旧統一教会の名称変更 下村氏「責任感じる」与野党対応は

旧統一教会の名称変更により、霊感商法などの被害が広がったのではないかと指摘されていることをめぐり、変更を認証した当時、文部科学大臣を務めていた自民党の下村前政務調査会長は「今となっては責任を感じる」と述べました。

旧統一教会をめぐっては、文化庁が平成27年8月に「世界平和統一家庭連合」への名称変更を認証しました。

当時、文部科学大臣だった自民党の下村前政務調査会長は、記者団に対し、名称変更により、霊感商法や献金の強要などの被害が広がったのではないかと指摘されていることについて、「教会が名称変更によって新たな信者や国民に迷惑をかけるようなことをするとは想像できなかったが、結果論として問題が出てきているとしたら、今となっては責任を感じる」と述べました。

また、名称変更を認証した際の文化庁の文書などが、一部黒塗りで野党の議員に開示されたことについて、「私が黒塗りにさせたような報道があるが、そんなことはありえない。非常に迷惑で、ぜひ黒塗りをなくして出してほしいと文化庁に話をした」と述べました。

そのうえで、下村氏は「私自身、教会と関係はなかったが、関係団体の『世界日報』などの取材を受けたことはあった。今後は、関係団体を含め一切の関係は断つと明言したい」と述べました。

立民ヒアリング “経緯を明らかにすべき”

旧統一教会から「世界平和統一家庭連合」への名称変更について、立憲民主党は文化庁へのヒアリングを行い、出席した議員からは、教会側が最初に相談してから、正式な申請を経て認証に至るまでの経緯を明らかにすべきだという指摘が出されました。

立憲民主党は4日、国会内で「旧統一教会被害対策本部」の会合を開き、文化庁へのヒアリングを行いました。

この中で、文化庁の担当者は「1997年に相談があった事実は当時の担当者に確認がとれたが、具体的な内容やその後の対応は確認できていない」と説明しました。

これに対し、出席した議員からは「相談を受けてから18年後に認証された経緯がわからないというのはありえず、しっかり説明してもらう必要がある」といった指摘が出され、文化庁に対し、引き続き回答を求めていくことになりました。

旧統一教会 名称を変更した経緯

旧統一教会が「世界平和統一家庭連合」に名称を変更した経緯です。

旧統一教会のように、複数の都道府県で宗教活動用の施設を持つ宗教団体が名称を変更するには、文部科学大臣宛てで文化庁に申請を行い、認証を得る必要があります。

文化庁は、出された申請が法律などに適合しているかを審査し、認証するか、しないかを決定します。

文化庁によりますと、旧統一教会からは1997年以降「世界平和統一家庭連合」への名称の変更について複数回、相談を受けていたということです。

そうした動きを受けて、全国霊感商法対策弁護士連絡会は統一教会が関係する霊感商法や献金の強要などのトラブルが相次いでいるとして、名称変更を認めないように繰り返し求めていました。

2015年3月に文化庁などに送った申し入れ書では「宗教団体であることさえ判らない(わからない)名称で、宗教の勧誘であることに気づかないように仕組んでいる」などと訴えていました。

その3か月後、最初の相談からは18年後の2015年6月、旧統一教会は文化庁に名称変更についての正式な申請を初めて出し、文化庁は2か月後の2015年8月に認証を決定しました。

文化庁によりますと、名称変更の手続きは通常、部長の決裁で済むので大臣に報告しませんが、旧統一教会から申請を受けたときは当時の担当者が大臣に報告したということです。

その理由について文化庁は「当時は盛んに報道が行われ、名称が変わることで批判を受ける可能性もあったためだ」としています。

当時、文部科学大臣を務めていた自民党の下村前政務調査会長は3日、記者団の取材に答え「文化庁の担当者からは『旧統一教会から18年間にわたって名称変更の要望があり、今回、初めて申請書類が上がってきた』と報告を受けていた。担当者からは『申請に対応しないと行政上の不作為になる可能性がある』と説明もあったと思う。私が『申請を受理しろ』などと言ったことはなかった」と述べ、関与を否定しました。

