北朝鮮外務省「拉致問題はすべて解決された」 日本をけん制

北朝鮮外務省は北朝鮮による拉致被害者の家族が先月東京で開いた集会に出席した岸田総理大臣が、拉致問題の解決に向けて全力で取り組む決意を強調したことについて「拉致問題はすでにすべて解決された」と改めて主張する談話を発表し、アメリカや韓国との連携を強める日本をけん制しました。

北朝鮮による拉致問題をめぐっては、拉致被害者の家族が先月29日に東京で開いた「国民大集会」に岸田総理大臣が出席し「いまだに多くの被害者が北朝鮮に取り残されているのは本当に申し訳ない」と述べたうえで、みずからが先頭に立ち、拉致問題の解決に向けて全力で取り組む決意を強調しました。

これについて北朝鮮外務省は、傘下の日本研究所の研究員の名前で7日付けの談話を発表し「拉致問題はわが方の誠意と努力によってすでにすべて解決され、もはや両国間の問題としては存在しない」と改めて主張しました。

さらに「拉致問題をもって再び自国民を欺き、迫る参議院選挙で支持票をかき集めようとしている」などとして、岸田総理大臣を名指しで批判しました。

北朝鮮の報道を分析しているラヂオプレスによりますと、北朝鮮が「国民大集会」に直接言及したのは2005年以来だということです。

北朝鮮としては日朝ピョンヤン宣言からことし9月で20年となるのを前に、核・ミサイル問題をめぐってアメリカや韓国との連携を強める日本をけん制した形です。

松野官房長官「主張は全く受け入れることができない」

松野官房長官は午後の記者会見で「北朝鮮の発表の1つ1つにコメントすることは差し控えたいが、こうした主張は全く受け入れることができない」と述べました。

そのうえで「日朝ピョンヤン宣言に基づき、拉致・核・ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し不幸な過去を清算して国交正常化の実現を目指す考えに変わりはない。拉致問題は岸田政権の最重要課題であり、ご家族も高齢となる中、一刻の猶予もなく、すべての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべくあらゆるチャンスを逃さずに全力で取り組んでいく」と述べました。

外務省 森事務次官が韓国外相と会談 “懸案解決が急務”

外務省の森事務次官は、訪問先のソウルで韓国のパク・チン(朴振)外相と会談し、日韓関係の発展には太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題などの懸案解決が急務だと伝えたのに対し、パク外相はスピード感を持って協議を進めたいという考えを示しました。

日米韓3か国の外務次官級による協議に出席するためソウルを訪れている外務省の森事務次官は、韓国のパク・チン外相と会談しました。

この中で、森次官は「ルールに基づく国際秩序が脅かされている現下の情勢で、日韓両国の戦略的な連携がこれほど必要な時はなく、関係改善は待ったなしだ」と述べました。

そのうえで、両国関係の発展には太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題など、日韓間の懸案解決が急務だと伝えました。

これに対し、パク外相は「日韓関係を重視しており、関係改善に向けて協力していきたい」と述べるとともに、両政府間でスピード感を持って協議を進めたいという考えを示しました。

また森次官は、韓国のチョ・ヒョンドン(趙賢東)第1外務次官とも個別に会談し、島根県竹島周辺の日本のEEZ=排他的経済水域で先月下旬に韓国の調査船が海洋調査を行ったことに重ねて強く抗議しました。