防衛費増額へ 3税目増税など含む 与党の税制改正大綱決定

自民・公明両党は、16日、防衛費増額の財源を賄うため法人税、所得税、たばこ税の3つの税目で増税などの措置を取ることを盛り込んだ、与党の税制改正大綱を決定しました。

与党の税制改正大綱は、16日午後、自民・公明両党の政務調査会長と税制調査会長らが会談して決定しました。

大綱では、防衛力の抜本的な強化に必要な財源として、5年後の2027年度に1兆円余りを確保するとして、法人税、所得税、たばこ税の3つの税目で増税などの措置を複数年かけて実施するとしています。

具体的には、
▽法人税は、中小企業などに配慮する措置をとったうえで、納税額に4%から4.5%の付加税を課すとしています。

また、
▽所得税は、納税額に1%の新たな付加税を課すとしています。

一方で、東日本大震災からの復興予算に充てる「復興特別所得税」は、税率を1%引き下げたうえで、復興財源の総額を確保するのに必要な期間、課税期間を延長するとしています。

そして、
▽たばこ税は、1本当たり3円相当の引き上げを段階的に行うとしています。

それぞれの措置を始める時期は「2024年以降の適切な時期」とするにとどめています。

このほか、来年度の税制改正の主要項目では、
▽個人投資家を対象にした優遇税制「NISA」の非課税で保有できる限度額を1800万円に拡充するほか、
▽車検の際にかかる自動車重量税を減免する「エコカー減税」の期限を、来年4月末から3年間延長するなどとしています。

さらに、
▽1年間の総所得が30億円を超えるような著しく所得が高い人を対象に、3年後から課税を強化します。

これを受けて政府は、来年度の税制改正に向けて関連法案を、来年の通常国会に提出する方針です。

一方で、防衛費増額の財源を賄うための増税は法案には盛り込まれず、まだ決まっていない具体的な実施時期などについて、自民・公明両党の税制調査会で来年改めて議論することにしています。

自民 宮沢税調会長「来年最終的な詳細まで決めたい」

自民党の宮沢税制調査会長は、調査会の総会に先立って行われた役員会で「何とか税財源の話についてあそこまでピン留めができ、決めるところはあとごくわずかだ。来年のしかるべきタイミングでまた集まってもらい、最終的な詳細まで決めたい」と述べました。

自民 甘利前幹事長「決断は岸田首相の新しい一面」

自民党税制調査会の幹部を務める甘利前幹事長は、記者団に対し「問題点を洗い出し事態の緊急性に鑑みて、最終的には1つになるという責任政党たる取りまとめができた。これからは、われわれがしっかり国民に理解してもらえるように説明する責任がある」と述べました。

そのうえで、岸田総理大臣の増税に向けた指示について「党内や国内を揺るがす議論になり、岸田総理大臣自身も相当もん絶したと思う。しかし、現時点で全面的な理解が得られなくても、しっかり説明すればきっと分かってもらえると信じて決断したら、もう揺るがないという姿勢だった。岸田総理大臣の新しい一面かなと思う」と述べました。

秋葉復興相「復興財源を損なうこと考えてない」

秋葉復興大臣は「政府として、復興のための財源を損なうようなことは一切考えていない。また総額の確保だけではなく、被災者の不安な気持ちに寄り添った姿勢をしっかりと示すとともに、復興の責任を政府が負うという強いメッセージを発し続けていくことが極めて重要だ」と述べました。

そのうえで「直接、岸田総理大臣にも、国が福島の復興に最後まで責任をもって対応し、被災者の誤解や不安な気持ちを払拭していくよう伝え、理解してもらった」と述べました。

自民 上野衆院議員「負担のお願いやむをえない」

自民党森山派の上野賢一郎衆議院議員は、NHKの取材に対し「非常に緊迫した情勢の中で、防衛費は今、しっかり確保していく必要がある。一定の財源を確保する意味で、ある程度の負担を大企業中心にお願いするのはやむをえない。国民や企業、経済界の意見も聞いて1年かけてしっかり議論しまとめていきたい」と述べました。

自民 城内衆院議員「納得できない 岸田政権に影響」

自民党無派閥の城内実衆議院議員は、記者団に対し「例えば令和8年に世界同時不況が起きたときでも増税するのか。経済成長や雇用、物価といった経済の状況を踏まえて増税するということでないと、やっぱり納得できない」と述べました。

そのうえで、記者団が「岸田政権に影響があるか」と質問したのに対し「あるのではないか」と述べました。

自民 和田参院議員「国民感覚からかけ離れ 反対」

自民党無派閥の和田政宗参議院議員は、記者団に対し「今においても増税には反対だ。国民感覚、被災地感覚からも完全にかけ離れている。これから国民と対話をしていく中で、やはり増税はだめだと議員は再認識すると思う。それをもとに増税なき防衛費増額を実現していかなくてならない」と述べました。

公明 山口代表「国民にしっかり説明尽くす姿勢を」

公明党の山口代表は、記者団に対し「防衛力を賄う費用は、後の世代に漫然と先送りせず、現役世代の負担がなるべく小さくなる努力をしたうえで、税負担がいつから必要なのか、方向性を明確にしていくことが責任だ」と述べました。

そのうえで「今回は、必ずしも十分な時間を使って、国民に届くように議論を重ねてきたと言い切れない部分もあるが、議論を尽くして政府・与党で結論を導いたので、これからより丁寧に国民とともに考え方を共有できるよう努力していく必要がある。岸田総理大臣を中心に、しっかりと説明を尽くす姿勢を示していただきたい」と述べました。

立民 泉代表「首相はウソついていた」

立憲民主党の泉代表は、記者会見で「宇宙・サイバーなど新たな技術の導入は必要だが、際限なく導入していいものではない。防衛費がなぜ5年間で43兆円なのかを政府は説明すべきだが、中身は全く見えてきていない」と述べました。

そのうえで「復興特別所得税のスキームを流用するなどの形での1兆円の増税が、被災地の復興がまだ続いているにもかかわらず、いとも簡単に了承された。岸田総理大臣は、個人の所得税の負担が増加する措置は行わないという発言をしていたが、ウソをついていたことになる」と批判しました。

そして「自民党は紛糾しているかのように見えたが、あっさり了承という形で議論が終えんを迎え、本気の増税反対ではなかったのではないか」と述べました。

自民 萩生田政調会長 “税以外の財源上積み”を検討

防衛費増額の財源を賄うための増税案をめぐり、自民党の萩生田政務調査会長は、税以外で確保する財源をさらに上積みできないか、政務調査会で検討を始める考えを明らかにしました。

防衛費増額の財源を確保するため、自民党は、法人税、所得税、たばこ税の3つの税目で増税などの措置を取る案をまとめましたが、拙速に決めるべきでないといった党内の反発を踏まえ、増税の具体的な実施時期は、来年改めて議論することになりました。

これについて、萩生田政務調査会長は党の政務調査会の会合で「党内にもさまざまな意見がある中、限られた時間でしっかり方向性を打ち出してもらった。国民の生命と財産を守り切るという本質を見失わず、防衛力強化にも財源にも、与党として責任を果たしていきたい」と述べました。

そのうえで「本当の取り組みはこれからで、税以外の財源の具体的な在り方についても、引き続き丁寧に議論し、国民に納得してもらえる形にしなくてはならない。政務調査会長のもとに議論の場を設けて、来年早々から精力的に議論を進めていきたい」と述べ、税以外で確保する財源をさらに上積みできないか、検討を始める考えを明らかにしました。