「異次元の少子化対策」
進めるための財源は

少子化対策の強化に向け、政府は6月までに具体策のとりまとめを目指す方針です。あわせて子ども予算の倍増に向けた大枠も提示するとしていますが、新たに数兆円規模の財源が必要になるという見方があり、確保するための方策をどこまで具体的に示せるかが焦点となります。年始からの主な動きをまとめました。

「異次元の少子化対策」

岸田総理大臣は年頭の記者会見で、冒頭、防衛力の抜本的強化など先送りの許されない課題に正面から愚直に挑戦してきたとしたうえで「本年も覚悟を持って『先送りできない問題』への挑戦を続ける。特に日本経済の長年の課題に終止符を打ち、新しい好循環の基盤を起動し、異次元の少子化対策に挑戦する年にしたい」と述べました。

1月中に新たな会議を設け具体的な議論を開始

政府は、小倉大臣のもとに今月中に関係府省による新たな会議を設け、児童手当を中心とした経済的支援の拡充や、幼児教育や保育サービスの充実などの議論を始め、3月末をめどにたたき台をつくることにしています。

そして、このたたき台をもとに「こども家庭庁」が発足する4月以降、さらに詰めの検討を進め、6月の「骨太の方針」の策定までに具体策のとりまとめを目指す方針です。

一方、岸田総理大臣は、少子化対策の具体策とあわせ、その裏付けとなる子ども予算の将来的な倍増に向けた大枠を提示するとしていて、政府内では、財源の議論も行われる見通しです。

子ども予算の倍増には、新たに数兆円規模の財源が必要になるという見方がありますが、政府・与党内では、防衛費増額のための財源確保をめぐって、意見の違いが表面化した経緯もあり、安定的な財源を確保する方策をどこまで具体的に示せるかが焦点となります。

財源確保に消費税?

“少子化対策の財源として消費税率引き上げも検討対象だ”という発言に、与野党から反応がありました。

今後の少子化対策を進めるための財源について、自民党の税制調査会で幹部を務める甘利前幹事長は、5日将来的な消費税率の引き上げも検討の対象になるという認識を示しました。

これに関連して自民党の甘利前幹事長は、5日夜出演したBSテレ東の「日経ニュースプラス9」で「岸田総理大臣が少子化対策で異次元の対応をすると言うなら、例えば児童手当なら財源論にまでつなげていかなければならない」と指摘しました。

そのうえで「子育ては全国民に関わり、幅広く支えていく体制を取らなければならず、将来の消費税も含めて少し地に足をつけた議論をしなければならない」と述べ、少子化対策を進めるための財源として、将来的な消費税率の引き上げも検討の対象になるという認識を示しました。

立民 泉代表「消費税の増税とはあきれる」

立憲民主党の泉代表は、6日、都内で記者団に対し「物価高で大変な中、防衛費増額に伴う所得税の増税に加えて、消費税の増税とは、自民党幹部は庶民の生活を分かっておらず、あきれる。少子化対策のメニューを示したうえで、どういう財源の捻出が可能なのかをよく考えて発言すべきだ」と批判しました。

そのうえで「賃上げすらおぼつかない中で、増税となれば、経済の冷え込みにもつながることを十分踏まえて議論すべきで、国民を『増税慣れ』させれば納得するだろうという、高圧的な政治では理解は得られない」と述べました。

また「この20年や30年、少子化を止められなかったのが自民党政権だ。子育て支援策や予算の獲得は遅れていて、今になって始めるようなことを言っても全く信頼に値しない」と述べました。

自民 世耕氏 少子化対策財源 「消費税率引き上げの話は拙速」

自民党の世耕参議院幹事長は7日民放のラジオ番組に出演し、少子化対策を充実させる財源について「党の一部に消費税でという話もあったが、ちょっと拙速だ」と述べ、消費税の税率引き上げに慎重な考えを示しました。

和歌山放送のラジオ番組「2023新春国会議員座談会」に出演した世耕氏は、岸田総理大臣が表明した「異次元の少子化対策」の財源について、「党の一部に消費税でという話もあったが、ちょっと拙速だ」と述べました。

そのうえで「決算剰余金をどう考えていくのかとか、介護保険のように保険料という形で薄く広く集める考え方もあり、ゼロベースで議論すべきだ」と指摘しました。

各党の主張は 日曜討論

少子化対策を充実させるための財源をめぐり、岸田総理大臣は8日、NHKの日曜討論で、給付と負担の問題などを含めきめ細かに議論していく考えを示したのに対し、立憲民主党の泉代表は財源は歳出改革や国債の発行で賄うべきだという考えを示しました。

この中で、岸田総理大臣は「少子化対策について、給付と負担の問題や社会保険のあり方なども含め、さまざまな財源について考えていかなければならずきめ細かな議論をしていきたい。それは政策に見合った財源でなければならず、政策の整理をまず行ったうえで予算や財源の議論を進めていきたい。経済の好循環を動かしていくには、物価高に負けない賃上げがポイントになる。中長期的には構造的な賃上げが重要だ」と述べました。

公明党の山口代表は「妊娠から子どもが社会に巣立つまで、継続的に支援できる政策をそろえることが大事だ。まず、何をやるかを見えるようにし、財源についても、責任を持って見通しを立てることが必要だ。保険も含め、幅広く財源を確保していくべきだ」と述べました。

立憲民主党の泉代表は「異次元の少子化対策と言うが、生まれた年によって大幅に政策が異ならないような安定的な対策を実現すべきだ。子どもや教育の政策は未来への投資でもあり、財源として国債を考えてもよい。歳出改革と国債を前提に考えていきたい。また、物価上昇を上回る賃上げでなければ、給付も考えるべきだ」と述べました。

日本維新の会の馬場代表は「国民全員で少子化対策や子育てを応援することが必要で、幼児教育から高等教育まですべてを無償化することが必要だ。税と社会保障と働き方の3つをパッケージで改革すべきで、財源問題は、借金や負担増という考え方だけでは立ち行かなくなる」と述べました。

共産党の志位委員長は「大学の学費の無償化を目指して、まずは半分にし、入学金を廃止すべきだ。消費税の増税こそ少子化を加速させた元凶の1つで、5%に減税し、富裕層の負担や大軍拡の中止で財源をつくるべきだ」と述べました。

国民民主党の玉木代表は「教育国債の発行で子育てや教育の予算を倍増し、所得制限を撤廃すべきだ。賃金が上がると支援の対象から外れるので、頑張って納税することが『子育て罰』になるのは見直すべきだ」と述べました。


れいわ新選組の櫛渕共同代表は「消費税を増税すれば少子化はさらに加速し、国家の自滅の道だ。子ども国債や教育国債を発行して徹底的に財政出動を行い、最大の投資をすることが必要だ」と述べました。