首相 「“自主的に献金”念書 むしろ違法性を示す要素となる」

国会は、衆議院予算委員会で集中審議が行われ、岸田総理大臣は、旧統一教会の被害者救済を図る新たな法案をめぐり、不当な勧誘行為によって「自主的に献金した」という念書にサインさせられた場合にはむしろ違法性を示す要素となり、損害賠償請求が認められやすくなる可能性があるという認識を示しました。

衆議院予算委員会では、11月29日の午前中、岸田総理大臣と関係閣僚が出席して集中審議が行われました。

▽自民党の國場幸之助氏は「北朝鮮のミサイル発射は、ことしに入ってから34回と過去最多で、現状のミサイル防衛では、高度化・複雑化した攻撃への迎撃は困難になっている。急速に高まった軍事脅威に対抗できる政策判断、つまり『反撃能力』は必要だ。保有の検討が必要なことを、総理大臣のことばで説明してもらいたい」と求めました。

これに対し、岸田総理大臣は「ミサイル技術は大きく進化しており、まさに現代的議論だ。ミサイル迎撃能力のさらなる向上だけでなく、いわゆる『反撃能力』を含め、あらゆる選択肢を排除せず、現実的に検討している。検討は、憲法や国際法の範囲内で日米の基本的な役割分担を維持しつつ進めており、与党間の協議も踏まえつつ、年末までに結論を出していく方針だ」と述べました。

また、岸田総理大臣は、他国からのサイバー攻撃が武力攻撃にあたるかどうか問われたのに対し、「サイバー攻撃のみであっても深刻な被害が発生し、相手方による攻撃が組織的・計画的に行われている場合には武力攻撃に当たり得る。日米間でも、一定の場合には日米安保条約第5条の武力攻撃を構成し得ると確認している。具体的な在り方は、新たな国家安全保障戦略などを策定する中で議論をしっかり進めたい」と述べました。


▽公明党の吉田宣弘氏は、日中関係について「懸念材料が存在することは確かだが、悪化させない知恵を両国が模索することが重要だ。国交正常化50周年の節目の年に岸田総理大臣と習近平国家主席の会談が実現したことを歓迎する。両首脳で確認された事項をどのように進めていくつもりか」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「日中間にはさまざまな可能性とともに、数多くの課題や懸案があるが、首脳レベルを含めて緊密に意思疎通を行い、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含めて対話をしっかり重ねて、共通の課題については協力をする、建設的かつ安定的な関係の構築を、双方の努力で進めていきたい」と述べました。


▽立憲民主党の山井国会対策委員長代理は、旧統一教会の被害者救済を図る新たな法案について「脱会や、献金の返金を要求されそうなケースでは『念書』にサインをさせ、ビデオ撮影までされているケースがある。一般論として、献金の段階で『自主的に献金した』旨の文書に署名した場合、政府案では取り消しや禁止行為の対象になるのか」と質問しました。

これに対し、岸田総理大臣は「個別具体的な事例に即して判断するが、不当な勧誘行為により個人が困惑した状態で取消権を行使しない意思表示を行ったとしても、効力は生じないと考えられる。むしろ、念書を作成させたり、ビデオ撮影をしていること自体が、違法性を基礎づける要素の1つとなり、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求が認められやすくなる可能性がある」と述べました。

また、岸田総理大臣は、寄付や献金をした時点では、自身が困惑しているかを判断できなかった被害者への救済策として、「不当な勧誘を受けて困惑して行った寄付だったと気付いた時から3年間は取り消すことができる」と述べました。


▽日本維新の会の青柳仁士氏は、自衛権行使の3要件について、「3つ目の要件に、必要最小限度の実力行使にとどまるべきということばがあるが、必要最小限度と強調することは日本の抑止力を小さくうつす。『必要不可欠』と言いかえるなどさまざまな考え方がある」と指摘しました。

これに対し、岸田総理大臣は「防衛力の抜本的強化に関する検討は、憲法および国際法の範囲内で進められており、政府としてはこの必要最小限度に関する見解を変更する考えはない。定義は変わらないが、具体的な限度については、当該の武力攻撃の規模や、ミサイル技術の進歩などに応じて、絶えず考えていかなければならない」と述べました。


▽国民民主党の斎藤アレックス氏は、ミサイル防衛について、「イージス艦を増やしても24時間切れ目のない対応は極めて困難になってしまい、イージス・アショアもできなくなっている。国際情勢も変わってきており、改めてミサイル防衛の在り方を総合的に検証し直す必要があるのではないか」と質問しました。

これに対し、岸田総理大臣は「ミサイルの技術が急速に進化している中、迎撃がより難しくなっている。新しい国家安全保障戦略の議論が行われている中で、ミサイル迎撃能力だけではなく、ミサイルに対してどう対応していくかの全体像をしっかり議論することが重要だ」と述べました。


▽共産党の宮本徹氏は、防衛費をめぐり、岸田総理大臣が令和9年度=2027年度に関連する経費も合わせてGDPの2%に達する予算措置を講じるよう閣僚に指示したことについて、「仮に軍事費の倍増を増税で賄おうとしたら、国民1人当たり4万円以上の増税になる。物価高で実質賃金も下がっている中、軍拡のために幅広い税目で増税をやろうというのか」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「まずは歳出改革に最大限努力することは有識者会議の報告書でも基本的な姿勢として大事だと指摘され、政府としても努力をする。しかし、そのうえで、令和9年度に向けて安定的な財源確保を考えていかなければならず、さまざまな財源について、しっかり精査したうえで年末に向けて結論を出していきたい」と述べました。


▽れいわ新選組の櫛渕副幹事長は「北東アジアや東アジアには地域の安全保障を話し合う多国間の枠組みがない。核兵器保有国が核による攻撃や威嚇を行わないと保障する構想に取り組むつもりはないか」と質問しました。

これに対し、岸田総理大臣は「地域の安全保障について、さまざまな議論を行うことが重要だが、信頼関係が基盤とならなければならない。核兵器をめぐる透明性に極めて後ろ向きな国も含まれており、信頼の基盤をつくったうえで議論が行われる状況を実現したい」と述べました。