進党の32億円「希望」
「立民」「無所属」に

去年の衆議院選挙で候補者を擁立しなかった当時の民進党が、ほかの政党などから立候補した民進党の出身者に合わせて32億円余りを支出していたことが、総務省が公表した政治資金収支報告書から分かりました。こうした資金の一部は候補者を通じてほかの政党に寄付されるなどし、民進党の資金が事実上ほかの政党に流れる形になっていました。

去年10月の衆議院選挙で当時の民進党は候補者を擁立せず、民進党出身の候補者は選挙の直前に設立された「希望の党」や「立憲民主党」、「無所属」として立候補しました。

NHKが先月30日に総務省が公表した政治資金収支報告書を調べたところ、当時の民進党は衆議院選挙の直前の去年10月初めから、
▽旧希望の党の候補者に合わせて19億6000万円、
▽立憲民主党の候補者に合わせて6億6500万円、
▽無所属の候補者に合わせて5億8000万円を寄付し、民進党出身の候補者およそ220人への寄付は合わせて32億円余りに上っていました。

候補者はこうした資金の一部を「希望の党」や「立憲民主党」に貸し付けたり寄付したりしていて、民進党の資金がほかの政党の運営資金に充てられていました。

去年の民進党の収入の大半は国が政党に対して交付する「政党助成金」で占められていましたが、こうした資金が事実上ほかの政党に流れる形になっていました。

政治資金に詳しい日本大学の岩井奉信教授は「理念が同じメンバーがいるとはいえ、民進党に交付された資金が事実上ほかの党に流れており、政党助成金の趣旨を逸脱している。正式に分党手続きなどを取って配分すべきだった」と指摘しています。

民進党分裂の経緯

去年の衆議院選挙を前に、当時の民進党の前原代表は「政権交代を実現するためだ」として民進党の候補者は擁立せず、東京都の小池知事が立ち上げた「希望の党」に事実上合流する方針を決めました。

しかし枝野元官房長官らは、理念と政策の方向性が異なるとして「立憲民主党」を結成し、民進党は分裂しました。

当時の「希望の党」の小池代表は民進党出身者を無条件には全員受け入れない方針を示し、希望の党からだけではなく無所属で立候補する議員が出ました。

こうして当時の民進党の出身者は「希望の党」「立憲民主党」「無所属」の3つに別れる形で立候補しました。

衆議院選挙では「立憲民主党」が野党第1党になる一方、「希望の党」は選挙前の議席を下回り、候補者を擁立しなかった民進党も党勢の低迷が続きました。

そしてことし5月、希望の党が民進党に合流する形で「国民民主党」が結成されました。