知事選 選挙運動に
ネットはどう使われた?

今回の東京都知事選挙では、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために候補者が街頭での演説を事前に告知しないなどの対策をとる一方で、インターネットのSNSやオンライン会議などをこれまで以上に活用する動きが目立ち、新たな形の選挙運動が展開されました。

集会は「リモート」で

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために各地の学校や職場などで多く使われているオンライン会議のサービスは、今回の都知事選でも活用が目立ちました。

このうち、小池百合子氏は選挙期間中に10人の女子大学生と結んだオンライン会議を開催し、大学生からの質問に答える形で育児休暇の取得を増やすなど女性の活躍のための政策について話しました。

また、宇都宮健児氏も新型コロナウイルスなどの影響で経済的に困窮する人たちを支援する団体の代表とオンラインで対談し「行政が住まいの支援を強化していくべきだ」などと対話を通じて自らの主張を訴えました。

訴えの拡散にSNSや動画を活用

従来の街頭演説は、人が密集するいわゆる「3密」を避けるために事前に開催時間や場所などが告知されないことが多く、それぞれの候補者はSNSや動画を活用して、訴えの拡散に取り組みました。

中でも「街頭演説はしない」と明言した小池氏は、代わりに都内62の区市町村ごとに政策を訴える動画を作りYouTubeで公開したほか、SNSのインスタグラムで自宅での様子を配信し、ユーザーの質問に答えたり飼い犬を登場させるなどしてコロナ対策や人柄をアピールしました。

トレンド入り目指す動き

SNSについては今回は印象的なキーワードでツイッターの「トレンド入り」を目指す取り組みが目立ちました。

ツイッターにはそのとき注目されている話題を「トレンド」として表示する機能があり、トレンドに入るとより多くの人の目に触れるようになります。ある陣営の幹部は「『トレンド入り』すると投稿した動画の閲覧数が5倍以上に増える」と話し、従来の支持者以外に訴えを伝えるためには重要な手段となっています。

今回も主な候補者が「#小池ゆりこに物申す」とか「Twitterを山本太郎で埋め尽くせ!!」「#Iamwith宇都宮けんじ」「#こたえて小野たいすけ」といったキーワードをつけてツイッターに投稿するよう、全国の支持者に呼びかけたりSNSのフォロワーが多い著名人に協力を依頼したりしてトレンド入りを目指す活動を進めていました。

ネットの選挙運動に詳しい明治大学の清原聖子教授は、今回の都知事選でのネットの活用について「候補者が複数のソーシャルメディアを使い分けたりビデオ会議システムを使った対談を行ったりして、一方通行ではなく有権者とやりとりする形が進んだ。有権者からすると候補者に声を届けたり政策を深く知りやすくなったりする意義は大きい」と話しています。
一方、SNSのトレンドを入りをねらう動きについては「候補者にとって名前を知ってもらうのがまず大事なので理解はできるが、それだけでは政策議論を十分深めることにはつながらないので、別途、マスメディアによる討論会の機会などを増やしていく必要がある」と指摘しています。