公明 山口代表「防衛費だけ突出 妥当ではない」安倍元首相発言に

安全保障政策をめぐり自民党内で防衛費の増額の必要性を訴える声が出ていることについて、公明党の山口代表は歳入が限られる中、防衛費だけを突出させるのは妥当ではないとして慎重な姿勢を示しました。

安全保障政策をめぐって自民党内では安倍元総理大臣が3日、防衛費をGDPの2%を念頭に増額し、来年度予算では少なくとも6兆円程度を確保すべきだという考えを示すなど防衛費の増額を求める声が出ています。

これについて公明党の山口代表は、4日、視察先の千葉県八千代市で記者団に対し「防衛費を全体として強化していく議論は必要だが、いきなり単年度で倍増に近い増額はすべきない。新型コロナや物価高騰で国民生活が打撃を受けているもとで歳入にも限界がある」と指摘しました。

そのうえで「社会保障や教育などの需要はとても大きく、それらを削る形で防衛費だけを突出させるというのは妥当ではない。税をどう配分するか政治の適切な判断が必要だ」と述べ、慎重な姿勢を示しました。

立民 泉代表「中身がないのに数字だけ示すのは不誠実だ」

立憲民主党の泉代表は党の執行役員会で「必要な防衛は着実に体制を組まなければいけないが、中身がないのにいきなり数字だけ示すというのは国民に対して不誠実だ。防衛は国民の理解、納得のもとで体制を整備することが最も求められるということを国会の論戦でも強く主張していく」と述べました。

安倍元首相の発言とは

自民党の安倍元総理大臣は3日、山口市で講演し、中国が軍事力を増強していることに懸念を示したうえで「衝突の危険性がないようバランスを取っていくことが大切だ。ロシアとウクライナのように軍事バランスが大きく崩れると予期せぬ衝突が起こりやすい」と指摘しました。

そのうえで「防衛費を増やすことに偏見を持つ必要は全くない。自国の防衛に努力しない国のために、命をかけてくれる国はどこにもない」と述べ、日本の防衛費をGDPの2%を念頭に増額し、来年度予算では、少なくとも6兆円程度を確保すべきだという考えを示しました。

また、いわゆる「敵基地攻撃能力」について「日本も少しは独自の打撃力を持つべきだと確信している。基地に限定する必要はなく、中枢を攻撃することも含むべきだ」と述べました。

一方、台湾海峡をめぐる情勢について「アメリカは戦略的にあいまいな対応をしてきたが、危険を呼び起こすかもしれない。台湾を防衛するという意思を明確に示すことで、中国に武力による統一を諦めさせることが大切だ」と述べました。

自民「全国政務調査会長会議」防衛費増額を求める意見

自民党は4日、先月の党大会で党則に位置づけた都道府県連の政策責任者による「全国政務調査会長会議」を開き、およそ100人が出席しました。

この中で岸田総理大臣は、夏の参議院選挙に向けて「国民生活や経済を守るためにしっかりとした対策を進めていかなければならない。全国の声をしっかり集め、国民政党・責任政党として国民から納得してもらえる公約をつくってもらいたい」と呼びかけました。

また高市政務調査会長は「政治の安定のために絶対に落とせない選挙で、全国の知を結集していい公約をつくっていきたい」と述べました。

そして出席者からは、ウクライナ情勢や北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイルの発射を受けて防衛費の増額を求める意見や、原油価格の高騰による影響が幅広い業種に及んでいるとして対策を求める声が相次ぎました。

自民党はこうした意見を参議院選挙の公約に反映させていくことにしています。