また、申請が認められる前の2013年から2014年にかけて、旧統一教会と関わりがある世界日報社の月刊誌でインタビューなどに応じていたほか、2016年には下村前政務調査会長が代表の政党支部が、世界日報社の社長から6万円の献金を受けていました。

こうした関わりについて問われると「認証問題とは全く関係ない。旧統一教会との関係は、関連団体も含めて、政治家は襟を正しながら距離を置くことが必要だ」と話していました。

一方、名称変更を認めないように申し入れをしていた全国霊感商法対策弁護士連絡会の川井康雄弁護士は先月29日の会見で「統一教会であることや、宗教団体ということを隠して教義を広げ、信者にするという方法を取っていたが、それに拍車をかけたのが、名称変更だった」と話しています。

一連の経緯について「世界平和統一家庭連合」は、これまでの声明の中で、「創始者は統一教会の創立当時から、今の名称を使用することを考えておられた。“世間の批判をかわすため”に名称を変えたかのような批判は、事実無根の的外れな臆測、決めつけにすぎません」とコメントしています。

自民 山谷えり子氏「旧統一教会側からの選挙応援はない」

「世界平和統一家庭連合」旧統一教会側から、参議院選挙の重点候補として支援を受けていたと指摘された自民党の山谷えり子元拉致問題担当大臣は、記者団に対し「選挙応援はいただいていない」と否定しました。

立憲民主党の前参議院議員で、旧統一教会の問題を長年取材してきたジャーナリストの有田芳生氏は、ツイッターで12年前に入手したとする旧統一教会の関連団体の内部文書を公表し、このなかに参議院選挙で山谷氏への投票を呼びかける記述があったなどとして、山谷氏が教会側の重点候補だったと指摘しています。

これについて山谷氏は4日、党本部で記者団に対し「選挙応援はいただいていない」と否定したうえで、有田氏の投稿については「よくわからない」と述べました。

立民 小川政調会長「自民の対応は落第点」

「世界平和統一家庭連合」、旧統一教会との関わりをめぐり、自民党が所属議員への調査を行っていないことについて、立憲民主党の小川政務調査会長は「問題に真摯(しんし)に向き合う姿勢が欠如しており、落第点だ」と批判しました。

旧統一教会との関わりをめぐっては、立憲民主党と日本維新の会が党内で独自の調査を行い、関わりが判明した議員の名前などを公表している一方、自民党は教会側との組織的な関係はなく、ぞれぞれの議員が適切に説明すべきだとして所属議員への調査を行っていません。

これについて、立憲民主党の小川政務調査会長は記者会見で「世間の関心や社会の疑念が高まっている中で、議員それぞれの政治活動だというところに落とし込もうと画策している。全党的に調査をしないのはもってのほかで、自民党の政治姿勢が象徴されている。問題に真摯に向き合う姿勢が欠如しており、対応は落第点だ」と批判しました。

また小川氏は、旧統一教会をめぐる霊感商法や献金の強要などの訴えが出ていることについて、「ある種の消費者被害で、反社会的行為であり、場合によっては立法措置を含めた徹底的な対応が必要だ」と述べました。

共産 小池書記局長「真相究明 先頭立つべきは自民」

共産党の小池書記局長は、記者団に対し「自民党の茂木幹事長は『一切関係がない』と言っているが、どう見ても関係がある。多数の議員や現職閣僚に疑惑が出ているので、自民党として調査すべきだと迫っていく」と述べました。そのうえで「反社会的な集団との関係が明るみになった以上、なぜ『一切の関係を断ち切る』と言えないのか。安倍元総理大臣の銃撃事件の背景に旧統一教会の問題があるとすれば、この真相究明の先頭に立つべきは自民党だ」と述べました。