【詳しく】旧統一教会被害者救済法案 ポイントは?

旧統一教会をめぐる問題で、悪質な勧誘による高額な寄付などによって家庭が困窮したり崩壊したりする事例が相次いで報告されています。

こうした悪質な寄付を未然に防止し、被害の拡大をふせぎ、救済につなげるため、政府はこの臨時国会で、寄付に関する新たな法案や関連する改正案を異例とも言えるスピードで成立させることを目指しています。

今回の法案が成立することで何が変わるのか。被害者をどこまで救えるのか。
法案のポイントを見てみます。

Q.どのような被害が救済の対象なの?
A.法案は、法人などから不当な寄付の勧誘をうける人たちの保護を目的としていて、法人や任意の団体などが寄付を勧誘する際に「不当な勧誘行為によって個人を困惑させてはならない」と定めています。

法案には「不当な勧誘」について、以下の6つの行為を示し、禁止しています。

【不当な勧誘行為】
1.帰ってほしいと伝えても退去しない「不退去」
2.帰りたいのに帰してくれない「退去妨害」
3.勧誘をすることを告げず退去困難な場所へ同行する
4.威迫する言動を交え相談の連絡を妨害する
5.恋愛感情などに乗じ関係の破綻を告知する
6.霊感などの特別な能力により、そのままでは重大な不利益が起こることを示して不安をあおり、契約が必要と告げる、「霊感商法など」

法案では、このほかの禁止行為として、「寄付のために個人に借金させたり、自宅や土地などを売らせたりすることで、寄付の資金を調達すること」を要求してはならないとしています。

そして、こうした禁止行為に違反した場合は、行政措置や罰則の対象となることが規定されています。

行政の勧告・命令にも従わなかった場合は、罰則として1年以下の懲役か100万円以下の罰金が科されます。

Q.寄付が取り消せるのはどういう場合?
A.上記の不当な勧誘行為を行い、寄付の勧誘を受けた人が「困惑」し、そのまま寄付をした場合は、その寄付を取り消す「取消権」を行使することができます。
新法の対象となるのは、遺言による贈与や債務免除といった「契約にあたらない寄付」で、「契約にあたる寄付」については、新法と同時に審議されている「消費者契約法の改正案」の対象になります。

新法では、取消権が行使できる期間は、不当な勧誘6(霊感商法など)の場合は、被害にあったと気付いた時から3年または寄付時から10年。

それ以外の勧誘(1~5)では、気付いた時から1年、寄付時から5年となっています。

Q.宗教2世や家族などは救済されるの?
A.寄付した本人の「家族」も救済されます。

寄付者本人が寄付の取り消しを求めない場合でも、扶養されている子どもや配偶者に一定の範囲内で取消権を認め、本来受け取れるはずだった養育費などを取り戻せるとしています。

一方で、実際に取り戻すとなると、金額の算定など法律の専門知識も必要だと考えられ、消費者庁は、弁護士などの支援を受けられる法テラスなどの関係機関との連携強化を進めることにしています。

Q.過去に受けた被害は どの程度救済されるの?
A.法律が成立しても、基本的には施行日から過去にさかのぼっては適用されず、民事上の時効を迎えた被害については、取消権を行使できることにはなりません。

ただ、この時効について、消費者契約法の改正案では、霊感商法などの被害を受けていたと気付いた時から1年としていたのを3年に、契約の締結から5年としていたのが10年に、それぞれ延長すると規定され、新法でも、同じ期間に設定され、より幅広い期間での被害に対応できることになりました。

Q.寄付の勧誘を行う法人などに求められる「配慮義務」って何?
A.「配慮義務」は、寄付の勧誘を行う法人などが、寄付の勧誘を受ける人に対して「十分に尊重するよう求めた行為」のことです。

以下に掲げる3つの行為が配慮義務として示されています。

いずれも、これまでの実際の寄付で問題が発生したケースなどをもとにしています。

【配慮義務】
1.自由な意思を抑圧し、適切な判断をすることが困難な状況に陥ることができないようにする
2.寄付者やその配偶者・親族の生活の維持を困難にすることがないようにする
3.勧誘をする法人などを明らかにし、寄付される財産の使途を誤認させるおそれがないようにする

政府は、配慮義務の1については、いわゆる「マインドコントロール」を念頭に置いた規定と考えています。

法案では、この配慮義務の規定について「十分に配慮」という文言が記載されていて、配慮義務を怠った場合は、行政が勧告することができ、従わなければ法人名の公表を行えるとしています。
Q.困っている人 悩んでいる人はどう行動すればいいの?
A.旧統一教会に関連するものや法律的なことを中心した相談は、一義的に、法テラスが窓口になります。

また最寄りの消費生活センターなどにつながる「消費生活ホットライン」の「188」でも「意に反するような寄付をした」「霊感による勧誘を受けた」といった相談に対応しています。

消費者庁は、寄付者やその家族の周囲の人たちも、孤立させず、異変などに気付いてあげることや適切な支援機関へつなぐといったことが求められるとしています。

日本司法支援センター=法テラスの相談窓口「霊感商法等対応ダイヤル」の電話番号は、0120-005-931で、平日午前9時半から午後5時までです。

今回の法案については、被害者救済の観点から一歩前進という評価の声がある一方で、有識者や相談にあたっている弁護士などからは「実態を反映していない」などという指摘も出ています。
法案では、施行の2年後をめどに法律の見直しを検討する規定も設けられ、政府は、法律の施行後、裁判などでの運用状況を把握して改善につなげるために有識者などによる検討会を設置する考えを示しています。