内PCR検査センター
検体採取 可能数の2~5割

地域のかかりつけ医の紹介でウイルス検査を受けられる「PCR検査センター」は、東京23区では30日までに13の区で開設しましたが、検体の採取が行われたのは1日に検査できる数の2割から5割程度にとどまっていることが分かりました。東京都医師会では、「かかりつけ医への相談が浸透していない」として、必要な検査が受けられるよう周知を図っていきたいとしています。

自治体や地元の医師会が設置を進めている「PCR検査センター」の稼働状況について、NHKが東京23区に取材したところ、30日までに開設したのは、江戸川区や千代田区、新宿区など合わせて13の区に上ります。

このうち運用が始まっている区では、多いところで1日50件余り、そのほかでは、5件から20件ほど検体の採取を行っていますが、1日に検査が可能だとしている数と比較すると、ほとんどの区で2割から5割程度にとどまっていることが分かりました。

多くは、先週後半から今週にかけて運用が始まったばかりで、今後、検査数は増える見通しだということで、必要に応じて検査体制の拡充を検討するとしています。

(設置済みの区は台東区、墨田区、世田谷区、江戸川区、江東区、千代田区、新宿区、豊島区、板橋区、中野区、北区、目黒区、荒川区)

「PCR検査センター」設置した区の対応は

新宿区は平日5日間、1日100件程度の検体採取ができるとしていますが、初日となった今月27日は56件でした。検査を受けられるのは区民に限られ、区内の医療機関の紹介状が必要になりますが、区外の人から「検査を受けられないか」といった問い合わせが相次いでいるということです。

また墨田区と中野区は、週に3日、1日最大およそ50件可能だとしていますが、墨田区はこれまで1日20件程度で推移し、中野区は初日の29日は8件にとどまったということです。

このほか、先週後半から順次運用を始めている江戸川区と江東区、千代田区、それに豊島区は、週に2日もしくは3日、1日最大でおよそ20件可能だとしていますが、実際に検体を採取したのは5件から10件ほどでした。

一方、PCR検査センターを「今後、設置予定」としているのが、渋谷区、葛飾区、中央区、練馬区、品川区、大田区の6つの区です。

また設置を「検討中」としているのが足立区で、現時点では検査数を増やすため医療機関と調整中だとしています。

文京区は、区内の医療機関で必要な数の検査はできているとしています。

独自に取り組み強化の区も

このほかセンターを設置せずに独自に取り組みを強化している区もあります。

杉並区は、区内3つの基幹病院に集約して開業医などが診察と検査を行い、1日に30件程度検体を採取しているほか、港区は、医師会の協力を得ながら保健所が中心となって検査を行っていて、1日およそ20件から30件で推移しているということです。

千代田区「検査増やすことは急務」

今月24日から医師会の協力を得て、PCR検査を始めた東京 千代田区では、これまでに検体を採取した件数が1日に検査できる数の半分以下にとどまったということです。

千代田区では、医師の紹介によってPCR検査が受けられるよう、区役所近くの広場にテントを設置して、検査を行うための検体をその場で採取しています。

月、水、金の週3日の予定で、今月24日から検査を始め、初日の24日は5件、2日目の27日は7件と、1日に検査ができる20件の半分以下にとどまったということです。

千代田区によりますと、周知期間が短かったため、検査した件数が少なかったと考えられるが、5月1日は対応可能な件数に達する申し込みがあり、検査件数は今後、増えていくとみられるとしています。

千代田区地域保健課の山崎崇課長は、「思ったよりも少なかったところもあるが、検査を増やしていくことは急務だと思っているので、早期検査、早期発見で適切な治療を早く始め、感染拡大の防止につなげていきたい」と話しています。

都医師会「かかりつけ医への相談が一般の方に浸透していない」

東京23区の「PCR検査センター」で行われた検体の採取が、それぞれ1日に検査できる数の2割から5割程度にとどまっていることについて、東京都医師会では、「かかりつけ医への相談が浸透していない」として、必要な検査が受けられるよう周知を図っていきたいとしています。

「PCR検査センター」の運用状況について、NHKが東京23区に取材したところ、30日までに13の区で開設したことがわかりました。

これについて東京都医師会の角田徹副会長は「地区の医師会が自治体と連携して迅速に開設できている思う。ほかにも多くの自治体で準備が進められていて、5月中にはかなりの数のセンターが開設できると思う」と述べました。

一方、検体を採取した件数はそれぞれの区で1日に検査が可能だとする数と比較すると、ほとんどの区で2割から5割程度にとどまっています。

これについて角田副会長は、「運用が始まったばかりで、これから検査数は増えていくと考えているが、最初から地域の保健所に電話してしまう人が多く、かかりつけ医への相談が一般の方に浸透していない」と述べ、不安がある場合は、地域のかかりつけ医に相談するよう呼びかけるなど、必要な検査が受けられるよう周知を図っていく考えを示しました。

また、PCR検査センターで検査を受けてもらうか判断を行うかかりつけ医に対しては、「判断を迷う患者もいると思うが感染が疑われるケースでは自分の裁量でちゅうちょせずにPCRセンターにつないでほしい。今後、体制が定着すれば、どういう患者を検査につなぐかの統一的な基準もできてくると思う」と述べました。

そのうえで、今後については「新型コロナウイルスの第2波、第3波は必ず来る。PCRセンターのようなシステムは必要だ」として、引き続き検査体制を強化していく考えを示しました。