イエメン沖 弾道ミサイル発射情報で海自護衛艦 最大近い速度で現場離脱

中東イエメン沖のアデン湾でタンカーが武装勢力に乗っ取られた事件で、海上自衛隊は現場で情報収集にあたっていた護衛艦の周辺海域に弾道ミサイルが発射されたとみられることを28日、明らかにしました。
この護衛艦は発射の情報を受けたあと、速度を最大近くまで上げて現場海域から離脱していたことが関係者への取材で分かりました。

イエメン沖のアデン湾では日本時間の今月26日、タンカーがソマリア人とみられる武装勢力に乗っ取られ、アデン湾で海賊対処の任務にあたっている海上自衛隊の護衛艦「あけぼの」と哨戒機が現場海域で警戒監視や情報収集を行いました。

海上自衛隊は、アメリカ海軍の駆逐艦と対応していた際にアメリカ軍から弾道ミサイルが発射されたという情報が寄せられ、「あけぼの」から18キロ以上離れた海域に落下したとみられることを28日、明らかにしました。

関係者によりますと、「あけぼの」は発射の情報を受けたあと、速度を最大近くの時速およそ55キロまで上げて現場海域から離脱したということです。

民間のホームページ「マリントラフィック」で公開されている航跡情報では、「あけぼの」は、日本時間の今月26日夜から翌日の27日午前8時ごろにかけて、イエメン第2の都市アデンの南西およそ110キロの海域にとどまっていましたが、午前8時15分ごろ南に向かって急に移動し、このときの速度は最大で30ノットあまり、時速およそ55キロとなっています。

アメリカ国防総省によりますと、弾道ミサイルは日本時間の27日午前7時45分ごろ、イエメンの反政府勢力フーシ派が支配する地域から2発が発射されたということで、「あけぼの」はそのおよそ30分後に現場から離脱したとみられています。

海上自衛隊は「安全上の懸念はなかった」として、アデン湾での海賊対処の任務を継続するとしています。

海自護衛艦 航跡の詳細

民間のホームページ「マリントラフィック」で公開されている航跡情報では、「あけぼの」は、日本時間の今月26日正午ごろまではイエメン第2の都市アデンの南東およそ230キロの海域を時速20キロあまりで東に向けて航行していました。

しかし、徐々に速度を落とし、午後2時前には進路を反転させます。

そして時速50キロほどに速度を上げて西に向かい、午後10時前にはアデンの南西およそ110キロの海域で急激に速度を落としました。

その後およそ10時間にわたって周辺海域にとどまっていて、このとき武装勢力に乗っ取られたタンカーの周辺で情報収集などにあたっていたとみられます。

そして27日午前8時15分ごろ、南に向かって急に移動し、このときの速度は最大で30ノット、時速およそ55キロとなっています。

“アデン湾で海賊対処”海自の護衛艦と哨戒機とは

防衛省は2009年からアデン湾で海賊対処にあたっていて、現在は海上自衛隊の護衛艦1隻と哨戒機1機が派遣されています。

このうち護衛艦は、長崎県の佐世保基地に所属する「あけぼの」で、ことし9月に日本を出発したあと現地で任務にあたっています。

海上自衛隊によりますと、定員は165人で、対空ミサイルなどを装備している一方、弾道ミサイルを追尾して迎撃する装備はないということです。

「あけぼの」について、海上自衛隊トップの酒井良 海上幕僚長は28日の記者会見で、「直接弾道ミサイルが命中するおそれがあるときには対応は不可能だと思っている。イエメンが保有する弾道ミサイルの性能などをトータルで分析すると、直接命中させる精度はないとみられ、警戒をしながら現在の任務を継続する方針だ」と述べています。

防衛省のホームページによりますと、海賊対処の任務をめぐり弾道ミサイルを追尾して迎撃できるイージス艦が派遣された記録はありません。

防衛省関係者は「イージス艦は日本周辺で北朝鮮の弾道ミサイルに対応する任務などがあるため、アデン湾への派遣は難しい。そもそも海賊対処の任務で弾道ミサイルに対応する事態が起きるとは思っていない」と話しています。

また、現在、派遣されている哨戒機は先月青森県の八戸航空基地を出発したP3C哨戒機1機で、今回の派遣から、哨戒機の機数は2機から1機に減っています。

イエメン近海 航行する船舶の保険料 高騰の可能性

イエメンの近海で、船舶が乗っ取られるなどの被害が相次いでいることを受けて、海域を航行する船舶の保険料が高騰する可能性が指摘されています。

イエメンの反政府勢力、フーシ派はイスラエルと関係のある船舶を標的にすると宣言し、イエメンの近海で船舶が乗っ取られたり、攻撃されたりするケースが相次いでいます。

こうした事態について、イギリスの保険会社、「ヴェッセル・プロテクト」のマンロ・アンダーソンさんはNHKの取材に対し「イスラエルが関係する船舶は高いリスクにさらされているが、そうでない船舶にも巻き添えや誤認による攻撃の脅威がある」と述べました。

その上でこの状況が続けば海域を航行するすべての船舶の保険料が高騰する可能性があると指摘しています。

一方、アメリカのメディアブルームバーグは、スエズ運河を経由してヨーロッパとアジアの間を航行するためには脅威があるとしても避けられない海域だと伝えています。

アメリカ政府は付近を航行する船舶に注意を呼びかけていて、世界の物流への影響も懸念されています。