ポケベルと携帯電話
写真:共同通信社

「ポケベル」の登場は47年前

戦後に登場した製品の中には、思惑とは異なる層に広まったものも数多くあります。今回の「ポケットベル(ポケベル)」もそのひとつです。電話番号にかけると、いまで言う「着信通知」だけが送れる携帯用無線呼び出し機「ポケベル」の登場は、日本初の超高層ビル・霞が関ビルの完成や、3億円強奪事件と同じ1968年(昭和43年)。当時の電電公社から、東京23区内のみを対象にしたサービスとして生まれた「ポケベル」は、当初は音が鳴るだけの一方的な連絡手段でした。携帯電話に慣れた現代の人から見れば、わずかな機能しか持っていませんでしたが、自動車電話や携帯電話が生まれる前の時代、忙しい営業マンをいつでも呼び出せる、ビジネス用の連絡手段として重宝されていたのです。

数字が送れるようになると、新たなユーザー層が誕生

ビジネス用途として利用者を増やした「ポケベル」の端末は、1980年代末ごろから小型化が進み、機能も向上。本体の液晶ディスプレイに数字や記号が送れるようになり、「連絡」だけではなく「コミュニケーション」のツールへと進化します。

若者に急速に普及したポケベル(写真右)と、PHS(写真左) 1997年(平成9年) 写真:共同通信社

若者に急速に普及したポケベル(写真右)と、PHS(写真左) 1997年(平成9年) 写真:共同通信社

いまも昔もトレンドに敏感な女子高生たちは、数字しか送れないポケベルを使って、新たな”文字文化”を生み出します。「おはよう」を「0840」、「愛してる」を「14106」など…。念のため解説すると「愛」が「I」と似ている「1」、「し」は「4」、「て」は「TEN」から「10」、「る」は形が似ている「6」をあてるなどと、工夫を凝らして数字でメッセージを送る方法が1990年代から大流行。ポケベルを通じて連絡しあう「ベル友」へメッセージを送るために、休み時間になると学校の公衆電話の前に「ポケベル打ち」をする行列ができたものです。…なんて、いま思えばソレナニですよね。1991年(平成3年)には文字送信も可能となり、1995年(平成7年)には加入契約者は1061万を数え、「ポケベル」は最盛期を迎えます。NTTドコモでは1996年(平成8年)の女性の新規ポケベル契約者のうち、64%は10代。ベル友ブームを支えたのは女子高生だったのです。

しかし、このほぼ同時期に普及が始まった、通話に加えてショートメッセージも送れるPHSや携帯電話が低価格化すると、「ポケベル」の契約数は急激に減少。ピークからわずか10年ほど後、NTTドコモは2007年(平成19年)にポケベルサービスを終了しました。

文字と数字が飛び交った周波数のいまは…?

「ポケベル」の通信で使われていた周波数帯は、現在、自治体による防災情報伝達手段としても活用されています。それは「防災ラジオ」。ポケベルで使われていた280MHzの周波数を使って放送される防災ラジオは、音声情報に加えて、自治体庁舎等の拠点から発信した文字メッセージも発信できるもので、送信出力が強く、少ない送信局で広い範囲をカバーできるのが特長なのだとか。そう、かつて数字で作った数々の言葉を運んだ周波数は、いまでは安心と安全を運んでいるというわけです。「ポケベル」で培った”暗号力”は、情報漏れを防ぐセキュリティという側面で、安心安全に役立つかもしれませんよ…。