」と述べました。

自民 山本氏「選挙区の状況確認が目的」

文書を出した自民党の山本朋広国防部会長は「自民党の国会議員が自衛官の募集に関して、自治体に政治的な圧力を与える内容はなく、現状を正しく認識したうえで、自分自身の選挙区の状況を確認してもらうことが目的だ」とコメントしています。

自民 石破氏「恐ろしい論理の飛躍」

自民党の石破元幹事長は、記者団に対し「安倍総理大臣は、自衛官の募集について憲法改正の文脈で言っているので恐ろしい論理の飛躍があるが、文書はこの発言を擁護するというよりは、自衛官の募集で苦労している現場を助けたいという思いから配布したのではないか。安倍総理大臣を擁護することにはならないし、仮に擁護する意図であれば認識が相当に誤っている」と述べました。

公明 斉藤氏「国が丁寧に説明を」

公明党の斉藤幹事長は、記者会見で「国民の理解がなければ、自治体も自衛官の募集に協力しにくいので、国が丁寧に自治体や国民に説明していくことがいちばん重要だ。その努力を、まず国がすべきだ。自衛官の募集は、自衛隊法の中で創意工夫していくべきで、憲法改正とは直接関係のない問題だ」と述べました。

立民 福山氏「フェイク発言をかばうこと 健全と思えない」

立憲民主党の福山幹事長は記者団に対し、「法的には協力をお願いする状況になっており、安倍総理大臣の無責任でフェイクな発言をあえてかばうようなことをして、自治体に圧力をかけるやり方は、決して健全だとは思わない」と述べました。

立民 辻元氏「圧力ともとられかねない」

立憲民主党の辻元国会対策委員長は「まるで、『自分の選挙区の自治体が、ちゃんと協力しているのか、チェックしろ』というような話に見える。地方自治の本旨にも逸脱しており、圧力ともとられかねない」と述べました。

共産 笠井氏「9条改憲の根拠がないこと露呈」

共産党の笠井政策委員長は、記者会見で「安倍総理大臣は『6割以上の自治体が応じていないから、憲法9条の改憲にもっていこう』と言うが、実際には、ほとんどの自治体が要請があれば対応している。9条改憲の根拠がないことをみずから露呈しており、『きっぱり断念せよ』ということを求めていきたい」と述べました。