林外相 韓国外相候補のパク氏と会談 韓国でユン大統領が就任

韓国を訪問している林外務大臣は5月9日夜、新政権の外相候補のパク・チン(朴振)氏と会談し、悪化した日韓関係をこれ以上、放置してはならないとして、懸案の早期解決に向け、スピード感をもって協議していくことで一致しました。

韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)次期大統領の就任式に出席するため、岸田総理大臣の特使として韓国を訪れている林外務大臣は9日夜、ユン新政権の外相候補のパク・チン氏と夕食をとりながら、およそ2時間会談しました。

会談で林大臣とパク氏は、ルールに基づく国際秩序が脅かされている現下の国際情勢で、日韓両国やアメリカを含めた日米韓3か国の戦略的連携がこれほど必要な時はないとして、関係改善は待ったなしだという認識を共有しました。

そのうえで林大臣は、両国関係の発展には太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題や慰安婦問題など、日韓間の懸案の解決が必要だと伝えました。

そして悪化した日韓関係をこれ以上放置してはならないとして、日韓間の懸案の早期解決に向け、ハイレベルなものも含め、両政府間でスピード感をもって協議していくことで一致しました。

韓国 ユン大統領が就任 5年ぶりの保守政権が発足

韓国では5月10日、ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が就任し、5年ぶりの保守政権が発足しました。
ユン大統領は、アメリカとの同盟関係を基盤として北朝鮮に対する抑止力を強化するとしているほか、冷え込んだ日本との関係改善にも意欲を示していて、検察官出身で政治経験が乏しい中、どれだけリーダーシップを発揮できるのか、その手腕が問われることになります。

ことし3月の韓国大統領選挙で当選したユン・ソンニョル氏は、10日午前0時をもって第20代大統領に就任し、ソウル中心部では大統領の交代を告げる鐘つきが行われました。

ユン・ソンニョル大統領とは

ユン・ソンニョル大統領は、首都ソウル出身の61歳。

両親が大学教授という家庭で育ち、名門のソウル大学で学んだユン氏は、司法試験にたび重なる挑戦の末に合格して検察官となりました。

保守系のパク・クネ(朴槿恵)元大統領や、イ・ミョンバク(李明博)元大統領をめぐる贈収賄事件などを徹底捜査した手腕が、革新系のムン・ジェイン(文在寅)前大統領に評価され、2019年に検察トップの検事総長に抜てきされました。
するとユン氏は、ムン前大統領の側近で法相に起用されたチョ・グク氏の疑惑を追及するなどした結果、政権との対立が深まり、去年3月に検事総長を辞任しました。

政権と真っ向から対じした姿が支持されて政界入りへの待望論が高まり、去年7月、当時の保守系最大野党「国民の力」に入党し、大統領選挙の公認候補に選出されました。

ユン氏は、ムン政権を厳しく批判し「無能な政権を政権交代によって審判する。真の公正な社会をつくる」として、5年ぶりの政権交代の実現を訴え、ことし3月の大統領選挙で、当時の与党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)氏にわずか0.73ポイントの差で勝利しました。

当選後、大統領府を「帝王的権力の象徴」ともされてきた青瓦台から国防省だった建物に移して執務を行うことを決めました。

また、外交と安全保障の司令塔となる大統領府の国家安保室長には「アメリカ通」として知られる大学教授を起用するなど、アメリカとの同盟関係を強化する姿勢を鮮明にしていて、今月21日にはソウルで、バイデン大統領と初めての首脳会談を行う予定です。

さらにユン氏は、日米韓3か国の連携を重視する立場から、冷え込んだ日本との関係の改善にも意欲を見せていて、先月には、アメリカに続いて日本に派遣した代表団を通じて、岸田総理大臣にみずからの親書を手渡しました。