統一できない統一地方選挙
27%しかやらない理由は…

今年2023年は4年に1度の統一地方選挙の年。
でも、自分の住んでいる地域では「知事選挙がない」「市区町村長選挙もない」という人も多いんです。
過去には100%だった統一率(統一地方選挙で実施される選挙の割合)も、27.54%まで下がりました。
そもそも統一地方選挙とは? なぜ投票日を統一するの?
詳しく解説します。
(清水阿喜子)

4年に1度の統一地方選挙 日程は前半と後半

統一地方選挙は地方自治体の知事や市区町村長と議員の選挙について、投票日を統一して全国一斉に行うもので、4年に一度行われます。

前半戦では、知事や道府県議会議員の選挙、政令指定都市の市長選挙と市議会議員選挙が行われ、後半戦では、政令指定都市以外の市区町村長選挙と市区町村議会議員選挙が行われました。

▼前半の道府県の知事と議員、政令指定都市の市長と議員の選挙は4月9日 ▼後半の市区町村の首長と議員の選挙は4月23日

今年は、
▼前半の道府県の知事と議員、政令指定都市の市長と議員の選挙は4月9日
▼後半の市区町村の首長と議員の選挙は4月23日
に行うことが、統一地方選挙の日程を定める特例法で決まりました。
1947年(昭和22年)4月に1回目の統一地方選挙が実施されてから20回目となります。

投票日を統一するメリット “関心・円滑・効率”

総務省によりますと「投票日を全国で同じにすることで、国民の選挙に対する関心を高めることや、選挙を円滑に効率的に行うことを狙いとしている」ということです。

また、複数の選挙の投票を同じ投票所でできるため、投票所を借りる費用などの経費を抑えることにつながるメリットがあるとしています。

統一率 100%は最初だけ 外れる自治体が増加

しかし、統一と言いながらも、100%統一されていたのは、第1回の1947年のみです。
その後、首長が任期途中で辞任したり、議会が解散したり、市町村合併が行われるなどして次第に選挙日程がズレていき、回を重ねるごとに、統一地方選挙の対象から外れる自治体が増えていきました。

2019年の統一率は27.46%と、全ての地方選挙の約4分の1の選挙しか行われていませんでした。知事選挙だけでみると47都道府県のうち、11道府県で行われ、統一率は23.4%でした。

そして2023年の第20回目の統一地方選挙の統一率は27.54%となりました。
このうち、知事と市区町村長=首長のみで見ますと、統一率13.37%という低さです。

知事選挙は、北海道、神奈川、福井、大阪、奈良、鳥取、島根、徳島、大分の9道府県

知事選挙を見てみますと、2023年の統一地方選挙では47都道府県のうち、北海道、神奈川、福井、大阪、奈良、鳥取、島根、徳島、大分の9道府県で行われました。

東日本大震災で被災地の多くが外れる

東日本大震災直後の様子

2011年3月11日には東日本大震災が発生しました。翌4月には第17回の統一地方選挙が控えていましたが、政府は、震災の被害のため選挙事務を適正に行うのが困難だとして、岩手・宮城・福島・茨城の60の選挙を特例法により延期することを決め、被災地の多くの選挙が統一地方選挙の対象から外れることになりました。
この回は27.4%と過去最低の統一率となりました。

東京 知事選も都議選も統一でない

東京で2019年4月の統一地方選挙で選挙が行われたのは、市区長村長選挙が62のうち18、市区町村の議員選挙が62のうち46で、実施されなかった都知事と都議会も含めると全体の統一率は50.79%でした。

前回の都知事選挙は2020年7月、都議会議員選挙は翌2021年7月とばらばらになっています。

東京都選挙管理委員会によりますと、
▼都知事選挙には53億8473万6701円
▼都議会議員選挙には49億2912万9685円
をそれぞれ、選挙啓発や投開票所を運営する市区町村への交付金などとして支出しているということです。

大阪 堺市 費用より “単独実施のメリット大”

大阪府の堺市は、2023年6月に市長の任期が満了を迎えます。

堺市選挙管理委員会が、市長選挙の日程などについて協議するため開いた会議では「統一地方選挙とあわせることで1億1000万円の費用削減につながる」といった意見が出た一方で、「単独で実施した方が円滑な選挙の運営につながる」といった意見も出され、統一地方選挙にあわせず、2か月後の6月4日に行うことを決めました。

選挙管理委員会の担当者は「単独で実施した方が、有権者が候補者の施策について理解を深められる。1億1000万円の費用削減は大きいが、6月に実施する方が有権者のメリットが大きいと考えた」と話していました。

専門家 “統一か別々か 実証的に分析を”

日本政治が専門の東京大学の内山融教授は、期日を統一することのメリットとデメリットを実証的に分析することが必要だと指摘しています。

東京大学の内山融教授

「統一率が3割を切っていると、有権者の関心を高めることや、選挙経費の削減といった統一地方選挙の本来の趣旨が実現されておらず、もはや統一地方選と呼べるのか。一方で、そもそも統一すべきなのかという考え方もあり、統一することによって、どのぐらい有権者の関心や投票率が高まるのか、何億円の節約ができるのかを実証的に分析し、メリットとデメリットを議論することが必要だ」

「首長と議会の選挙が一緒に行われると、政党がカラーを打ち出しやすくなり、各党ごとの主張が明確になりやすい。その一方で、自治体ごとに個性や特徴があり、有権者の関心も違うので、別々にやることによって、むしろ各自治体の個別の特徴に合わせた選挙ができ、各党もそれにあわせた主張ができるため、実は別々の方が分かりやすい面もある。統一地方選挙として一緒にやるのがいいのか、別々にやるのがいいのか、状況にあわせてよく考えなくてはならない」

ネットワーク報道部記者
清水 阿喜子
2011年入局。札幌局、北見局を経て政治部。現在はネットワーク報道部で地域や子ども向けの発信に力を入れている。