制不妊「われわれにも
責任が」作業チーム田村座長

旧優生保護法のもとで強制的に不妊手術が行われていた問題で、自民・公明両党の作業チームは、手術を受けた人たちに多大な苦痛を与えたとして深く反省しおわびするとともに、対象者に一時金を支給するなどとした救済の基本方針をまとめました。作業チームは野党側にも協力を呼びかけ、来年の通常国会に議員立法の形で必要となる法案を提出する方針です。

平成8年まで施行された旧優生保護法のもとで、本人の同意のないまま、全国でおよそ1万6500人に不妊手術が行われていた問題で、救済策を検討している自民・公明両党の作業チームは31日、基本方針を取りまとめました。

基本方針では、手術を受けた人たちに、多大な身体的、精神的な苦痛を与えたとして、深く反省しおわびするとともに、対象者に一律の額の一時金を支給するとしています。

一方で、おわびの主体については明確にしておらず、作業チームでは、法律が議員立法の形式で成立した経緯も踏まえ、今後、政府だけではなく、立法機関の関与も含めた表現を検討したいとしています。

救済の対象は、本人が同意したケースも含め、精神障害や遺伝性の疾患などを理由に手術を受けたおよそ2万5000人です。

救済を受けるには厚生労働大臣の認定が必要となりますが、当時のカルテなどの資料が残っていなくても、専門家で構成する審査機関で医師の所見も取り入れて総合的に審査するとしています。

作業チームでは、一時金の具体的な額などについてさらに検討を進めたうえで、野党側にも協力を呼びかけ、来年の通常国会に、議員立法の形で必要となる法案を提出する方針です。

作業チーム座長「われわれにも責任ある」

作業チームの座長を務める自民党の田村元厚生労働大臣は記者団に対し「本人の同意があったとしても、優生思想が根底にある中で手術を受けた方に対して、われわれにも責任があるという思いがあり、今回、おわびをするとともに一時金を支払うという形を決めた。救済策が1人でも多くの人に知ってもらえるよう周知を徹底し、本人の意思で申請してもらいたい」と述べました。

また「おわび」の主体について、田村氏は「旧優生保護法は、もともと議員立法で作ったものだ。おわびするのは政府だけではなく、われわれ立法機関も含めた書き方になると考えており、検討したい」と述べました。

原告「声をあげてよかった」

訴えを起こしたひとり、仙台市内の70代の女性は16歳の時に軽度の知的障害とされ、旧優生保護法のもとで不妊手術を強制されたということです。

女性は、日本弁護士連合会に人権救済の申し立てをして国に補償を求めるなど平成9年から被害を訴え続けていましたが、国は当時は合法だったとして補償を認めてきませんでした。

女性は「これまで長かったですが、声をあげてよかったと思う。ただ、反面で人生を返してもらいたいという悔しい思いも消えません」と話しました。

一方で、女性が優生手術を受けたという記録は宮城県には残っておらず、「書類のない人は審査するということだが、証拠の書類を消したのは行政側の責任なので、きちんとみんなに補償してほしい」と訴えました。

本人への通知 課題に

手術を受けた人を1人でも多く救済につなげるために今後、課題となるのが、各都道府県で見つかっている手術の記録をもとに本人に“通知”するか、その取り扱いです。

厚生労働省によりますと、手術を受けた個人を特定できる記録は、ことし9月の時点で、27の都道府県で合わせて3033人分が見つかっていますが、ほとんどの都道府県は記録の存在を本人に通知していません。

厚生労働省は、本人に通知すべきかどうか対応策を示しておらず、与党の作業チームは31日、通知はせずに当事者から申請を求める方針を示しました。理由として「本人が手術のことを家族に伝えていない」など通知を望んでいない人がいる可能性があるからなどとしています。

一方で、国を相手に裁判を起こした原告の弁護団などからは「手術を受けたことを知らない当事者もいるので、1人でも多くの人を救済につなげるためにも記録が見つかった人には通知すべきだ」という声もあがっていて、今後、プライバシーを保護しながら見つかった記録をどう活用していくか、議論が求められます。

家族に打ち明けられなかった男性「慎重に対応を」

不妊手術を受けた人の中には、長年、家族に打ち明けられなかった人もいます。

東京に住む75歳の男性は、非行を理由に宮城県の福祉施設に入所し、14歳の時、不妊手術を受けさせられたといいます。

その後、男性は29歳の時に結婚しましたが、妻には手術を受けて子どもを持てなくなったことを打ち明けられませんでした。

妻は子どもがほしいと考えていて、手術のことを打ち明けると大きなショックを受けると思ったからです。

男性は5年前、妻が亡くなる直前にようやく手術のことを打ち明けました。

妻は責めることなく「きちんとご飯を食べてね」などと言って、最後まで男性のことを気づかい、息を引き取ったといいます。

男性はことし5月、旧優生保護法によって子どもを持つ権利を奪われたなどとして国を相手に裁判を起こし、損害賠償や謝罪を求めています。

男性は「もし妻に打ち明ける前に手術の記録が見つかったという手紙が来ていたら、隠すか捨てるかして妻には見せないようにしたと思う。自分と同じように家族に伝えられず、悩んでいる人はほかにも大勢いると思うので慎重に対応してほしい」と話しています。

全国弁護団 共同代表「今後の判決踏まえ まだまだ議論必要」

旧優生保護法をめぐる問題について、全国弁護団の共同代表を務める新里宏二弁護士は、与党の作業チームが示した基本方針について「一時金の支給額や、謝罪の内容などについて、今行っている裁判の今後の判決を踏まえて、まだまだ議論していく必要がある」と話していました。

また、今回、作業チームがプライバシーの保護を理由に本人に補償制度などを通知しない方針を示したことについては「手術を受けたこと自体を知らない人も多くいるので、プライバシーを守りながら救済し通知する仕組みを考えるべきだ」と指摘しました。

専門家「工夫して伝える方法を検討すべき」

旧優生保護法に詳しい東京大学大学院の市野川容孝教授は、作業チームが、通知をせずに本人からの申請を求めていく方針を示したことについて「硬直的な判断だ。手術を受けたという認識がない被害者もいる。通知をしなければその人たちを補償などにつなげられず、そのまま放置される可能性がある。重要なのはどのような形で通知すれば、プライバシーを守りながら本人が被害を知り、補償などを求めていけるかを考えていくことだ。工夫しながら伝えていく方法を検討すべきだ」と指摘しています