害者福祉サービスの
休業が倍増 神奈川

緊急事態宣言が継続している神奈川県内では、感染拡大の影響で休業している障害者福祉サービスの数が、このひと月で2倍に増えていることが分かりました。一方、一度は休業したものの当事者や家族の負担が増しているとして、再開する動きも出ています。

感染拡大の長期化による障害者福祉への影響について、NHKが県内の自治体に取材したところ、17日までの1週間に休業していた障害者福祉サービスの数は、「通所型」や「短期入所」で125に上ることが分かりました。

各自治体が初めて休業状況をまとめた先月19日までの1週間の休業数は61だったことから、このひと月で2倍に増加したことになります。

休業の理由は、ほぼすべての122が感染予防のための自主的な休業で、残る3つは、休校などの影響で職員が出勤できず、人手不足になったためでした。

自治体ごとの休業数をみると、横浜市は58、川崎市は36と、いずれも先月のおよそ5倍に増加していて、各市では今月も新たな感染者の確認が続いていることが要因とみています。

一方、県内のほかの自治体では一時期より休業数が減っているところもあり、事業所の中には一度は休業したものの影響が長期化することで、利用者本人や家族の負担が増しているとして、感染対策を講じたうえで再開する動きも出ています。

川崎市では5倍に

川崎市では、17日までの1週間の障害者福祉サービスの休業数が36となり、1か月ほど前の7から5倍に増えました。

こうした状況の中、川崎市が先月下旬に市内の事業所を対象に行った調査では350か所が回答し、「休業」しているところ以外にも「事業を一部縮小している」事業所が137か所と、回答のおよそ4割を占めたということです。

休業や縮小の理由については「地域で感染者が発生するなど感染のおそれがあった」が最も多く46%、次いで「自粛により利用者が減少したため」が21%などとなっています。

サービス継続への懸念を自由記述で聞いたところ、「手洗いやマスクをうまくできない人もいる中、公共交通機関や通院により感染リスクがある状態で通所する人がいる」とか、「人工呼吸器などを使用し感染すると重篤になるおそれから職員の不安が大きい」といった声が寄せられたということです。

一方で、「通所を自粛してもらっているが長期化で家族の負担が増大する」という声もあったということです。

川崎市障害計画課の堺靖志担当課長は「感染者が増える中で心配し自主的に休業するところが多い。障害のある方にとっては障害者福祉のサービスが生活や生きていく上で必要なので、事業者の声を聞きながら継続できるよう支援を進めたい」と話しています。

再開した事業所も

障害のある人や子どもが通う事業所の中には、一度は休業したものの本人や保護者の負担を考え、対策を講じながら再開した所もあります。

このうち相模原市で高校生以下の障害のある子どもを中心に、日中の支援や放課後のデイサービスを行っている通所施設は、市内での感染者の増加を受け2月下旬から自主的に休業しました。

しかし、保護者などから「障害のある子どもの居場所がない」とか、急激な変化が苦手な子どももいる中、「本人にイライラした様子が出てきた」といった切実な声が相次ぎ、2週間ほどで再開を決めました。

再開にあたり施設では、通所前に加え午後に2度の検温の実施、机やドアノブなど子どもが触れる場所は1時間おきに消毒し、送迎のたびに送迎車の中も消毒するなど、手洗いやうがいの徹底も含めさまざまな対策をとっています。

利用を自粛する家庭もあり、日中の利用者は3分の2ほどに減っているということですが、施設を訪れた子どもたちは、ボール遊びや縄跳びなどをして、思い思いのひとときを過ごしていました。

ただ、障害の特性によっては、感覚が過敏なため水が苦手で頻繁な手洗いが困難だったり、マスクの着用が負担になったりする子どももいて、職員たちは手洗いの代わりにウェットティッシュを使い、マスクも可能な範囲で着けられるよう丁寧に説明して対応に当たっていました。

施設によりますと、こうした感染対策に人手が必要になることで本来の療育支援が難しく、児童のストレスや不安をどう解消していくかが課題になっているということです。

施設を利用する19歳の男性は「外に出ないと、いろんなことができないからつらいです。おうちだと落ち着かないです。ここに来ると、友達に会えてうれしいです」と話していました。

中学生の息子が利用している40代の母親は「ここから帰るとすっきりしているのが行動や表情からわかります。障害のない子に比べ過ごし方の選択肢が少ない上、目を離すと危ない部分もあり睡眠時間以外つきっきりの状態が続くとつらい面もある。ここがなければ、本人だけでなく自分や家族も、精神的に追い詰められてしまうと思います」と話していました。

NPO法人「地域福祉研究舎」の津島五月さんは「ことばはなくても気持ちを自分なりに伝えてくれるので、ふだんと違う状況がストレスになっていることや、我慢してくれているのがわかります。障害のある人たちは急激な変化が苦手なので、ふだんと変わらない居場所を提供していきたい」と話していました。