千代田区長のマンション問題
百条委が優先販売を認定へ

東京の千代田区長が所有するマンションの部屋が一般には販売されない「事業協力者住戸」と呼ばれる部屋だった問題で、区議会の百条委員会が、区長の許可権限でマンションの高さ制限が緩和されるなどした結果、部屋が優先的に販売されたと結論づける報告書をまとめたことが分かりました。

東京 千代田区の石川雅己区長(79)は区内の高級住宅街にあるマンションのおよそ1億円の部屋を家族と共同で所有していますが、この部屋が一般には販売されず、土地の所有者や得意客に提供される「事業協力者住戸」と呼ばれる部屋だったことが明らかになっています。

この問題について、千代田区議会の百条委員会が、区長の許可権限を通じて販売会社側に利益をもたらした結果、部屋が優先的に販売されたと結論づける報告書をまとめたことが分かりました。

関係者によりますと、報告書ではその理由として、区の許可でマンションの高さ制限が緩和されたことなどを挙げたうえで、販売会社が区長の家族の意向を受けて希望するタイプの部屋を事業協力者住戸にしたり、一般の販売が始まる前に抽せんなしで購入できることを家族に伝えたりした事実が明らかになったとしています。

一方、「購入手続きは家族が行い、事業協力者住戸とは知らなかった」とする区長の主張については、購入の経緯をめぐる証言に事実と異なる点があったことなどから「極めて疑わしいと言わざるをえない」と判断したということです。

百条委員会は、27日の区議会でこうした内容を報告することにしています。

マンション問題の経緯

今回の問題が明らかになったのはことし3月。

石川雅己区長が所有する高級マンションの部屋が、一般には販売されず、通常は土地の所有者などに提供される「事業協力者住戸」と呼ばれる部屋だったことがNHKが入手した資料などで分かりました。

マンションは千代田区三番町にある地上18階建てで、区の許可を受けて高さ制限が緩和され、この地区の上限とされている高さを10メートル上回っています。

区長はおよそ1億円の部屋を妻や次男と共同でおととしから所有していますが、千代田区議会は、高さ制限の緩和が区長の名前で許可されており詳しい経緯を解明する必要があるとして、強い調査権を持つ「百条委員会」を設置し、調査を始めました。

調査では、販売会社の三井不動産レジデンシャルが提出した資料などから、当時の購入に至る経緯が明らかになりました。

それによりますと、マンションの販売前に石川区長の名前で資料請求が行われ、その後、区長の妻や次男がモデルルームを訪れて希望するタイプの部屋を担当者に事前に伝えたということです。

さらに、区長の妻が販売会社に電話で購入の意向を伝えたことを受けて当時の担当部長らが協議し、希望の部屋を事業協力者住戸にすることを決めたとしています。

そのうえで、一般の販売が始まる前に、抽せんなしで購入できることを家族に伝えたということです。

こうした対応をとった理由について、販売会社の役員は調査に対し「購入に強い意欲を感じたことに加え、区長が過去に別の物件を購入しており、資金面でも問題がないと考えた。販売戦略上の判断だった」として、便宜供与にはあたらないと主張しています。

一方、石川区長は「購入手続きは家族が行い、詳しい経緯は分からない」としたうえで「この件が報道されたあと、知人を通じて販売会社に確認したが、当時ははっきりした説明はなかった」などと証言。

事業協力者住戸とは知らなかったと主張しました。

しかし、千代田区議会が販売会社に確認したところ、知人から問い合わせを受けた事実はないことが分かったということで、区議会はことし8月、区長がうその証言をしたとして、偽証などの疑いで東京地方検察庁に刑事告発しました。

刑事告発をめぐっては、区長が「実質的な不信任だ」として区議会を解散する意向を明らかにし、議会が混乱する一幕もありましたが、裁判所が解散の効力を停止する決定を出したことを受けて区長はこれを取り消し、区政を停滞させたとして陳謝しています。

百条委員会では、その後も区長の家族に証言を求めるなどして、部屋を購入した詳しい経緯や背景について調査を進めてきました。