児童虐待の相談件数 過去最多に「心理的虐待」が全体の6割

子どもが親などから虐待を受けたとして、児童相談所が相談を受けて対応した件数は昨年度、20万7000件余りで過去最多を更新したことが、厚生労働省のまとめで分かりました。

厚生労働省によりますと、昨年度、18歳未満の子どもが、親などの保護者から虐待を受けたとして、全国の児童相談所が相談を受けて対応した件数は、速報値で20万7659件でした。

内容別にみますと、最も多かったのが、
▽子どもの前で家族に暴力を振るうなどの「心理的虐待」で、12万4722件と全体の6割を占めました。

次いで、
▽殴るなどの暴行を加える「身体的虐待」が4万9238件。

▽育児を放棄する「ネグレクト」が3万1452件。

▽「性的虐待」が2247件でした。

相談の経路は、
▽警察などが10万3104件で、全体の半数近くを占め、
▽近隣の知人が2万8075人
▽家族や親戚が1万7344人
などとなっています。

虐待の対応件数は、統計を取り始めた平成2年以降、増加傾向が続いていて、昨年度も前の年度より2615件増えて、過去最多を更新しました。

ただ、前の年度からの増加率は、
▽平成24年度以降は10%から20%程度で推移していましたが、
▽令和2年度は5.8%
さらに、
▽昨年度は1.3%となりました。

厚生労働省は「関係機関と連携を強化する中、児童相談所への通告が増え続けている。今後も連携し、虐待に至る前に予防するなど、子どもの命を守る取り組みを強化していく」としています。

令和2年度 全国で49人が虐待を受け死亡

厚生労働省は、令和2年度に、親などから虐待を受けて死亡した子どもの、専門家による検証結果を公表しました。

それによりますと、令和2年度に親などから虐待を受けて死亡した子どもは、心中を除くと全国で49人でした。

内容別では、
▽育児を放棄する「ネグレクト」が22人
▽「身体的虐待」が21人
▽「不明」が6人
となりました。

このうち、「実の母」から虐待を受けていたのが29人で、全体の60%近くを占めました。

年齢別では、
▽「0歳」が32人で最も多く、
次いで、
▽「3歳」が4人
▽「4歳」が3人
などでした。

また、「0歳」のうち、月齢0か月の新生児は16人でしたが、このうち5人が児童相談所や市区町村など、関係機関の関与がありませんでした。

検証結果では、虐待の予防や早期発見のために、
▽妊娠や子育てに関した相談がしやすいようSNSなどを活用することや、
▽相談を受ける際は、匿名性を維持しながら信頼関係を構築し、必要なサービスの提供につなげていくことなど、
妊娠期から、支援を必要としている保護者への相談体制を強化すべきだと提言しています。

専門家「学校などの役割が特に重要」

児童虐待の問題に詳しい関西大学の山縣文治教授は「自治体などの対策が進んできていることや、子どもの数が減っていることなどから、前年度からの増加率が、ここ数年で鈍化していると考えられるが、死亡するケースなど、重篤な虐待は減ったとは言えない。虐待を防ぐには、学校など子どもが日常的に通う場の役割が特に重要で、関係機関と連携し、子どもを見守る取り組みを継続してもらいたい」と話していました。